たそかれの散策

都会から田舎に移って4年経ち、周りの農地、寺、古代の雰囲気に興味を持つようになり、ランダムに書いてみようかと思う。

「出て行け」と佐藤首相 <BS1スペシャル「沖縄と核」>見て

2017-12-19 | 安全保障

171219 「出て行け」と佐藤首相 <BS1スペシャル「沖縄と核」>見て

 

録画していた上記のNHKスペシャルを昨夜見ました。私にとってこの50年代~60年代の沖縄はほとんど記憶にありませんでした。おそらく遠い存在だったと思います。いや、多くの日本人もそうだったかもしれません。マスコミも大戦末期の沖縄の悲劇などを取り上げることもなく、世の中は全体として経済成長に向かっていたのかもしれません。

 

私が最初に沖縄を意識したのは70年代初頭でした。安保反対運動という大衆活動にも距離を置き、大学の授業になにか物足りなさを感じ、一時的にマルクス・エンゲルスの書籍を読みふけりながら、それも遠のき、バイト生活をしていたころです。そのバイト仲間にNくんという一つ下の沖縄からやってきた同世代の青年がいました。

 

とてもおとなしくて誠実で、少し引っ込み思案で、本土復帰前の沖縄を、沖縄人を体全体で感じさせてくれました。明らかににそれまであった東京人はもちろん、各地からやってきたさまざまな日本人とは違っていました。彼の性格・態度の純粋さみたいなものになんとなく気があったのでしょうか。ただ、あまりに従順な態度に若かったせいか偉そうな態度も取ったかもしれません。

 

その彼が別人に変わるときがありました。歌舞伎町に誘われ、当時はやっていた(といっても私は無関心だったのですが)ゴーゴーダンスの場を訪れたときです。彼は別人のように自由奔放に踊るのです。驚きました。全身のエネルギーを、普段無口の彼が発散させるのです。そこに生命の輝きを感じました。

 

彼は給与のほとんどを沖縄の実家に送って、自らはかつかつの生活をしていて、そのダンスくらいが唯一の楽しみだったようです。当時の沖縄人には彼のような生け方をしている人は少なくなかったのではないかと思うのです。

 

本土人のほとんどがそういう沖縄人へ、暗黙裏に差別的な対応をしていたように思えます。東京では、朝鮮人差別もかなり深刻だったと思います。そういう社会主義国との対立が、そして米軍占領下の沖縄の位置付けが、繁栄の中で静かに人の心に沈静していたかもしれません。

 

そして上記の録画した<核と沖縄>はその背景事情というか消滅の危機さえはらんでいた沖縄の状況について、米国で開示された資料や当時の海兵隊員からの聞き取りで、見事にえぐり出してくれています。

 

中ソとアメリカの対立は核競争を激化させ、占領終了後も日米間では安保協定の対象から沖縄を外しつつ、核の傘を実効あるものにするため、沖縄に核配備を認めさせていました。日本の非核原則の高尚な声明は本土だけに適用され、沖縄を切り捨てた結果なしえたものでした。

 

大戦中本土防衛のためとの名目で玉砕を強いられた沖縄、今度は核戦争への対応のため、沖縄全土にその基地を配備させられるという非条理が、行われたわけです。琉球国を併合した薩摩藩による統治以来、その自治が認めれなかった歴史は戦後も続いたわけですね。これを見ると、台湾、朝鮮半島統治など、日本の行ってきたことは欧米列強を排するという建前だけでは、地元民の理解を得られないことが示されているように思うのです。

 

そして私を含む日本人の多くはそれを「日本国」「日本人」のためという「大義」のために黙認し続けて、いまなお容認しているように思うのです。

 

さて元に戻って、この番組では、本土での核配備や訓練のための発射実験が反対運動のため、米施政権下にあり、憲法上の保障がなかった沖縄に移すことになった経緯とその実態を映像で示しています。

 

