たそかれの散策

都会から田舎に移って4年経ち、周りの農地、寺、古代の雰囲気に興味を持つようになり、ランダムに書いてみようかと思う。

美徳と競争 <アクセス もぐもぐタイムのイチゴは「盗用」!? >などを読みながら

2019-04-09 | 農林業のあり方

190409 美徳と競争 <アクセス もぐもぐタイムのイチゴは「盗用」!? >などを読みながら

 

消費者というものは安くて美味しいものを求めるものですね。農産物の場合品種改良の競争が国内はもとより世界中で行われているのでしょう。

 

私のようにほどほどでよいと思って、適当な果物や野菜を食べる人ばかりではないのですね。知りませんでしたが、<昨年2月の平昌(ピョンチャン)冬季五輪では、カーリング女子チームが栄養補給する「もぐもぐタイム」で食べた日本由来の韓国産イチゴ>が、「そうだね」のように人気沸騰したのでしょうか?いずれも私の関知しないところでした。前者は流行語になったのでしたか、後者は盗用問題で日韓軋轢に新たな火種になっているのでしょうか。

 

今朝の毎日記事<アクセスもぐもぐタイムのイチゴは「盗用」!? 「日本産」守れ 政府、海外無断栽培対策に本腰>は、後者の問題状況を取り扱っています。

 

ただ、イチゴの盗用問題と、ミカン登録出願受理による影響問題が並列的に書かれていましたので、イチゴ問題に対して、ミカン登録により問題が解決できるのかと一瞬思ってしまいましたが、ユポフ条約の解説部分を読むとそうではなさそうですね。

 

品種もいろいろな名前があってややこしやといった感じです。ともかく新品種のミカンについては、開発者の農研機構が国内では農水省の登録を受け、国外では韓国で登録出願するなど、韓国をはじめ諸外国の勝手な盗用を防ぐ手立てを取ってきたようです。

 

その結果、韓国農家は大打撃を受けることになったようです。

<韓国紙・中央日報電子版(日本語版)は昨年末、済州島の農家が日本で開発されたミカンの新品種「あすみ」と「みはや」を出荷できなくなったと報じた。みはやは2~3年前から人気の品種で、2品種は農家208軒が栽培し、出荷予定量は920トンに上った。>

 

この点、国内対応について次のような記事となっています。

<糖度が極めて高いあすみと、果汁が多いみはやは2014年、農林水産省から種苗法に基づく登録を受け、知的財産権の一種「育成者権」を取得した。開発期間10~20年の努力の結晶だ。国内では登録後30年間、種や苗を独占的に販売したり、他人に栽培を認める対価に利用料を徴収したりすることができる。>

 

他方で、海外については<開発した国立研究開発法人「農業・食品産業技術総合研究機構」(農研機構)>が次のように対応したようです。

<韓国で品種保護を行う国立種子院に登録出願し、昨年1月に審査開始が公表されたためだ。審査が始まると正式登録の前でも権利が保護され、無断で栽培や販売ができなくなる。>その結果、<韓国の農家が育てた日本産新品種のミカンが出荷できなくなっている。>わけです。また、<農研機構は韓国のほか中国やカナダでも登録を出願した。>

 

これに対して、イチゴは盗用対策が条約の限界もあって、適切な対応策が採れなかったようです。

<日韓など75カ国・地域は「ユポフ条約(植物の新品種の保護に関する国際条約)」で新品種保護のルールを定めているものの、当時の韓国ではイチゴは対象外。>となっています。

 

この点、農水省の<UPOV条約について>では、わが国は全植物を対象として、育成権者の及ぶ範囲も種苗、収穫物、特定の加工品とすべてにわたっていますが、締約国の多くは限定しているようです。韓国がイチゴを現在対象にしているかどうかははっきりしませんが、もし条約対象に含めているのであれば、イチゴの品種を登録出願しないのはどうしてかをも記事としてはフォローしてもらいたいですね。

 

ともかく韓国では(に限るとは思いませんが)、開発者が汗水たらして開発した農産物の品種を勝手に流用して大量に輸出して儲けているようです。

<韓国は農産品の輸出に力を入れており、特にアジア諸国へのイチゴの輸出が盛んだ。年間輸出量は4000トン程度と日本の889トン(17年)を大幅に上回るが、「章姫(あきひめ)」など日本産イチゴを勝手に交配した品種などが全栽培面積の9割以上を占めるという。>

 

