たそかれの散策

都会から田舎に移って4年経ち、周りの農地、寺、古代の雰囲気に興味を持つようになり、ランダムに書いてみようかと思う。

漁業の担い手像 <森健の現代をみる 被災地の漁業の現状>を読みながら

2019-02-23 | 海・魚介類・漁業

190223 漁業の担い手像 <森健の現代をみる 被災地の漁業の現状>を読みながら

 

たまたまBBCのウェブサイトを見ていたら、REELという項目で?<How to get more time in your day>という動画が配信されていました。リスニング力の劣る私としては、ほどほどのスピードで話すのと、英文字幕(これはTVソフトの関係かもしれません)があるためフォローしやすく、これはなかなかいいとつい紹介することにしました。

 

上記テーマもなかなかウィットに富んだ内容で、現代人を不思議の国のアリスにでてくる忙しく駆け回るウサギのようとまず出だしから興味深いです。終日、ネットやSNSなどの通信手段を駆使し、電話で話す時間も惜し多忙で悩むことも忘れる状況を揶揄しながら?ぼっとして何も考えないでいる時間をもつことを提案しています。UKEU離脱を目前にしてカオス的状態ですが、その中で国民個々もそれどころではない状態なのでしょうか。成熟した社会であり、個人とも言われてきたように思うのですが、どんなもんでしょう。

 

それは別の見方もあるでしょうから、ここでは議論しませんが、このREELではさまざまなたくさんのテーマを無料配信していて、これはなかなかいいですね。さすがBBCと思う次第です。

 

さて本日のテーマは、漁業の担い手、漁業者、漁協を考えてみようかと思うのです。第一次産業といわれる、いずれも(協同)組合が法律でつくられています(農業協同組合法、水産業協同組合法、森林組合法)。漁業では漁協ですが、農業だと農協、林業だと森林組合です。しかしながら、名前は似通っていて、法律上の組織や構成員も大筋同様の仕立てに見えますが、いずれも似て非なるものかなと思うほど違っているように感じています。

 

ざくっといえば、漁協は漁業者だけを構成員に絞り、主に漁業管理に集中し、農協は農業者に限らずむしろ多くの一般人を受け入れ信用・共済事業を含む綜合事業体となっていて、他方で森林組合は森林所有者者等を組合員としていますが、実際に林業を担う組合員比率がかなり低い状態で、森林管理を担う権限もなければ担うだけの力量があるところは希でしょうか。

 

余談が長くなりました。毎日の朝刊記事<森健の現代をみる被災地の漁業の現状 今回のゲスト 濱田武士さん>では、<日本の漁業は高齢化と資源減少などで危機に直面してきた。さらに東日本大震災により被災地の漁業は大きな被害を受けた。どこまで復興したのか。課題は何か。震災直後から被災者を取材している森健さんが、被災地の漁業に精通する濱田武士・北海学園大(札幌市)教授と議論した。【構成・栗原俊雄、撮影・宮本明登】>と大災害に襲われた地域での漁業の復興如何を取り上げています。

 

<国は、基本的には農林漁業を税金がとれる産業に育てたい。だから漁業の近代化政策を進めるとともに、漁業経営を従来の個人事業型から企業型に転換するよう誘導してきました。>

 

そこでは、国の姿勢が問われています。震災前から始まり、震災後は顕著になった漁業の生産性向上という名の企業経営化です。これは昨今の法改正や新法で見られる経営管理の強化策と一次産業共通のテーマかもしれません。

 

原発被害のあった福島の漁場では今なお厳しい状態であることはよく指摘されているところですが、それ以外の地域について、国のハード面での施策が紹介されています。

 

<ハード面、漁港などはそうですね。漁業も、水産加工も、港と市場が使えなければ事業が成り立ちません。水産都市経済の拠点です。復興で第一にやるべきはそこの再開でした。特に水産加工業者は、再開が遅れるだけ売り先を失いますから。岩手県は「市場を核に復興」を方針とし、順当に市場と漁港区の復旧をまず進めました>と。

 

他方で、<宮城県は水産業復興特区や漁港集約化を復興の目玉にしたため復旧の出足が遅く、混乱しました。><漁協と宮城県知事の対立になり、メディアのネタになりました。その中で漁業権が漁協に優先的に付与されていること、それが企業の参入障壁になっていることなどが批判的に報じられました。「みんなの海を漁協が占拠している」といったように。>

