たそかれの散策

都会から田舎に移って4年経ち、周りの農地、寺、古代の雰囲気に興味を持つようになり、ランダムに書いてみようかと思う。

不正を生み出す構造 <偽りの危機対応 検証・商工中金不正・・>などを読みながら

2017-10-29 | 企業・事業・研究などの不正 適正な支援

171029 不正を生み出す構造 <偽りの危機対応 検証・商工中金不正・・>などを読みながら

 

紀伊地方も台風22号の影響で、昨日から各地で洪水警報や避難勧告・指示がでていて、大変です。当地はそこまでの事態になっていませんが、一部では同様の被害が発生していると思われます。部屋の中にいると、雨風が少し強くなったと感じる程度、意外と静寂な時間を過ごすことができます。

 

ところで、昨日のブログでタイトルだけ引用した<プライムニュース『日産・神鋼…不正続発 日の丸大企業に何が?』>ですが、ここで弁護士でもある野村氏が指摘していたことについて、まったく同感と思ったのです。野村氏は、繰り返される日本を代表する企業の不正について、過剰なコンプライアンスを問題にしていました。

 

たしかに不祥事は繰り返されてきましたが、その都度、コンプライアンスの追加規制といったものが全企業に課せられてきたように思います。そもそもコンプライアンスは企業それぞれが独自の企業文化を形成し、それに応じた対応をしてきたのですから、他の企業が不祥事を起こしたからといって新たなコンプライアンスの規制が、別の企業に当然に必要とされるわけでもないわけです。仮に一定の追加規制が必要としても、逆に既存の規制に代替する場合もあり、それはなくすか、減らすこともできるでしょう。そういうことにより、より的確で実効的なコンプライアンス制度が企業運営に地となり肉となるのでしょう。

 

ところが、紙ベースで、コンプライアンスの遵守事項を増やし、それをチェックするために、そのための書類作業だけが増えていく一方、その中身というかその本来の趣旨が意識化されてないで、紙ベースでチェックすれば終わりということで、コンプライアンスの仕事は増えるだけで、なすべきコンプライアンスの実態が伴わないといった問題が生じているのではないかと思うのです。

 

もう一人のコメンテーターとして登場した町田氏(経営コンサルタントでしたか?)も、大企業の製造部門では二層構造があり、現場サイドは自分たちで独自に安全性・効率化をチェックする一方、事務部門・経営部門は現場の実情を知らないで経営戦略やガバナンスなどを行ってきたため、両者に大きな齟齬が生じているといった趣旨の意見であったかと思います。ガバナンスの空洞化的な面を強調していたように思います。

 

とりわけ神鋼の問題は、製造部門の素材を扱っていますので、多方面に影響しますし、何よりも安全性に影響しますね。日産・スバル以上に深刻かもしれません。

 

でもこの問題を世界ではどうとらえているのかという点は、今後さらに調査が必要と思いますが、NHKのたしかNYで取材しているとても面白い方(名前失念)が地元で通りがかりの人に、この問題をどう考えるか聞くのですが、異口同音に一部の企業の一時的な問題で、日本企業への信頼は揺るぎないというのです。今後どうなるかはわかりませんが、長年培った日本企業の信頼性は、そう簡単には揺るがないかなとは思っています。しかし、きわめて残念な問題です。

 

いま毎日では稲盛和夫氏の自伝的な内容が連載されていますが、稲盛氏は必ず現場にでかけ、直に現場の人と話をして、問題に対応してきたように思います。そういうことは、当たり前だったのではないかと思うのですが、最近の不祥事を見ていると、どうも怪しい状態が少しずつ蔓延しているのかもしれません。

 

さて本日の話題に入ります。上記の不祥事以上に問題だと思うのです。なにがというと、商工中金という企業自体の問題は当然ですが、忘れてならないのはそれを監督すべき、また、監督できる金融庁・経産省がどうだったかという問題です。いや、この問題は国の何兆円規模の制度融資であり、国会で融資の必要性・環境なども含めて、適切に議論しておくべきことですし、その後の融資実態についても検証されるべきであったのに、なんともお粗末な状況ではないでしょうか。

 

まずは、毎日記事を見ましょう。<偽りの危機対応検証・商工中金不正/上 日常的に改ざん、捏造 組織ぐるみで営業攻勢>は、この問題を長く追求してきた小原擁、小川祐希両記者の2回連載記事の第一弾です。

 

問題が発覚して第三者委員会が急遽、一部の支店を調査した結果はその<調査報告書>として今年425日に公表され、さらに全店調査が必要となり、今回自主的に調査した結果が1025日付け<調査報告書>として公表され、2度目の行政処分を受けています。

 

これを受けたのが上記の記事で、<ほぼ全店にあたる97店、4802件の不正が発覚し、25日に2度目の行政処分を受けた商工中金。>というのです。

 

その不正の内容も耳を疑いたくなるというか、目から鱗ではなく、これが特別法(株式会社商工組合中央金庫法)に基づく特殊会社で、日本の政策金融機関というのですから、恥ずかしい話です。

 

その内容は< 現場では、書類の改ざん、捏造(ねつぞう)がほとんど「日常化」。上司は見て見ぬふりをし、危機対応融資の実績が少ない職員は叱責を受けた。危機対応融資以外でも、手間を省くために顧客の印鑑を偽造して押印したり、経済統計調査で調査票を捏造したりと、「通常では考えられない」(金融庁幹部)不正行為が続々と発覚した。>というのです。

 

具体的な例としては<東京都板橋区の中小企業幹部は「制度融資の手続きを任せたら、条件を満たすために自社の社員数が水増しされていた」と証言する。危機対応融資を使った営業は、実質無借金の優良企業にまで及び、融資後にクレジットカードの契約や機関誌の購入を迫る強引な営業もまん延していた。>ということまであがっています。

