たそかれの散策

都会から田舎に移って4年経ち、周りの農地、寺、古代の雰囲気に興味を持つようになり、ランダムに書いてみようかと思う。

大量殺戮の謎 <BBC  Las Vegas shooting: Paddock placed cameras in hotel>などを読みながら

2017-10-04 | 人の生と死、生き方

171004 大量殺戮の謎 <BBC  Las Vegas shooting: Paddock placed cameras in hotel>などを読みながら

 

北朝鮮の動きや、日本の選挙動向も気にすれば無関心ではおられないかもしれません。他方で、連日報道されていますが、日本の報道では気になる部分がどうもよくわからず、見出しの記事や<The Telegraph  Stephen Paddock: Who was the Mandalay Bay attacker and what was his motive?>など少し外国の情報にアクセスして、考えてみたくなりました。

 

それはいくつかの疑問です。

当然、犯人の動機です。現在わかっているところで死者59人、負傷者500人以上の大量無差別殺戮をなぜパドックは行ったのかという点です。むろん専門家が賢明に調査しているのですから、私がどう考えてもわかるはずがありませんが、どんな考察がされているかを私なりに見てみたくなったのです。

そうしたら事実関係だけみても、さらに不思議な印象を抱いたのです。

 

まず、たしかにISが声明を発表して、そのテロ行為であると行っているようですが、当局はその関係性を裏付けるものがないとしています。他方で、ガールフレンドとされるMarilou Danleyの動きも奇妙ですね。当局は容疑者としてフィリピン政府を介して同女をアメリカへの帰国の途につかせているようですので、この女性がどのような発言をするかで、真相の一部あるいは多くが解明されるかもしれません。

 

パドック自身のイスラム信仰の可能性はみとめられないようです。ただ、この女性の場合はどうか気になるところです。私自身もISの影響の可能性については、AK-47の自動小銃の入手経路とか、監視カメラを設置していたこと、10万ドルをフィリピンに送金したことくらいで、基本的には関連性がないことの確認くらいでしょうか。

 

ではパドックがギャンブル依存症であった疑いがあることから、その経済的破綻ないしは刺激を求める欲望がエスカレートした結果といった可能性は、まったくないとはいいませんが、その可能性を認めることは疑問です。今回の彼の行動はきわめて計画的です。依存症と計画性は両立するかもしれませんが、ギャンブルの指向性と無差別殺戮は異質の性向と思うのです。

 

さてこのあたりで、彼の収入はどうだったか、経済状態がどうだったかについての情報は、かなり断片的で、裏付けのあるものは、当局の最近のものだけです。それによると過去数週間一日1万ドルをカジノで使っていたこと、先週木曜日頃、10万ドルをフィリピンの口座に送金したことがわかっています。そしてその木曜日は、彼女がアメリカを発ちフィリピンに一人?向かっています。

 

兄妹や近所の人の話は、あくまで断片的ですが、不動産で儲けたとか、ギャンブルで儲けたとかの話です。では、不動産投資ないしは不動産事業とは何かですが、パドックはフロリダ、テキサス、ネバダに不動産をたくさん所有していたというのです。また自家用機も2機保有して操縦免許を持っていたというのです。マンションなどを賃貸していたともいわれています。なるほど資産家のようにみえますね。

 

ただ、ここで気になるのは、フロリダで13年から15年まで住み、その後ラスベガスから遠くない現在地に移った点です。フロリダの時は近所づきあいもあったような印象ですが、現在地ではカーテンなどをして外から見えないようにしていたということです(北米の分譲地では通りに面したところは開かれた感じにして外から見えるようになっていることが普通ではないでしょうか)。

 

そしてなにより注目したのは現在地の地域特性です。Sun City retirement community in Mesquiteという分譲地は名前の通り退職者が中心に住む場所で、砂漠のど真ん中のまさに人工都市、不動産価格をみても割合低価格帯です。不動産やギャンブルで荒稼ぎをした人が住むところかといえば、不似合いでしょう。むろん中には豪奢な邸宅もありますが、私がちらっと見たと思う彼の家は普通の家だったように思います。大資産家で遊びほうけることができるといった見方は正しくないのではと思うのです。

 

確かにパドックの顔写真は、なぜか貧相なイメージのものが掲出されていますので、余計そう感じますが、カジノで一日1万ドルもつぎ込むような人間の外見でないことは確かですし、それなりの写真があってしかるべきでしょうが、最近のものではなかったのかもしれません。

