たそかれの散策

都会から田舎に移って4年経ち、周りの農地、寺、古代の雰囲気に興味を持つようになり、ランダムに書いてみようかと思う。

地面師リスクと専門家の役割 <地面師事件 なぜ、積水ハウスはだまされたのか>などを読みながら+補充

2018-10-19 | 職業における倫理性

181019 地面師リスクと専門家の役割 <地面師事件 なぜ、積水ハウスはだまされたのか>などを読みながら

 

今日はちょっとしたことで仕事がはかどらず資料探しなどで時間を使いかなり憔悴気味でした。ただ、弁護士特約で依頼のあった交通事故の訴訟提起にかかわる着手金について、2ヶ月前に申請していたのが、保険会社による審査がやっとおり、入金されるとの連絡を受け、少し気分を取り戻しました。弁護士特約事件では示談交渉くらいでは着手金は報酬金と一緒に請求しますが、訴訟となると手間と時間がかなりかかりますので、それに専門家のサポートも必要な事案なので、保険会社の対応待ちでした。

 

疲労感が残っているので、本日のお題について考える気分にはならない状況で、最近また紙面を賑わせている積水ハウス地面師事件を取り上げてみようかと思います。

 

一昨日の毎日記事<地面師事件なぜ、積水ハウスはだまされたのか>は、誰もが疑問に思うことを取り上げているので、読みましたが、なにか釈然としないのです。以前、この事件については取り上げたことがあり、そのときは社内事情を紙面が問題にしていたので、その観点から言及しました。今度はどうかと思って読んで見ると、どうも隔靴掻痒なのです。

 

とりあえずその記事をフォローします。

<大手住宅メーカー「積水ハウス」(大阪市北区)が東京・西五反田の土地取引をめぐって約55億円をだまし取られた事件で、警視庁捜査2課は偽造有印私文書行使容疑などで地面師グループ8人を逮捕し、ほかにも数人の逮捕状を取った。>

今回のニュースが警視庁が地面師グループの多くを逮捕し、本格的な捜査に入ったことが契機のようです。

 

<事件の全容解明はこれからだが、・・・なぜ、積水ハウスはだまされたのか。同社の調査対策委員会が今年1月にまとめた報告書や関係者の証言から、一連の経過を追った。【五十嵐朋子、佐久間一輝、黒川晋史】>ということで、ネタは内部調査報告書(公表されたのかしら)と関係者証言と言うことです。

 

地面師に狙われた対象物件は<JR五反田駅からほど近いビル街に、うっそうとした樹木に覆われた一角がある。戦前から続く老舗旅館だった土地で、現在の建物は1954年に建てられた。大手ホテルチェーンなどが台頭する中、営業を続けていたが、数年前に廃業。>というのですから、ここから数年前まで老舗旅館として営業されていた土地建物ということがわかります。五反田駅周辺は90年代後半ないし2000年頃から飛躍的に開発の波がやってきて変貌著しい環境ですね。

 

売買経緯は<事件は2017年3月、「旅館の跡地が売りに出されている」という情報を積水ハウスの担当者が耳にし、・・・翌月18日に阿部俊則社長(当時)が物件を視察し、20日には取引を進める決裁を出した。担当者らは売買話を持ちかけてきた仲介業者を通じて「所有者」を装った女と接触し、同24日に63億円での売買契約が成立した。>

 

さすが大企業ですね、素早い対応です。でも<不動産業者の間では「のどから手が出るほど欲しいが、地主が首を縦に振ってくれない土地」として有名だった。>というのですから、地主の意思がなぜ変わったのかといった基本的な確認がされたでしょうか。

 

売買成立後直ちに仮登記をしたようです。

<自身の土地が仮登記されたことを知った「本当の所有者」(当時72歳、昨年6月に死去)だという人物が5月上旬、同社に内容証明郵便を送って来たのだ。「売買契約をしていないのに仮登記された」と、登記の取り消しを求める内容だった。>

 

こういった内容証明郵便は、相手が上場企業ですし、地主が高齢で病床にあったというのですから、弁護士からのものと思われます。所有者の行為ではないとして仮登記の取消を求める内容ですから、通常、顧問弁護士に対応を相談し(金額が大きいですし、地主の本人性や意思確認の必要からいえば売買成立前に必要です)、より慎重な対応が求められる事態です。

