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テディちゃとネーさの読書雑記

ぬいぐるみの「テディちゃ」と養い親?「ネーさ」がナビする、新旧の様々な読書雑想と身辺記録です。

2010!新春特別企画 《バスカビル家の虎》 その③ 

2010-01-01 23:16:59 | 2010!新春特別企画!
  虎!
  とら、トラ、虎です!

「きゃあァッ、とらッ!」
「ぎょえぇーっ、虎ぁ!!」

 ええ、そうなのです。
 ちょうどその時、雲間からお月さまの光がこうこうと、
 グリンペン沼を照らし出しました。
 霧の中でうっそり、のっそり、
 こちらへ首を伸ばしているのは……虎です!

 おお、なんということ!
 正直申しまして、テディちゃムズ、
 呪いの虎などとヘンリー卿は言いましたけれど、
 ホントかなァ?と訝しんでいたのでした。
 かの悪漢ステ-プルトンは、
 マスチフ系のミックス犬に燐をぺったぺた塗りたくり、
 《バスカビル家の魔犬》を演出せしめました。
 同じように今回の騒動も、
 白っぽい犬に虎の縞模様をイタズラ描きしたんじゃないのかなァ、
 それを虎と見間違えた可能性もあるゥ、
 と推理していたのです。
 それが、まさか、正真正銘、ホンモノの、虎が!
 いきなり出てくるとはルール違反というものでしょう?

「どどどっ、どうするっ? テディちゃムズ~っ!!」
「こんなばあいはねッ、ユキノジョン・H・ワトソンくんッ!

 にげようゥ~~ッ!!!」

 君子危うきに近寄らず――いえ、三十六計逃げるにしかず。
 逃げろや逃げろ、虎の牙の、爪の、届かぬところまで!
 
 ですが、ああ、ですが。

 テディクマ一族は、あまり足が長くない、という哀しい事実を
 認めねばなりますまい。
 よいしょっ、うんこらしょっ、と駆け出す2匹の背後へ、
 ひたひた、っと猫族特有の足音が――

「きゃわわッ!!」
「むひゃひゃぁ!!」

 がぶり!!とやられて、
 あっけなく引っくり返るテディちゃムズとユキノジョン・H・ワトソン博士。

「きゃーッ! たべられちゃうゥッ!!」
「喰われるぅぅ~っ!!」

 がぶり! もぐもぐ!
 またがぶり! ごっくん!
 グリンペン沼にこだまするのは、騒々しい虎の咀嚼音――

「ひいィッ、もうだめェ――あれッ?」
「わーん、いた――ん? 痛くない?」

 む? おかしゅうございますね?
 咀嚼音は続いておりますのに、どこも噛まれておりませんし、
 痛くもありませんよ?
 恐る恐るテディクマたち、振り返って見ますれば。

「あッ?とらがァ、たべてるゥあれはッ!」
「僕のだ!
 下宿のハドソン夫人が僕に作ってくれたお弁当だよ!
 ハドソンさん自慢の、特製ミートパイ!」
「あれはァ、ぼくがァたいせつにィとッておいたァ、
 くりすますのォごちそうのォ、のこりッ!
 ぶらんでーたッぷりィのォ、ふるーつけーきィだッ!」

 テディクマたちの目前で。
 破れたコートのポケットからこぼれ落ちたパイやらケーキやらを平らげ、
 虎は満足そうに毛づくろいを始めました。
 心なしか、いえ、歴然と、ブランデーの香りを漂わせながら……。

「なんだか、えーと……僕らを食べる気、ないみたいだね?」
「むむゥ、たしかにィ、はどそんさんのォ、おりょうりはァ、おいしィからねェ」
「うわ、擦りよってきたッ!」

 尻尾を振り振り、近くへ寄ってきた虎ときたら、
 呪いの虎というよりは、フレンドリーすぎる虎でした。

「……テディちゃムズ、僕たち、懐かれちゃってるようだけど?」
「まァいいじゃないかッ、ユキノジョン・H・ワトソンくんッ!」

 テディちゃムズは喉をごろごろ鳴らす虎の頭を撫で、言いましたよ。

「けんかにィならなくてェ、よかッたよゥ!
 さあ、おやしきへェ、ゆこうじゃないかッ!
 いッしょにィ、ごちそうをいただこうゥッ!」
 
 そうです、喧嘩よりは、仲良しこよし。
 争いよりも、ともに楽しい食卓を。
 バスカビル家の虎と、2匹のテディクマは、
 連れだってヘンリー卿のお屋敷へ向かいます。
 月夜の道をてくてく行けば、
 バスカビル屋敷は、ほんのすぐそこに――おや?

「……むッ?
 あれはッ!?!」
「テ、テディちゃムズ、あれはっ!!」

     (次回へ、続く!)

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