たそかれの散策

都会から田舎に移って4年経ち、周りの農地、寺、古代の雰囲気に興味を持つようになり、ランダムに書いてみようかと思う。

トラック運転手の今 <はたらく トラック運転手 超激務>や各種法制度などを読みながら

2018-03-28 | 働くことを見直す

180328 トラック運転手の今 <はたらく トラック運転手 超激務>や各種法制度などを読みながら

 

わが家の庭先に見える桜並木はあっという間に満開に近い状態になっています。分譲地の斜面上にあり、花見の席としてもよいのんびりとしていいと思うのですが、酔狂と思われるのか誰もいません。

 

どうも日本人の多くは人が行くところを好むようです。人をかき分けて進むとか、花見の席を競い合うとか、行列が長いほどよいと考える人が多いようですね。私は天邪鬼なのでしょうか、ターナーの絵画を見たいとは思っても、大勢の中ではさすがに興ざめします。このブログもずっと少人数が訪問されているようで、マイナーな状態がちょうどよいようです。ま、こんな勝手なことを書いて文章だけだと、読むだけで気力がいるでしょうね。

 

それはともかく、昔、『浮浪雲』(はぐれぐも)という漫画を長く読んでいたことがありました。主人公は、女性のような仕草、着物を着て、日々気ままに暮らして過ごしているのです。まさにはぐれ雲です。ところがその彼が一言声をかければ、東海道中の雲助がはせ参じるというのです。その彼は女性のようになよなよしつつ、必要なときは見事な太刀さばきでどんな使い手にも負けない腕を持っているという人物設定です。

 

で、これがトラック運転手とどう関係するのか、それは私の勝手な当時の思い込みみたいなものです。たしか同じ頃、菅原文太主演のトラック野郎といった映画がはやっていたと思います。菅原文太自体は割合好きな俳優ですが、この映画は見たことがありません。ただ、トラック運転手というものになにか魅力を感じていたのでしょうか。

 

他方で、一匹狼みたいな、あるいは勝手気ままに仕事や遊びをしているような一方的な印象もありました。それがもし力を集結すると多大な力になるのではないかと勝手な推測をしたのです。たとえばはぐれ雲の主人公が一声かければ(おそらくはある種の正義のために)、雲助が集団行動を行うように。

 

アメリカの場合、全米カヌー連盟が河川環境保護のために多大な力をもっていますね。それと同じような力をもちうるのでは、なんて夢想したのでしょうか。あるいは全米ライフル連盟でしたか、この絶大な力みたいなものを(この方は時代錯誤の銃規制反対を一貫しているので、こうなってほしくない他山の石ですが)発揮すると面白いなと思ったりするのです。

 

なぜトラック運転手にそのような期待をしてしまうのでしょうかね。トラックが後方につけたとき、自分が下手な運転をしても、彼らの運転なら追突の危険はないといった安心感を抱いたこともあります。高速道路を走っていたりすると、たいていのトラック運転手はトラック自体の危険性を熟知しているせいか、また、運転経験を重ねているせいか、あるいは、個人で事業を責任を持ってやっているせいか、周囲の自動車への配慮をするようにみえることが多いように見えるのです。

 

たしかアメリカでトラック運転手が車両を重ねて集団デモをしたことがあったように記憶していますが、もしトラック運転手が集結して、一定の主張を唱えれば、それが正当なものであれば結構意義のあることではないかと思ったりするのです。

 

さて前置きがどこまで続くかわからなくなりましたが、要はどうもトラック運転手によっては、とても危険な状態にあり、周囲で走行していても安心できないおそれがあるのかなと毎日記事を見て、改めて思ったのです。そして、その実態と背景を少し考えてみようかと思ったのです。

 

毎日記事<はたらくトラック運転手 超激務>では、<長時間労働が常態化しているトラック運転手。2016年度に労災認定された脳・心臓疾患の件数は、運送業が全産業で最も多い。>という過酷な状況にあることが指摘されています。

 

その実態のいくつかがドライバーの言葉で語られています。

<「睡眠時間は1日4~5時間。体がきついと感じるのはしょっちゅう」と話すのは40代の男性運転手。運転歴は約20年、10トンの大型車を運転する。「高速道路料金は会社であらかじめ決められ、それを超えた分は自腹になる。だから下道(したみち)を通る。休憩時間や睡眠時間を削り、無理をしてしまう」と打ち明ける。>

 