その中に、那覇に配備されたハーキュリーという核弾道ミサイルの操作ミスによる爆発が起こった事例も取り上げられていました。まかり間違えば那覇が全滅するところでした。

 

NHKはあえて指摘していませんでしたが、当時、海兵隊で核弾道訓練を担っていた海兵隊は、いずれも20歳前後がほとんどで、10代の若者も相当いい多様です。60年近く経ってもいまも80歳前後ですから、彼らが当時訓練を受けたと言え、初年生に等しいわけですね。

 

核爆弾自体、広島・長崎で初めて成功し、小型化は実験過程にあったと思います。そんな中、経験の乏しい若い世代をこの危険な作業を担わせる米軍の人事にも脆弱性を感じます。

 

そして誰もが60年代初頭のキューバ危機を世界最終戦と恐れた時のことが取り上げられています。キューバというカリブ海の出来事、対岸の火事程度にしか、それでも私なんかは思っていなかったですし、多くの日本人そうではなかったのでしょうか。

 

しかし、沖縄で核爆弾の司令室に勤務していた当時の海兵隊員の一人は、現在も不覚にも涙をこぼしながら、ほんとうに核爆弾の発射スイッチが押されると思ったようでした。そして沖縄は「消滅」すると。核抑止ではなく、相互の核兵器による相手方領土の殲滅が想定されていたのです。

 

この緊迫した状況は、現在の北朝鮮と日米韓との関係とは異なるわけですが、スイッチを押せば同様の惨事、いやその何倍にも及ぶ危険性のある大惨事になるおそれがあるわけですね。これがほんとに有効な核抑止力なのか、私には理解できていません。

 

抑止力という戦略は、軍拡競争を止めると言うより、止めどもなく拡大して、民需予算を振り替えて軍備費を拡大する傾向を一向に抑えられないでいるように思えます。

 

佐藤首相自ら何度も確約した「核兵器を持たず、作らず、持ち込ませず」のいわゆる非核三原則の下で、わが国は沖縄返還協議で、密約を結んだ上、沖縄の核配備を解きました。しかし、本土の米軍基地を沖縄に集中させ、かつ、沖縄に核配備しないとの約束はなされませんでした。

 

米軍は、いまなお自国の領土以上に、米軍兵器を自由に動かしています。航空制限区域や港湾制限区域など、見えない立体的な米軍のバリアーが張り巡らせていて、沖縄人の自由は極めて制限されています。

 

沖縄返還交渉を成功させ、ノーベル平和賞を受賞した佐藤元首相は、ご満悦だったと思います。しかし、米軍による人権無視・米具基地の集中配置や核兵器の導入の危険性に対して、返還校長中の佐藤首相に、当時の琉球政府代表がその問題を陳情したら、鬼の形相に変わり、「出て行け」と繰り返したというのです。それが長年犠牲を強いて苦難のどん底にあった沖縄人に述べる言葉でしょうか。

 

たしかに沖縄返還を遂げた佐藤首相の苦労は大変だったと思います。しかし、明治時代はおいておいても、大戦での沖縄全土を犠牲にさせた本土の人間として、また、51年の独立時に沖縄を切り捨て占領を維持させたという、沖縄を犠牲にして独立を勝ち取った日本人として、彼らの痛みをしっかり受け止めることこそ、日本の宰相としてとるべき態度であったのではないでしょうか。

 

なにやら佐藤首相の一言に注目しましたが、そうではなく沖縄が長く抱えてきた問題、現在も抱えている問題に、少しでも注視していく必要を感じています。


防衛と報道 <防衛装備 米の「言い値」・・>と<社説 MXテレビにBPO意見書・・>などを読んで  

2017-12-17 | 安全保障

171217 防衛と報道 <防衛装備 米の「言い値」・・>と<社説 MXテレビにBPO意見書・・>などを読んで

 

北朝鮮の挑発行動に対する米政権の陽動対応を日本政府の頭越しで続く状況は一向に収まる気配がありませんね。

 