<章姫は開発者の個人農家が1990年代、依頼されて韓国の生産者らに当人限りの利用を許可したが、現地で第三者に流出した。>上記の条約の対象外ということで、<開発者は泣き寝入りせざるを得なかった。農水省はイチゴの品種流出で年間44億円の輸出機会が奪われたと推計している。>というのです。

 

政府も手をこまねいてきたわけではないようです。

<政府は16年度から新品種の海外での登録出願の支援に乗り出した。代理人を通じた出願の費用は100万~200万円に上ることもあり、半額から全額を補助している。>

 

結局は、生産者の意識の問題もこういった盗用を許す要因かもしれません。

この点、<京理科大専門職大学院の生越(おごせ)由美教授(知的財産政策)>は、稲の大陸からの伝来から地域共同体での共有という美徳意識までとりあげています。そうかもしれません、農産物の品種開発者には知的財産権的な権利意識が強くなかった、みんなのためにという意識が強い方が少なくなかったのでしょうかね。

 

とはいえ、生越氏が指摘するように、<「改良品種を共有すれば地域が活性化して開発者の利益にもなった。一方、グローバル化した現代では海外での増殖を許し、競合相手を増やしてしまった」>わけですので、島国世界での論理はなかなかうまくいかないようです。

 

農産物の付加価値を輸出しようというのですから、その権利保護措置をしっかり講じていかないと、イチゴの二の舞になりますね。

 

なんてことはおそらく輸出を試みようとしている農家はすでに分かっていると思いますが、その方策を海外の個別事情に合わせて実効的に行ってきたかを改めて検証するいい契機かもしれません。

 

今日はこの辺でおしまい。また明日。


選択と挑戦 <貿易自由化に挑む農水産業の現場>と<調達電力、CO2ゼロ条件>を読みながら

2019-04-08 | 農林業のあり方

190408 選択と挑戦 <貿易自由化に挑む農水産業の現場>と<調達電力、CO2ゼロ条件>を読みながら

 

そろそろ花言葉も底を突く感じになりました。むろんまだ始まったばかりですから、客観的には無尽蔵といもいえる花であり、花言葉ですから、そんなはずはありません。でも気持ちは一週間で一杯一杯でしょうか。花自体は1年でも何年でも種類はわが国はもちろん世界中から届けられているので大丈夫ですね。でも写真撮影自体、後で見るとがっかりするので、そろそろ終わりにしようかと思っています。

 

ともかく今日は春リンドウです。<竜胆(リンドウ)の花言葉>によりますと、<・悲しんでいるあなたを愛する・正義・誠実>と不思議な組み合わせです。

 

だいたい、この花言葉はリンドウで秋の花ですから、春リンドウとは違いますね。まあ、私のブログでは同じようなものとご勘弁ください。この最初の<悲しんでいるあなたを愛する>が言い得て妙です。といいたいところですが、誰が愛するということでしょう。そんな愚問を投げかけるくらい、花言葉に関心がないことの証でしょうか。でも、悲しみ人がいて、そんな心持ちにある人を愛するというのは、心に響くものがあります。

 

喜怒哀楽という人間の基本的な感情の中で、悲しんでいる様子へのシンパシーはたいていの人が感じる心持ちでしょうか。当たり前であっても、その悲しみを真に受け止めることができるかとなると別でしょうか。慈愛とか根本的なことかもしれません。そんなことをふと思ってしまいながら、改めて春リンドウを見ても、野に咲いている姿でないためか、今ひとつわかりません。いや、人間の勝手な解釈だといわれるとそうかなと思ってしまいます。

 

さて、先週金曜日の毎日記事2本を取り上げたいと思います。一つは<LookWESTけいざい貿易自由化に挑む農水産業の現場…輸出先で和牛調理の講習会、香り特長のユズを欧州売り込み>です。

 

今朝の日経ニュースでしたか、アメリカの農家が反トランプの気持ちを露わにしていました。多くの農家が廃業に追い込まれているようです。アメリカファーストと聞こえはいいのですが、欧州や中国との貿易戦争などで、農産物輸出が激減しているようです。大規模農業だからうまくいくとは限らないわけですね。規模の経済も世界的な貿易取引条件を前提にして成り立つものでしょう。

 

翻ってわが国の農業は、機械化・集約化といってもたかがしれています。規模の経済・効率化という点ではとても米豪などにはかないませんね。TPPなどで貿易自由化で他国から競争力のある農産物が大量に入ってくると、恐れおののいていたのでは、前途は真っ暗ですね。

 