長時間、眠る時間もなく走り続ける実態が見えてきました。

<「夜中、パーキングエリアはいっぱい。到着時間に間に合わせるためにも、眠くても走るしかない」と話すのは40代の男性。休日は週に1日しかない。前日に岡山から積んだ荷物を関東で降ろし、新しい荷物を翌日の夜までに大阪へ届ける途中だ。「給料も日給部分があり、休めない」と言う。>

 

低賃金、長時間労働の過酷条件も数字で示されています。

<トラック運転手らでつくる産業別労働組合「運輸労連」(組合員10万4029人)によると男性トラック運転手の平均年収は423万6200円と、全産業平均より2割以上も少ない。一方で年間労働時間は、17%長い2544時間だった。>

 

規制緩和の結果競争が激化していることと、業界の超下請け構造も主要な原因といえるでしょう。

<こうした長時間、低賃金の背景を「営業区域の廃止、運賃などの規制緩和だ」と運輸労連の世永正伸中央副執行委員長は分析する。参入する業者が増え、過当競争が起き、また「荷主」の力関係が強いため運転手に負担がかかる。さらに業界の複雑な下請け構造が、労務管理を難しくさせている。>

 

標準運賃制や労働時間規制といった、最低限の規制の必要もいわれていますが、なかなかハードルが高そうです。

<トラック運転手の労働時間規制は現在、厚生労働省が定めた「改善基準告示」のみだ=表<上>。政府が今国会に提出を目指す、時間外労働の上限規制(罰則付き)を盛り込んだ改正労働基準法では、施行から5年間は人手不足に配慮し、適用除外となっている。>

 

記事では規制緩和として

<トラック運送事業法令の規制緩和結果

 事業の参入 免許    →許可

 運賃・料金 許可    →事後届け出

 事業の範囲 営業区域  →廃止(全国)

 事業の規模 最低車両台数→全国一律5両>

 

改善基準告示として

<「改善基準告示」の主な内容(トラック運転手)

 <拘束時間>1日13時間が基本、最大16時間

       1年間の合計が3516時間以内

 <休息時間>継続8時間以上または分割なら

       合計10時間以上

 <運転時間>2日を平均して1日9時間以内

 <休日労働>2週間に1回が限度

 

それぞれ規制緩和と、そのことによる悪影響の緩和策が講じられていますが、有効に働いていないのが実態でしょう。

 

上記の内容について、より詳細に厚労省では<トラック運転者の労働時間等の改善基準のポイント>で、わかりやすく解説しています。

 

しかし、このようなトラック運転手の追い詰められた労働状態は、単に労働時間の改善策では対応できないでしょう。取引条件の改善を持効性を持って図る必要があるでしょう。

 

この点国交省も一定の配慮をしてきたようです。

トラック運送事業者のための価格交渉ノウハウ・ハンドブック>を読むと、いかに下請法・独禁法に違反する取引条件が荷主側から強要されているか、わかります。

たとえば上記ガイドラインで問題として取り上げている次のような問いに当てはまる例は結構あると思われます。

1. 著しく低い運賃・料金を一方的に設定されていませんか?

2. 附帯業務の料金を運送委託者に負担してもらえていますか?

3. 有料道路の利用料金を負担させられていませんか?

4. 契約の内容を書面化できていますか?

5 運送委託者の都合で生じた追加運賃・料金を運送委託者に負担してもらえていますか?

6 燃料費・人件費の上昇分を適切に運賃・料金に転嫁できていますか?

7 労働時聞を守れない運送を強要されていませんか?

8 荷待ち時間への対策を講じてもらえていますか?

 

あの乱暴に見えるトラック運転手たちの多くは、厳しい低価格や過酷な取引条件のため、必死で一分一秒を争って先に進もうとしているのかもしれません。

 

より明確な方針としては<トラック運送業における下請・荷主適正取引推進ガイドライン>が参考になります。

 

少し疲れてきましたので、今日はこの辺でおしまい。また明日。


働き方の多様性と公正さ(2) <オリンピック選手と公正・自由と?)>

2018-02-18 | 働くことを見直す

180218 働き方の多様性と公正さ(2) <オリンピック選手と公正・自由と?)>

 

昨日に続いて、フリーランスの自由な活動、成長と公正なあり方を検討してみたいと思います。

 

ところでフリーランスといっても、いろいろな形態があって、それぞれの形態によって問題点が異なるでしょうし、今回の検討会報告書では一般的なアプローチにとどまっていますが、いずれは個別的な検討がなされる旨も指摘があったと思います。

