たそかれの散策

都会から田舎に移って4年経ち、周りの農地、寺、古代の雰囲気に興味を持つようになり、ランダムに書いてみようかと思う。

ノーベル賞の虚実 <NHKスペシャル “ノーベル賞会社員”>などを見ながら

2019-02-18 | 企業・事業・研究などの不正 適正な支援

190218 ノーベル賞の虚実 <NHKスペシャル “ノーベル賞会社員”>などを見ながら

 

トランプ大統領は次々と話題というか物議を醸し出す人ですね。そのトランプ氏と肝胆相照らす関係にあるかのような安倍首相、この発言に唖然としたのでしょうか。内心ほくそ笑んだのでしょうか。毎日記事の<トランプ米大統領 「安倍首相がノーベル平和賞に推薦」>では、公約である国境の壁建設で窮地に立ったトランプ氏、異例の非常事態宣言を発表するのに、これまでノーベル賞に値する成果を成し遂げたとでも自画自賛するのに、安倍氏の推薦を受けたとまで、この席で発表するのですから、さすがは取引上手といわれる所以でしょうか。わが国の文化にはとても似合わないように思うのですが。

 

ノーベル平和賞は政治的な色彩が強いとは言え、ここまで自分の無理矢理の政策実現のための道具に使われてはその評価もさらに一段と落ちたかもしれません。まあトランプ氏と安倍氏の間ではそれでもやむをえないかもしれません。

 

毎日記事<首相 トランプ氏のノーベル平和賞推薦、否定せず 「コメントは控える」>の対応は、わざわざノーベル賞推薦規則のようなものまで調べてまで、事実を秘匿するほどの話かと思いつつ、これこそ忖度政治が外交内政で行われている証かなと思ってしまいます。

 

しかしより厳密に科学的な評価が問われる科学分野のノーベル賞にも意外な落とし穴があるのですね。

 

昨夜<NHKスペシャル 平成史 第5回「“ノーベル賞会社員”~科学技術立国の苦闘~」>を見ました。国谷裕子氏を久々に見ましたが、取材内容も取り上げ方、彼女の語りもさすがでした。田中耕一氏の本音がとても素直に表現されていたように思います。

 

それにしても主人公の田中耕一氏の姿形に驚きました。私よりずいぶん若いのに、一瞬私より年上だったかと勘違いしてしまいました。その苦労の痕跡がにじみ出ているように思いました。

 

まず田中氏の冒頭で衝撃的なことばを述べています。それがはっきり思い出せないのですが、ノーベル賞の呪いみたいな表現であったかな(耄碌したのか恥ずかしい話、とても驚いたため忘れてしまいました)と思います。トランプ氏とは似ても似つかぬ、日本人の普通の感覚をお持ちの方のようにうかがえました。なぜ自分がノーベル化学賞受賞者に選ばれたのか、その日から16年もの間、苦闘してきたというのです。

 

たしかに田中氏は、他のさまざまな受賞者が長い専門的な研究の結果ようやく発明したことに比較すると、たんぱく質を抽出する発見という成果は偶然のミスから生まれた成果で、まさに瓢箪から駒のようなことだったようです。しかも博士などの肩書きもなく分野の異なるエンジニアであったわけですから、ノーベル化学賞受賞といわれても、心底きょとんとするしかなかったのかもしれません。しかも誠実でまじめな方ですから、その世界的な名誉に恐れおののいたのかもしれません。

 

ノーベル賞の価値をなにかと利用しようとする人にとっては利用価値があるでしょうけど、田中氏のような誠実に生きてきた方にとっては大変な重荷だったのでしょう。

 

しかし、田中氏は苦闘しつつも、誠実に生きる姿に変わりなく、重荷をしっかり受け止め、ノーベル賞を受賞できた所以を自問自答して、発明、イノベーションについても自分なりの問い直し、新たな発見という意味にとどまらず、新しい結合とか、新しいとらえ方とか、新しい活用法といった見方で、前向きに取り組むようになったそうです。

 

それは失敗を怖れず、過ちを怖れず、知らない人の意見を尊重し、異なる立場の人を結合していくなど、実践的に物事をすすめるのです。

 