 

この記事を読んで、あの場面が思い出されました。当時、復興担当相に就任したばかりの松本 龍氏が岩手県知事、宮城県知事と続けて会談したときの発言が問題になり、彼は辞任しましたね。そのときのとくに宮城県知事に対する発言が放映されたのを見て驚きました。とくに<「お客さんが来る時は、自分が入ってからお客さんを呼べ。」>とか。そのときはひどいと思いつつ、漁協との対立、その声を無視したような知事の対応を問題にした発言はなぜかあまり問題にされなかったように思うのです。

 

上記と同じウィキペディアの<松本龍>では<「県でコンセンサスを得ろよ。そうしないと、我々は何もしないぞ。ちゃんとやれ。」(被災した漁港を集約するという県独自の計画に対して)>という点は、松本氏がきちんと地元漁業の聞き取りをしていて県の対応に問題があること、それに強い憤怒の気持ちがあったのではないかとも思われるのです。

 

松本氏は、全国を率いた祖父の意思を継いで差別された人たちへの強い気持ちがあって政治家として活動してきたように思えますし、前年の環境大臣の時は名古屋市で開催された第10回生物多様性条約締約国会議では、議長として見事に立ち回り、名古屋議定書の採択を成し遂げており、当時TVでの発言などなかなかと思っていましたので、被災知事に対する発言には違和感を抱きつつも、漁業者への熱い思いの表れであったようにも思った記憶です

 

特区構想に反対する漁協について、性悪説が広がったのですかね、松本氏もその仲間とみられたのでしょうか。

 

この点、ゲストの濱田武士氏は、<漁協は漁民が出資し、運営する法人組織です。漁民と別物と認識されて、漁協が中間搾取団体であるかのような誤解があります。他の業界同様の問題を抱える組合もありますが、全体としては漁村が健全に維持、発展するための組織です。>と漁協が担ってきた役割を高く評価しています。

 

私は以前、いくつかの漁協を相手に交渉したことがありますが(実際は漁協の代理人弁護士ですけど)、すべての漁協が適切な漁業管理を行っているとは限らないとの思いがあります。といって、濱田氏の見解に一般論としては異論ありません。私の友人というか昔の勉強仲間で長く漁業権問題に携わってきたある教授は国との関係ではとくに濱田氏と同じような考えをしっかりもっていますね。

 

漁業も構成員である漁民がしっかりすれば、いい組織になれると思うのです。その意味で、濱田氏が最後に<エネルギッシュな若い人たちがにょきにょき出てきました。全国の過疎地で新しい人たちのうねりが出てきた気がします。それは大震災がきっかけになったのかな、とも思います。ただそういう人たちだって万事うまくいかない。ぜひ、そのエネルギーを我々の社会が吸収し、また政策的に支える仕組みが必要ですね。>というのは、期待できますし、どのような制度設計を考えているのか聞いてみたいですね。

 

今日はこのへんでおしまい。また明日。


捕鯨を考えてみる <日本、調査捕鯨は中止 IWC脱退表明>などを読んで

2018-12-27 | 海・魚介類・漁業

181227 捕鯨を考えてみる <日本、調査捕鯨は中止 IWC脱退表明>などを読んで

 

株式市況などどう動こうが関係がないのに、トランプ政権やそれを支持する層への疑問もあって、今回の大幅下落について書いたら、予想外の市況の反転があったようです。素人があれこれいうものではないですね。でも今後もわかりません、という程度にしときます。

 

さて年末仕事納めというのに、あれこれと仕事が多く、なかなか時間がとれなくなっています。能率が悪い、かもしれませんね。ただ、12月に入って突然、新件が急増し、珍しく2件も断ったのですから、私としてはのんびり12月中旬以降を過ごす予定が狂ってしまいました。明日も安請け合いした説明会での解説があり、その準備もままならない状況です。

 

そんな愚痴をいつまでも言っていては始まりません。夕方から会議があるので、早めにブログを書き上げて、事務所をでないといけません。

 

とくに話題はないのですが、今朝の毎日記事<日本、調査捕鯨は中止 IWC脱退表明 商業捕鯨再開へ>などを見て、IWC脱退、ついにやったかという感じで、特別の感想はないのですが、書きながら考えてみようかと思います。