わが国の農業における特殊性は個性として生かしてもらいたいと思うのです。小規模零細錯圃であったり中山間地という地形であったり、不利な条件も生かす意欲と気概があれば、成り立ちうるのではと思うのです。

 

その点、この記事では<挑む農業>がいろいろと取り上げられています。驚きました。13年から18年にかけて、2倍から10倍に輸出額を伸ばしてきた農産物が結構あるのですね。

 

リンゴ、日本酒、緑茶はいずれも2倍以上、桃、米、牛肉は34倍ですか。イチゴは10倍ですね。安価な農産物が大量に輸入されると、農家は廃業に追い込まれるといった不安ばかりが渦巻いていますが(その不安に対処する政策が必要です)、それに立ち向かっている農家も各地で生まれていますね。

 

たとえば和牛の調理法は生産・流通そして消費の一連のシステムで成立していますね。では海外では通用しないか、それにチャレンジしています。

<国内指折りのブランド牛、近江牛を生産・販売する澤井牧場(滋賀県竜王町、澤井隆男社長)が昨年12月にベトナムで開いた、和牛の加工・調理法の講習会。日本人の講師が肉をさばいたり、ローストビーフやすき焼きなどを作ってみせたりすると、参加した現地の精肉業者らは目を見張った。>

 

たしかに欧米で食べる肉は分厚く大きいですが、フランス料理は別にして、たいていは味付けなり肉の食感なり今ひとつのように感じます(安いのを食べているからでしょうかね)。

 

こういった挑戦がさまざまな農産物で試される時代でしょうか。

 

その他ユズ、搾乳などの工夫が紹介されています。

 

ところで、こういったチャレンジは農業の世界にとどまらず、一次産業全体で対応することが期待されているでしょう。

 

そのようなチャレンジ精神も大事ですが、他方で、全産業が取り組む必要がある温暖化対策については、農業分野、少し遅れていないか心配です。

 

同じ日の毎日記事<トレンド調達電力、CO2ゼロ条件 オムロン・パナ、投資家にアピール>では、<企業に再生可能エネルギー由来の電力を調達する動きが広がる中、オムロンは調達先を決める入札で「二酸化炭素(CO2)排出量ゼロ」を条件にする取り組みを始めた。>と、オムロンやソニー、花王、パナソニックの取り組みが紹介されています。

 

企業はさまざまな選択をしながら企業活動を行っていますが、その選択の中で、常にCO2ゼロ基準を意識することが求められているのが昨今の実情ではないでしょうか(パリ協定離脱した米国でも実際の企業活動ではその傾向は主流ではないでしょうか)。

 

<環境(environment)、社会(social)、企業統治(governance)を重視する投資手法>は、企業の将来を考えたとき、一筋の方向性となっているように思うのです。その点、農業分野で挑戦を試みる取り組みをされている人たち、企業も、その意識なくして効率化や高品質化を目指しても世界市場では戦えない恐れがありますね。むろん意識していると思いますが、農水省も制度的対応が求められているように思うのです。

 

そんなことを思いながら、春リンドウの花を見ながら、関係のないこの記事を思い出したのです。

 

地球という生命体が温暖化で悲しんでいる、その地球を愛するのであれば、真剣に取り組んでもらいたいと、取って付けたような切り口となりました。

 

今日はこれにておしまい。また明日。


農地バンクの今後 <農地バンク見直し法案を閣議決定>などを読みながら

2019-02-12 | 農林業のあり方

190212 農地バンクの今後 <農地バンク見直し法案を閣議決定>などを読みながら

 

農地に囲まれた中で生活し仕事をしていると、農業をやっていなくても農風景ともいうべきものが自然に受け入れられるのです。とても都会のビルの中に舞い戻る気分にはなれません。そういう農風景も、都会の急激で異常な変貌とは比べものになりませんが、少しずつ変わりつつあることも時折感じます。耕作放棄地的なところが太陽光発電施設になっていたり、露地栽培の畑がハウス栽培になったり、いろいろ変化が見られます。

 

今日の仕事も6時になってなんとか一段落を終え、報道を見て今日の話題をと考えたとき、ふいに目に飛び込んだのがその農地をめぐる毎日記事<農地バンク見直し法案を閣議決定 地域協議促進し集約加速化目指す>でした。

 

記事では<政府は12日、農地の賃貸を仲介する農地中間管理機構(農地バンク)事業を見直す関連法案を閣議決定した。農地の集約を加速するため、耕作者の年齢層や後継者の確保状況を地図上で把握できるようにして地域の協議を促す。今国会での成立を目指す。>というのですが、以前から議論のあった農地バンクどうなるのかと興味を呼んだのです。