むろんこれも一人ではなしえなかったですし、制度支援もありました。所属の島津製作所の当時の社長が田中氏に年間1億円を拠出して自由に研究する場を与えました。また、小泉政権の施策で、科学技術分野にも競争原理が導入され、財政当局によりねじれたものの、田中氏の研究にはたしか年間7億円でしたか?大きな支援があったかと思います。

 

その田中氏が発案した新たな企画は画期的なものでした。「血液一滴で病気の早期診断をする」という検査方法の開発です。最澄の「一隅を照らす」ではないですが、田中氏は世のためになることをしようと決意し、難病に苦しむ人の助けになることを考えたのです。

 

田中氏はいろんなところから、若い研究者を集め、彼ら彼女らの自由な研究の場を提供するのです。そしてたんばく質を抽出したように、若い研究者(任期付き)の絶え間ない実験の結果、アルツハイマー病の原因?物質とされていたアミロイドβを抽出することに成功したのです。ところがガスクロマトグラフィでしょうか、グラフにはアミロイドβとともに未知の物質も、大きく検出されていたのです。そのため、その抽出が有効かどうかはっきりしなかったのですが、アルツハイマー病の専門医である柳澤勝彦教授に相談したところ、不審に?思われつつも理解が得られ、症状のある患者さんとそうでない患者さんとで、分析したところ、アルツハイマー病の患者の場合、むしろ未知の物質の方が多いことが判明したのです。

 

このことでアルツハイマー病の早期診断の未知が開けたというのです。認知症の方の多くにアルツハイマー病が見られることから、早期発見だけでなく、治療法も近い将来見つかることが期待されるところです。

 

私の担当している方にも罹患されている人がいますので、関心をもって見ていきたいと思っています。

 

それにしても田中氏の穏やかでおとなしそうな外見とは異なる、内面の弱さと強靱さにはじーんとくるものがありました。こういう人こそやはりノーベル賞受賞に値すると思ってしまいました。

 

なお、もう一つ重要な本庶佑氏が憂う科学研究に携わる若い研究者を育成する基盤を失いつつある状況については別の機会に触れてみたいと思います。

 

今日はこのへんでおしまい。また明日。


信ずべきは何か <レオパレス21 施工不良・・・組織的な不正か>などを読みながら

2019-02-09 | 企業・事業・研究などの不正 適正な支援

190209 信ずべきは何か <レオパレス21 施工不良・・・組織的な不正か>などを読みながら

 

玄侑宗久著『無功徳』の中に、「書類さまを信じる国 瀬戸際に、思う」という項があり、その中に、昨今の風潮を書類の扱い方を通して本質を捉えているように思える部分があります。まず、「人ではなく書類を信じる風潮が強まっている。」なにか事件が起これば(起こらなくても)書類が増えて、書類で安全になり、計画通りになると信じているようだと言うのです。この書類の横溢は、それをチェックする人々の都合だとも言うのです。その人々というのは国や行政が多いとしつつ、会社の場合もあるというのです。

 

ここで玄侑氏は、「しかし、じつは書類ほど偽造できるものはない」と断言します。まさに最近のデータ不正や偽装の報道では、さまざまな大企業や国・行政といままで信頼される?対象であったところで大胆に行われてきたことがクローズアップされました。

 

玄侑氏は「書類の山の前で脆き、ひたすらに「書類さま」を礼拝する人々。こんな莫迦な新興宗教が、今後も生き延びてい-のだろうか。」と、無功徳の勧めの前提として、提示されているように思います。

 

書類だけに依存する(その書類のいい加減さも問題ですが、それを見落とす状況も問題ですが)私たちの社会、そこには人の心を大事にすることを見落としてきた、忘れてきたようにも思うのです。ゴーン氏のコストカッターは、倒産の瀬戸際にある大企業にとっては有効な手段だったかもしれませんが、その趣向のみを中核にして事業を継続的に経営していけば、人の心は空虚となるでしょうね。日産のデータ不正は当然の結果でしょう。

 

そんな事態が再び報道を賑わしています。レオパレスの施工不正です。この問題で、施主のオーナー、賃借人である利用者、融資する金融機関、投資した株主、さまざまなステークホルダーに多大な損害を与えていることは自然の成り行きですね。建築という人にとって衣食住の基本的要素を担う人たちは、以前は大工さんなど施主との間信頼関係できちんと意思疎通ができていたと思います。むろんそのような場合でも不具合は起こりますが、大工さんは丁寧に補修なり是正措置を講じますね。本来の大工さんは見えないところに職人気質を出し、いい仕事をすると言われます。