 

<内容証明は4回にわたって届いた>というのに、<積水側は「取引を妨害したいがための嫌がらせ」と解釈してしまった。>といった認識になること自体、異常な事態ではないかと思います。

 

ただ、地主側代理人としても、4回も内容証明を出すことはどうなんでしょうね。それだけ緊急を要すると考えていたのだと思われますが、そうであれば仮処分申立をするのが本来であったように思います。あるいは地主が病気で十分な意思疎通ができなかったのかもしれませんが、普通は4回も立て続けに出す前に、大企業とはいえ相手がかなりいい加減な対応をしていて、売買を実行し本登記手続をすることが相当程度予測しうる事態であったと思われますから、まずは仮差止めでしょうね。

 

あるいはどうせ地主本人の意思に基づかない無効な売買契約だから、本登記しても抹消登記手続請求によって原状回復できるので、被害回復は後からでもできると踏んだのかもしれませんが・・・このあたりは地主側弁護士の弁を聞いてみたい気もします。ま、ノーコメントでしょうか。

 

それより何より<土地登記の申請を審査していた法務局は6月9日、印鑑証明などが偽造されていることを見抜き、申請を却下した。この段になって初めて、積水ハウスは地面師詐欺の被害に遭っていたことに気付いた。>というお粗末さは当然ですが、ここで不思議なのは司法書士です。

 

登記手続の専門家である司法書士は、本人かどうかの確認、本人意思の確認、登記手続に必要な委任状の署名が本人によるものか、印鑑証明書が適正なものかどうかなど、プロフェッショナルとして、極めて慎重です。他方で、そういった注意義務を怠ると、損害賠償責任を負うのは当然です。

 

で、<被害額はグループ側が同社からマンションを購入するとして相殺した7億5000万円を除いた55億5000万円。同社は9月、詐欺容疑で警視庁へ刑事告訴した。>

 

ということですから、仮登記は申請通りに行われ、登記されたのですね。すると登記義務者である地主の承諾書と印鑑証明書を添付していると思いますが、まずこの時点で司法書士がどのようなチェックをしたかです。ただ、登記官も見逃していたことになりますから、見事な偽造だったと言うことでしょうか。印鑑証明書の偽造なんでできるのかと思うのですが、それも司法書士、登記官が見逃すとは・・・

 

本登記の時は、登記官が見破ったようですね。ただ、地面師グループにとってはすでに売買代金が支払われており、時すでに遅しですね。

 

毎日記事<積水ハウス土地詐欺被害 地面師スカウト役も 所有者役が誕生日、えと間違う>では、本人なりすましの問題が取り上げられ、次のような確認の経緯が取り上げられています。

 

<捜査関係者によると、羽毛田容疑者は昨年5月31日、売買契約が成立した後の本人確認の手続きで司法書士にえとを聞かれ、本当の所有者(当時72歳、昨年6月に死去)のえとではない答えをした。誕生日も正確に言えなかったが、偽造パスポートなどの本人確認書類がそろっていたことから手続きは続行され、翌日には手付金などを除く約44億円を受け取った。>

 

上記情報が正確であったとして、司法書士は、えとや誕生日を質問しながら、それが正確に答えられていないのに、羽毛田容疑者を本人と信じたようですが、それは疑問です。少なくとも認知症を疑って、判断能力の確認として簡易な長谷川式による質問をも検討するか、やはり本人性をしっかり確認する質問をすべきでしょう。数年前まで旅館経営をしていたというのですから、経営状態やあれだけの老舗旅館ですから常連客などを質問することくらいは普通でしょう。

 

偽造パスポートがどのような作り方なのか分かりませんが、仮に簡単に分からないほど精巧なものであったとしても、その渡航歴を確認することも必要だと思います。おそらくデタラメな内容だと思われます。

 

印鑑証明書は偽造でしょうから、実印とされるものも偽造でしょう。こういった印鑑証明書を精巧に作れるものなんでしょうかね。うーん。登記官もいったんはだまされたか、そこが不思議です。

 

ただ、この本人確認は、さほど難しくないはずだと思います。羽毛田容疑者は旅館経営の経験もないわけですから、ちょっと話せばすぐにばれるはずです。だいたい、誕生日も干支といった詐欺師として最低限度の知恵もないわけですから、すぐに化けの皮が剥がれるタイプですね。それをなぜ見逃したか不思議です。