 

ところで、いま冬季オリンピックが毎日の話題をさらっていますし、多くの人に感動を与えていることも確かですね。で、そのオリンピック選手、彼ら彼女らも立派なフリーランスですね。

 

ではウィキペディアで、確認してみましょうか。

フリーランス(英: freelance)は、特定の企業や団体、組織に専従しておらず、自らの才覚や技能を提供することにより社会的に独立した個人事業主もしくは個人企業法人である。>

 

日本では自由業、自由職業、フリーランスと言われているようですが、例として次のような形態があがっています。

 

<国税局では自由職業の例として、医師、弁護士、作家、俳優、職業野球選手、外交員、大工を挙げている[1]。>ま、国税局の取り扱いですから、これを前提に、独禁法上の適用対象として検討するのは問題があるでしょう。ただ、医師(開業医)も弁護士もフリーランスといっても明白な間違いとはいえないでしょう。

 

実際、弁護士報酬について、昔は日弁連で統一基準をつくって、各弁護士がおおむねその報酬基準にしたがって算定していましたが、公取委から公正取引を害するおそれを指摘され、それ以降は各弁護士が個々に報酬基準を作っています。といっても多くの弁護士は昔の日弁連基準にほぼ依拠したものでやっていると思いますが。

 

開業医の場合、以前各地の医師会で参入障壁を事実上設けていて、地域内に一定以上の医師が増えることや近隣に同種科のある病院・診療所があると事実上の距離制限を設けていたことがあったとうかがったことがありますが、さて現在はどうなんでしょう。

 

さてフリーランスの種類に戻ります。ウィキペディアでは以下の通りです。

              報道・放送・マスメディア分野については

フリーアナウンサー

フリー俳優・声優

フリーナレーター

フリーライター

フリージャーナリスト

評論家

    芸術分野について

俳優、ミュージシャンなど事務所と契約、もしくはフリーランスの芸能人

作家、翻訳家、ライターなどの著述業

画家、イラストレーター、アニメーター、漫画家、書家、写真家など美術関係

デザイナー

キュレーター

通訳

著作権エージェント

    技術職(技術者)・研究職

大工、電気工事士など一人親方の技術者

レコーディング・エンジニア

プログラマ、SEなどITエンジニア

在野の研究者(大学や研究機関の正職員ではない者)

    スポーツ

プロ野球選手

JRA所属騎手

プロレスラー

    農林水産業

      他の農家や漁師から労働を請け負う農家・漁師

      林業

      猟師

その他は省略

 

ここで、少しスポーツ分野について取りあげてみたいと思います。プロ選手といえば野球選手がわが国では代表格ですが、サッカー、バスケット、アメフト、など多いですね。ではアマチュア選手はというと、これまた一定の場合はフリーランスですね。アマからプロに変わる例も少なくないですが、オリンピック選手は結構いますね。

 

で、<人材と競争政策に関する検討会報告書>(検討会報告書と略称します)で取りあげているオリンピック選手についてのEUでの違反例がありますので、具体的なイメージを理解するのに役立つのではと思い引用します。

 

昨年128日のEU委員会のプレスリリースです。

「欧州委員会は,国際スケート連盟(ISU)が、ISUが承認していないスピードスケート競技会に参加した選手に対して厳格なペナルティー(無期限追放を上限とする)を課すことは競争法(欧州機能条約101)違反と決定し,ISUに対し. 90日以内に,違法行為を取りやめることを命じた。

欧州委員会は,問題となったISUの規則について,正当な目的(1SU自身の経済的利益はこの目的から明示的に除外)のみに基づき,また,その目的の達成に必要かつ適切(inherent and proportionate) な内容となるよう, 廃止又は修正することにより命令を純行可能としている。」

 

国際スケート連盟ISUの規則が定めた専属性の規定について、ISUの目的に必要かつ適切なものといえない不当なものとして、選手に参加する競技会の制限を定めて、それに違反した場合の制裁措置をとることを競争法違反としたのですね。

 

いま高木選手、小平選手などの活躍で話題のスピードスケートの世界ですが、この国際スケート連盟(ISU)というのは名称からすると、各国の国内スケート連盟が所属しているのではないかと思いますが、そうなると日本人選手もその規則の適用を受けているのでしょうか。

