たそかれの散策

都会から田舎に移って4年経ち、周りの農地、寺、古代の雰囲気に興味を持つようになり、ランダムに書いてみようかと思う。

障がい者の選挙権 <投票代筆者、選びたい 自筆困難、係員に限定・・>などを読んで

2017-10-20 | 差別<人種、障がい、性差、格差など

171020 障がい者の選挙権 <投票代筆者、選びたい 自筆困難、係員に限定・・>などを読んで

 

当地に来て初めて成年後見事件を担当することになり、昨日はご本人とお会いし、今日は金融機関で成年後見の手続きをしました。この方は年金と生活保護でやりくりされてきた高齢者で、家庭の事情もあって第三者後見として私が担うことになりました。

 

おそらく潜在的にはこの方のような成年後見が必要とされる場合は少なくないのではと思っています。世の中好景気といいますが、低年金・生活保護でなんとかやっていて、ちょっと病気で倒れて障がいが残り判断能力に支障をきたすようになっても、成年後見の手続きをとらないまま過ごされている人はどのくらいいるでしょう。

 

ただこの方は、発語や言語理解に障害があり、発語不能といった診断書がでていましたが、お会いすると、かなり回復していて、わずかながら発語でき、私の話す内容もおおよそ理解できているようでした。むろん成年後見といってもそれは無理ですが。

 

この方の様子を見ていて、急に10数年前に担当した方のことを思い出しました。保佐程度と思って申立てたら、成年後見と審判され、そのときはあまり問題とならなかったのですが、いざ選挙公示がはじまり自分に選挙権がないことを知ると、大変な衝撃を受け、悲しんだのですね。私は申立人の代理をして、私の知り合いに後見人になってもらったのですが、選挙権がなくなるといったことは人権の重要な部分を否定されることで、人格をも否定されたような受け止め方をされたようで、対応に困ったそうです。当時、裁判までは起こさなかったのですが、被後見人にとっては重大なことだった言うのを感じさせられました。

 

その後ご承知のように、成年被後見人の選挙権を回復する訴訟が各地で提起され、東京地裁がこれを認める画期的な判決を出しました<勝訴! 成年被後見人の選挙権回復の裁判>。控訴されましたが、東京高裁で勝訴的和解が成立し、日弁連会長も談話を発表しました<東京高等裁判所における成年被後見人に選挙権を認める和解成立を受けての会長談話>。実際、各地で提起された訴訟で問題がクローズアップされ、総務省も公職選挙法等を改正して、差別的扱いを解消したのですから<成年被後見人の方々の選挙権について>、私たちは障害のある方の気持ちをしっかり受け止めて対応することがまだまだあるということを示した一例でしょう。

 

さて、あさってが衆議院選挙の投票日ですね。昨夕の毎日記事は上記のようなことを思い出させてくれました。<衆院選2017投票代筆者、選びたい 自筆困難、係員に限定 「他人に知られたくない」訴訟例も>です。

 

原田記者の記事によると<障害などで投票用紙の自筆が困難な人が利用する「代筆投票」を巡り、制度改正を求める声が広がっている。公職選挙法では不正防止のため、代筆を投票所の係員に限定しているが、「他人に投票先を知られたくない」「ヘルパーや家族にも認めてほしい」などの声が根強い。訴訟に発展したケースもあり、障害者らは「民意を幅広く反映させられるように、柔軟な仕組みにしてほしい」と訴えている。>とのこと。

 

たしかに投票の秘密は重要な人権の一つです。投票所の係員が代筆するのは不正防止の目的というのですが、係員がその秘密を知ることはいいのでしょうか。また、地方や小さな集落等では、係員は大抵地元の人です。秘密保持の義務はあるものの、担保されるか不安になるのは当然かもしれません。小さな集落等では情報がいつのまにか筒抜けになることもあります。そうでなくとも、そういう不安を抱えて自由な意思で投票できないと、専制政治下と似たような状態と言われても仕方がないかもしれません。

 

投票の秘密は選挙権のコアの一つといってよいでしょう。自筆の困難な人は、高齢化が進み疾病等で増えていくのではないかと思います。私もいつそうなるかわかりません。

 

記事で取り上げられた<先天性の脳性まひで文字が書きづらい中田泰博さん(45)>は<以前、ヘルパーに代筆投票を頼んでいた。しかし、2013年の公選法改正で代筆は投票所の係員に限定。他の有権者もいる場で見ず知らずの係員に投票先を伝えることは、憲法が定める「投票の秘密」に反すると中田さんは主張し、今年3月、希望する補助者に代筆を頼めるよう国に求める訴訟を大阪地裁に起こした。>

 

<福祉事業所を運営するNPO法人の事務局長で、脳性まひの頼尊(よりたか)恒信さん(38)=滋賀県長浜市=は、今の制度に疑問を持つ。投票所の係員の大半は自治体の職員で、地方では顔見知りの住民が多い。頼尊さんは「田舎で誰に投票したか知れ渡ると人間関係に影響する。障害者が自ら1票を投じられる仕組みを作ってほしい」と期待する。>

 

障がい者の意識に組み込まれている心の壁を取り除く努力も必要ではないかと思うのです。それは係員が代筆する場合でもより配慮をすることも一つでしょうし、あるいは係員に限定せず、ヘルパーなどの選択権を障がい者に付与することも一つかもしれません。

 

またその他の代替手段をより使いやすいように、障がい者に提供することも検討されてよいのでしょう。<障害者や高齢者らを対象にした制度は代筆投票以外に、▽視覚障害者が点字で候補者名などを記入する「点字投票」▽歩行が困難で投票所に行けない高齢者らが在宅で用紙に記入し、郵送する「郵便投票」--があり、対象拡大を求める声も上がっている。>

 

投票日は台風の影響が大きそうですね。障がい者に配慮した投票環境を整備してもらいたいと思うのです。

 

なお、成年後見制度については、昨年10月いくつかの法改正が施行されており、<成年後見の事務の円滑化を図るための民法等の改正法施行>は、昔ながらの後見人実務とは少し変わっていますので、注意しておく必要があると、自分のメモとして残しておきます。

 

 

今日はこの辺でおしまい。