 

今日はそんな不思議を書いてみました。このへんでおしまい。また明日。

補充

 

先日書いたこのブログでは捜査段階なので、事実関係が分からないまま隔靴掻痒であるとこぼしました。その謎解きで、道具屋の証言を取り上げてその一部を推測しています。

 

今朝の毎日記事<積水ハウス土地詐欺被害 作れぬ書類ない 精巧偽造、地面師も助長 旅券、印鑑 分野ごとに「道具屋」>では、詐欺の手口のうち、偽造パスポートと印鑑証明書の作成について、取り上げています。

 

<「作れないものはない」。今回の事件には関与していないが、印鑑作製などの依頼を請け負っているという男が、手口の一端を明かした。【五十嵐朋子、佐久間一輝】>

 

その話によると<印鑑を作る際は依頼主から印影のコピーを受け取る。それを旧知の印鑑業者に発注すると、早ければ1時間で印鑑が完成する。>たしかに印影のコピーがあれば、印影通りの印鑑を作ることはさほど難しくないのかもしれません。実際、そういった偽造を防ぐため、公文書はもちろん私文書でも印影部分は第三者に示すとき黒塗りにしています。

 

ただ、その印影をどのようにして入手したのか、そこが不思議ですね。不動産登記申請添付書類には印鑑証明書等印影が分かる文書がいくつか添付されていますが、その閲覧謄写は利害関係人とその代理人しか通常できません。弁護士や司法書士は、その立場で印影が本人のものか、委任状の署名が本人の筆跡と符合するかを調べることがあります。本件ではどのような経路で誰が入手したか、これもこれからの捜査で追求されるところでしょう。

 

次に印鑑証明書は、記事によれば、別の実印を作って登録したようです。

<積水ハウスの事件では、地面師グループは偽造した身分証で本人になりすまし、役所で新たに別の印鑑を実印として登録。その後に発行された「真正」の印鑑証明書を悪用する手口だった。>



 


それぞれの倫理性のあり方 <日本学術会議の声明案><石原元都知事の会見と訂正>などを読んで

2017-03-08 | 職業における倫理性

170308 それぞれの倫理性のあり方 <日本学術会議の声明案><石原元都知事の会見と訂正>などを読んで

 

今朝は少し霜が降りていて、車の窓ガラスも凍っていました。長い間洗っていなかったので、ついでにざっと車全体に水をかけて多少は汚れを落としました。最近ついた鳥の糞もついでに洗い流しました。なんと雑なやり方と車愛好家にはおもわれそうですが、汚れが周りの人に嫌な印象(これも人によりけりでしょうが)を与えない程度にすれば十分かと思っています。そんなわけでガソリンスタンドなどで機械洗浄をしたり、業者に洗ってもらうようなこともしません。自分で洗っても数分で終わる、適当な洗い方です。

 

わが国の多くの道路ではその程度で十分かなと思っています。これがカナダなどの長い間氷上を走る場合は汚れが半端でないので、手洗いくらいでは落ちません。北京の場合は大気汚染、PM2.5を含む粉塵で充満しているので、これまたしっかり洗浄が必要でしょう。車所有者、ドライバーとしてのマナーも、その居住する地域の状況に合わせて異なるかもしれません。

 

さて、今日は午前中に和歌山に向かい、帰りは業務時間ぎりぎりになりそうなので、いまからブログを書こうと思っています。

 

今日もこれだというテーマはないのですが、いくつかの報道を見ていて、なんとなく共通する問題意識を感じてしまいました。それは、うまくいえませんが、それぞれの職業「倫理性」というか、誠実さというか、信義とは何かとか、まだ固まっていませんので、とりあえず倫理性ということで、いくつかの事例をとりあげてみたいと思います。

 

私が「倫理性」を語る資格があるかと問われると、直ちに否と答えのが正しいと思っています。その私がそのようなテーマを取り上げるのは、私自身への問いかけでもあると思っています。達摩大師はたしか生涯疑いを抱き続けたと記憶しています。疑団は、生と死を常に意識しつつ、忘却するほどに、すべてのことに実践的に求める必要があるのではないかということに、その足下にも及ばない私ですが、禅語に触れるときそう感じます。

 

