171012 光と影 <神鋼 不正慣れ体質>などを読みながら
今回の衆議院選挙、視界がはっきりしているようで判然としない落ち着かない感じを受けます。
それは経済状態もそんな印象をぬぐえないことと関係するかもしれません。今朝の毎日は見出しの記事で神戸製鋼の次々とでてくる検査データの不正を的確に示しているように思えます。ところがウェブ記事ではこの見出しはさすがにきつい表現だったのか見当たりません。しかし、ここ数日だけでも神鋼の不正問題が次々にでてくる記事で驚きます。
とりあえず今日の一部の記事<神戸製鋼所データ改ざん 過去の教訓生かせず 規範定めたばかり>はいかに神鋼が検査不正を会社全体で行っていたような実態を示しています。
<神戸製鋼所の製品検査データの不正問題が拡大している。端緒となったアルミ、銅製品のデータ改ざんのほか、鉄粉製品の強度などのデータ改ざんや、光ディスクの材料の試験を行う子会社のデータ不正が相次ぎ浮上、11日の市場では経営への影響を懸念し株価が大幅下落。>
神鋼の取り扱う製品は多くの産業の米ともいうべき必須のものです。それが安全性確保の基本である検査データの不正を持続的に行ってきたことが曝露されたのですから、各メーカーはもとより消費者はなにを信頼したらいいのでしょう。
しかも神鋼は同種の不正を過去にも繰り返しています。
<2006年 加古川製鉄所(兵庫県加古川市)と神戸製鉄所(神戸市灘区)で、大気汚染防止法の基準値を超える窒素酸化物(NOx)と硫黄酸化物(SOx)を排出しながら、地元自治体に提出するデータを改ざん、隠蔽
16年 グループ会社の神鋼鋼線ステンレス(大阪府泉佐野市)が、家電製品などのばねに使われるステンレス鋼線の試験値を改ざん、日本工業規格(JIS)を満たしているように偽装>
記事は<神戸製鋼はこれまでグループ内で法令違反などが発覚するたびに倫理綱領を定めたり、再発防止策を講じたりしてきたが、教訓は生かされなかった形だ。>
神鋼といっても、私の知識ではラグビーでの輝かしい活躍しか知りませんが、平尾を中心とする華麗でフェアなプレイはとても印象に残っています。その神鋼がこんなひどい不正を長く行ってきた、しかも社長はじめ経営者はまったく把握していないというのですから、これは大変な問題です。
そういえば日産の検査不正もつい最近まで話題を占めていました。<日産38車種116万台リコール 無資格検査問題で>安全性に問題ないと弁明していますが、たしかに検査データの改ざんといった競合メーカーと比べれば、ある種形式的なことと理解されてしまうかもしれません。
しかし、<社説日産で無資格検査が横行 消費者への重大な背信だ>が指摘するように、<国土交通省によると、資格のある検査員がやったと装うため、書類上では正式な立場の者の判子が押されていたという。さらに、有資格者の印影の異なる複数の判子が使用されていた形跡もあった。
西川広人社長らの「現場の認識不足」という説明とは異なり、組織的な偽装工作の広がりをうかがわせるものだ。消費者の信頼を裏切る重大な背信行為とも言える。>
これは企業としてのコンプライアンスの欠如という意味では、無視できない積極的な偽装の疑いが強いのです。社説も<西川社長は記者会見で「検査そのものは確実にやっていた」と強調したうえで、「検査工程の意味が現場で十分に認識されていなかった」と釈明した。しかし、偽装工作の疑いは、不正な検査をしていることを現場が熟知したうえで、隠そうとした可能性を示している。>と問題視しています。
ところで、株式市況は<東証 21年ぶり高値>と高揚感が蔓延しているようにも見えます。ほんとうにそうでしょうか。上記の日本を代表する2社の例は氷山の一角に過ぎないのではないでしょうか。無理な競争で不当にコストダウンすることが企業体質として求めすぎ、そのことにより数字的には世界トップの売り上げを獲得したり、業績アップにつながるかもしれませんが、適正な生産工程、企業意思決定の適正手続きが担保されていないと、それは張り子の虎になりかねません。
私は別の記事に経済の本質を感じます。<企業業績、広く改善 「官製相場」冷めた声も>では前向きにとらえた内容もあります。
<2012年12月の第2次安倍政権発足後、日銀の大規模金融緩和などが導き寄せた円安を追い風に、日経平均株価は15年6月、00年ごろのIT(情報技術)バブル時を超える水準を記録した。今回は更に高値を更新し、一気に山一証券などが破綻した1997年の金融危機を迎える前の水準を回復。「足元で中国をはじめとする新興国経済の安定感が増している」(大和証券グループ本社の中田誠司社長)ことなどを根拠に、更なる株高に期待する向きもある。>
他方で、<今回の株高は巨大な公的マネーが支えている側面もある。日銀は16年7月に大規模金融緩和の一環として上場投資信託(ETF)の買い入れ額を年6兆円に倍増すると発表。年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が株の運用比率を大幅に高めていることも、株価の押し上げにつながっている。市場では「日銀が支える官製相場で、実力を反映しているとは言えない」(債券アナリスト)と冷めた声も上がる。>
そしてなによりも、私はいまわずかに露呈された不正問題は、地下深くの地殻の中で、なにか問題が噴出しつつあるおそれさえ感じます。不正は染まると抜けがたく、また不正競争すら起こりえるわけで、社会全体がそうならないか、モリカケ問題の蔭には隠れた不正の温床が広がっていることを心配します。
今日はこの辺でおしまい。