この間、安倍政権に対する20代、30代の支持は高まる一方のようですね。その理由は、アベノミクスに対するものでしょうか、あるいは防衛力強化やトランプ政権に追随する姿勢でしょうか。少なくとも若い世代への人気を勝ち得ていることは確かなようです。

 

その理由を詮索するのも意味があるかもしれませんが、今朝の毎日記事は第2次安倍政権になって防衛関係費がうなぎ登りに上昇していることをグラフで示しています。

 

しかも費用はアメリカの言い値通りといった驚くべき内容です。岸達也、前谷宏両記者による<防衛装備米の「言い値」 第2次安倍政権で急増>と文字通りのタイトルです。

 

トランプ大統領は、何よりも「アメリカファースト」一点張りですね。当然、北朝鮮の脅威が大変と言えば言うほど、自国の軍備予算を増強するだけでなく、わが国にはアメリカの防衛装備の購入をプッシュするのは当然の流れですね。

 

<「大統領は米朝の緊張関係を利用して自国の軍需産業を後押ししている」>という<英国の軍事雑誌「ジェーンズ・ディフェンス・ウイークリー」東京特派員の高橋浩祐さん>の話しは当然の指摘でしょう。

 

北朝鮮の脅威は、日本のアメリカ軍需産業からの防衛装備購入を増大することになり、マスコミの取材では、北朝鮮への不安からこれを支持する若い世代が多いように思えます。

 

そして<米軍需関連大手4社の株価も上昇基調だ。>軒並み30%前後の上昇で、とりわけオスプレイの製造にかかわるボーイング社の株価は年初比87%上昇で、笑いが止まらないでしょうね。アメリカの驚異的な株高の一因もこのような軍事的緊張が煽られている結果ではないでしょうか。

 

その意味では、北朝鮮との対立激化は、トランプ政権はもとよりウォール街もうれしい悲鳴なのでしょうか?そこまではいえないとしても、現実の株式市場の史上最高値を続ける株高を引っ張っている原因は他にあるのでしょうかね。

 

わが国の防衛関係費について次のような傾向を記事は指摘しています。

<毎年度の防衛関係費の総額と装備の調達方法を調べると、第2次安倍政権以降に変化が起きている。それ以前の2008~12年度の防衛関係費は年4兆7000億円台で横ばいだった。安倍首相が政権を奪還した13年度以降は右肩上がりに転じ、毎年度0.8%(400億円)~2.8%(1310億円)の範囲で増え続ける。

 調達方法の変化はもっと顕著だ。第2次安倍政権以降の5年間で米政府から装備を購入する「対外有償軍事援助(FMS)」を利用した総額が、それ以前の5年間の総額に比べ約4.5倍に膨らんでいる。>

 

このFMSは問題が多く指摘されていますね。

<FMSは米政府が武器輸出管理法に基づき、米企業の兵器を同盟国や友好国に売る事業で、日本は1956年度からFMS調達を実施している。最新鋭の装備を調達しやすい半面、米国に有利な条件を一方的にのまされ、価格設定も米政府主導で交渉の余地がないとされる。>

 

会計検査院もたびたび問題を指摘していますが、改善されていないように見えます。

 

そのような巨額の費用を投じるだけの効果についても疑問の声が上がっていますね。安倍首相は、<「(FMSは)普通の契約と違い、売り手が非常に有利との見方もできるが、安全保障環境が厳しい中、我が国の安全に必要だ」>と答えるものの、ほんとに費用に見合った効果があるのか、いやそのような必要性があるのかも十分検討されていないように思えるのですが。脅威論が先に立って、防衛とは、効果的な防衛とは何かについての議論が十分とは言えないように思えるのです。

 

とりわけアメリカ政権への依存性はいかがなものかです。それは防衛装備というアメリカ軍需産業だけの問題ではありません。米軍の最近の不祥事は目に余るように思います。

 

この点、直接関係はありませんが、本日社説<MXテレビにBPO意見書 放送業界の大きな汚点だ>に注目しています。

 

