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mayerling

1889年に起きた、オーストリア=ハンガリー二重帝国の皇太子ルドルフと、17歳の男爵令嬢マリー・ヴェッツェラの心中事件、俗称「マイヤーリング事件」を題材に1930年に書かれた小説がもとになっている。
ちなみにこの時、皇太子は30歳だった。
彼の母親はあの有名な王妃エリーザベトといったら話が早いだろうか。
この心中事件には当時から暗殺ではというウワサがつきまとっており、今現在も真相は闇の中に沈んでいる。
実際、皇太子は心中を図ってもおかしくない精神状態であり、また暗殺されてもおかしくない政治背景もあり、人々の想像をかきたてる。
「マイヤーリンク」は、バレエ作品としては珍しく男性主人公中心に話が展開して行き、ルドルフ役は最高位のダンサーがバレエ芸術の粋を持ってして演じる役だ。
「左翼思想に接した後、自分の出身階級に悩み、肉親に反発しますが、同時にとても頼っていました。見捨てられる事への強烈な不安感から、依存するかとおもえば、激しく攻撃するという人間関係がうかがえます」...この診断、実は皇太子ルドルフについて書かれたものではなく、唐突だが太宰治について書かれたものなのだ。
「衝動的行動、二極思考、対人関係の障害、慢性的な空虚感、自己同一性障害、薬物やアルコール依存、自傷行為や自殺企図などの自己破壊行動が挙げられる。また激しい怒り、空しさや寂しさ、見捨てられ感や自己否定感など、感情がめまぐるしく変化し、なおかつ混在する感情の調節が困難であり、不安や葛藤を自身の内で処理することを苦手とする。
衝動的行為としては、性的放縦、ギャンブルや買い物での多額の浪費、より顕著な行為としてはアルコールや薬物の乱用がある。(中略)自己破壊的行為で最も重いものは自殺である。」(ウィキペディア、境界性人格障害の項より)
皇太子ルドルフの人生について書かれたものを読んでいると、どうしても太宰治の破滅的人生を連想せずにはいられない。
マザコンで、家父長的父親に反目し、浪費家で、数多くの愛人を持ち、ヤク中で、自殺願望が強く、シラフの時はかなり知的な男。
そんなルドルフの人生は決してお気楽な王子様人生ではなかったようだ。
第一次大戦前の、民族主義と民主主義が高揚するヨーロッパ、そして隣の大国。
自由主義でハンガリー・シンパの母親の影響と、保守的でプロイセンに擦り寄る父皇帝への反感。
祖母に施されたスパルタ教育によって形成された暴力的で猜疑心の強い性格と、厳格な宮廷を嫌い旅から旅へうつつを抜かす美しい母親への思慕。
自由主義の皇太子として被抑圧民から期待を寄せれつつ、斜陽のハプスブルグ家の期待を背負うという運命。

もう狂気がすばらしかったです。
(写真は2枚とも彼のTwitterアカウントより。Photo by @andreuspenski)
そこにいるだけで圧倒的に美しいプリンシパルというのは他にも何人もいるが、たとえばわたしがロイヤル・バレエの男性ダンサーどなたかにインタビューする機会があるとすれば迷いなく彼を選ぶ。
彼には最も優れたバレエダンサーとしてのヴィルトゥオーソ以外に、知性と卓越したコミュニケーション能力がある...と思っている。
リストを編曲したという楽曲もすばらしかった。
本番が楽しみで夜も眠れない!
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