わが国ではこれまで独禁法をアマチュア選手に対する関係で適用した事例はないのではないかと思うのですが、今後は可能性がでてきたのではないかと思うのです。

 

これは要するに、「専属義務」という拘束条件が公正といえるかの問題だと思われます。

 

検討か報告書では、各種の問題となる行為の一つとして「専属義務」を取りあげています。上記にあげたフリーランスでも歌手、俳優、スポーツ選手などが時折移籍をめぐって問題となりニュースになることがありましたが、その専属義務です。

 

報告書では、専属義務を直ちに禁止というのではなく、次のような3つ観点から独禁法上問題になることを指摘しています。

 

自由競争減殺の観点からは.発注者が役務提供者に対して.発注者が自らへの役務提供に専念させる目的や.役務提供者の育成に要する費用を回収する目的のために合理的に必要な(手段の相当性が認められる)範囲で専属義務を課すことは.直ちに独占禁止法上問題となるものではない。)」

この点は、歌手などの育成に相当額の費用を投じる現在のプロダクションが行う専属契約自体を直ちに違反とみているのではないことを示しています。ただ、その目的との間で合理的な必要な範囲という限度を設けて釘を刺している点です。当然の内容ですが、実効性があがるものかは、これから具体的なガイドラインがどのようになるかにかかっていると思います。

 

次に

競争手段の不公正さの観点からは.発注者が役務鑓供者に対して義務の内容について実際と異なる説明をする.又はあらかじめ十分に明らかにしないまま役務提供者が専属義務を受け入れている場合には.独占禁止法上問題となり得る。」

これまた契約法の原理に即した内容で、消費者法の世界ではすでに確立している(実際は守られていないため、詐欺商法が横行するわけですが)内容です。フリーランスの中でもスポーツ選手や歌手などとりわけ高い能力を要求される職業の人は、その能力向上に邁進して契約条件なんか気にしない人が以前はほとんどだったのではないでしょうか。そのため問題が生じやすかったと思いますが、最近は、こういった契約意識が高まってきていますので、改善されつつあるとはいえ、契約できるかという場合には弱い立場であることが普通ですから、このような説明義務の明確化は必須でしょう。

 

最後に

優越的地位の濫用の観点からは、優越的地位にある発注者が課す専属義務が不当に不利益を与えるものである場合には.独占禁止法上問題となり得る。」

この優越的地位とはとか、不当な不利益とかは、今後にまわしたいと思います。

 

だいたい一時間となりましたので、今日はこれでおしまい。また明日。


働き方の多様性と公正さ <フリーランス 契約保護、公取委が報告書>などを読んで

2018-02-17 | 働くことを見直す

180217 働き方の多様性と公正さ <フリーランス 契約保護、公取委が報告書>などを読んで

 

羽生結弦選手がフリーでも順調に演技して金メダル、宇野選手も頑張って銀メダルと、すごいことになりました。ただ、一度も見ていませんがチャン選手がフリーで大変な高得点を上げていますね。SPでの大ミスがなかったら、結果は微妙だったかもしれません。勝負の綾でしょうか。

 

私のような下手なスケーティングでも、霞ヶ関に通っている頃は、富国生命ビルの公開空地に冬だけ、ちっちゃなスケートリンクが作られ、私は気分転換を兼ねてよくスケートをしていました。私の場合は転ばない程度のもので、カーブを切るときに、小平選手の何百分の一(この割合こそいい加減ですが)のろのろスピードですが、腰を入れる瞬間がなかなかいいものでして、スーツ姿で子どもに交じってやっていましたね。バックスケーティングくらいはできますが、回転となると全然ダメで、フィギアの魅力は見るだけです。それでも見事な演技には感動させられます。

 

こういったアスリート選手も最近はプロ化が進んでいますが、人に感動を与えるには有能な指導者・スタッフによる長期のトレーニングなど、費用・時間・人材発掘指導と、大変でしょうね。

 

働き方改革は多様な人材登用の機会を提供する動きでしょうけど、これまでの昔で言えば自由業(弁護士もそう言われていますが、実際どうでしょう)、最近ではフリーランスという用語で多様な働き方を含んでいるようですね。自分の体力・知能といったある種労働力的なものを提供するわけですが、これまで労働市場の一角的な扱いで、その取引・契約については公正取引等を定める独禁法の適用はないとの扱いがなされてきたかと思います。

 