 

耕作放棄地対策や新規担い手対策として期待された農地バンク、それなりに活動実績があるものの、この2つの問題解消にはほど遠い状況かもしれません。

 

どうなるのでしょう。

記事は<農協などが担っている農地の集約事業をバンクに統合一体化することや、農地の借り手の利用状況に関する報告を廃止するなど手続きの簡素化も柱。>担ぎ手が多く力が分散し、他方で農地バンクの知名度もあがらなかったかもしれませんね。手続も参入障壁になったのでしょうか。

 

また農水省が提唱した「人・農地プラン」はその訴える内容はなかなか響きのよいものでしたが、私の狭い知見ではあまり知られてなかったように思っていました。その点、この見直しでは<地域ごとに話し合って地区の農業の将来像を示す「人・農地プラン」を作成するのに当たり、市町村が耕作者の年齢別構成などの情報提供に努めることを明確化する。>とのこと。

 

農業予算は、自民党の票田?でしょうからシーリングがあると言っても、巨額ですね。当然、この新しい制度でもアメとして用意しています。<関連の予算措置では、一定基準以上の集約に取り組む地域に交付する「地域集積協力金」の対象を、実効性のあるプランを策定している地域とする方針。集約が進みにくい中山間地域は交付要件を緩くする。>

 

政府が目指す農地利用の効率化は、大規模農家による農地の集約化ということのようです。記事では<政府は農地利用の効率化を目的に、全耕作地の中で大規模農家などの担い手が利用する面積の比率を2023年度までに80%とする目標を掲げるが、17年度で55.2%にとどまっている。(共同)>とのこと。共同通信からの配信のようで、簡潔ですが、これだけ読んでも、ぴんときません。といいながら全文引用してしまいましたが。

 

JA.com2018.11.19記事<農地バンク運営見直しへ 農水省>では、少し詳細に内容に触れていますので、これを引用しながら少し考えてみようかと思います。30分ほど検索しましたが他に内容に言及したものをみつけられませんでした。今日は軽く取り上げるのでこれで十分かと思います。

 

まず農地バンクの役割について<農地バンクは、地域内に分散・錯綜している農地や耕作放棄地を借り受け、▽必要に応じて基盤整備を行い、▽借り受けている農地を管理し、▽まとまったかたちで担い手に転貸する、という仕組み。さらに再配分することで利用しやすく再配分して集約することもめざした。>

 

大いに期待された農地バンクですが、実際は<事業を開始した26年度以降、担い手への農地集積は増えて29年度は4.1ha増加したが、そのうち農地バンク事業によるものは1.7haにとどまっている。>と集積自体がそれほどでもない中、農地バンクの功績はその3分の1にとどまっているわけですから、期待外れとまでいかなくても、十分に機能しているとは言えないでしょう。

 

しかもこれまでの集積化は割合平坦で元々農地規模が大きい東日本で進んできましたが、<中山間地域を多く抱える近畿、中四国や、大都市圏を抱える関東、東海は進んでいない。中山間地域率が64.9%と全国一の中四国の集積率は27.4%となっている。>私は近畿のほんの一部を見聞していますが、農地規模もそうですが農民意識も、とても簡単にいきそうには思えません。

 

何が課題かについて<今後さらに集積を進めるにあたって農水省は「農地の集積・集約化の前提となる地域内での話し合いが低調」であることや農地バンク事業について現場から事務手続きの簡素を求める声が多いことや、農地バンクが地域とのつながりが弱いことなどを課題として挙げた。>そのとおりでしょうね。水利組合の席などだと結構活発に話が飛び交いますが、あくまで共通の利用に関わることにとどまり、自己の農地となると、農家はそれぞれ一国の城主並でしょうか。

 

ではどのような見直しなのでしょう。<見直し方向では農地バンクに一本化させるのではなく、市町村や、JAが行っている農地集積円滑化事業などと「一体化」させる見直しを行うこととした。>一本化と一体化とでどう違うのか、これだけではぴんときません。

 

<その前提となるのが地域での話し合い。>というのは誰も異論はないように思います。具体的な策はどうやら<「人・農地プラン」を見直す。>ことのようです。

 

このプランの方針はすてきに聞こえますが実効性のあるものにしようということのようです。

<とくに地域内の農地について耕作者の年代情報や、後継者の確保状況などを、個人名の記載までは求めないが、地域の現況を地図に落とし込んで把握し、それに基づき中心的経営体への農地の集約化の将来方針をプランに記載することを必須化する方針だ。>