 

日本の捕鯨問題は80年代後半ころから国際的に問題になったように思います。私自身、90年代初頭、専門家の一人から当時の調査捕鯨の状況や鯨の種類とその生息数のグラフを示されて解説を受けたことがあります。そのときどんな議論したかは、もう記憶の彼方ですので、当時と今でどう違うか、私自身も国際環境や日本の置かれた位置も、よく分かりません。

 

それだけ私にとっては捕鯨問題は関心がなかった証左かもしれません。グリーンピースのような考え方と行動には賛同できないとしても、国の内外ではそれを支持する人がこの間相当増えている印象を感じます。

 

科学的調査を踏まえた適切な資源管理が必要と言うことは、漁業の世界ではなかなか有効に働いていない印象を抱いています。そんな中、捕鯨については割合、先進的に行われてきて、その後のマグロやサンマの紛争にも解決の糸口というか、一つの舞台を提供できる先駆けとなったのではと思っています。

 

30年近くIWCでどのような議論をしてきたか、私は知りませんが、結局、わが国の主張は国際社会でも、国内でも、あまり賛同が広がらなかったような印象をもっています。それはなぜか、捕鯨維持を主張する関係団体に問題があったとまでは思いません。

 

捕鯨の伝統的文化自体が、容易に理解されなくなったのでしょうか。いまそういった400年の歴史を訴えてその保存を主張するようですが、実際の捕鯨方法は、400年前はもちろん、昭和初期とも大きく様変わりして、伝統的な漁法とは異質のものではないかと思うのです。

 

食べる文化はどうでしょう。私は小学生時代、肉と言えば、鯨肉が給食に出ていた記憶です。決して美味しいというようなうれしい記憶ではありません。肉が乏しいとき、それに代わるものとして代替品として提供されていた印象でした。

 

最近はほとんど食べる機会がありませんが、いつだったか食べたとき、柔らかくて美味しいなと思いましたが、あえて鯨肉を求める程のグルメ嗜好は私にはないので、そのとき限りでした。

 

私より若い人の中には鯨肉を食べたこともないという人も少なくないのではと思うのです。鯨肉も結構美味しいので、食材として普通に提供されれば食べるでしょうけど、現状では将来的に安価に入手することは期待しずらいとなれば、他の魚肉類の低廉化の傾向から見て、価格競争力で競うことは厳しいと思われます。

 

調査捕鯨に限定されたことから、市場に出回らなくなったことで、鯨肉の市場性が極端に落ちてしまったことは気の毒ですが、それは国民からも必ずしも支持されていないことの反映かもしれません。

 

現在の国際的競争社会で、鯨肉の食文化を維持することは、希少性から支持されるとしても、それは一般的に流通したり、食文化として普及するには厳しい状況にあると思うのです。

 

20代、30代未満の世代は生態系に対する意識が以前以上に高まっていて、鯨の生態系における価値も、尊重されてきているように思えます。

 

IWCを脱退して公海での調査捕鯨を断念し、EEZなど近海での商業捕鯨に転換したわが国の立場は、国際社会で支持されないことは確かでしょう。これによって失う国際的な信用よりも捕鯨文化、社会の維持に軸足を置いたことも現政権ではやむを得ない選択だったのでしょう。

 

だからといって、調査捕鯨で築きあげた科学的調査方法による資源管理システムを、これからもしっかりやっていって欲しいと思うのです。捕鯨の種類、頭数、捕鯨のあり方、その使用方法など、調査捕鯨で問題になったようなお粗末な事態にはならないよう、くれぐれも気をつけてもらいたいものです。

 

参考に、専門家の対立する議論として<ミニ論点IWC日本脱退 東海大海洋学部准教授(海洋政策論)大久保彩子氏/日本小型捕鯨協会会長・貝良文氏>があります。

 

また、<クローズアップ2018IWC脱退表明 捕鯨存続、苦肉の策 空白30年、消費は低迷>も、現状と将来を少し憂う内容でしょうか。

 

30分強で書き上げました。今日はこれにておしまい。また明日。


一挙三徳? <「海の砂漠化」、鉄鋼スラグが救世主に>を読みながら

2018-11-30 | 海・魚介類・漁業

181130 一挙三徳? <「海の砂漠化」、鉄鋼スラグが救世主に>を読みながら

 