元々は「ニュース女子」という番組で放送された内容が問題となった事件です。「ニュース女子」といってもこの件で初めて知った番組ですが、若い世代がニュースを見ないという風潮の中でその世代向けに番組作りをしているのでしょうか。

 

さて社説は<沖縄の基地反対運動の番組を放送した東京メトロポリタンテレビジョン(TOKYO MX)に、放送倫理・番組向上機構(BPO)の放送倫理検証委員会が重大な放送倫理違反を指摘する意見書を公表した。

 MXは、番組内容の問題を事前にチェック(考査)できなかったことを深刻に受け止める必要がある。>と厳しく同業?他社の報道のあり方を追求しています。

 

具体的な内容は<検証委は沖縄で現地調査し、基地反対派が救急車を妨害したとの放送は、事実が確認できないと述べた。反対派が活動の日当をもらっているのではないかとの放送も、裏付けられたとは言い難いと指摘した。

 検証委が重視したのはMXが考査で問題を発見できなかったことだ。>

 

MXの対応は制作段階はもちろん、問題が発覚した後もとても自立的な放送主体とは思えない態度であったと非難されてもやむを得ないと思います。

 

<MXは抗議活動を行う側に取材しなかったことを問題とせず、番組の完成版をチェックしていなかった。多様な論点を示す以前に必要な事実確認を怠った責任は重大である。

 今でこそ再発防止を打ち出しているが、MXは問題を指摘された当初「捏造(ねつぞう)、虚偽は認められない」と、問題視しない見解を出していた。

 検証委は意見書の中で、考査を要の仕組みと位置づけ、それが崩れたことに危機感を募らせた。>

 

数日前の記事<BPO倫理委「東京MX、重大な違反」 ニュース女子、沖縄基地番組 裏付け確認せず>は、内容がより詳細に掲載されており、問題点がよくわかります。

 

屋代尚則記者は<対象となったのは1月2日放送の「ニュース女子」。沖縄県の米軍ヘリコプター離着陸帯(ヘリパッド)建設に対する抗議活動を「過激派デモの武闘派集団」と表現したほか、抗議活動で救急車が止められたなどと伝え、放送後に「事実関係が誤っている」と批判が出ていた。検証委は2月に審議入りを決めた。>としています。

 

このスポンサーと制作会社についても言及があります。<「ニュース女子」は、スポンサーの化粧品会社「DHC」が番組枠を買い取り、子会社の制作会社「DHCシアター」(現DHCテレビジョン)などが制作した番組を放送してもらう「持ち込み番組」。>

 

この制作会社の対応がまたすごいですね。<DHCテレビジョンは以前から、公式サイトで「数々の犯罪や不法行為を行っている集団を内包し、容認している基地反対派の言い分を(取材で)聞く必要はないと考える」「今後も誹謗(ひぼう)中傷に屈すること無く、日本の自由な言論空間を守るため、良質な番組を製作していく」などの見解を公表。同社は14日の取材に「見解に変わりはない」と答えた。>これは偏見以外の何もでもないように思うのですが、表現の自由といっても、放送倫理に反するでしょう。

 

米軍の沖縄への基地配備や、その防衛体制を盲従するかのような態度ではないかと思うのですが、これは毎日記事によるので、同社の見解を聞かないと公平ではないですね。

 

しかし、バラエティ番組の中で放送するからといって、検証委が指摘するように、裏付けもなく一方的な見方で放送するような番組制作のあり方は、なにやら安倍政権の米軍への一方的依存性に同調するようで、気味が悪いくらいです。民放といえども事実を曲げるような放送は許されないですね。

 

直接関係のない、防衛装備の米の言い値の話しと、基地反対運動に対する偏見報道にはなにか通じるものを感じるのは、うがった見方になるのでしょうか、そうでないことを祈ります。

 

今日はこの辺でおしまい。また明日。


米艦衝突(3) <米イージス艦衝突 コンテナ船水面下の部位がぶつかる?>を読んで

2017-06-20 | 安全保障

170620 米艦衝突(3) <米イージス艦衝突コンテナ船水面下の部位がぶつかる?>を読んで

 

