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テディちゃとネーさの読書雑記

ぬいぐるみの「テディちゃ」と養い親?「ネーさ」がナビする、新旧の様々な読書雑想と身辺記録です。

~ 名作再読・楡家の塔から ~

2023-08-15 22:05:30 | ブックス

「こんにちわッ、テディちゃでス!

 ずゥ~ッとォ、へいわをッ!」

「がるる!ぐるるがるる!」(←訳:虎です!いつも平和を!)

 

 こんにちは、ネーさです。

 今日――8月15日の読書タイムは、

 NO WAR!の思いをあらためて噛みしめながら、

 さあ、こちらの御本を、どうぞ~!

  

 

 

          ―― 楡家の人びと ――

 

 

 著者は北杜夫(きた・もりお)さん、単行本は1964年に発行されました。

 現在は、文庫版(新潮社)が刊行されています。

 (↑上の画像は、私ネーさが所蔵する単行本です)

 ずいぶん以前にご紹介した作品ですが、

 敢えて、2023年の終戦の日に再読してみましょう。

 

 21世紀の今は、オシャレな街として知られる、

 港区の青山エリア――

 かつて、ここには7つの塔を持つ

 壮麗な建物がありました。

 

 建物の名は、楡病院。

 

 けれど、近在の住民さんたちは、こう呼ぶのです――

 脳病院。

 

「つまりィ~…」

「ぐるるるがるぐる!」(←訳:精神科の病院だね?)

 

 楡病院の創設者は、楡基一郎(にれ・きいちろう)さん。

 二代目の、楡徹吉(にれ・てつきち)さん。

 三代目にあたる、

 楡峻一(にれ・しゅんいち)さんと弟の周二(しゅうじ)さん。

 

 物語は、楡病院を背負う三世代のドクターたちを中心に、

 大正7年(1918年)から

 昭和21年(1946年)までを描いてゆきます。

 しかも、

 殆どの登場人物さんたちは、

 実在の人物をモデルにしているため、

 フィクション作品でありながら、

 限りなくノンフィクションに近い、とも言えるのです。

 

 楡病院の初代・基一郎さんのモデルは、

 青山脳病院を設立した、斎藤紀一(さいとう・きいち)さん。

 2代目の徹吉さんは、歌人の斎藤茂吉(さいとう・もきち)さん。

 3代目の峻一さんは、医師でエッセイストの斎藤茂太(さいとう・しげた)さん。

 周二さんは、著者・北杜夫さん御自身。

 

「りあるゥ、なのでス!」

「がるぐるるがる……!」(←訳:事実ゆえの重み……!)

 

 きな臭さが増してゆく大正時代後半に始まり、

 戦時下、そして終戦を背景としている御話ですから、

 北さんが持ち味であるユーモアをどれほど注ぎ込もうと、

 当時の文化・流行・風物を活写しようと、

 楡家の人びとが辿るのは、

 いえ、歩かされる道は、

 平坦ではありません。

 

 喪失、焼失、痛みと、哀惜。

 大切にしていたものとの、別れ。

 

「これがァ、せんそうゥ……?」

「ぐるるがる……!」(←訳:これが戦争……!)

 

 反戦を声高に主張するのではなくとも、

 この御本一冊を読むだけで、

 “その頃の日本がどう動いていったか“が、

 詳細に分かります。

 そうして、私たち読み手は身に沁みて思うのです。

 

 戦火で生命が失われる、

 そんなことは、二度とあってほしくない。

 

「せんそうゥ~よりもォ」

「がっるるぐる!」(←訳:やっぱり平和!)

 

 一字一字、著者・北さんが魂をこめて綴った

 楡家の“年代記“、

 20世紀の日本文学を代表する名作を、

 どうか皆さま、ぜひ。