今朝の毎日記事<フリーランス契約保護、公取委が報告書 慣行見直し迫る>と題して、従来のこの分野での契約・取引に改善を図るべく、公取委が動き出したことを報じています。

 

<IT技術者やデザイナーなど個人で「フリーランス」として働く人の契約の在り方を話し合う公正取引委員会の有識者会議は15日、発注企業による不当な要求から個人を保護することを柱とする報告書を公表した。>

 

<働き方の多様化で、フリーランスは会社員などの副業も含めて1000万人超に上ると推計される。>フリーランスの定義が確立していないこともありますが、1000万人となると、一定の基準で類型化して、それに応じたガイドラインが必要かもしれませんね。

 

ではどのような見直しかについて、

<無理な条件を押しつけた場合は独占禁止法違反に当たるとする初の判断を示し、契約慣行の見直しを迫る。

 報告書は、報酬の支払い遅れや一方的な減額に加え、発注した製品の受け取り拒否など不正な慣行を問題視した。>

 

また新聞記事を賑わす次の業界も問題になっています。

<スポーツや芸能界では、チーム同士が選手の引き抜きをしないとの申し合わせや芸能事務所が契約改定の協議に応じないことは違反となり得る。ただ芸能事務所やチーム側には育成にかかった投資を回収する必要もあり、酌むべき事情がある場合には総合的に考慮するとした。>

 

ま、いえば不当な取引制限という通常の取引ではやってはいけないことをこれまでは「人材獲得市場」は独禁法の対象外といった扱いで見過ごされてきたわけですが、資本主義経済において公正な競争を確保する必要性の観点からは別異にあつかう合理的根拠がないはずです。その意味で今回、きちんと公正さを保つよう公取委が手綱を引き締めてこの分野に進出するということでしょうか。敵対的買収を受ける場合の白馬の騎士のような活躍が期待されているかもしれませんが、まだこの報告書がパブリックコメントを経て、今後の制度設計が見えてくるという段階です。

 

とはいえ、この検討会のヒアリング過程で、従来の慣行が問題視されてきたようで、すでに業界では見直しの動きが始まっているようです。

<日本音楽事業者協会は15日、報告書を受け、多くの芸能事務所が採用している「統一契約書」を見直すと発表した。>

 

ところで、この検討会報告書<人材と競争政策に関する検討会報告書>は、重大な内容を含んでいますので、<公取委のウェブサイト>で、報告書全文をはじめ関係資料が入手できますし、報告書については意見募集をしていますので、関係者には具体的な対応が求められるでしょう。

 

とはいいながら、この報告書、全文で46pとさほどの量ではないのですが、この分野の実態に通暁していないと、文言が割合抽象的に扱われていて、なにが公正取引と言えないかの具体的な基準が一義的に明白かと言われると、どうかな、と思ってしまいます。ま、報告書の中では、一定程度具体例を挙げていますので、これは参考になるかと思っています。

 

で、私も勉強をかねて、何回かに分けて、この報告書について、また関係資料も海外の実情を含めかなりありますので、それについても、勝手な検討を加えて、私見を述べてみようかと思います。

 

とくに単独行為として、秘密保持契約・競業避止義務、専属義務、役務提供に伴う成果物の利用等の制限などは、注目したい内容ですが、人材獲得市場における広範囲の行為が対象となりますので、いくつか的を絞りながら、取りあげていきたいと思います。

 

委員はいずれも独禁法、労働法、産業組織論などの伝統的な分野や労働経済学や労働市場といった急展開している分野からも、それぞれ専門的知見のある方ばかりなので、その意見は勉強なると思っています。ま、半分認知症対策でもありますが。

 

ともかく明日から少しずつ連載していこうかと今日のところは思っています。今までもそう言いながらすぐに座礁してしまって後が続かないことが多かったので、そのくらいの気象予測であれば当たるも八卦当たらぬも八卦というところでしょうか。

 

今日はそろそろ時間となりました。また明日。


働き方と健康 <健康管理 従業員の健康、企業が支援>などを読みながら

2018-01-07 | 働くことを見直す

180107 働き方と健康 <健康管理 従業員の健康、企業が支援>などを読みながら

 

私は藤沢周平の小説を読んだことがないのですが、それを映画化されたものをいくつか見てきました。その中でも「たそがれ清兵衛」が秀逸と勝手に思っています。その作品評をするつもりではないのですが、配役がそれぞれなんともいえない役どころを演じていて見事なハーモニーを感じさせてくれます。

 