 

しかし今回は意図的な不正です。しかも見えないところで不正を行っています。まっとな人の行いではないでしょうね。人が組織となり、企業となり、規模が拡大する中で変質したのかもしれません。

 

私も仕事柄、建築瑕疵とか不具合とかの事件を取り扱うことがあります。契約書では四寸角の柱を使うことになっていたのに、三寸角になっていたとか。最近の住宅は柱を見せない壁面とすることが多いですが、その場合柱の大きさは分かりません。他方で建築基準法上は、耐震構造としては柱の大きさの上記違いだけで決まるわけでなく、構造計算上はパスすることに問題ないのです。それが建築瑕疵と言えるかは問題となるでしょうけど、契約意思との関係でそれが重要な要素であれば問題となりうるでしょうけど、最近の施主は一般にはあまり問題視しないかもしれませんね。その場合施工者の心がけというか、ビルダーとしての気質に関係するかもしれません。

 

再びレオパレスの問題に移ります。これはひどすぎますね。

今朝の毎日記事<レオパレス21施工不良 外壁に違法部材 コスト削減、組織的な不正か>では、<建築確認の死角>として、

<レオパレス21の物件の不良箇所は壁材の内側など完成後の確認が困難な部分に集中していた。都道府県や民間の建築確認機関などは建築主側に工事中の写真を提出させて見えない部分の材質を確認しているが、今回の問題は建築確認制度の死角が突かれた形だ。>

建築確認制度では、現場でチェックするといってもすべてでなく、ましてや見えない部分は施工業者への信頼から、チェックしないのが一般だと思います。

 

<建築基準法が規定する耐火基準に反し、外壁の内部にグラスウールを挟むべきなのに発泡ウレタンを詰めた(925棟)

▽天井材を二重に張るべきところを一重にした(641棟)--などの施工不良があった。また、部屋間の仕切り壁(界壁)に同法の仕様と異なる材料を使い、遮音性能を満たしていなかった(771棟)。>

こういった場合でも、通常は是正命令で対応するくらいで、刑事責任を問うといったことはこれまでほとんどなかったのではないでしょうか。今回、東京地検特捜部はゴーン事件で総力を挙げているようですので、余裕があるのでしょうか、今は様子見でしょうか。当該違反が明確で、耐火性に重大な問題があれば、等閑視できないのではと思うのです。

 

オーナーの嘆きも分かります。

<福岡県宗像市の男性(69)は09年に同社でアパートを建ててオーナーになった直後から土台や廊下でひび割れが相次いだ。同社の対応にも疑問を感じ、昨年に運営や管理などの契約を解除した直後に不具合を調べる連絡が届いた。しかし、同社に連絡すると「件数が多すぎていつ調査できるか分からない」。10月になってようやく社員が説明に来たが、調査への立ち会いを求めると拒否され、いまだに調査できていない。>

 

レオパレスの株価が急落するのは当然ですね。

レオパレス、株価急落 売り注文殺到でストップ安>これによって、投資家は期待を裏切られたでしょう。それ以上にやはり現在のオーナーや利用者は不安でいっぱいでしょう。

 

別の記事<レオパレス、施工不良で転居促す異例事態 人手不足、引っ越し混乱も>は、その現実を報じています。

突然、そこに住むことができない、転居先をみつけないといけないとなったら、大変でしょう。

 

玄侑氏のすすめる「無功徳」はだれにでも効用があるようにも思えるのですが、いや効用などといったらそれこそ的外れとなりますね。ともかく信頼できるのは心ある人でしょうか。そして人の心に届く問題対応を求めたいです。

 

今日はこの辺でおしまい。また明日。

 


ゴーン日産を少し考える <日産のクーデター失敗で>とか<日産検査不正>の一端から少し見えるもの

2018-12-13 | 企業・事業・研究などの不正 適正な支援

181213 ゴーン日産を少し考える <日産のクーデター失敗で>とか<日産検査不正>の一端から少し見えるもの

 

日産前会長のゴーン氏が1210日、起訴されるとともに、再逮捕されました。いずれも金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)で、期間が違うだけのようです。