 

これはだれが担うのでしょうか。「耕作者」を厳密に考えるとき、農地法外の使用貸借・賃貸借や請負など、多様な耕作実態をどのように反映させるのでしょうね。水利組合で継続的に活動していても、この実態を把握できる人はなかなかいないのではないかと懸念します。水利組合自体が緩やかな組織になりつつあり、昔のような堅固な組織は東日本では健在かもしれませんが、集約化の遅れている?地方では形骸化が著しいところが少なくないと思うのです。

 

その意味で、昔なら庄屋さんといった人が音頭をとれたのかもしれませんが、現在は農業委員もそういった期待はなかなかされていないのではと思うのです。

農水省は<そのためにコーディネーターを話し合いに積極的に参加させ、農業委員や農地利用最適化推進委員はその役割を法令で明確に定める。農地バンクの仕組みも簡素化し、農地の出し手から農地バンク、農地バンクから受け手への権利設定を一括して行うことができる仕組みを設ける。>と担い手役を強化するようです。

 

このコーディネーターという専門家?がどのような役割を期待しているのか、制度化まで考えているのかわかりませんが、農家の一体化が薄まっている中、果たして外部の第三者がうまくリードできるか、期待しつつ、注視したいと思います。農業委員なども権限を明確化するのはいいのですが、候補者段階から適任者を検討しておかないと、重荷になるかもしれません。農業委員などの選出方法にも見直しがあってもよいのではと思うのです。借り手に新規就農者などを期待するのであれば、より広い視野で考えておかないと、旧来の慣習を破ることは容易でないように思うのです。

 

なお、農水省の<農地中間管理機構の制度や実績等>はわかりやすく現行制度を説明していますので、関心のある方はどうぞ。

 

ちょうどいい時間となりました。今日はこの辺でおしまい。また明日。

 

 

 


森林経営管理法(その9) <新制度に対する批判について>

2018-12-26 | 農林業のあり方

181226 森林経営管理法(その9) <新制度に対する批判について>

 

NY株式市場はまた下がりましたね。ところが東京市場は下げ圧力に抗して少し反発したようです。でも昨夜BS日経などではこれまで結構景気のいい話をしていた専門家もいつの間にか2万円台への反転は来春以降になったようです。そんなに簡単に底をつくのかと思うのですが、まあ株式や金融商品の話は話半分に聞いていてよいと私なんぞは思っています。

 

ゴーン氏の特別背任の件も少し具体的な情報が明らかになってきたようです。やはり「付け替え」時点で既遂という判断を特捜はしているようです。だいたい膨大な損失含みの権利なんて、価値があるはずがないでしょう。

 

そういえば何年か前、高野山金剛峯寺は金融商品取引で●億円(額を失念)の損失出したということで、専門家調査とか第三者印快調さと銘打って調査させた結果があいまいだったため、当時に主務総長が退陣しました。

 

それが法人なりの経営管理でしょうから、代表者のそれを引き取るなんてことはありえない話でしょう。取締役会ではゴーン氏は利害相反するので、決議に参加できないはずですが、新聞報道では決議内容をごまかしていたようです。なんともすごい御仁ですね。こういう人が世界に冠たるグループ企業を牛耳っていたのですから、会社制度とか会計制度は資本の論理に勝てない、いや「カリスマ」リーダーに勝てないのでしょう。

 

また余分の話をしてしまいました。今日は森林計管理法を再び取り上げようかと思ったのです。というのはあの連載ブログを終えた後久しぶりに林野庁のホームページを見たら、1221日付けで、最新版に代わっていました。おそらく政省令ができたのでしょうか、それを肉付けした手引きや解説が合計で200頁くらいの分量でアップされています。

 

といいながら、今日はこの内容を読んでいませんので、来年でもこれは取り上げたいと思います。たまたま新制度に反対の立場で書かれた意見を2件発見しましたので、こちらの批判的な視点に立って、新制度を見てみようかと思います。

 

まず基本的な論陣を張る方を取り上げます。農文協論説委員会の<森林経営管理法・森林環境税で日本の森林を破壊するな>というものです。

 

農文協の多数の書籍は素人にはわかりやすく、時折読んできました。さてこの反対論は、いくつかの論点を提供しています。まず、私も取り上げた森林盗伐事件の経緯を引用しながら、現行森林法の届出制の運用に問題があるとするかのようで、乱伐と自然災害もとりあげ、その趣旨があまり判然としません。

 

