たそかれの散策

都会から田舎に移って4年経ち、周りの農地、寺、古代の雰囲気に興味を持つようになり、ランダムに書いてみようかと思う。

検査不正の続発の背景は <神戸製鋼所 データ不正 出荷500社 社長会見、辞任は不可避>などを読んで

2017-10-14 | 企業・事業・研究などの不正 適正な支援

171014 検査不正の続発の背景は <神戸製鋼所データ不正 出荷500社 社長会見、辞任は不可避>などを読んで

 

日産の無資格検査や商工中金の融資業務不正がいずれも企業全体レベルで行われていた可能性を示すニュースが連日報じられていましたが、今回の神鋼の検査不正はより問題が大きいといえるでしょう。検査データ自体の改ざんですからね。それも対象品目は、どんどん広がっています。

 

見出し記事によれば<アルミ・銅製品などの品質検査データを改ざんしていた神戸製鋼所は13日、新たに9製品で不正があったと発表した。前日には否定していた主力の鉄鋼製品も含まれ、出荷先は約270社から約500社に拡大した。不正は国内外のグループ会社にも広がっており、川崎博也会長兼社長の引責辞任は避けられない見通しだ。>

 

しかも<原発、防衛装備品も>含まれているのですから、どうなっているのでしょう。その検査不正の内容は<いずれも検査データを書き換えたり、引っ張りの強さの試験を省略した上で推定値を入力したりしていた。>というのですから、安全性の裏付けが全くないとしかいいようがないですね。毎日大阪版では「神鋼 信用地に落ち」と大見出しでしたが、それは当然でしょう。

 

実際、取引先の中には一大事ですので、<東京電力は13日、福島第2原発3号機の原子炉を冷却する熱交換器に使われる部品に問題の製品が納入されていたと発表。防衛省も問題のアルミ製品が航空機や誘導武器、魚雷などの防衛装備品に使用されていたと明らかにした。>ととりあえず第一報をリリースしていますが、関係先が今後適切な調査をして安全確認の措置を講じるなどとともに、情報開示が継続的になされる必要があるでしょう。

 

見出し記事では<神戸製鋼は今回の不正を8月末に社内監査で把握し10月8日に公表。この段階ではアルミ・銅製品で約200社に供給としてきた。11日には鉄粉製品や光ディスク材料などでも不正があり、約70社に納入していたと公表。影響は国内外の主要自動車メーカーや航空機、鉄道、ロケットなどにも広がっている。【>

 

神鋼自体が、企業グループ内のガバナンスができていないに等しく、後から後から問題が露呈される一番悪い状況にあり、いつになったら収束できるか不明です。それは普段のガバナンスとコンプライアンスの制度化ができていないことによると言わざるを得ないでしょう。

 

むろん取締役会の機能不全といったことも当然、検証されるべきでしょう。会長兼社長が最初の会見の直後に二度目の会見をして訂正して謝罪しなければならないという形式的なことに留まらない、企業全体の体質の問題が根深くあるように窺えます。

 

毎日は多くの記事を掲載していますが、まとまったものとして<クローズアップ2017神鋼改ざん、底見えず 常務「検査せず捏造」>があります。

 

本体の鉄鋼には不正がないと社長が会見していたにもかかわらず、<今回、神戸製鋼は主力の鉄鋼事業で、少なくとも2007年4月から17年7月まで試験結果を書き換えるなどの不正が行われていたことが明らかになった。13日の記者会見で勝川四志彦常務執行役員が「(検査を)未実施のままデータを入れた。捏造(ねつぞう)ということ」と話し、ずさんな検査も明らかになった。>というのですから、企業全体の危機に陥る可能性すらあるように思えます。

 

しかもこれまでにわかっている不正な部材の主な出荷先一覧が掲載されていますが、自動車、航空機、鉄道、電気に加えて原発と、しかも内外の主力企業が多く含まれているのですから、その利用者への影響も甚大です。

 

<企業統治に詳しい牛島信弁護士は「取締役会が何をしているのか、機能しているのかが見えてこない」と指摘。ある大手鉄鋼メーカー関係者は「通常は導入する不正を防ぐ仕組みや教育をしていたか疑問だ」と神戸製鋼の企業風土の問題を挙げる。>のは当然でしょう。

 

こういった検査データの改ざんは、会計監査ではもちろん把握できることはないでしょう。社内監査(業務および会計)が適正に、かつ、徹底して行われていれば、起こりえない事態ではないかと思うのです。むろん取締役会の中で一体どういった事柄が審議対象として取り上げられてきたか、とりわけコンプライアンスの体制とその実施の検証について真剣に議論されてきたか疑問符がつくでしょう。

 

むろん現場レベルでこれだけの検査不正が横行していたのですから、社員の意識の中にコンプライアンスの具体的なルールがビルトインされていなかったといってよいのではないかと思うのです。

 

おそらくコンプライアンスの詳細規定としては、安全性を確保するために要求されている検査を実施しデータをとることは書類上は書かれていると思うのです。検査データのチェックについても、検査者だけでなく上司の確認等が間違いないということで押印する書式化も整っているはずです。

 

しかし検査をしないで、書類上の数値を書いてすますという改ざんは、検査に要する作業工程や費用・時間をしっかり監理するシステムが構築されていれば、内部監査で把握することはそれほど難しいことではないと思うのです。

 

取引先に対する信頼を確保するためにも、当然のことでしょう。それを怠ったのは、神鋼自体だが海外企業を含め競合企業との競争激化で経営が厳しい中、黒字化を図るため、業績回復のみを求めた結果ではないかと思うのです。コストダウンを数字的に追求する一方で、最も基本である検査の適正さを確保する措置を怠った結果と言わざるを得ないように思います。

 

それは神鋼だけの問題でしょうか。

 

株価高騰に湧く日本経済ですが、数字的には上向きの業績の背後には暗い影がはびこっていないのでしょうか。昨今の投資環境にあった業績回復はできてきたかもしれませんが、その収支向上の蔭にはさまざまな不正が潜んでいるおそれもあります。

 

それ以上に、そもそも働く多くの人は満足感を得られていないのが現実ではないでしょうか。足下では過剰労働が今なお当然視され、他方で働き方改革で女性活躍といっても<「女性活躍」の現場から2017衆院選/2 「育てて働いて」輝ける?>の記事にあるように、男女差別や長時間労働など、企業がいまも強いている働かせ方では、個々の満足も得られない状況ではないかと思うのです。

 

衆議院選挙の投票は一つの選択ですが、選択できる道を切り開いてくれているのか、よく見ていきたいと思うのです。

 

今日はこの辺でおしまい。