 

ゴーン氏の逮捕からさまざまな情報合戦が続き、情報が錯綜しているようにも思え、この段階でなにかを言ったり、書いたりするのは控えようと思っていましたが、今日も仕事で時間をつぶし、業務時間が終わりに近づいたのに、とくに話題が見つかりません。

 

そんなわけでつい、アエラのセンセーショナルな記事に少し違和感を覚えたこともあり、ちょっぴり感想めいたことを書いてみようかと思います。

 

とりあえずそのアエラ1212日付け記事<日産のクーデター失敗で西川社長が明智光秀になる日 ゴーン再逮捕も特捜部敗北の危機>は、さすが週刊誌ですね、西川社長の明智説から、さらに特捜の敗北まで言及しています。いちいち気になることでもないのですが、どういう根拠でこういった議論をしているのかと思わず読んで見ました。

 

というのは、この件、特捜だけでなく、東京地裁も当然、ゴーン氏という世界的な経営者を逮捕するわけですから、しかも金商法違反の有報虚偽記載、その内容が報酬というので、極めて慎重に扱ったと推測します。当然、特捜だけで判断せず、最高検まで相談しているかもしれません。東京地裁も担当裁判官一人で判断したとは到底思えません。どこまで相談したかはブラックボックスですが、相当慎重に判断したと思うのです。

 

では、アエラ記事はどんな人からどのような言説なり根拠を得たのでしょう。

 

<金融相として1億円以上の役員報酬の開示制度を導入した亀井静香・元衆院議員は、法務省の現役幹部に電話>したときの内容を踏まえて、特別背任や横領が狙いであったという目算で、<大きな疑惑が明らかにできなかったら『幽霊の正体見たり枯れ尾花』。検察の失態となる」>という話を取り上げています。

 

そうでしょうか、むろん特別背任とか横領は重大な犯罪ですが、今回の有報虚偽記載もその金額からすれば、十分に反社会性・反規範性などの面で重いとみてよいと思うのです。いや、私なぞは、これで有罪立証できれば、検察の勝利と思っています。むろん簡単ではないですが、起訴にたどり着いただけでも、まず第一段階は成功でしょう。

 

次に<米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)>記事の西川社長更迭計画ですか。ただ、この話もとくに根拠は示されていませんね。今期の業績悪化の傾向を取り上げ、前社長の例を引き出して、推測しているに過ぎません。しかし、前社長は2期連続の下方修正ですし、今期の業績が悪化したとしても、それは後に述べる不正検査の発覚が影響している可能性が十分考えられ、それはゴーン体制によるマイナス面とも指摘されている中、簡単に首切りの話となるかは疑問です。

 

今度は<元東京地検特捜部検事の郷原信郎氏>の見解を取り上げています。西川社長の個人的な動機、それがアエラ記事になると光秀になるのでしょうか。郷原氏の見解がいかなる根拠に基づくのか、これだけではわかりませんが、WSJの記事自体どうかと思いますので、憶測の域を出ないと思うのです。

 

だいたい逮捕時期と更迭計画の時期の密着性を云々していますが、そもそも相当期間かけて特捜が内偵していたようですし、逮捕の時期もゴーン氏とケリー氏を一緒に逮捕できる状況をつくることもそれほど容易であったとは思えません。両者の時期の密接性を云々するのはまだ早いと思います。

 

郷原氏だけでは不足と思ったのでしょうか、こんどは匿名の特捜OBが登場して<「司法取引をしたんだから、逮捕前に証拠は十分にそろえたのかと思っていた。それが同じ金商法違反で再逮捕して、勾留延長なんて信じられない。>と、金商法違反が軽いとみていますが、私はその感覚自体に疑問を感じます。

 

ただ、郷原氏が指摘する、西川社長の関与との関係では無視できない部分があります。有報提出自体を論じている点は、西川氏が未記載報酬を知った上であれば、また、合意書にサインしていたのであれば、特捜の対応として疑問ですし、その後の西川社長の記者会見も含めて疑問であることは私も同感です。しかし、西川氏が郷原氏指摘の関与があったとの報道に私はいまのところ見ていませんので、郷原氏が何を根拠に知っていたというのかは不明です。アエラはそういった内容の「報道」があると言及していますが、重要な内容ですので、WSJのように具体的に報道主体を特定して指摘すべきです。