次には<原木の安価な大量安定供給が目的!?>と新制度を正面から批判しています。基本的には<泉英二・愛媛大学農学部名誉教授(森林学/森林・林業政策)>の見解を引用して、<川下の大型化した木材産業およびバイオマス発電施設への原木の安価な大量安定供給が目的>という見方で疑問を呈しているようです。他方で沖林野庁長官の発言や日刊工業新聞記事を引用して、51年生以上の人工林について小規模所有者に放置されているため、新制度の目的はその主伐であると言うとらえ方をしているように見えます。だからどうなんだということがはっきりしません。

 

さらなる問題点として、これまた泉氏の<「違憲」の疑い>を引用するものです。<制度の形式的な手続を引用しつつ、<非常に強権的な内容で、憲法が保障する財産権を侵害している可能性が高い>と断定していますが、法律論としてはどうかと思います。

 

農文協は自らも、所有者不明森林についての公告による同意制度や、「災害等防止措置命令」の制度を取り上げ、<他の法律には見られない強大な権限を地方自治体に持たせる法案であり、違憲の可能性も高いのだ。>と強調しています。

 

いずれもたしかに形式的な手続を見れば、その所有者の意思や財産権を侵害するおそれを懸念するのはごもっともということができ、制度運用に当たっては慎重にも慎重を期す必要があるという点では私も同感です。しかし、わが国の森林や、所有者意識の実態はどうでしょう、私が身近で体験し、感じるのは、このまま放置してよいかという点です。

 

それは宅地で言えば空き家・空き地問題、農地で言えば耕作放棄地問題、林地でいえば荒廃した森林ではないでしょうか。地先漁場も同じような問題を抱えていると思います。

 

安易に財産権侵害論を強調すると、ますます放置され荒廃する森林が増える一方になり、災害時はもちろん、地球環境問題にも対処できないことを見過ごしてしまうことになりかねません。私はそちらの方が心配です。30年くらい前にそういう意識をもったあと、紆余曲折しながら、少しずつ森林問題に直接取り組む段階になりました。

 

最期の論点は大事です。新制度がもっぱら対象としている、小規模森林所有者のことです。

 

農文協が指摘しているように、<小規模森林所有者は「意欲がない」のか>と新制度が断定しているのであれば、それは明らかに間違いでしょう。引用している<「宮崎県盗伐被害者の会」の人びと>、<NPO法人自伐型林業推進協会(自伐協)>など、各地で自主独立でがんばっている人たちが少なくないことは確かです。

 

実際、私も何年か前(10年前ではないと思います)、自伐協の代表、中嶋健造氏の話を伺い、感銘しました。やればできる、しかし創意工夫がしっかりしているなと思いました。この点、新制度も、そういったやる気のある、森林所有者が経営管理しているのを邪魔しようなんて考えておらず、そういう意思のある方がいない森林を対象としているのですから、批判は的外れになるでしょう。むろん現実の運用がこういった自主的な森林経営管理を行っている森をも対象にするようなことがあってはいけないわけで、そこは制度的には担保されていると考えます。

 

他方で、新制度が担い手としている<「意欲と能力のある林業経営者」>の選定が適切に行われなければ、<盗伐・誤伐の疑いをかけられている二つの経営体が含まれているという>悪貨が良貨を駆逐することを許すことになりかねませんね。それこそ、ここはこれからの制度運用のあり方が問われるものでしょう。

 

また、<「小さい林業」の「意欲と能力」こそ評価せよ>というのはごもっともな意見だと思います。新制度にこういったまっとうな林業を排斥するような要素があればそれこそ、批判されてよいと思います。

 

<昨年末、この「森林経営管理法案」とセットになる「税制改革大綱」が閣議決定された。>ことを踏まえて、後者の場合、すでに各地の自治体で導入されている「森づくり県民税」などにより定着している小さい林業を、主伐と経営規模の拡大により、壊してしまうのではないかといった批判です。

 

このような懸念は、たしかに考慮されるべきと思います。ただ、県単位での税制では限界がありますね。国民の支持が受けられていないともいえます。いま森林の荒廃でその機能が阻害されつつあることを、国民全員で共有する必要があるという新制度の背景は評価されてよいと思います。といっても主伐中心となったり、不相当に皆伐面積が拡大したりしたのでは、それこそ森林破壊となりかねないのですから、計画づくり、実施・監督においてそれこそ市町村の役割が期待されるものと思います。それこそこのような手続のオープン化、透明化をより進めてもらいたいものです。

 