鉄は古代から有用で幅広く使われてきましたが、精錬の際、鉄以外の産物が残り、鉱滓とかスラグといわれる、現代の大量生産システムでは産業廃棄物が大量に排出されるわけですね。

 

その処理がやっかいな問題です。

 

本日付Bloombergでは、菅磨澄氏が<「海の砂漠化」、鉄鋼スラグが救世主に-人工の藻場でコンブよみがえる>として、世界有数の鉄鋼メーカー・新日鉄住金の野心的な取り組みを紹介していますので、この記事を引用しながら少し言及してみたいと思います。

 

まず<現在、日本で年間約4000万トン発生するスラグ>とのことです。これがすべて鉄鋼スラグかどうか文章からははっきりしませんが、どちらにしても大半がそうであることは確かでしょう。このすさまじい量を単純に最終処分することはできません。むろん以前から鉄鋼メーカーは再利用に取り組み、できるだけ産廃処分を減少する努力をしてきたと思います。

 

菅氏は<大半がセメントの原料や道路用の路盤材などに再利用され、海洋向けはごく一部だ。>とこれまでの再利用が陸上利用にほぼ限定されていたとしています。そうでしょう、なにせ沿岸域は漁業者の反対でとても鉄鋼スラグを海中に入れることなど理解されなかったと思います。

 

もし海中にも再利用できるとなると、処理先が拡大し、さらに多くのスラグについて産廃処理がより適切になされることになるという一徳がありそうです。

 

それは何か。海の砂漠化を防ぐ、ないし減少する機能を鉄鋼スラグがもっているというのです。第二の徳でしょうか。

 

いま日本沿岸域は海の砂漠化が進行していると言われています。<海の砂漠化である「磯焼け」は、藻場が枯死し不毛な状態が続く現象だ。>

 

その原因については<温暖化に加え、森林伐採やダム建設などにより森から海への栄養素の供給が途絶えることなど>とされています。<自然界では落ち葉が土と混ざり腐植土となるが、その中の鉄分が森から川を通じて海に流れ込み、海藻に届く。>と栄養素の中で鉄分が不足することが大きいようです。

 

私が熱帯地方でいくつかの川を見たとき、とても茶色っぽかったりしていたのですが、樹木や土壌からの鉄分が大量に川に染み出していたのですね。それは鉄分が溶けて川の色を染めていたのでしょう。原生自然のような熱帯の森ではよく見かけます。

 

でもわが国の森林と河川では、豊かな森と清浄な河川でも、そのような光景を見ることができません。鉄分以外に他の要素が多いのかもしれません。

 

ともかく鉄分不足が藻場の成長を妨げているようです。

 

<新日鉄住金でスラグ市場開拓を担当する木曽英滋氏は、この仕組みを応用して製品が開発されたと説明する。>海が鉄分をほしがっている、それを鉄鋼スラグで補おうという発想でしょうか。

 

 

<北海道の西岸にある増毛町。約30年前から海藻の消失により漁獲量が減少し、漁業者は悩んでいた。そこで、2004年に同社が実証実験で鉄分を含んだスラグに腐植土を混ぜ合わせた栄養補給剤を海岸沿いに埋めたところ、数カ月後にはコンブ群落が再生された。1年後にはスラグを設置した実験区のコンブ生育量が108メートル離れた対象区と比較して1平方メートル当たり220倍に増えた。>

 

スラグ+腐植土の栄養補給剤を沿岸に埋めたら、コンブが増えたというのですから、見事実証したといえるのでしょう。

 

コンブが増えれば、生態系の連鎖で次々と業界類も増えるでしょう。

<「目に見える効果があり、実験区の海域はコンブでいっぱいになった」。増毛漁業協同組合の相内宏行専務理事は当時を振り返る。14年からは範囲を拡大し別の場所で実証実験を行っているが、「鉄鋼スラグを入れた場所では海藻の繁茂はいい。海藻を餌にしているウニやアワビが集まるので、捕れる魚介類も増えた」と話す。>これで海の砂漠化を防ぎ、他方でコンブや魚介類が増えれば、一石二鳥ですね。合計すれば三徳といえるかもしれません。

 

