たそかれの散策

都会から田舎に移って4年経ち、周りの農地、寺、古代の雰囲気に興味を持つようになり、ランダムに書いてみようかと思う。

名誉毀損とは <韓国 「帝国の慰安婦」著者、有罪 名誉毀損、1審の無罪破棄 高裁>を読んで

2017-10-27 | 差別<人種、障がい、性差、格差など

171027 名誉毀損とは <韓国「帝国の慰安婦」著者、有罪 名誉毀損、1審の無罪破棄 高裁>を読んで

 

昨夜はBSプレミアムの<フランケンシュタインの誘惑「ザ・トゥルース(真実) 世界を変えた金融工学」>を途中から見ましたが、言葉の魔力というか、科学とか、ノーベル賞とかの意味合いを改めて考えさせてくれる番組でもありました。

 

2000年代前後に突如、株式市場や経済動向、いや庶民の間でも席巻するようになった「金融工学」という言葉、わが国の政治家リーダーも使っていたように思います。私は株式市場なんてあまり関心ないですし、まして金融工学といったややこしい数式にはついていけないので、遠目で、怪しいなと勝手に思っていました。

 

案の定リーマンショックで普通に近い株式・不動産の市場や経済状態になったのかと思いつつ、いまだ危うい状況にあるような印象をぬぐえません。

 

わが国では株価連騰が過去最長と評判ですが、NHK9時の番組でキャスターが指摘していたように、この連騰中の株価の上昇はわずかですし、80年代の高騰時には4万円近い数字になっていたのに、その後の四半世紀は多少の振幅があっても実質的には横ばいに近いものです(それでも市場は日々騒がないといけないから口上が人を惹きつけますね)。

 

他方で、アメリカの株価はほんとにうなぎ登りですね。リーマンショックの大幅な下落も3段飛びの一段階みたいで、いまは天井知らずの勢いですから、わが国の相場とは大違いですね。NHKでなくてもこういった指摘はどこでもきちんとやって欲しいですね。

 

アメリカの株式市場の盛況は、やはりなにか裏があるように思うのです。金融緩和だけではないと思いますし、いずれは大ショックが待ち受けているのではと思ってしまいます。その盛況に引きずられる日本の株式市場も、それだけ危ういのではと考えています。

 

で、上記の番組はウェブ情報を引用すると、<科学史に埋もれた闇の事件簿。今回は「金融工学」誕生の物語! 世界のGDPの7倍以上が運用されている金融派生商品(デリバティブ)。金融の世界に進出し始めた物理学者・数学者たちが、それまで予測不可能とされていた市場の動きを解析・数式化して「必勝の運用法」や「絶対に損をしない」というふれこみの商品を次々に生み出した。それは世界にばく大な富をもたらすと同時に、かつてない規模の経済危機を生み出してしまう…。>とのこと。

 

ぼっと見ていたので、正確な内容は覚えていないのですが、解読不可能と思われた経済事象を工学的手法で数式により明らかにしたという数学者でしたか、ノーベル賞をとり、その方を中心にした金融工学のメンバーが何兆円、何十兆円という莫大な資金を株式市場に投入できるほどになったあと、予測不能の事態となり、リーマンショックが発生したといった流れでしたか。

 

ある考えが絶対だ、それを鵜呑みにするという考えで、すべての人というかほとんどの人が同じ投資活動や経済活動をすれば、破綻は目に見えているように思うのです。人間活動を硬直した見方でとらえること自体、誤りの始まりではないかと思うのです。

 

と長々と本題と異なる議論をしてしまいましたが、本日のテーマとなにか人間の根底といったところで通底するものがあるようにふと感じたため、前置きで書いてしまいました。

 

さて、毎日記事は大貫(ソウル支局長でしか?)記者によるもので、<著書「帝国の慰安婦」で虚偽の記述をし、元慰安婦の名誉を傷つけたとして名誉毀損(きそん)罪で在宅起訴された韓国・世宗(セジョン)大の朴裕河(パクユハ)教授に対する控訴審判決で、ソウル高裁は27日、「歴史的事実をねじ曲げ、被害者たちに大きな精神的苦痛を与えた」として、1審の無罪判決を破棄し、罰金1000万ウォン(約100万円)の有罪判決を言い渡した。判決後、朴教授は記者団に対し「大変不当で遺憾だ」と述べ、上告する方針を明らかにした。>とまとめています。

 