少し冗長に長くなりすぎ、次の中嶋氏の意見にたどり着けませんでした。これは別の機会に。

 

今日はこの程度でおしまい。また明日。


農業の担い手 <発言 行政含め新規就農対策を=飯田政明>などを読みながら

2018-12-20 | 農林業のあり方

181220 農業の担い手 <発言 行政含め新規就農対策を=飯田政明>などを読みながら

 

年の瀬はのんびりと過ごそうと思っていたら、ちょっとしたもめ事がめずらしく次々と持ち込まれ、意外と忙しくしています。既存のケースがほぼ落ち着いてきて、読書の冬を堪能しようと思っていたのですが、最近は月20冊は遠くに及ばず、10冊も満たない状況になってきました。実質5冊程度でしょうか。

 

今日も新件があり、といっても法テラス案件が多いので、その手続に時間が結構とられています。ブログの方もなかなかゆっくりと考える(いつものことですが)余裕がなく、今日も毎日記事<検証告白、ゴーン前会長逮捕の糸口(その1) 外国人幹部「耐えられぬ」>と昨年から続く検査不正の問題とを整理したいと思いつつ、また別の機会にすることにしました。ただ、一言触れておこうかと思います。

 

毎日朝刊の上記記事は「検証」と銘打って、<側近告白 アリの一穴>と逮捕の背景・実態に迫るような見出しで、期待したのですが、ちょっと肩すかし気味でした。おそらく取材チームも逮捕後必死に内部情報を得ようと努力し、とりわけ告発者の発言やその経緯などの情報を得ようとこれまで取材を続けてきて、ようやくここまでたどり着いたのでしょう。ただ、情報源らしいものがよくわからず、告発者の告発年月やその契機となった監査役らの日産極秘調査チームによる調査経過も時期・内容が判然としていないため、特捜の捜査経緯との関係も当然ながら闇の中ですね。おおよその感触は得られましたが、一次資料がほとんど明らかにされていないので、まあ今のところはこの程度にとどまるのでしょうね。

 

さて本題の農業問題に移ります。

 

同じ毎日の本日付記事<発言行政含め新規就農対策を=飯田政明・有限会社佐束ファーム社長>は、農業を担う人がいなくなりつつある農村社会を憂い、提言するものですが、自ら非農業の世界から農業の世界に入り農業法人を立ち上げ、耕作農地を拡大してきた実績をもつ方ですので、経験に裏打ちされた話として、貴重かなと思うのです。

 

飯田氏はシステムエンジニアの仕事に40年近く従事し、<約10年前、静岡県掛川市の農業法人が米価下落のため存続の危機に陥った。農地38ヘクタールの全面耕作放棄となる事態を阻止すべく、農業素人の仲間6人で法人を引き継いだ。3人が社員、3人がアルバイトだった。今は10年計画で4集落の農地計90ヘクタールを次の世代に引き継ぐべく、若者2人も新たに仲間に加え、四苦八苦して農地の集積、基盤整備、設備投資に取り組んでいる。>という農業新参者の一人ですね。

 

掛川といえば、以前も少し紹介した画期的な住民参加型のまちづくり条例の先駆けを作ったまちですね。30年くらい前でしょうか。

 

そこの農地の現状を語っています。<これから高齢者が次々と終農していくのに、その分をカバーする若者の就農は見込めない。「生業」とする真の農業、会社員とも比較可能で「食べていける農業」へと改革し、若者を呼び込まなければならない。集積すれば、基盤整備すれば、法人化すれば、それで解決すると思っている人がほとんどだが、法人でさえ高齢者ばかりになりつつある。>しかも<このままでは10年後の掛川市の放棄率は5割程度と予測される。>この割合はちょっと驚きですが、実際、農業の担い手、とくに若い人が増える状況がみられないように私も感じています。

 

これは掛川市だけでなく、全国たいていの市町村で起こっている状況ではないでしょうか。

 

そこで飯田氏は提言するのです。まず、地域で現状に対する共通認識をもとうと。それはこれまでの農業者と行政だけといった狭い当事者だけではダメだというのです。

 

つまり、<「地域ごとの10年後の農地放棄予想」を作り、農業者だけでなく市民、行政が共通認識に立つ。そのためには、地域農業の視点を持つ新しい部門、例えば「地域農業係」を自治体とJAにそれぞれ設け、「10年後」について大規模なヒアリングを行う。>

 

たしかに農業委員会も制度上、市民にも門戸を開くようになりましたが、はたして現実はどの程度市民が委員になれたのでしょうね。農業者以外、農地に関与すべきでないといった農地制度の仕組みがなかなかこういった共通認識を育む土壌をつくりにくくしているように思います。