 

再び亀井氏を登場させ、捜査2課時代の昔話を話してもらい云々するのはどうでしょう。西川氏との関係で適切な事実の報道といえるのか、躊躇を覚えます。私は別に西川氏を応援する立場ではありません。むろん悪役をあぶり出したヒーローとも思いません。まだそういった議論ができるほど、資料が公になっていないと思います。

 

最後にアエラは<ゴーン氏が無罪になったらどうなるのか。・・・世界から日本の司法制度への批判が高まることは間違いない。・・・混乱を招いた日産経営陣の責任も厳しく問われることになるだろう。その時、西川氏は現代の明智光秀になる。>と言いたいようです。

 

はたしてそうなるか、金商法違反は割合、しっかり認定されるかもしれません。とはいえ、仮に無罪になってもそういった復帰劇はむずかしいように思えます。

 

この点、本日付ブルームバーグ記事<ゴーン被告の支援、仏政府動かず-エリート主義の印象払拭に躍起>は、すでにゴーン氏の報酬問題は事実として、日本国内はもちろん、フランスでも、おそらく各国で批判されていると思います。ゴーン氏は信長でも秀吉でもないのです。そして検査不正をやむなくしてきた、あるいはコストカットを強引に迫られた日産従業員、元従業員のいずれもゴーン氏は光り輝く存在ではなくなっていると思います。

 

ちょっと時間がなくなりました。途中ですが、これでおしまい。また明日。


銀行の信頼崩壊 <スルガ銀 不正「経営陣の責任」 第三者委報告>などを読みながら

2018-09-08 | 企業・事業・研究などの不正 適正な支援

18090 銀行の信頼崩壊 <スルガ銀 不正「経営陣の責任」 第三者委報告>などを読みながら

 

昨夕、勾留執行停止申立を当直に提出し、夜9時過ぎ頃、決定があったことの報告を受け、これで葬儀に出席が可能となりました。その後喪服をどこで着替えるかなど家族、警察署と連絡調整して、さきほどうまく進む段取りが決まりました。富田林警察署での逃走事件があり、通常の弁護人接見でも以前より警察では緊張感が高まっていますので、少し気になりましたが、ま、これで安堵しました。

 

昨日は夕方から夜にかけて和歌山まで往復したので、年齢の影響もでまして、今朝は疲れが残りぼっとしていました。

 

そういえば、NHK番組でろう者がバス運転手の道を歩んでいるのを紹介していました。彼は、幼い頃からバス運転手になることに憧れ、なんども大きな壁に跳ね返されてもチャレンジを続け、ようやくあるバス会社が唯一採用してくれ、定期運行のバス運転手になることができ、乗客とのコミュニケーションは車掌が代わって対応していました。

 

彼はいまでは自信満々で運転しています。そして将来の夢は観光バスの運転手になり、さらに多くのろうの人が後に続いてくれるように、環境整備をしていきたいというのです。実際、この会社ではたいていの社員が手話を少しずつできるようになってきています。

 

その彼が言った言葉がすてきです。リポーターが彼に、ずっと運転をしていると緊張して疲れるでしょう、どうやって疲れをとるのですかと聞きました。私も聞きたくなります。音が聞こえないのですから、目に余計な負担がかかるので、余計大変だと感じます。すると、彼は疲れません。運転するのが楽しいからというのです。あこがれの職業をいま自信を持ってやっていることに誇りと満足感を抱いた、しっかりとした口調でした。

 

障害に立ち向かうすてきな笑顔でした。

 

ところで、今日の話題は、昔は多くの優秀な人が憧れたであろう銀行のあってはならない不祥事・不正というか、悪質で背任なり各種の違法行為が組織全体で行われていたケースです。

 

そういえば私が関与した特殊詐欺事件でも、銀行員というとすぐに信用するような高齢者がだまされていますね。それだけ昔は銀行の信用度が高かった、いやいや現在でもそうですが、今回は残念な結果で、まいえば、日本版・サブプライムローン問題の小型版でしょうか。

 

今日の毎日記事に複数の紙面に掲載されています。

スルガ銀第三者委調査報告書 要旨>では次のように指摘されています。

 