で、この倫理性との関係で、今回取り上げるのは、日本学術会議の軍事的安全保障研究に関する声明案、石原元都知事の記者会見と訂正文、安倍昭恵夫人の姿勢と官僚の対応、森友学園の代理人の説明です。

 

いずれも異なる立場ですが、高い識見と高度の「職業倫理性」が、その法的な意味での立場が確立しているか否かを問わず、求められるのがわが国において多くが期待するものではないかと感じています。

 

まず毎日記事<日本学術会議 軍事研究、大学が審査 ・・ 半世紀ぶり声明案>を取り上げたいと思います。

 

記事によると<学術会議は1950年と67年に戦争目的と軍事目的の研究を拒否する声明を決議している。>戦前の学問・研究の自由が帝国主義・軍国主義化した政府によって制限され、軍事技術の開発研究のために利用され、侵略戦争により国内外に大勢の死傷者、悲惨な災禍をもたらした重要な要因となったことへの反省があったと思うのです。

 

その解釈には幅あり、研究者の自主的判断に委ねられてきたのですが、最近<防衛省が公募して防衛装備品に応用できる先端研究を大学などに委託する「安全保障技術研究推進制度」を始めたのを機に、昨年6月から計11回の議論を続けてきた。>ということです。

 

それだけでなく、米軍などからは多額の研究費がこれまで適切な審査も公開もされない中で、研究者に渡され、その研究成果が米軍などに提供されていることも、たしか最近の記事で問題にされていたと思います。

 

現在の研究、とくに基礎研究は、軍事的利用にとって極めて有効なないようであることが少なくないようです。先般、クイーンエリザベス工学賞を受賞した理由、埋込フォトダイオードは、米軍兵士が備え付ける暗視カメラを含めその高度な技術の改良型が多方面で軍事技術として利用されているのではないかと思われるのです。

 

防衛省はいままでも秘密裏に一定の防衛技術の研究を委託していた可能性がありますが、今回新設の「安全保障技術研究推進制度」は制度化したわけで、研究予算もいままでとは桁外れになる可能性が大でしょうし、軍事研究に歯止めがきかなくなる危険性を払拭できません。

 

日本学術会議は、8ヶ月近く議論を重ねて、ようやく防衛省の新制度については、<「学術の健全な発展という見地から問題が多い」と強調し、慎重な対応を求めた。>と謙抑的な姿勢を示しつつも、断定的な態度を示さず、<軍事的安全保障研究とみなされる可能性のある研究について、技術面や倫理面から適切かどうかを審査する制度を大学などの研究機関に設けるよう提言。各学会にもガイドラインを設けるよう求めた。>としています。

 

議論が大きく割れるたことが想定され、学問・研究の自由のあり方について、各大学の自主性に委ねた形となったと思われます。さて問題は、いまの各大学における研究の内容や手続き等について、実効性あるガイドラインをつくり、的確な審査体制を実施できる状況にあるか、検証される必要があると思います。

 

あまりに多様なガイドラインが次々とできあがっていく中で、研究不正が次々と発覚していますが、氷山の一角に過ぎず、それは大学側の審査機構が十分に機能していないことの裏返しではないかと思うのです。

 

マンハッタン計画をはじめ、多くのとりわけ重要な軍事研究は、個々の研究者には細部しから知らされず、研究の究極の目的や利用方法など一切知らされないまま、その歯車の一部として、研究の自由が保障されていたことが、明らかにされています。

 

個々の研究者の良心や、倫理性に依拠するだけでは、到底この問題に対処できないと思うのです。大学の審査機関に頼るとしても、専門領域に偏ったメンバー構成では適切な判断を導くことが困難かもしれません。いずれにしても、この声明案自体について、より慎重な議論をする必要を感じています。

 

次に、石原元都知事の豊洲問題に対する記者会見とその一部訂正文について、一言。石原氏は、自分が都政のトップであったときの問題として最終責任を認めながら、その責任は関係した担当者や議会も全体として負うべきだというのですが、それでは東京都のトップとしての最終決断の責任はどこにあるのでしょうか。豊洲の土地が抱えている土壌汚染の問題と築地が抱えているさまざまな問題をどのような事実、個別具体的なファクトを比較検討して、決めたのでしょうか。最終決断を専門家に丸投げなどはできるはずがないでしょう。たとえば弁護士が土壌汚染問題で責任追及する場合でも、専門家の判断は参考にしつつも、法的責任を追及するかは弁護士の責任で行います。むろん依頼者が理解して納得してくれることが前提ですが。それと同様に、専門家が安全だからといっても、行政の立場で、市場関係者、消費者その他ステークホルダーの意思を綜合して、最終的に安全性・安心を配慮して決めるのはまさにトップである石原氏以外ありえないのではないでしょうか。