 

この点、飯田氏は<ここで共通認識に立てなかったら解決策を考えても意味がない。>と断言しますが、私も基本、賛同します。が、ベルリンの壁みたいなものがしっかり仕切りしていて、容易に壊せないでしょう。

 

さて飯田氏は次に、というか目的は<新規就農で耕作放棄地の拡大を防ぐ解決策を探る。>というものです。

 

この目的というか目標を達成するには、<「他産業並みの待遇」「売り上げ2年分相当の設備投資」「地域のリーダー育成」など>の課題を挙げています。この<解決策として、企業の参入や第三セクターの導入もあり得るだろう。県の指導のもと、市とJAの「地域農業係」が中心となって大胆に、現実的に取り組んでほしい。>と、若者個人の新規参入を難しさを、企業や三セクで対応することを提案しているようです。

 

そしてこれまでの国の施策は十分でなく、<若者の新規就農までは全く届いていない。「これからの担い手」だけを「担い手」と再定義し、かつ「地域農業」という視点を入れて新施策を展開してもらいたいものだ。>というのです。

 

むろん、日本各地では相当程度若者の新規参入がみられる地域もあり、そういう地域ではさまざまな情報媒体を通じて、数珠つなぎのように若者がどんどんというと大げさですが、しっかりした足取りで増えてきているようです。今日もNHKの「おはよう日本」で紹介されていた村(名前を確認しませんでした)では、当地では「井手掃除」という水路に堆積した汚泥や葉っぱ、水路沿いの雑草や枝条を刈払いなど、共同作業に多くの新参若者夫婦が参加していました。地域でも工夫があれば、一人の若者が次の若者を呼び寄せることができますね。

 

それこそ地域に住む人たちの意識改革が必要なのでしょう。

 

それはそれとして、では国はどうなのか、ちょっと農水省の予算要求当たりを見てみました。

 

平成31年度農林水産予算概算要求の概要について>でおおよそがわかります。が、項目だけ見ても多すぎて、実のところ、よく分かりませんというのが正解でしょうか。

 

次に<平成31年度農林水産関係予算概算要求の重点事項>を見ると、国が何に重点を置いているか、予算額の多寡でおおよそ想定できます。

 

担い手の部分をあえて取り上げると

<1 担い手への農地集積・集約化等による構造改革の推進

農地中間管理機構による農地集積・集約化と農業委員会による農地利用の最適化

  農地中間管理機構等による担い手への農地集積・集約化の加速化

  農地の大区画化等の推進<公共>

  農地耕作条件改善事業

  樹園地の集積・集約化の促進

  農業委員会の活動による農地利用最適化の推進

  機構集積支援事業

 

多様な担い手の育成・確保と農業の「働き方改革」の推進

  農業経営法人化支援総合事業

  農業人材力強化総合支援事業

  農業支援外国人適正受入サポート事業

  女性が変える未来の農業推進事業

  農業協同組合の監査コストの合理化の促進

 

とそれでも、盛りだくさんで、頑張っている印象です。でも、予算額を見ると、<1 担い手への農地集積・集約化等による構造改革の推進>では、1500億円の②が中心で、次に一桁少ない①、③と続きます。では、もう一つの<⑵ 多様な担い手の育成・確保と農業の「働き方改革」の推進>はというと、②が200億円台で、残りは比較にならない小規模となっています。

 

でも、<2 水田フル活用と経営所得安定対策の着実な実施>や<3 強い農業のための基盤づくりと「スマート農業」の実現>となると桁違いの規模で、こちらが中心というのが明らかです。直接支払交付金など既存農業者に支給・提供する仕組みが中心かなと思ってしまいます。そこに若者の育成、他方で崩れつつある農村社会の立て直しに対応する措置がどの程度含まれているのか、ぴんときません。

 

ある相談事例で、補助事業など行政が支給するものの、内容が市民・国民レベルで透明化されておらず(法制度上そのようにはなっていない)、不明朗な支出がある疑いを抱かざるを得ない事案がありました。予算執行の透明化をさらに進めて、市民に開かれた農政になることを願うのです。それは飯田氏が指摘したように、市民も参加した形で、地域の農業のあり方を考え、農業の将来を託す若い人たちに新規参入を促す仕組み作りを地域で考えていくことが必要ではないかと思うのです。

 

思いつきの議論におつきあいいただきありがとうございました。今日はこれにておしまい。また明日。