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龕(がん)のある壁





この記事の写真をご覧になった方から「暖炉右上の祠(ほこら)のようなものは何でしょう?」と、(だいぶ前)メールを頂いた。今日はそれについて書きたい。

「祠」好きなので。


ブルージュの家には5つの壁龕(へきがん)がある。ニッチ、エディキュラとも言う。
ペガニスティックで神秘的な感じがして、とても好きだった。

400年前にこの家が建てられた時、どんな部屋の壁にどんな位置関係で作られたのだろうと想像してみる。

時代背景から考えて、たぶん礼拝のための何かだろう。

手持ちのブルージュの建築本を見たところでは同じようなものは発見できず、いい加減なことは言いたくないが、やはり幕屋として聖像を置いて拝んだのではないか。

わたしも、知り合うよりずっと前に夫がアフリカで買ったという「神様」を置いた。
拝んだりはしないけど(笑)。


現代的な家には、こういう機能をになう小コーナーが失われてしまっていることが多いが、人間が生活する場所にはやはり異界へのコンセントのようなそんなコーナーがあった方がいいような気がする。

昔は日本のどんな家にも神棚とか仏壇とかがあったように。
ヨーロッパのどんな小さな村の中心に必ず教会があるように。
地元の神社があり、最も細い山道に祠やお地蔵さんがあるように。


今ではこれらの壁龕、小さいものはガレージの棚に隠れていたり、位置的にクロゼットを置くと隠れたりして決して機能的だとは言えない。しかしこの400年間、常に誰かが壁に残そうと気を配ったその気持ちがいじらしい。

異界への出入り口。




一番大きいのがこれ。
好き、大好き。

英国で家を建てる時は(<すっかりそのつもり)コンクリートうちっぱなしのモダンな箱に何百年も前のマテリアルを取り入れた家にしたいと思っていて(夢を見るのただなのだ)、壁には必ずこういうニッチを取り入れたい。

今、壁龕や祭壇のない家に住んでみて初めてその機能が理解できた。


次の記事は「古いマテリアル」についてだな。
ええ本、持ってるんです。
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