 <不正行為> として、以下の事項が指摘されていますが、不正方法については預金残高の水増しや虚偽の物件価格の設定、キックバックなど一部だけ取り上げた印象で、ただ、それがすべての不動産融資に、組織全体に及んでいたことを指摘しています。

 <・預金残高を水増しして返済余力があるように見せかける不正や、物件価格を偽って融資を引き出す手法を確認

 ・不動産融資と無担保ローンの抱き合わせ販売も認定

 ・正確な不正行為の件数を数えるのは不可能だが、不正は不動産融資全般にまん延

 ・支店長と執行役員も不正に直接関わった

 ・行員が不動産業者から見返りに金銭を受け取っている疑いも浮上

 

 <問題の原因> については、経営トップから末端までコンプライアンスの欠如があったことを指摘しています。

 <・厳しい営業ノルマがトップダウンで策定され、営業部門に強度のプレッシャーをかけていた

 ・審査担当者が不正に否定的な意見を述べても、営業側の意見が押し通された

 ・内部監査は形式的かつ外形的な確認に終始

 ・経営層は執行の現場に深入りせず、営業本部と情報を断絶、放任していた

 ・極端な法令順守意識の欠如が認められ、企業風土は著しく劣化

 

 <責任> は、元専務執行役員のみ具体的な不正関与を指摘し、会長や社長は注意義務違反にとどまっています。

 ・(引責辞任した)岡野光喜会長や米山明広社長は不正を知っていた証拠はないが、注意義務違反や経営責任が認められる

 ・営業担当の麻生治雄元専務執行役員は審査部門に審査を通すよう強く要求するなど企業風土の劣化を招いた

 ・(社長に就任した)有国三知男氏は明らかな注意義務違反があったとは認められない>

 

この具体的な内容をスルガ銀行のホームページで報告書自体をダウンロードしてみようかと思いましたら、一切できなくなっています。これは私のネット環境のせいでしょうかね。このようなことは初めてで、第三者委員会として公開についてもチェックしてもらいたいと思うのです。

 

報告書自体を見ることができませんので、新聞記事を手がかりに、少し検討してみたいと思います。

 

スルガ銀不正「経営陣の責任」 会長ら引責辞任 第三者委報告>によると、

<報告書は、シェアハウスや中古マンションなどの不動産向けローンの融資の際、審査を通すために物件所有者の預金通帳残高や家賃収入の見通しなどを改ざんする行為が「まん延していた」と指摘。不動産販売業者の改ざんを黙認したり、行員から具体的な基準を示して改ざんを要求したりすることもあった。>ということです。

 

なにか最近、あちこちで起こっている不正の典型のような事例でしょうか。融資システムの根幹を揺るがすことを平気で行っていたわけです。それが膨大な数に及ぶというのです。

 

<書類の偽装が疑われる件数は2014年以降で795件あったが、不正融資の正確な件数や総額については「調査が困難で推定を断念した」と明らかにしなかった。>

 

具体的に実行責任者としては専務が指摘されています。

<営業担当だった麻生治雄・元専務執行役員や、過去の所属長ポスト経験者も不正に関与していたと指摘。麻生氏については、融資に疑問を呈した審査部の担当者を脅したり、人事に介入したりしていたと明らかにした。融資の際には、本来必要のないローンや定期預金、保険の契約を、抱き合わせで契約することを強く奨励していた。業者から金銭を受け取った疑いがある行員も14人いた。>

 

ま、これだけの明白な不正を組織的に行っていたわけですから、会社のトップが知らないなんてことは法的にも許されませんね。情報遮断なんて話は通用しません。インサイダー取引の規制とは違うわけで、逆にトップは情報を的確に把握しておく忠実義務があるわけですからね。

 

基本的な問題は、不正な融資を実行される、裏付けのない融資を受けて、債務を負担する借り主が当然、将来大きな借財を負うことになるでしょう。スルガ銀行が責任をもって対処できる金額にとどまるとは思えませんね。

 

ただ、こういった不正な融資を受けて投資した、シェアハウスの所有者となり、将来の安定収入に期待した人にも、まったく落ち度がないとはいえないでしょう。私自身、別の案件で、とても現実的とは思えない家賃設定と借り主側の経営計画プランの提示を受けて、安易に融資を受けて多額の損害を被った事例を担当したことがありますが、こういった融資案件・投資案件について、素人が安易に業者や銀行など説明を鵜呑みにする傾向を感じます。

