「こんにちわッ、テディちゃでス!
ずゥ~ッとォ、へいわをッ!」
「がるる!ぐるるがるる!」(←訳:虎です!いつも平和を!)
こんにちは、ネーさです。
今日――8月15日の読書タイムは、
NO WAR!の思いをあらためて噛みしめながら、
さあ、こちらの御本を、どうぞ~!
―― 楡家の人びと ――
著者は北杜夫(きた・もりお)さん、単行本は1964年に発行されました。
現在は、文庫版(新潮社)が刊行されています。
(↑上の画像は、私ネーさが所蔵する単行本です)
ずいぶん以前にご紹介した作品ですが、
敢えて、2023年の終戦の日に再読してみましょう。
21世紀の今は、オシャレな街として知られる、
港区の青山エリア――
かつて、ここには7つの塔を持つ
壮麗な建物がありました。
建物の名は、楡病院。
けれど、近在の住民さんたちは、こう呼ぶのです――
脳病院。
「つまりィ~…」
「ぐるるるがるぐる!」(←訳:精神科の病院だね?)
楡病院の創設者は、楡基一郎(にれ・きいちろう)さん。
二代目の、楡徹吉(にれ・てつきち)さん。
三代目にあたる、
楡峻一(にれ・しゅんいち)さんと弟の周二(しゅうじ)さん。
物語は、楡病院を背負う三世代のドクターたちを中心に、
大正7年(1918年)から
昭和21年(1946年)までを描いてゆきます。
しかも、
殆どの登場人物さんたちは、
実在の人物をモデルにしているため、
フィクション作品でありながら、
限りなくノンフィクションに近い、とも言えるのです。
楡病院の初代・基一郎さんのモデルは、
青山脳病院を設立した、斎藤紀一(さいとう・きいち)さん。
2代目の徹吉さんは、歌人の斎藤茂吉(さいとう・もきち)さん。
3代目の峻一さんは、医師でエッセイストの斎藤茂太(さいとう・しげた)さん。
周二さんは、著者・北杜夫さん御自身。
「りあるゥ、なのでス!」
「がるぐるるがる……!」(←訳:事実ゆえの重み……!)
きな臭さが増してゆく大正時代後半に始まり、
戦時下、そして終戦を背景としている御話ですから、
北さんが持ち味であるユーモアをどれほど注ぎ込もうと、
当時の文化・流行・風物を活写しようと、
楡家の人びとが辿るのは、
いえ、歩かされる道は、
平坦ではありません。
喪失、焼失、痛みと、哀惜。
大切にしていたものとの、別れ。
「これがァ、せんそうゥ……?」
「ぐるるがる……!」(←訳:これが戦争……!)
反戦を声高に主張するのではなくとも、
この御本一冊を読むだけで、
“その頃の日本がどう動いていったか“が、
詳細に分かります。
そうして、私たち読み手は身に沁みて思うのです。
戦火で生命が失われる、
そんなことは、二度とあってほしくない。
「せんそうゥ~よりもォ」
「がっるるぐる!」(←訳:やっぱり平和!)
一字一字、著者・北さんが魂をこめて綴った
楡家の“年代記“、
20世紀の日本文学を代表する名作を、
どうか皆さま、ぜひ。