さらに別の使い道があるそうです。

形態的な側面を活用するようです。浅場造成とか、海藻付着用とかによいようです。

<スラグはまた、浅場造成の材料や、海藻が付着して育つ天然石の代替となる人工石にも活用される。>それは<海藻を育てるには、太陽の光が届く水深まで海底を引き上げる必要があるが、港湾のしゅんせつ土砂は柔らかく固まりづらい。そこで土砂に混ぜると強度が増すスラグが開発された。>

 

そもそも港湾の浚渫は毎年大規模に行われていますが、その処理も困っているのですから、

うか。

 

他方で、東京湾で密かに浚渫する業者がいるとも言われており、あちこちで大きな窪みができて、困っているとの話を聞いたことがあります。余談ですが。

 

さらに本命ともいえる<ブルーカーボン>ですね。

<ブルーカーボンは、09年に国連環境計画の報告書で海洋生態系に吸収・固定される炭素として命名され、新たなCO2吸収源として注目されている。>

 

<日本でも昨年、専門家などで構成するブルーカーボン研究会が設立され、今年3月には日本沿岸で吸収できるCO2の量が、藻場の拡大等により30年までに最大34%増えるとの予測を発表した。>期待したいですね。<東京大学大学院工学系研究科の佐藤慎司教授は「日本は島国で浅い場所も多く、沿岸域のブルーカーボンのポテンシャルは大きい」 と話す。>いいことずくめですね。

 

でも<ブルーカーボンの研究は森林が吸収する「グリーンカーボン」に比べて遅れており、実際に沿岸で吸収できる量を把握するのが難しい。>そうですね。20年くらい前、湿地のCO2吸収が結構研究されていましたが、どうも確立したものではなかったのか、最近あまり取り上げられていない印象です。

 

それに加えて、これまでの有用性・徳は、なかなか漁業者の理解を得ることができない状況にあるように思えます。こういった実験結果の副作用というか、デメリットもしっかり公表してもらいたいと思うのです。

 

漁業者の頭が固いといった先入観ではなく、データをオープンにして漁業者に理解してもらうよう地道な努力も必要だと思うのです。当たり前ですが。

 

<同研究会の委員で港湾空港技術研究所の沿岸環境研究グループ長、桑江朝比呂氏は、沿岸開発を行うには漁業者の了承を得る必要があるが、「スラグに対する漁業者の印象はまだ良くない」と明かす。>それはそうでしょう。スラグといえば、形状も形態も由来も、とてもそのまま海面に沈めることは理解されないでしょう。すでにいくつかの漁協の理解を得ているようですが、今後もよりいっそう頑張って欲しいと思うのです。

 

新日鉄住金は、鉄鋼メーカー以外の幅広い領域で、さまざまな研究開発を進めていて、私のような頭ではとてもついて行けませんが、温暖化削減など新たな事業として取り組むことを期待したいと思うのです。

 

今日はこれにておしまい。また明日。


アマモの力とその増殖 <アマモ増殖へ新技術 最優秀賞 楠部准教授>などを読みながら

2018-10-11 | 海・魚介類・漁業

181011 アマモの力とその増殖 <アマモ増殖へ新技術 最優秀賞 楠部准教授>などを読みながら

 

ウェブニュースでは、NY株急落を受けて、東証も一時1000円超の大幅下落と、下落率は前者に負けていませんでしたので、世界的連鎖とか話題沸騰の状況でしょうか。日経の報道番組では少し前、多少の変動があっても3万円くらいまで上昇する見込みなんて解説する人もいましたが、私には実体経済と乖離しすぎではないかと思っていました。だいたいNY株の異常な上昇に加えて失業率の低下という実体経済を反映しているのか?という不思議な状況を上塗りする東京株式市場ではないかと思いますので、今回の下落は不思議ではないです。とはいえ、上昇期待が高まるばかりのアメリカ市場ですので、今後も破裂するまで風船が上昇するのかもしれませんし、日本も右向け右のような感じなので、無事着地するまではわかりませんね。

 

と余分な話をしました。本題はアマモのことです。

 

今日の毎日記事は<マリンテックグランプリ アマモ増殖へ新技術 最優秀賞に和歌山高専・楠部准教授 /和歌山>では、<「海のゆりかご」と呼ばれる海草のアマモを増やす新技術を考案した和歌山高専(御坊市名田町野島)生物応用化学科の楠部真崇准教授(41)が、優れた海洋技術を表彰する今年の「マリンテックグランプリ」(日本財団など主催)で最優秀賞に輝いた。>という喜ばしいニュースです。