 

そろそろ自分の判断で、あるいは適切なアドバイザーの支援を受けて、対処することが取引の常識になるよう、構造変革が必要でしょう。問題が起こってから、解約とか取り戻しとかといったことは容易でないですから。

 

そういえば<スルガ銀シェアハウス問題 不適切融資、J選手ら10人被害>では、<スルガ銀行が不適切融資をした物件所有者に、サッカー元日本代表ら約10人のJリーグ選手や元選手がいる。いずれも多額の借金を背負って返済に困窮しており、普段のプレーや現役引退後の人生に悪影響が出かねない状況だ。問題がスポーツ界に飛び火した。>とプロスポーツ選手も融資を受けていたようですね。

 

銀行なら信用できるというのは昔のはなしでしょう(ま、少しいいすぎでしょうけど、そのくらいの気持ちで対応すべきでしょう)。契約交渉の代理人の口利きなんかも、本来の業務外の言説を信用するのはどうかと思うのです。

 

だいたいこのスルガ銀行、溺れる者は藁をもつかむ、ではないですが、<スター銀欺く シェアハウス、融資引き出す>では、他の銀行にも虚偽情報を提供して融資させているのですから、ひどい話です。

 

<スルガ銀は昨秋、シェアハウス運営会社「スマートデイズ」(東京都中央区、今年5月破産)を支援するとの虚偽の決定を行い、東京スター銀行(東京都港区)から3億円の融資を引き出していた。>ということで、この詳細は省きます。

 

金融機関・証券会社など、金融秩序が大きくグローバル経済の影響を受けて、大変革の荒波を迎えているのに、こういう禁じ手の不正を行う銀行は、厳しい行政処分を課し、それでも改善の見込みがなければ、金融市場に参加すべきではないように思うのです。

 

これから金融庁がどうコントロールし、スルガ銀行が立ち直れるのか、注視したいと思います。

 

今日はこれにておしまい。また明日。

 

 

 

 


水道工事の不可解さ <大阪市水道工事不正 掘削土、再利用ゼロ>などを読みながら

2018-07-05 | 企業・事業・研究などの不正 適正な支援

180705 水道工事の不可解さ <大阪市水道工事不正 掘削土、再利用ゼロ>などを読みながら

 

ここ数日、いろいろ相談や交渉があって、のんびりとブログのテーマを考える余裕がなくなってきています。宗教法人の公告方法とか、墓地使用権承継手続とか、農地か非農地かとか、施設職員の行為と施設の責任の問題とか、建物賃貸借の契約締結上の過失とか、その他あげると切りながないほどです。

 

とはいえ、それが弁護士の仕事ですので、特段変わった話ではありませんが、普段は認知症にならないためのブログ更新?をやっているような環境では、ようやく落ち着ける6時過ぎが暑さも和らぎ?いい感じでしょうか。

 

さて昨夕の毎日記事で、前川氏講演 後援を拒否という見出しは気になるものの、<大阪市水道工事不正掘削土、再利用ゼロ 試験偽装 工事費数億円過大か>も見過ごしにできず、こちらを取り上げることにしました。

 

どうやら奥が深いようです。昨年1110日付けの<大阪市水道局発注工事における不適正な施工について>とか、本年330日付け<スラグ混合改良土使用工事に係る不正事案に関する調査報告>があります。

 

前者は昨年1110日の調査結果で、工事で使用された土の材料に次の問題があったとしています。

 

<ウ 「埋戻土」については、当該工事で掘削時に発生した残土がそのまま埋め戻されたものではなく、改良土が使用されていたものの、受注者より当局に提出された品質試験成績書の粒度分布とは異なること>と品質的に問題の改良土が使われていたこと、

 

<エ 「上層路盤材」については、再生砕石(RC)が使用されており、当局の土木工事共通仕様書で定める粒度調整砕石(M25)とは異なること>と仕様書と異なる材料が使われているとしています。

 

これは専門的な表現で、これだけ読んでも、その不適正さの度合いがぴんときませんね。専門的な報告だからそれでいいではすまないと思うのです。大阪市のウェブサイトとしては、市民にわかりやすい説明責任があると思うのです。