一昨日に仮定した推論を、昨日訂正しましたが、今日また訂正しようと思い、別枠で書いています。

 

上記の記事によれば、<コンテナ船の球状船首(バルバスバウ)と呼ばれる水面下の部位がイージス艦右舷にぶつかり、イージス艦の船体に穴を開けた可能性があることが海上保安庁などへの取材で分かった。>

 

そして<イージス艦は右舷が大きく壊れたが、米海軍第7艦隊司令官のジョセフ・アーコイン中将は18日の記者会見で「衝突で(イージス艦の)右舷の水面より下の部分に大きな穴が開き、一気に水が流れ込んできた」と説明。水面下の破損が大きかったとの認識を示した。>

 

当初よりイージス艦のキール部が損傷し、沈没する恐れがあったと言われていましたので、コンテナ船が上部から乗っかる形では生じないなとはおもっていましたが、バルバスバウがキールに衝突したことまで想定していませんでした。コンテナ船の構造を知っていればすぐわかることだったのでしょうけど。

 

さて、これで少し衝突の様子が少しわかってきたように思うのです。コンテナ船の上部と下部の先端部分がイージス艦の右舷に衝突したこと、ただ、おそらくコンテナ船は衝突直前にはエンジンを切るなり、バックするようにしていたと思うので、コンテナ船の上部でも水面よりかなり高い位置以上でしか損傷が起こらなかったのだと思うのです。

 

そして、衝突後は、その衝撃で反動的な動きとなり、コンテナ船は舵のコントロールもきかず、航跡のようにふらふらとした動きになったのではないかと思うのです。

 

では衝突原因はなにかですが、いまだに追い越しか、横切りか、判別困難ではないかと思います。少なくともコンテナ船は衝突するおそれを事前に察知し、エンジン停止(その可能性はその後の蛇行から推認できるかも)などの措置をとったと思われるのです。他方で、イージス艦はどのような対処をしていたのでしょうか。右方向に航行していたと思われるコンテナ船の存在は早くからキャッチできていたと思うのです。双方の速度や進路を誤って判断して、横切ろうとしたようにも思えるのですが、ちょっとありえない推定かなと思いつつ、情報不足ですので、勝手な推論となりました。

 


米艦衝突の原因 <米イージス艦 艦長が負傷 不明7人捜索続く>などを見て

2017-06-18 | 安全保障

170618 米艦衝突の原因 <米イージス艦艦長が負傷 不明7人捜索続く>などを見て

 

今日はなにをテーマにしようかと悩んでいるとき、つい見出しのテーマを選んだのですが、医療に関わる記事もそれぞれ気になり、中途半端ながら、取り上げていると、これらと一緒にこの見出しテーマを扱うのはどうかと思い、二本立てにしました。

 

この問題に特段、関心を持ったわけではないのですが、TVニュースでなんどか放映されているそれぞれの船の損傷箇所の映像を見ていて、どうも腑に落ちないと気になり、資料もないですし、どうせこの問題は日米地位協定に基づき、米軍が対応する可能性が大で、海保が捜査しても情報がクリアにならないのではと思っています。まして私のような艦船のことも知らない素人ではわかるはずもないといえばそうですが、気になると、調べたくなる性分ですので、今日は一時間の枠をとり払って、少し検討してみました。

 

まず、なにが気になったかといいますと、それぞれの損傷箇所がどうも腑に落ちないのです。写真は見つかりませんでしたが、TV放映で最初に損傷したイージス艦を見たとき、まるで上から乗り上げられたような印象でした。むろん、コンテナ船は約3トンで、イージス艦は約0.8トンで、長さもそれぞれ22.6m154mですから、衝突すればコンテナ線が乗り上げても不思議はないといえばないでしょう。

 