 

このようなことから、私は経済的にはかなり厳しい状態にあったのではないかと思うのです。

 

ホテルに持ち込んだ銃が23丁発見されていますが、まだ確認できていませんので正確でないことを断りつつ、自動小銃のカラシニコフが何丁かあったようですが、残りは普通の拳銃で、かなり古いタイプのものではないでしょうか。カラシニコフも結構安く手に入るともいわれています。そこには彼がプロの殺し屋的存在であった可能性を疑う一つです。

 

ただ、正式なルートで入手した拳銃はホテルの部屋では発見されていないようです。他方で自宅にも20丁近く残しています。これは何を意味するのかは保留点です。

 

ホテルに持ち込んで、おそらく使われなかった拳銃もあったと思うのです。トランクケース10箱も運び入れているのですね。そこには拳銃だけでない何かも運んでいたのでしょうか。それにしても木曜日にチェックインし、土曜日に殺人をしています。

 

どのようにして運び込んだかもまだわかっていません。いくらなんでも一人でこれだけ大量のトランクケースを部屋に運ばせたら、ホテルマンというか、警備員も注意するでしょう。でもだれも気づいていないようです。とすると、協力者の可能性もまだ否定できません。

 

使わないかもしれない拳銃などのために目立つ大量のトランクケースを運ぶ行為は、慎重な人間ならやらないように思うのですが、どうでしょう。

 

そしてすでに述べたように、彼は過去数週間、ギャンブル三昧をして、直前に10万ドルを彼女の滞在するフィリピンに送金しています。そして監視カメラは結果から見て、スワットなどの攻撃への反撃のためというより、乱射を妨げられないようにする意味合い程度であったのではと思うのです。

 

ここで事件の推移を当局のタイムラインに則って検討してみます。72分間の出来事です。

 

22:08 最初の発砲に気づく

22:14  ホテルの32階からの発砲と気づく

22:20  しばらく何度か発砲があった

22:27  ホテル警備員が32階で射殺されていたとの報告

23:20  SWATチームが部屋に突入したが、容疑者が死亡していた

 

これでいうと、またビデオ映像から見ると、発砲は228分から20分頃まで断続的にあったと思われます。それ以降は発砲が止み、27分頃に入ろうとしたホテル警備員が射殺され、その後編成されたスワットチームが突撃するまでにパドックが自殺したというわけですから、結局、コンサート観客に対する無差別殺戮は約12分間の出来事だったのではと思うのです。

 

彼はなぜ12分で発砲を止めたのか、銃弾が残っていなかったのかはまだわかりません。ただ、ビデオ映像でも、自動小銃の射撃は、断続的に行われています。それは何を意味するのか。また、彼はなぜか軍隊経験がありません(アメリカが73年徴兵制度を停止するまで兵役義務を課せられていたはずで、彼の場合なぜ免責されたのかは?)。なにをいいたいかですが、ホテルの彼の部屋からコンサート会場までは最短で320mです。ビデオ映像では会場にはありの這い出る隙もないほど、人があふれていました。ほとんどの人が撃たれないように横になったり伏せていたりしていましたが、中には堂々と立ち上がって銃声の方角に怒りをあらわにしている人もいました。

 

AK-47は一分間に600発という優れものです。有効射程は600mです。パドックがプロであればもちろん、本気で大量殺人を試みるつもりであれば、もっと大量の死者が出た可能性があったのではないかと思うのです。大量の銃を保有していましたが、射撃場などでさほど訓練もしないまま(ネバダ州は自動小銃に関しては一定の規制があるようで射撃場での練習はできなかったかもしれませんが)、この自動小銃を打ち放ったのではないでしょうか。その点は不幸中の幸いともいえるかもしれませんん。

 

ISがパドックに武器供与した可能性についても、上記の点では不適当な人物と考えられ、疑問です。

 

上記のタイムスケジュールからいえば、パドックは無差別殺戮の後、自分も死ぬつもりだったと思われます。その大量殺戮にしても、一定程度やればよいと思っていたのではないかとさえ思えるのです。まだ余力があったのに、あえて観客への殺戮や、警察・スワットへの反抗には向かっていません。

 