 

それが職業倫理として、都知事に求められるのではないかと思うのです。弁護士とよく相談して、会見に臨まれたと思うのですが、交渉担当者として責任を負った人、交渉を委ねた人として前川練馬区長を名指ししましたが、これは名誉毀損になりうるリスクの高い言動です。豊洲問題の責任の有無が問われる記者会見を100条委員会前に開いて行う以上、相当な根拠をもって発言するべきなのに、その後に過ちでしたと行った訂正文を出すようなお粗末さは、倫理観の欠如と批判されても仕方がないのではないかと思うのです。

 

それに加えて、小池都知事に対し、豊洲移転問題についてこのまま移転しないのであれば、不作為の責任を法的に追求するという会見も、いかがなものかと疑念を抱きます。当然、弁護士の助言・協議の上での発言と思いますが、軽率すぎないでしょうか。その根拠としているのは、専門家の意見ということのようですが、むろん東京都の専門技術者会議のメンバーでもない方でしょう。専門家という立場の方はさまざまな見方をしており、事実内容が同じでも評価が分かれます。事実そのものが専門技術者会議が設定したとおりに施工されず、地下水モニタリング結果も環境基準を超える有害物質が確認されています。そして事実確認のために再検証が行われている最中であり、その結果も出ない段階で、安全だという専門家の意見を鵜呑みにして(石原氏は自ら丸投げを認めているのですから)、なんで豊洲に移転しないのか、それは不作為の違法だというようですが、それは法律論ではないです。

 

一体、不作為の前提たる、作為義務をどのような法的根拠があるのか、示すべきでしょう。アドバイスを受けているか協議している弁護士が、丁寧に「素人の」元都知事に説明した上で、理解して会見すべきではないでしょうか。それが都政のトップにあった倫理上の義務ではないでしょうか。

 

安倍昭恵氏についても一言。先般、名誉校長就任のいきさつについて、少し批判的な内容のブログを書きました。昨日でしたか、TV番組で、昭恵氏がなにか男女平等を求めるようなテーマの講演でお話しをしていました。その語りは、普通の主婦が、夫がたまたま首相になったために、首相夫人となり、ファーストレディーとして公的な存在(これまで否定することはどうでしょうか)になったことに戸惑いを感じている様子を自然な語りで話されていました。たしかに普通のおばさん、主婦にも思えます。それがこれまで東日本震災などや女性への支援活動などさまざまな場での彼女の立ち居振る舞いが、安倍首相とは一線を画する形で魅力を感じさせてくれる要素であったと感じるのは私だけではないかもしれません。

 

しかし、昭恵夫人が、ある私立小学校の名誉校長になることとなると、彼女はそういう意識でなくとも、その学校がまだ認可前であり、しかも学校敷地もない、校舎もないとき、虚空誘地を管理し売却を取り扱う国交省航空局や、財務省近畿財務局のトップは、その人事を統括する内閣府の顔色を見る、(文科省の天下りの例をみるまでもなく彼らにとってだれが人事を牛耳っているかは最大の関心事の一つであることは否定できないでしょう)ということは、昭恵夫人には想像できなかったと思います。でも官僚としては全然別の見方になるでしょう。大阪府も同じでしょう。府の審議会も異例の臨時会を2度も開くのはなぜでしょう。

 

行政官僚というものは、長い歴史の中で、そういう意味の倫理性を無意識的に失ってきて、そのような特別扱いこそ当然と思う節が見て取れるというのが世の中の多くの感覚ではないでしょうか。李下に冠を正さずは、何度も取り上げたかもしれませんが、昭恵夫人は自らは主婦に過ぎないと思っているかもしれませんが、講演に呼ばれたり、幼稚園に招待されたりするのは、ただの主婦だからではないのです。昭恵夫人の朗らかそうな性格からでもないのです。やはり首相夫人という公的存在だからこそです。そこに特別の倫理観が必要ではないでしょうか。また、問題は昭恵夫人というよりは、行政官僚の姿勢にあると思います。それは律令時代以来の長い長い悪習ともいうべき体質ではないかと危惧します。それこそ改善されるべきでしょう。