 

アマモの驚異的な力は記事でも簡潔に紹介していますが、三重県農水商工部水産基盤室作成の<アマモ場再生ガイドブック>によると、沿岸海域の水質保全、生態系の維持回復には欠かせない生物ですね。

 

ここではアマモ場の機能として、<物質循環、生物の共存、環境保全の3つの機能に大別される。>として、それぞれ詳しい解説されています。

 

物質循環機能といってもわかりにくいのですが、それは次のように説明されています。

<アマモ及びその葉上に生育する付着藻類は、光合成により有機物を生産する「一次生産」を行う。また、枯死したアマモは海底や砂浜で分解されてデトリタスとなり、底質中に有機物を供給し、動物プランクトン、ゴカイ類、貝類等の餌として利用され、食物連鎖により高次消費者を支えている。また、可溶性のものは再びアマモの葉や根から吸収される。>まるで物質循環を稼働させる血液のように、生きているときも、死んでしまっても、有機物を生産・供給して、多様な高次消費者のエサになって支えているのですね。

 

生物の共存機能もわかりにくい表現ですが、<アマモ場の複雑な空間構造は、多様な生物の生息場所となっている。>ことや<幼稚魚育成>の場であったり、<産卵場>になったりしているとのことです。

 

環境保全機能についても、さらに3つの種類が指摘されています。

まず、水質浄化機能については<アマモは、生育に伴い海中や土壌中から窒素やリンなどの栄養塩を吸収し、富栄養化を防ぐ役割を果たしている。また、アマモ場の繁茂により流れが弱められ、海中の懸濁物質の沈降を促し、水質浄化に貢献している。>このことも以前から指摘されていますね。

 

次の<底質安定化>というのは、はじめて知りました。

<アマモ場は沖からの波浪を弱くし、また、地下茎と根束の伸長により海底基盤を安定化させる。また、漂砂などを抑制することで、砂浜や干潟の縮小を防止する。>言われてみれば納得です。

 

最後の<環境形成・維持>というのもわかったようなわからないような名称ですが、次のように解説されると、納得です。

<アマモ場内の静穏な空間は、 地上部が波浪を弱めることによって形成される。また、光合成 によりを吸収し、酸素を供 CO2 給することによって、アマモ場内の環境形成や維持に貢献している。>結局は、物質循環機能や生物の共存機能と同一の基盤でしょうか。

 

さてこのように沿岸域の生態系や地形保全にとって欠かせないアマモですが、わが国の多くの自然海岸は埋立により大幅に減少し、また、さまさま汚濁物質の海洋への流入により、さらに気候変動に伴う温暖化の影響もあって、アマモが減少している状況は長く続いているのではないかと思います。

 

その増殖に向けた研究は以前からされてきていますが(上記ガイドブックも再生計画がメインです)、それほど実効性のある成果はあまりない状況にあるように思うのですが、私のような狭い認識でわかっていないだけならいいのですが。

 

毎日記事では<人工増殖に向けては、これまでアマモの種子を分解性の容器や麻のシートに植え付けて海底に設置する手法などが取られてきた。しかし、容器や麻がごみとして海に残ることや、ダイバーが潜って設置しなければならないなど手間がかかるのがネックだった。>人工増殖に有効策が十分ではなかったことが指摘されています。

 

今回最優秀賞に輝いた<楠部准教授らは、微生物を利用して海中の砂を固めた「バイオセメント」を開発。>ということが評価されたようです。

 

楠部氏は<実際にアマモの種子を植え付けた高さ10センチの円柱状のバイオセメント約20個を、日高町沖の水深数メートルの海底に沈める実験も行った。>

 

記事には写真が掲載されていて、<海底に沈められたアマモの種子を植え付けたバイオセメント>とキャプションがついています。

 

で、不思議に思ったのは、そのバイオセメントにはアマモの種子が植え付けられているようですが、そこからアマモが成長している様子は画面からはちょっとよく分かりませんでした。

 