 

しかもガバナンスの面ではないに等しい状態ですね。<2014年12月に池袋支店で不正の疑惑が経営陣に報告されたにもかかわらず、監査部門が「問題ない」と結論付け、当時の杉山秀二社長らも追認したことだ。>というのですから。

 

<不正をした職員の動機>を表にしていますが、公共業務を行うとか、適正な事務を執行するといった心構えがいかに欠落しているかがわかります。

 

次にその第二弾は<生き残りかけ暴走 政界、融資枠増で「後押し」>で、私が上記の指摘をしたのは、この記事に依拠しています。

 

<金融危機が去り、東日本大震災関連の危機対応融資もピークを過ぎていた2012年度。商工中金は「円高の影響で業況が悪化した中小企業への支援が必要」と新たな名目を掲げ、1兆5000億円規模の危機対応融資の予算を国に要求した。それが認められると、翌13年度はさらに1兆6500億円に要求を増額。不正件数は予算とともに膨らみ、12~14年度に全体の8割弱が集中した。>

 

つまり危機対応融資の必要性を裏付ける実態がなくなっているのにも関わらず、仮装された数字操作で予算が生まれ、増大しているのです。これだけの予算を必要とされる社会福祉や少子化対策などに振り向けられていれば、「幼稚園落ちた 日本死ね」でしたかこんな劣悪な言葉が横行することもなく、山尾議員の鬼の首でも取ったのような追求も必要なかったかもしれません。

 

それは政府の問題がそこにあるのです。<商工中金の暴走を、政治も後押しした。「長引くデフレや円高が、社会の信頼基盤を根底から揺るがしている」。13年1月、安倍晋三首相は第2次安倍政権発足後初の所信表明演説で、デフレ脱却のための「機動的な財政政策」をぶち上げた。12、13年度の補正予算で盛り込んだ経済対策の目玉になったのが、「円高対策」や「デフレ脱却・原材料高騰対策」と銘打った危機対応融資の大幅増額だった。>

 

野党も適切な国会議論を怠り、<チェックすべき野党にも異論はなかった。>というのですから、与党だけの責任とはいえないでしょう。

 

ここからは少し余談に入りますが、選挙運動をみていて、いつも感じることの一つは、多くの候補者は名前を連呼して名前を覚えてもらったり、握手を求めて汗だくだくになるほど走り回ることが選挙運動の常道と思っているようですが、これにはがっかりします。そして旗印になる人の応援演説に頼り、自分の政策や信念が伝わってきません。

 

だれでしたかちょっと忘れましたが、そういう中に、自分はミニ集会を毎週のように重ねて、自分の意見と支持者の意見を交換したりその意見を聞いて政策に反映しているので、特別新たな選挙活動をしていませんといったような発言をされた方がいましたが、これこそ基本ではないでしょうか。こういう地に着いた民主主義の実現の生の世界で実施しようとしている候補者こそ、国会の場で的確に問題を取り上げ、数の力や一人の大きな声の力になびかない、民主主義の基礎作りができる人ではないかと思うのです。

 

最近の報道は(前から特に変わったとは思っていませんが)政党の動きばかりを追っているようで、政策論議がなかなか見えてきません。プライムニュースは民放ですが、割合、政策論議がなされているかと思っています。それでも全体として、見えない問題への追及がいまの報道大手にできているか、それがまた民主主義の基礎を危うくしている要素かもしれません。

 

いまトランプ大統領の動向は、かなりの割合でフォックステレビなど特定の情報源が中心に流れている印象を受けますが、その支持層から受けているようですね。大手マスコミ報道がトランプ支持層からは偏向に映るという実態があるのでしょう。わが国でもそういう事態にならないよう、NHKを含め報道各社には鋭く、かつ、公正さをもった視点で追求してもらいたいと思います。

 

私の情報源はNHKや毎日新聞を中心に、報道各社のさまざまな情報ですが、やはり一面的な見方かもしれません。なにせ情報源そのものを確認できていないわけですから。せいぜい調査報告書程度でしょうか。それも時間がなく読み込みだけの余裕がないので、力不足は感じていますが。

 

なにかあちこち飛んでしまいましたが、改めて10.25調査報告書と同時に発表された<業務の改善計画>は、ガバナンス・コンプライアンスなどの充実に向けた立派な項目立てをしているものの、有効に働くのか、今後の検証こそ肝要ではないかと思うのです。屋上屋を架す改善という名の計画かどうかは、実際にその計画がどう働いているかにかかっていると思います。いろいろコンプライアンスやガバナンスの規定を加えたり、新組織を作ったり、制度化したり、役員を変えても、魂が入っていないと、張り子の虎になりかねません。

 

いまわが国の企業は、商工中金ほどひどくなくても、そういう業績という数字だけを追う状況に陥っている危険を感じています。それに対応するのに、紙にいくら厳格な管理システムを書いてみても、それを実際に職場で勤務の中で言動に表す職員・社員が変わらないと、絵に描いた餅になり得ます。チェックの判子は押されても、形だけのものになり、こういう江戸時代のある種の悪弊みたいなものがはびこっていないか注視する必要があるように思うのです。

 

ただ、このような調査報告書による原因追及、それに改善計画は、それ自体、日本の企業統治がまだ立ち直りできることを示すものかもしれません。ここに書かれた内容自体、ざっとしか見ていませんが、おおむね妥当なものと思いますし、期待したいと思っています。

 

他方で、行政および政治の分野での改善にも、目を向けて欲しいと思います。

 

今日はこの辺でおしまい。また明日