遠隔操作ウイルス事件 経済事案にも影 ・・・[エコノ羅針盤(作家・相場英雄)]
(日刊ゲンダイ)より
「なりすまし」――。
先週来、遠隔操作ウイルスによる犯罪予告事件に関する話題がかまびすしい。
他人のパソコンを操作し、別人を誤認逮捕させる手段は許し難い犯罪。
過日、私も「真犯人」が送付したとみられる「犯行メール」に接した。
心証から言えば、メールには犯人しか知り得ない事実が多数盛り込まれており、本物だ。
私はセキュリティーの専門家ではないが、一連の事案に強い危機感を抱く。
犯行自体はもちろんのこと、サイバー犯罪を取り締まる警察の
捜査態勢の脆弱さが際立ったからだ。
「真犯人」によれば、全国に散らばる個人のパソコンを操作したうえで、
その地域の警察の捜査がどのように展開するか見守っていたフシがある。
警視庁や他の道府県警察の間での情報のやりとりは緊密ではない。
むしろ縄張り意識の強さから情報が遮断されてしまうケースさえある。
このため、強く容疑を否認していた人たちが逮捕・勾留されるという
異常事態に発展したわけだ。
一連の事件は無差別殺人などの予告だったが、私が強く懸念するのはこれが
経済に悪用されてしまう恐れがある、という点だ。
現在、個人投資家の株式投資の大半はネット取引だ。
FXにしてもネットが主体であり、ネットバンキングも利便性を増しているのだ。
仮に今回のような不正アクセスのスキルにたけた「真犯人」が、
各種の金融取引を他人になりすましたらと考えると、とても人ごとではない。
先の誤認逮捕の被害者のように、自分が加害者としておとしめられる公算もある。
先週、警察庁は全国の担当者を集め、サイバー犯罪摘発強化の方針を打ち出した。
なりすましが経済事案を侵食しないうちに、
確実かつ強固なサイバー捜査の態勢を築いていただきたい。
◇あいば・ひでお 67年生まれ。
元時事通信社記者。
「デフォルト」(角川文庫)でデビュー。
最新作は「ナンバー」(双葉社)。
(日刊ゲンダイ)より
「なりすまし」――。
先週来、遠隔操作ウイルスによる犯罪予告事件に関する話題がかまびすしい。
他人のパソコンを操作し、別人を誤認逮捕させる手段は許し難い犯罪。
過日、私も「真犯人」が送付したとみられる「犯行メール」に接した。
心証から言えば、メールには犯人しか知り得ない事実が多数盛り込まれており、本物だ。
私はセキュリティーの専門家ではないが、一連の事案に強い危機感を抱く。
犯行自体はもちろんのこと、サイバー犯罪を取り締まる警察の
捜査態勢の脆弱さが際立ったからだ。
「真犯人」によれば、全国に散らばる個人のパソコンを操作したうえで、
その地域の警察の捜査がどのように展開するか見守っていたフシがある。
警視庁や他の道府県警察の間での情報のやりとりは緊密ではない。
むしろ縄張り意識の強さから情報が遮断されてしまうケースさえある。
このため、強く容疑を否認していた人たちが逮捕・勾留されるという
異常事態に発展したわけだ。
一連の事件は無差別殺人などの予告だったが、私が強く懸念するのはこれが
経済に悪用されてしまう恐れがある、という点だ。
現在、個人投資家の株式投資の大半はネット取引だ。
FXにしてもネットが主体であり、ネットバンキングも利便性を増しているのだ。
仮に今回のような不正アクセスのスキルにたけた「真犯人」が、
各種の金融取引を他人になりすましたらと考えると、とても人ごとではない。
先の誤認逮捕の被害者のように、自分が加害者としておとしめられる公算もある。
先週、警察庁は全国の担当者を集め、サイバー犯罪摘発強化の方針を打ち出した。
なりすましが経済事案を侵食しないうちに、
確実かつ強固なサイバー捜査の態勢を築いていただきたい。
◇あいば・ひでお 67年生まれ。
元時事通信社記者。
「デフォルト」(角川文庫)でデビュー。
最新作は「ナンバー」(双葉社)。