他方で、そのブロックの背後にはアマモが群生した様子が映っていて、その下部に劣化したバイオセメントが映っているのかと思いつつ、はっきりしません。キャプションでそのような指摘があるとそうかと思うのですが、どうもまだ種子を植え付けたばかりのバイオセメントの段階で、成長したアマモの成長は写真では撮影されていない?ということでしょうか。

 

たしかに<今後は種子の発芽条件の検討など、事業化も視野にさらに研究を進めるという。>とか、<「アマモで成功したら、次は黒アワビなど高級な貝のエサになるクロメなどの海藻にも応用したい」と話している。>ということは、まだアマモで成功したわけではないということでしょうか。

 

う、と少しうなりつつ、でも最優秀賞を受賞するくらいですから、アマモ増殖の成功可能性が高いと評価されたのだと、期待したいと思います。

 

バイオセメント自体、その構造や材質などよくわかりませんが、これまた将来性のある技術として期待したいと思うのです。

 

そろそろ一時間になりそうです。このへんでおしまい。また明日。


共同漁業権の性質とは <諫早湾干拓事業 開門命令「無効」「漁業権は消滅」福岡高裁>などを読みながら

2018-07-31 | 海・魚介類・漁業

180731 共同漁業権の性質とは <諫早湾干拓事業 開門命令「無効」「漁業権は消滅」福岡高裁>などを読みながら

 

今日は酷暑を感じる一日になりました。久しぶりに和歌山地裁まで行ったのはいいのですが、高速道路(まだ正式ではない)に乗った途端に、交通事故トラブルで渋滞に出くわし、仕方なく地道を走ったのですが、余裕を持っていったのに30分の遅刻となりました。

 

普段いつも和歌山地裁に行くときは余裕をもっていき、裁判所で一休みするのですが、高速で渋滞に出くわすと、遅れは10分、20分でききませんね。今回の裁判は裁判所に近い事務所の代理人とかでしたので、事前連絡して待機してもらえ、大きな迷惑をかけずに済みました。しかしそうとばかり限りません。遅刻は厳禁ですし、とくに刑事法廷では絶対ですね。今後はさらに余裕を見ておく必要がありそうです。

 

往復のドライブも熱くて疲れまして、事務所に帰ると着かれてぼっとしていました。すると別の会議を失念していて、連絡が来ました。そしてようやく帰るともう7時です。今日の話題はというと、いろいろありそうですが、やはり諫早干拓事業の裁判でしょうか。一体全体、毎日はいくら紙面を割いていたでしょう。それだけ大きい事件かとふと思いつつ、当事者にとっては当然ですし、漁業者が訴えた裁判とその後に営農者が訴えた裁判ではまったく異なる判断がでていたのですから、司法判断としても異様でした。

 

私自身、日弁連の調査で諫早には一度行ったことがあり、仲間の堀さんが弁護団で頑張っているので、注目してきました。堀さんは同期で、彼とは日弁連の湿地シンポジウムで一緒に各地の湿地に出かけていき、とりわけ彼の本拠地、和白干潟などを案内してもらったときなど、クロツラヘラサギやさまざまな水鳥の生態を解説するときは、ほんとに惚れているんだなと思うほどでした。

 

私が湿地問題に関わるようになったのが90年代初頭でしたが、彼はすでに知られた存在だったように思います。この漁業者側の弁護団は優秀な人材を集め、精力的に訴訟を展開し、02年の提訴以来画期的な判決を勝ち取ってきたと思います。他方で、営農者側も負けずに真逆の裁判を勝ち得てきましたね。

 

ところで、本日の毎日記事の多数をすべて取り上げることができませんが、一面記事<諫早湾干拓事業開門命令「無効」 「漁業権は消滅」 国が逆転勝訴 福岡高裁>では<国営諫早湾干拓事業(長崎県、諫干)を巡り、潮受け堤防排水門の開門を強制しないよう国が漁業者に求めた請求異議訴訟の控訴審で、福岡高裁(西井和徒裁判長)は30日、国の請求を退けた1審・佐賀地裁判決(2014年12月)を取り消し、国に開門を命じた福岡高裁判決(10年確定)を事実上無効化する逆転判決を言い渡した。>というわけですね。

 

西井裁判長の履歴を見ると、昨年裁判長になったのですが、高裁裁判長としては早い抜擢ではないかと思うのです。優秀なのかもしれませんが、他方で国寄りの判断をする出世街道を進んできた人なのかもしれません。それは偏見といわれるかもしれませんが、おそらく彼の期では早い就任ではないかと思うのです。それは本来、判決の内容と関係ないですけど、どうもこの判決、気になります。