 

後者の調査報告は、私の記憶ではこの問題の方がイメージとして残っており、下水汚泥のスラグを再利用するはずが、されていない問題としてクローズアップされたと思うのです。これもまた大阪市の内部調査で、建設局によるものですが、だいたい最初の「調査に至った経過」でも、なぜ「下水処理の過程で発生する下水汚泥溶融スラグ」の利用が問題になって、調査するに至ったかが具体的に示されていません。

 

なにが問題か、その問題点が示されていないのですから、その調査対象をどう絞り込んだか、どのように調査したかの適切さが判断できにくい記述となっていると思います。

 

技術的な調査報告だから、これでよいと内部的にはいいのかもしれませんが、市民への説明としては十分とは到底思えません。

 

この点、毎日記事<堺市水道工事改良土不正、掘削調査へ 業者立ち入りも検討>を手がかりに、堺市のウェブサイトで見つけた<第1回堺市上下水道局発注の管布設工事埋戻し工に関する検証委員会>は、スライド用ファイルですが、弁護士を含む第三者委員会として調査を行い、その概要が的確に指摘されていて、市民にも理解しやすいようになっています。

 

興味深いのは、その調査経緯について触れた部分です。

<大阪市水道局発注の管布設工事における不適正な施工についての報道

大阪市発注の下水道工事における不適正な施工についての報道

・本市においても上下水道局発注の管布設工事埋戻し工について調査>

 

と大阪市の不適正施工の報道を受けて、他山の石として、堺市も調査をしたというのです。そこには下水道工事をめぐる関係企業などに共通の基礎があることが要因と言えるかもしれません。

 

改良土をめぐる内部調査では不適正が明らかにならず、外部調査を実施して一定の解明になったようです。そこには構造的な問題があったと指摘されています。

 

たとえば<平成30年3月1日 改良土メーカーA社のプラントが平成2710月から休止状態という情報をA社から得る>といった点です。そこに伝票を通じて適正な材料使用を確保していたシステムに破綻が生じていることが容易に判明できるわけですね。

 

すなわち偽造伝票です。その背景について、次のような指摘がされています。

 

<・過積載することにより運搬回数を減らし経費を削減

・建設発生土を埋戻し材に流用することにより経費を削減

・建設発生土の搬入先と改良土の購入先が違う(仕様書に反する)

・グループ企業共有の資材置き場にある改良土を使用したため伝票がない>

 

わかりやすいまとめですが、それで済むのか、また全体の工事の不適正さが解明されたのかは、今後の調査を待ちたいと思うのです。

 

で、昨夕の毎日記事は、<大阪市発注の上水道工事で、最初に掘削した土の一部を埋め戻し材として再び使えば工事費が抑えられるのに、全く再利用されていないことが、市への取材で分かった。施工業者は掘削土を埋め戻せるか現場で試験をする決まりだが、複数の業者は取材に「再利用できないよう試験を故意に偽装し、利益を水増ししていた」と明かす。近年は市への再利用の報告は一件もなく、年間工事費が数億円過大だった可能性がある。【遠藤浩二】>

 

大阪市の事例では、掘削土を埋戻土として使えるものがあるのに、高価な改良土を利用して、費用が増大しているわけですね。

 

先に述べたのは<市の水道工事を巡っては、改良土を使ったと偽装し、実際にはコンクリートを砕いた安価な砕石を使う不正が横行していた>ということですが、今回の報道は別の不適正使用ですが、実質的には共通していると言って良いでしょう。

 

ところで、これらの報道で見落とされている、下水汚泥のスラグや、再利用されなかった掘削土は、一体どうなったかです。いずれも産廃です。本来、これらもマニフェストとして伝票により発生源から産廃処分場まで明確に流れが残っていないといけないはずです。

 

本来と異なるルートに流れたわけですから、この流れについてもきちんと調査してもらいたい、そこに介在している業者なども明らかにしてもらいたいと思うのですが、どうも調査がそこまで手が回らない雰囲気です。

 

途中で、電話が入り、長話となり、一時間で終わるつもりが、8時になろうとしていますので、こんへんでおしまいとします。いつも中途半端ですが、ご寛容ください。また明日。