高裁が有罪認定した根拠については<高裁は、旧日本軍の従軍慰安婦を「性奴隷」と表現した1996年の国連報告書(クマラスワミ報告)などを根拠に、朝鮮人慰安婦は自らの意思に反して連行されたことが明らかだと指摘。>と事実認定の根拠を例の国連報告書に依拠しています。この認定を根拠にして、<著書の「元慰安婦は根本的に『売春』のくくりにいた女性たち」などを虚偽と認定した。そのうえで「大半の朝鮮人慰安婦が、まるで自発的に性売買をして日本とともに戦争を遂行したと、読者に受け取られる」とし、名誉毀損の意図があったと認定した。>というのです。

 

ところが、高裁が朴氏について、<朴教授が慰安婦問題に関する従来の解決方法を批判する中で事実がねじ曲げられたとみられるとし「被害者を誹謗(ひぼう)したり苦痛を与えたりする目的はなかった」と、朴教授の主張を一部取り入れた。また「学問や表現の自由は保障されるべきだ」として、誤った考えか否かは司法が判断する問題ではないと付け加えた。>

 

朴氏の著作目的に誹謗目的がなかったことや学問の自由の保障については、肯定する内容です。あくまで国連報告書の記載事実と異なる点を<事実がねじ曲げられた。というのです。

 

この点、<1審判決では、検察側が主張した名誉毀損にあたるとの表現について、大半は「資料の分析や評価であって具体的な事実関係を示したと見るのは難しい」と判断。事実関係の提示にあたる部分も、告訴した元慰安婦を特定していないなどとして、いずれも名誉毀損にはあたらないとしていた。>

 

そもそも一審判決の認定自体が、朴氏の著述内容を的確に認定できているのか疑問です。<具体的な事実関係を示したと見るのは難しい>との認定ですが、名前をあきらかにしていなくても、自ら聞き取りして得た記述であり、オーラルヒアリングとして、高い評価を得ているものです。これを具体的な事実関係を示したものでないということ自体どうかと思うのです。

 

他方で、<告訴した元慰安婦を特定していない>ですし、決して強制的に連行されたことまで全面的に否定するものではないと思っています。いずれにしても『帝国の慰安婦』の内容が特定の慰安婦の名誉を毀損するものではないと思います。

 

あの少女像自体、根拠のない虚像ではないでしょうか。それを裏付ける資料は提供されているのでしょうか。

 

『帝国の慰安婦』は、むしろこのような慰安婦制度を招く国内外の問題と歴史的構造にメスを入れたのではないかと思うのです。国連報告書は、まだ読んだことがないので、適切なコメントとはいえない点を保留しつつ、聞くところによれば、慰安婦の女性からの聞き取りにより作成されたものと思われます。それは事実を踏まえた側面があると思います。しかし、その当時の韓国社会、封建社会の残存の状況、とりわけ男尊女卑的な面、劣悪な経済状態での生活苦などはどこまで視野に入っているのでしょうか疑問を感じています。

 

戦後わが国でも、赤線地帯が米軍基地周辺で広がっていました。それは米軍の強制によるものとは言えないですが、劣悪な生活苦を逃れるためやむなく入っていた女性も少なくなかったのではと思うのです。

 

私自身は、むろんその当時の状態を実際に見聞していません。ただ、四半世紀前頃、当時、新宿周辺には各国の女性がたちんぼして、売春を行っていて、その種の事件をしばらく担当しました。彼女たちに聞くと、いわゆる女衒が村にやってきて両親と売買の話をして、売られて、ある種の組織があって、日本に運ばれて、パスポートを取られ、狭い部屋に大勢の女性と同居させられた上、売春して、その借金なりを返していたといった話をよく聞きました。

 

構造は異なりますが、人身売買はいまなお形が変わっても継続しています。そういう女性を買う男性がいるからです。日本軍はより組織的に巧妙に行ったのだと思うのです。

 

私自身は、『帝国の慰安婦』こそ冷静な視点で、リアルに生の声を拾いつつ、背後の帝国という権力構造のうみを描き出したものとして、高く評価されるべきと思っています。一度読んでからだいぶ経ってしまい、記憶があいまいになっているのを確かめないで書いています。

 

ただ、最後に一言。このような女性を生み出すのは、男性です。それはその女性を差し出す男性、取引なり強制なりの方法で関与する男性、買う男性が問題です。さらにいえばそれを等閑視する男性です。この点では女性も含まれるでしょう。

 

ついでに言えば、昔、吉原で仕事をしている女性の事件を担当したことがあります。その女性は貧乏な生活から逃れるため売春で金を稼いでいるとのことでした。ところが、それをひもにする男がいるのですね。その男に大事なお金を貸した(預けた?)のですが、返ってこないと言うことで私が返還させたのです。ただ、話をしていて、基本的な知識が不十分で、その女性の教育レベルがきわめて低いものだと気づきました。気の毒でした。家庭環境も影響がありますね。そんなこともつい思い出しました。

 

そろそろ一時間です。この辺でおしまい。