 

でなければ、交渉経過をただちに廃棄する必要などありえません。自らの潔白を、職業倫理の適正な履行を担保するのは交渉記録です。その根拠を廃棄してブラックボックスにする体質こそ問題でしょう。現在露見された、校舎建築に係る補助事業申請に提出された建築請負契約書が同じ日付けで2通あり、本来の3倍の価格であるといったことについて、なんらチェックされていない(積算根拠はどこにいったのでしょう)こと自体、恥ずべき審査です。土地売買に係わり、入札制度にしなかった根拠も不明ですし、土序汚染のある土地をわざわざ学校敷地として売り渡すこと、その法人が小学校経営の経験もなく、認可も下りていない段階で、売り先にするなど、この事務処理における清廉性といったものはまったく感じられず、倫理性の欠如を疑わざるを得ません。

 

最後に、森友学園の代理人です。これも新聞報道ですから、勝手なつまみ食いをして代理人の話を曲解した記事鳴っている恐れもあるので、そこは慎重であるべきと思いますが、弁護士倫理というものとの関係を取り上げたいと思います。

 

私自身、当地にやってくるまで弁護士倫理といったことを意識することはありませんでしたので、いまもってこれはどういうことかということが分かっているとはいえません。ただ、弁護士倫理の規定や弁護士法の規定の文言はともかく、江戸時代の公事、明治時代の代言人制度を経て、弁護士の自治、独立を勝ち得たのは、その自由と正義を求める倫理性、職業倫理への期待ではないかと思うのです。

 

その中で、他の弁護士が行う業務の内容について、批判することは、当該事案の内容を知らないわけですので、基本的には控えるべきだという、弁護士倫理の規定があったと思います。

 

以上を前提に、森友学園の代理人の姿勢について、新聞記事だけでコメントすることを躊躇しつつ、やはり他山の石として、あるべき姿かを問うてみたいと思っています。

 

当該代理人は、契約書が2通あることについて、<学園の代理人は、国への補助金申請に当たり最大限の見込み額で枠を取ったと説明しており、実際の金額は7億5600万円としている。>とのことです。もしこの記事通りに説明したのだとすると、学園自体が説明するのなら格別、弁護士として、一方に実際の金額の契約書があるのに、<「国には実施設計や業者が決まっていない段階で、最大限の見積もりで出した。虚偽ではない」と釈明>と約3倍の価格の契約書の説明が法律専門家として許容される内容か、疑念を否定できません。補助金申請としてもまったく裏付けない積算した金額の契約書を提出することは虚偽の疑いが相当程度高い可能性があり、その点について、学園側からのきちんとした説明や裏付けをとった上で、詳細に説明するのか、あるいはまだ調査中だからといって、説明を保留するのなら分かりますが、このような誰が見ても不正が疑われる説明だけで済ますことに残念な思いをします。

 

そして<大阪府の松井一郎知事が学園の経営体質などを批判していることには「何ら裏付けもせずに話している。入学予定の子どもが置き去りになっていないか」と反論した。>との記事もあります。代理人は、松井府知事の批判について、なんら裏付けもせずと批判していますが、そこまで批判するのであれば、審議会で問題にされてきた経営上の問題や廃棄物の適正処理の具体的な内容、校舎建築費のきちんとした裏付け資料を開示するか、少なくともそのような根拠をもって批判すべきと思いますが、記事からはそのような代理人の姿勢は認められません。もし代理人自身が学園サイドの一方的説明にのみ依拠しているのであれば、それこそ問題のある記者説明と言わざるを得ません。

 

以上、学園代理人に対し、記事だけから批判的な言辞を述べてしまいましたが、代理人として説明する以上、口頭による説明は誤解を招きかねません。文書を配布するなり、また根拠を示して説明するべきではないでしょうか。そこまでの準備ができていないのであれば、別の機会に記者会見を設けて丁寧に説明するのがセオリーではないでしょうか。

 

そろそろ和歌山に出かける時間になりました。時間切れで、検討不十分ですが、反論があれば、また検討したいと思います。