goo blog サービス終了のお知らせ 

テディちゃとネーさの読書雑記

ぬいぐるみの「テディちゃ」と養い親?「ネーさ」がナビする、新旧の様々な読書雑想と身辺記録です。

~ 砂漠にの星に見る夢は ~

2020-02-23 22:44:09 | ブックス
「こんにちわッ、テディちゃでス!
 ♫るるゥ~♪さいたァ~♫さいたァ~♪」
「がるる!ぐるるるがるるる!」(←訳:虎です!スミレが咲いたよ!)

 こんにちは、ネーさです。
 サクラでもなくチューリップでもなく、
 ジャングルな我が家の庭に
 薄紫色のスミレが咲きました♪
 確かな春の足音を聴きながら、
 本日の読書タイムは、
 こちらのノンフィクション作品を、どうぞ~!

  


 
       ―― 火星の旅人 ――



 著者は入江哲朗(いりえ・てつろう)さん、
 2020年1月に発行されました。
 『パーシヴァル・ローエルと世紀転換期アメリカ思想史』
 と副題が付されています。

 さあ、テディちゃ、虎くん、
 ここでちょっと、振りかぶってみてちょうだいな。

「ふァ?……ええとォ……こうゥ?」(←投球ポーズしてます)
「ぐるる~?」(←こちらも投球ポーズ中)

 はい、では思いっきり投げて!

「えいやッ!」
「がるっ!」(←訳:とうっ!)

 と、はるか彼方に投擲したものは、
 いったい何でしょう?
 単なる空気の塊り?
 手近にあったオモチャのボールやヌイグルミ?
 どちらにせよ、
 “大したもの”ではない、のは間違いありませんよね。

 しかし、
 1883年の春、
 パーシヴァル・ローエルさんが放り投げたのは、
 冗談ではなく、
 “大したもの”だったのでした。

 それは、
 《家督(かとく)》。

「ふあァ??」
「ぐるぅ?」(←訳:家督ぅ?)

 パーシヴァル・ローエル(Percival Lowel)lさん――
 1855年生まれ、1916年没。
 その生家は、米国でも指折りの名家であり、
 ボストンきっての資産家でありました。
 
 ローエル家の長男であるパーシヴァルさんは、
 ハーヴァード大学を優秀な成績で卒業した後、
 当時の上流階級の子弟には恒例の
 欧州旅行に出発、
 帰国してからは
 祖父と父の事業を立派に手伝い、
 周囲の者は皆パーシヴァルさんが
 家督を継ぐものと思っていたのですが。

 パーシヴァルさん、
 サンフランシスコを発つ船に乗り込んでしまいます。

 そして、1883年5月25日、
 パーシヴァルさんを乗せた英国船コプティック号は、
 日本の、横浜港に到着!

「えッ? にほんッ??」
「がるる!!」(←訳:横浜に!!)

 富豪の跡取り息子の座を捨て、
 ジャパノロジスト(日本研究家)に。

 『朝鮮(チョソン)』『極東の魂』
 『能登――人に知られぬ日本の辺境』
 『神秘の日本』と著作を発表し、
 岡倉天心さんや
 ラフカディオ・ハーンさんたちとも交流を持ち、
 押しも押されぬ極東文化研究の第一人者の地位を
 築きつつあったところで。

 またしても、
 振りかぶり?!?

「ひゃあッ!」
「ぐるるぅっる!」(←訳:投げちゃった!)

 頭上に広がるのは、
 満点の星々……
 そう、ここはボストンではなく、
 日本でもなく、
 米国西部の、アリゾナ州。

 街の灯りに悩まされることもない砂漠の真ん中、
 乾いた空気は、
 天体観測に最高の土地柄でしょ?

「こんどはァ、てんもんがくゥ??」
「がるるるぐる!」(←訳:なんたる飛躍!)

 ローウェル天文台の創設者 
 パーシヴァル・ローエルさん。

 御本冒頭の『はじめに』によれば、
 著者・入江さんはそもそも
 パーシヴァル・ローエルさんの伝記を書こうとは
 考えていなかったそうです。

 けれども、ローエル家について調べるうち、
 パーシヴァルさんの生涯の“おもしろさ”に魅せられ、
 ローエル一族の興隆を背景とした
 パーシヴァルさんの人生を追う評伝作品が
 完成に到ったのでした。

 天文学好きな方々はきっと御存知の
 パーシヴァルさんの人生は、
 実は、アリゾナの大地に立って以降が山場!
 と言えるワケで――

「これからがァ、たいへんッ!」
「ぐるる??」(←訳:天文台は??)
「どうなるのォ~?」

 巨額の資金を注ぐ天文台建設は、成功するのか?
 パーシヴァルさんの天体観測と研究が
 19世紀後半~20世紀の社会に与えた
 少なからぬ影響とは?
 
 近代日本史マニアさんに、
 米国史研究家さんに、
 それにもちろんSF好きな方々にも
 ぜひ手に取っていただきたい力作ノンフィクション、
 書店さんで、図書館で、
 探してみてくださいね~♪