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Brugge Style
マイヤーリンク事件

ロイヤルバレエ、今年一番楽しみにしていたMayerling「マイヤーリンク」。
バレエの普遍的なテーマである「生と死の間にあるグレーゾーン」を語る、「ロイヤルバレエの『マイヤーリンク事件』」と呼びたいほどの出来だった。
なんせキャストからしてすごい。超豪華。
ルドルフ皇太子 エワード・ワトソン(Edward Watson)
男爵令嬢マリー・ヴェッツェラ ナタリア・オシポヴァ(Natalia Osipova)
元愛人ラリッシュ伯爵夫人マリー・ルイーゼ サラ・ラム(Sarah Lamb)...は怪我で代役Olivia Cowley
エリザベート王妃 ゼナイダ・ヤノウスキー(Zenaida Yanowsky)
一番のお気に入り高級娼婦ミッツィ・カスパル マリアネラ・ヌネツ(Marianela Nunez)
なんと贅沢な! 盆と正月がいっぺんに来たとはまさにこれでしょう。
皇太子ルドルフ役のエドワード・ワトソンはものすごくデカダンで、冒頭からもう心は病み、身体は蝕まれている感じ(身体が蝕まれている感じがしたのは、実際もう相当疲れているからかもしれない)。
それがまた憂いの王子様という雰囲気なのだが、そこからだんだんと廃人になっていくのですよ...
両親を含め、周りの宮廷人がどちらかというと割り切った人間関係を築いて上手くやっている(ように見える)にも関わらず、皇太子ルドルフにはそれが全く受け入れられない。
彼らそれぞれが築く周囲との人間関係は、それぞれの周囲の大国(プロイセンやフランス)との関係観にも反映されている。
で、結局ルドルフは複数の女性とデタラメな関係を持ちつつ、破滅に憧れることしかできないのである。彼は絶えず心中相手を探している。
ひとりでは死ぬこともできないのだ。
国王フランツ=ヨーゼフの誕生日に、彼の「友人」カタリーナ・シュラット(Katharina Schratt)によって歌が歌われ、その歌声の中でルドルフがはっきりと生のラインを超えたことが表現されている。
その頃には脳内の肉体的な苦痛(痛みなのか、幻覚なのか、その両方なのか)に耐えられなくなっている風でもある。
ついに彼は男爵令嬢マリー・ヴェッツェラという相手を得る。
彼女はこの劇中ではルドルフの死の願望に流されていく幼い少女ではなく、はっきり自分で情熱的に死を選ぶ女性、つまり死を選ぶことによってルドルフを救う女性として描かれている。
ナタリア・オシポヴァ演ずる無邪気な少女が「ひとりの人間の世界を救う」気迫はすごかったです。
(ジブリ作品ではないが、世界を救うのは少女なのだ。対してルドルフが最も入れ込んだ「女」ミッツィは、ルドルフの一緒に死んで欲しいという願いを一笑に付した)
バレエとしては、心中に向かってあまりにも振り付けがエスカレートして暴力的になっていき、良くも悪くもハラハラさせられるのだが、性愛と暴力、生と死というのは、このように表現可能であるという...
次にロイヤル・バレエが「マイヤーリンク」をやるのはいつになるだろうか。
皇太子ルドルフを演じられるダンサーが大勢いるとは思えないので。
(写真はROHのサイトより。Photographed by Alice Pennefather)
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