 

三面にも大きく<クローズアップ2018諫早湾 開門命令無効 国のごね得、司法追認>とあり、<主要争点 判断せず>と指摘しています。それは当然ですね、原告である漁業者の訴えの基礎となる共同漁業権を消滅したと否定したわけですから、これまで長い間大変な主張立証を重ねてきた論点に答えなくていいわけで、簡潔明瞭な判断となりますね。

 

この点<漁業者側弁護団の堀良一弁護士は「有明海荒廃の原因などの論点を判断せず、これ以上の肩すかし判決はない。裁判所が司法の役割を放棄した」と強く抗議した。>というのは当然でしょう。

 

ただ、福岡高裁としては、これまで開門しないことを前提に和解を推し進めてきたようですので、この和解の中で、判決の結論は暗黙に示していたのかもしれません。

<「堤防閉め切りから21年の間に開門を前提としない周辺者の生活が営まれ、開門すれば多大な影響を与える」。福岡高裁が3月に示した和解勧告には、国が開門に応じない現状を追認する姿勢が垣間見えていた。

 背景には諫干を取り巻く状況変化がある。国は開門の代わりに100億円の漁業振興基金創設を提案したが、運営を担う有明海沿岸4県のうち最後まで開門を求めた佐賀県の漁業団体が今年3月、非開門受け入れに転じた。漁業者側弁護団は「国は100億円をちらつかせて切り崩しを図った」と批判するが、福岡高裁は5月、漁業団体の非開門受け入れを評価し「重い決断に考慮を」と漁業者側に基金案受け入れを迫った。>

 

西井裁判長は、100億円の基金を前提に和解を迫ったのに、拒否され、安直な?共同漁業権消滅という冷徹な刀でばさっと切り捨てた印象です。見事という評価は国や営農者にはされるかもしれないけれど、これまでなんのために闘ってきたのか、その是非をしっかり判断しないこのような判断は正義なのかと問われそうです。

 

<漁業者側弁護団の馬奈木昭雄団長は「誰ひとりとして『有明海再生の道が見えた』とは思えない」として、最高裁で争う姿勢を示した。諫干を巡る問題は、解決に向かうどころか、混迷を深めている。>というのが実態ではないでしょうか。

 

では西井裁判長の判断根拠はなんだったのでしょう。

開門命令無効 異議訴訟、国が逆転勝訴 控訴審判決 要旨>によれば、<現行法の内容や趣旨を総合考慮すれば、漁業協同組合などに許された共同漁業権は、法定存続期間の経過により消滅すると解すべきだ。>

 

共同漁業権の存続期間が過ぎれば消滅し、新たに認められたものは別の新しい権利だというのです。その解釈は漁業法を次のように解釈するからです。

<現行漁業法は、共同漁業権について10年を存続期間と定め、延長を認めていない。これは漁業権の主体や内容の固定化を防ぐために、都道府県知事が一定期間ごとに漁業権の内容と主体を再検討する機会を設けたものと解される。これにより水面を総合的に利用し、漁業生産力を発展させることを図ったと解される。>

 

たしかに免許制で、存続期間を定めつつ、免許の更新規定はありませんので、西井裁判長の漁業法の文理解釈は間違っていません。しかし、それが実態に適合するのでしょうか。共同漁業権が10年の存続期間で、それが過ぎると消滅するといったことが、漁業者、漁業組合の意識とマッチするのでしょうか。

 

私にはそのような理解は実態を反映しているとは思えない、机上の議論に思えるのです。ただ、そのような漁業法の運用が行われ、それも民主的公開性をもって免許がされるならばという立場です。それは漁業組合といくつかの事件で争った立場としては、既得権を必要以上に主張する場合が少なくないと思うからです。

 

それは本件に当てはまるとは思えません。漁業法の勉強は久しくしていないので、知り合いの熊本一規さんに教えを請うた方がいいかもしれません。彼から著作の『海は誰のものか』などを頂いているのですが、なかなか読めないままでいるので、こういう機会にしっかり読んでおくことを考えたいです・・・

 

そろそろ1時間となりました。また明日。