で、その「たそがれ」どきになると、彼の仕事場、勘定所ともいうべき場所では仕事を終えて早々と帰宅につく様子が描写されています。ついでにいうと、わたしのブログ名もこの「たそがれ」にヒントを得て、すこし古典を探ってつけたような気がします。

 

江戸時代、武士は戦争をしないですむ、一見長閑な250年を送ることができたのかもしれません。働くと言っても、短い時間だけお勤めをすればよかったのでしょう。武士の間の上限関係は厳しかったでしょうけど、それを頭の片隅においてやり過ごせば、案外のんびりした生活ではなかったのではと思ったりします。ある意味では自分を通すこともできたのかなと希望的観測で映画を見たりします。

 

私の場合、片岡知恵蔵とか大友柳太朗、さらには大川橋蔵、中村錦之助とかの時代劇で育ったものですから、時代考証など関係なく、面白いチャンバラ劇ばかりの感覚でした。その点、藤沢周平映画を含め最近の時代劇というか江戸時代の映画化されたものが相当程度時代考証がしっかりしてきたのかなと思いつつも、実際のところはよくわかりません。

 

他方で、農民・百姓を題材にした映画は残念ながら見た記憶はありません。おそらくは百姓一揆を指導したり不当な年貢に異議を述べる越訴をした義人とされたような人物を主人公にしたものがあるかもしれませんが、百姓の生活を描いたものは見たことがありません。

 

あまり映画の題材にならないのでしょうか。私がいま関心を寄せている大畑才蔵も、紀ノ川沿いに小田井(昨年世界かんがい遺産登録を果たした)などの大灌漑用水事業を成し遂げたという農業土木技術者として知られていますし、顕彰されています。

 

しかし、彼のもう一つの生き方、農民としての懸命に働く、それも自ら進んで働き方を工夫し、働くことにこそ「安楽」を見いだすような生き方はあまり評価の対象とされていないようです。私はこのブログでもなんどかこの生き方の気高さこそ、高く評価されて良いと思い、その内容の一部を取り上げてきました。その生き方に健康の秘訣があり、心の豊かさの根源があるのではと思うからです。単なる土木技術の先進性にのみ彼の人間としての価値をとどめることでは正鵠を期すことができないように思うのです。

 

彼が自ら進んで懸命に生き、各地を高齢になるまで歩き回り、また、自分の田畑耕作を続けながら、当時としては異例ともいうべき74歳まで現役で藩の仕事を続け、1642年から1720年まで78歳の長寿の人生を歩んでいます。

 

ところで、わが国はいま働き方改革を政府が標榜して、その働き方の改善を目指していますが、どうでしょう、なにか大きく変わってきたでしょうか。

 

長時間労働、過労死、サービス残業、パワハラ、ブラック企業という言葉がいまなお話題になっています。それでもブラック企業のレッテルを貼られることをおそれて企業もいろいろ配慮しつつあることは確かでしょうか。

 

他方で、生活習慣病に、うつ病を含む精神疾患をかかえる患者は増えているように思います。町中にはアメリカ並みとまではいかなくても、心療内科のクリニックも増えているように思いますし、気軽に診察を受ける患者も増えているように思います。私の依頼人にもそういうクリニックに通う方も時折います。

 

江戸時代を封建社会と呼んで、厳しい身分制により自由のない束縛された社会と規定する紋切り型の見方は次第に変わりつつあるように思いますが、現代の労働環境の中に、自由と健康を謳歌している人がはたしてどのくらいいるのでしょうか。

 

いやいや昨年来の株高、好景気で、財布のひもは堅さもとれ、気持ちもるんるん気分、健康で快適な、そのうえ贅沢な暮らしを謳歌しているという人もいるでしょうけど、大半は厳しい現実を耐えているのではないでしょうか。

 

さて前置きはその程度にして、見出しの記事に移ります。毎日朝刊は<健康管理従業員の健康、企業が支援 生活習慣病予防、能率も向上 体力測定会や食事管理>と、ブラック企業といったマイナス評価を受けないような守りの姿勢ではなく、「健康経営」のブランドを標榜しようと攻めの姿勢に転じた企業が紹介されています。

 

<ロート製薬では、片足で立ったままどれだけ前に手を伸ばせるか測り、バランス感覚を確かめるといった4種類のユニークな測定方法を2017年に始めた。>たしかにこういった運動方法はユニークですね。私もついでに挑戦しましたが、短時間でふらつきました。これは体幹が強化されるだろうとか、バランス感覚がよくなるだろうという気分にさせてくれます。それだけでなく遊び感覚があって面白いです。私も体力回復維持に明日から続けてみようかと思うくらいです。