いずれにしてもなぜ普通の観客を無差別に殺戮しようとしたかはわかりません。なにかの怒りがあったとしても、どうして殺戮に向かうのかはまったく理解できるものではないですが、その12分間の発砲の中で、揺れ動く何かがあり、最後になにかに気づいたのか、発砲を止め、死に向かったのでしょうか。あるいは単に自動小銃の銃弾がなくなったからでしょうか。トランクケースの量から考えれば、銃弾は十分運ぶことができたはずと思うのです、その点もまだ疑問です。

 

ここで何を書こうとしたのか、まだ私も自分でよくわかっていません。一つは、大勢の人を集めるとき「高層の死角」があることは少なくとも指摘しておきたいと思ったのかもしれません。

 

会場内外の警備は、テロ対策などで相当厳しくなっていると思います。でも会場を取り囲むような位置に高層ホテルがあっても、そこは見落とされてきました。むろんケネディ暗殺事件の例でもそうですが、重要人物のパレードといった場合は別でしょうが、通常はホテルは警備の対象外となるのでしょう。

 

しかし、その結果、高層階からは大勢の観客が射撃犯人には格好の的になってしまう危険がはじめて明らかにされました。しかもその発砲現場がわかっても、実際に突入できたの発砲開始後72分も経過してであり、犯行現場発見後からでも66分後です。高層の死角はきわめて危険です。東京オリンピック・パラリンピックの際は、このような死角がないよう警備の徹底をお願いしたいものです。

 

むろんわが国は銃保有が禁止されていますので、アメリカのような事態にはなりませんが、殺戮を計画するテロリストなどにとっては他の手段もありえます。他山の石として、謙虚に見直していただきたいものです。

 

不幸にも死傷の被害に遭った方、とくに命を落とされた59名の方々にご冥福をお祈りします。

 

なお、銃保有の権利を認めているアメリカ憲法について最後に一言

<規律ある民兵は、自由な国家の安全にとって必要であるから、人民が武器を保有しまた携帯する権利は、これを侵してはならない。

アメリカ合衆国憲法修正第2条>

 

憲法ですから、基本的には国対する権利ですね。そしてどんな銃でもいくらでも保有できるとか、絶対的な権利を認めているわけではありません。ですので、銃保有について、各州で規制の濃淡はありますが一定の規制はあります。たとえば自動小銃などはカリフォルニア州では禁止しています。それにしても多くの州法は緩やかですし、これではアメリカ国内を自由な気分で闊歩する気にはなれません。と同時に、こういうアメリカとの安保協定もどうあるべきかは検討課題かと思っています。

 

今日はこの辺でおしまいです。


補足 パドックの彼女の法的位置付け

彼女についてはperson of interestと当局が指摘して、フィリピン政府にアメリカ送還に協力を求めたような報道がありました。

通常上記は容疑者とも和訳されますが、わが国の報道で使われる容疑者(=被疑者という法的概念に代替、ただ後者の意味も含むこともあるかもしれません)ではなく、おそらくは重要参考人的な意味に近い(法律上の位置付け、定義とは言えない)のではと思います。従来、suspectなどの用語が使われていましたが、最近は被疑者・被告人の意味で法的に使われるdefendantと識別するため、法執行の場面では上記用語が使われるようになっているようです。そういえば恋人といった新聞記事がありましたが、girlfriendとの英語表記が多かったように思います。62歳でgirlはないということはなく、年齢に関係なく恋人的な関係では使われるようですね。ここもおもしろいなと思っています。

補足2 パドックの犯人性

これは疑いないのでしょうけど、現場の状況説明に具体性がほとんどないので、推測するしかないですね。複数犯の可能性、あるいは犯人が他にいる可能性は完全には排除されていないように思います。パドックのホテル滞在後の行動がまったく明らかにされていませんし、どういう遺体の状態かも説明がないですね。だいたい死者数に彼を含めるなど、彼も被害者とみていた可能性すら一応は心の隅に置いておいてもいいかもしれません。自宅やホテルにおける大量の銃の存在自体、加工可能です。ただ、その必要性となると考えにくいので、彼の犯人性を妨げる要素ではないでしょうけど。ただ、射撃停止後1時間以上の空白と、まだ発表されていない死亡推定時間によっては、他人の介在の可能性はゼロではないかもしれません。むろん厳重警戒中のホテル内で映画のヒーローでもなければ脱出不可能ですから、それも現実性はないですね。余分な考察をしました。書いていると可能性の妥当性がはっきりしてきます。とすると、なぜ当局はいまなお、現場状況を明らかにしないのかは、彼女やその背後の存在を考慮しているのでしょうか。