私の町 吉備津

藤井高尚って知っている??今、彼の著書[歌のしるべ]を紹介しております。

吉備津神社の正遷宮

2008-10-05 15:45:43 | Weblog
 昨夜、吉備津神社で平成のお屋根替え工事の竣功に伴う仮宮からの遷宮式が、午後8時から厳かに執り行われました。三日月もすでに山の端に沈み真っ暗闇の中で松明と薪の燃える明かりだけの中で行われます。
 空には星が一つ二つ輝いているだけです。真っ暗闇の祭典です。雅楽が奏でる中を、300人ぐらいの里人の見守る中を、帛、剣、槍などに守られるようにして静々と神は白い布で囲まれた中に入って神殿を目指して進んでいきます。
 約一時間の祭典です。なぜ。月明かりもんに何にもない真の闇の中で行われるのかは全くわかりません。神は昼の明るさが嫌いなのではあるまいと思ったりもするのですが。
 後から聞いたのですがこの行列の前後を大きな松明が神を先導しますが「この松明の重たいことといったらない」と、腕をさすりさすりしながら松明を持つ人が言っていました。
 それからしばらく神は拝殿を通り、神殿へと、正遷宮も滞りなく終わります。それを合図にしたかのようにトントントトン・トトトンと低くでも高くでもない雅楽特有の太鼓の音が新装なった真っ暗闇のお屋根に響いています。

 この式の最中は、それこそ「人語は滅す」で、一切ありません。神官が発する、「オウオウ」という唸り声と雅楽の音が辺りを静寂な無の世界に変えています。
 この「オウオウ」という唸り声は、果たして、なんでしょうか。
 これについては、既に、高尚先生の「松の落葉」で書いており重複しますが、再度書きます。 
 オウオウとは「於々」の字を当てるのだそうです。これを言う時は、そこらあたりにいる人に、これから尊い人がお通りします。皆さん音など立てないで静粛にお願いします、かしこまってください。そうです「かしこまりおれ」という命令的な絶対の呼びかけ言葉なのだそうです。
 とにかく、この「オウオウ」というのは、今、皆さんの前を神様がお通りです。「どうか、かしこまってください」と、注意するために発する言葉なのだそうです。だから、こ吉備津様の正遷宮の時も、神が神殿にお着きになるまで絶えず聞こえてくるのです。
 この声は高いだけではいけないのだそうです、細い声でなくてはならないようです。慎んでよく聞いてくださいねという心映え(神は深遠にして犯すべからずの神聖なものであるということを知らせる気持ち)ががこもっていなくてはならなのだそうです。
 なかなか意味深長な他では聞くことのできない神の御前の言葉なのす。
  
   おうおうと 細くたなびく 霞みより
              ほのかに声の 闇を伝わり
   闇中の 神の遷する 行列に
              於々と声 お屋根には秋