 

最近はやりのアプリを使うやり方もあります。<大日本住友製薬も17年に半年間、スマートフォンのアプリを利用して健康を管理する手法を試験的に導入し、200人が参加した。手首に装着する器具で心拍数など体調のデータを確認するほか、毎回の食事を撮影して送信すると専門家の助言が届く。>

 

あけすけに健康ブランドとして株価に影響させようと目論むのは経産省と東証です。<経済産業省と東京証券取引所は「健康経営銘柄」を共同で選んで15年から公表しており、17年は24社を選んだ。ゴム製品メーカーのバンドー化学(神戸市)もその一社で、各事業所でウオーキングやヨガなど体を動かすイベントを企画し、保健師が取り組み状況を確かめている。>

 

社長自体の意識変革で<「『ホクタテに行けば健康になる』と思ってもらえる職場作りを進めたい」と話している。>というのは、望ましい方向に少しずつ向かっているのかなとの印象を受けます。

 

賃金アップなど経済的側面だけに注目するようでは、これからの企業は成り立たないと多くの企業も姿勢を変えてもらいたいものです。社員一人一人が健康になれば、自然に企業の評価も高まり、取引も拡大する可能性が高いでしょう。

 

それは地方自治体もそうです。観光客を増やそうと躍起になっていますが、そこで生活する人が健康で安らかに暮らしていれば、自然に来たくなるのではないかと思うのです。風光明媚な場所の存在も重要ですが、人が健康で楽しく暮らし、優しくもてなしてくれるそういう役所職員であり、住民であれば、自然と人が集まってくるのではないかと思うのです。

 

健康への取り組みも、アプリや機器に頼りがちですが、もう少し体系的な取り組みを考える時期にきているように思うのです。たとえば、いくら企業の中で運動プログラムを改善しても、日々の通勤地獄を解消させる仕事のあり方を変えるなどの工夫をしないのでは、画竜点睛を欠くどころではないように思います。

 

そして健康の問題は、体力的な問題にとどまりません。心の健康を回復する取り組みをおざなりにしていたのでは、問題の本質を見誤ります。むろんこういった運動療法を早期に展開している企業では精神疾患も少ないかもしれません。しかし現代のさまざまな軋轢を生む社会構造では、この心の健康をいかに保つか、あるいは回復するかといった取り組みをする企業により注視して、そういう方向性を目指してもらいたいものです。

 

そろそろ時間となりました。関連記事を取り上げようかと思いましたが、ちょうど頃合いがよいので今日はこれでおしまいとします。また明日。

 

 


労働者の守り人 <労働基準監督官ってどんな人? 働く環境守る警察官・・>を読んで

2017-05-09 | 働くことを見直す

170509 労働者の守り人 <労働基準監督官ってどんな人? 働く環境守る警察官・・>を読んで

 

昨夜は帰りが遅くなり、寝るのも遅かったのですが、目覚めは5時前。さすがに途中での目覚めはありませんでした。体は少しだるいのですが、血圧は120台になっており、気分はあまりよくないのですが、少しはよくなっているのかもしれません。今日もいろいろやっていてもう5時過ぎなので、早めにこのブログを終わらせて帰宅しようと思っています。

 

さて昨日の毎日夕刊には、特集ワイドで<労働基準監督官ってどんな人? 働く環境守る警察官 臨検1年がかり「心臓、強くないとね」>とあまり話題になりにくい職業が大きく取り上げられていました。

 

私自身も労働基準監督官というと、時折、労働事件などで登場するものの、直接話した経験はほとんどなく、おおよその仕事は分かっているようで、実際どんな風に仕事をされているか知りませんでしたので、参考になりました。

 

実は身近に元労働基準監督官だったとうかがった方がいらっしゃって、その人柄がとても信頼でき、細やかで親切でいろいろなことの指導も丁寧な人なのです。当地では一般的な定年退職後に農業をされていますが、地域の活動に積極的に参加され、区長をされたときは道路拡張など公益活動を熱心にされたばかりか、集団登校の見守りにも参加するなど、その活動範囲がとても広範です。いつもにこやかで優しさばかりの人かと思うと、ある会議では、手続き上の問題を鋭く指摘され、会議主催者の責任のあり方を的確に指摘されるのを見て、普段穏やかな様子しか知らなかった私はとても驚きました。法的な手続きの適合性など、問題があれば見逃しにせず、言うべき時はしっかりと問題提起される人なのだと思った次第です。

 

で、そうか、労働者のいろいろな悩みを受け止め、未熟な労働者でもしっかりその相談を受け止め、法的に対応すべき時は厳しく経営者に向かう、そういう職業体験で培った人格なり能力が現在の活動にも生きているのかなと感じています。むろんその人がもっている天性の人柄もあるでしょうけど、この毎日記事に示されている、労働基準監督官の仕事の実態をみれば、労働者にとっては駆け込み寺的存在の監督署での対応はかなり柔軟性のあるハードな仕事であったことがうかがえます。

 

その労働基準監督官が<全国に3241人(2016年度)>しかいないのですね。これは驚きです。<監督官1人あたり、全国平均で1486カ所の事業場を受け持つ。>のですから、それだけでみれば、監督官自身が過剰労働になりかねない状況です。

 

労働者人口で考えるともっと分かりますね。<ILOは労働条件や安全を守るために、先進国で労働者1万人あたり1人の監督官が必要との目安を示している。しかし、厚労省が今年3月に作成した資料によると、日本は1万人あたり0・62人。米国の0・28人よりは多いが、ドイツの1・89人やイギリスの0・93人には及ばない。>

 

毎日記事にあるように、労働者も過酷な労働条件の悩みを多様に抱えているわけですが、監督官の業務範囲は法律違反に限定されるので、その対応のあり方も微妙です。他方で、経営者、とりわけ中小のブラック企業などは、毎日記事にあるように、監督官の失言を待ち受けて手ぐすね引いてああでもないこうでもないと適当に弁解を続けているかもしれません。

 

このような能力はなかなか代替出来るものではないでしょう。とはいえ、監督官の不足を社会保険労務士などに代替することを政府側がでは検討しているようですね。

 

<監督官の不足が解消されない中、政府の規制改革推進会議は、定期監督業務の一部を社会保険労務士などに民間委託する検討を始めた。同会議の作業チーム主査で昭和女子大特命教授の八代尚宏さんは「政府の大方針として監督官を大幅に増やせない中、社労士に補完業務をやってもらいたい。監督官を問題のある事業場に集中すれば、より労働者を保護できる。これは業務の一部の民間開放です」と説明する。>

 

いわゆる社労士さん、こちらは多くの事業所で活躍しているように思います。私も知り合いに社労士さんがいて、労働法制にとても詳しく、しっかりした方で、事業所の経営者・担当者などからも信頼されていたように思います。とはいえ、監督官のように厳しい指導、摘発ができるかというと、それは無理でしょうと言わざるを得ないですね。

 

補完事業とは何か、それで対応できるのか、かなり疑問を感じます。

 

他方で、多くの労働者にとっては、身近な労働組合があります(たとえば全労連の相談センター)。あるいは最近は組合離れで、個人の労働者に対応してくれるユニオン(たとえばジャパン・ユニオン)が大きな力になっていると思います。こういった組織には、労働法制や慣行に相当熟知しているスタッフがいて、熱心に相談にのってくれたり、労働審判や労働委員会などの手続きの助言もしているようです。むろん、いわゆる労働弁護士(経営者側でない)も各地にいて、まさに専門家として活躍していると思います。

 

私も最近の労働問題の一端を担当することがあります。コンビニにおける従業員のサービス残業、超過勤務、未払い賃金の問題といったこともあります。労働問題は、多様ですし、産業分野も広範で、その労働条件や慣行も、それぞれの分野で大きく異なることを痛感することがあります。たとえば宗教の世界を取り上げれば、お寺における、僧侶とその家族労働、あるいはある寺の住職が別の上位の寺で勤務する場合など、当然に労働法の対象となります。あるいは林業などは昔から労働条件が厳しい一方、労働者側からの要求も強いため、森林組合などでの労働条件は相当改善されているように思うのです。

 

たとえばとして上げた分野などは、あまり社労士さんも深く入っていないように思います。まして監督官の目が届いているかというと、あまりにカバーする範囲が広いので、むずかしいだろうなと思うのです。

 

どうも何を書こうとしたのか分からない状況になりましたが、一時間経過し、6時を過ぎたので、疲れていることもあり、今日はこの辺でおしまいとします。