しかし、<コンテナ船>の損傷箇所は、その写真

https://mainichi.jp/graphs/20170617/hpj/00m/040/001000g/3

http://www.nikkei.com/article/DGXLASDG17H10_X10C17A6CC0000/

を見る限り、左舷の船首部分で、水面から相当高い位置です。しかも損傷は船首突端が一番ひどく、それ以外は擦過したような軽微なものです。しかも船首突端から斜め上方にかけて擦過的な傷跡しかありません。船首の甲板部分には外壁部に少し変形が見られ、上端部が数十mにわたって後方に折れ曲がっています。

 

他方で、イージス艦の方は、全体像の写真を見ると、右舷の真ん中より少し前方付近が大きく損傷しています。また、損傷箇所をアップした写真では人間の大きさと比較して推定すると、幅10m、高さ5m程度でしょうか、損傷規模の外形ではないかと思われます。

 

これで何が不思議かというと、損傷箇所の水面からの高さが、イージス艦とコンテナ船では相当違う印象を持ったのです。写真だけからの推測ですからいい加減なものですが(交通事故でもそのような判断はしませんが)、イージス艦は水面から数mの高さから5m上方まで損傷しているように見えるのです。他方で、コンテナ船は水面から5m以上の高さの地点に一番大きな損傷があり、それ以外の擦過的な傷、船首上端の折れ曲がりも10m近いところではないかと思うのです。

 

この原因はなにかといった推論は、今後、正確な資料・データが出てくれば、一笑に付されることになるでしょうけど、ここは勝手な推論を紡いでみたいと思っています。

 

一つの案は、衝突時は、船首部分がもっと吃水が深く、沈み込んでいたという仮定です。それは急展開したことにより沈み込んでいたのではという推論です。これは航海データ記録装置(VDR)を見ればわかりますね。すでにTV放送だったと思いますが、衝突直前頃に直角に曲がったと言った航跡が報道されていました。他方で、イージス艦の航跡は一切航海されておらず、今後どの程度開示されるかで、われわれももう少しわかるようになるかと思うのです。

 

他の案ですが、波が荒れていて、イージス艦がより水面にでていた、あるいはコンテナ船がやはり沈んでいたという推論です。

 

いずれにしても、普通に航行している状態の写真を見る限り、今回の衝突でコンテナ船のような損傷が起きることに疑念を抱いてしまいました。それはイージス艦の船体上部が水面からわずかしか出ていないことに驚いたせいかもしれません。そしてコンテナ船の損傷部があまりに水面から高い位置にしかないことに不自然さを感じてしまったのです。

 

それはともかく、もう一つは、船の交通ルールとしては、海上衝突予防法がありますが、米軍のルースで処理されるかもしれません。とはいえ、前者は国際的なルールを前提にしており、それほどの違いがあるとは思えません。

 

報道では、2船が同じ方向に航行中に衝突したというコンテナ船の乗組員情報を受けて、追い越し船とか、横切り船のルールを紹介しています。

 

昔、私の知り合いが海難審判に関心を持っていて、事件処理をしているといった話を聞いたことがあります。重大な事件を扱う東京の海難審判所や地方に7カ所ある地方海難審判所にあり、東京時代や横浜時代のいずれも多少興味を抱きつつ、関与した経験はありません。

 

で、その海難審判所が海上衝突予防法の条文を読んでも今ひとつ理解できない部分について、丁寧に解説しているので、参考にすることができます。

 

追越し船の航法>は、いたって簡単ともいえるように思えます。しかし、<横切り船の航法>を見ると、なにが追い越しで、なにが横切りなのか、結構難しいように思えます。むろん肉眼では判別するのが困難でも、今回の両船のようにGPSはもちろん高度な双方の航跡をレーダーなどでキャッチしているわけでしょうから、ここに書かれている識別基準を簡単に適用できるように思えるのです。しかも海上衝突予防法では、「自船が追越し船であるかどうか確かめることができない場合は、追越し船であると判断しなくてはならない。」とされているので、万が一にも間違った航法をとるとは思えないのではないかと一応は思います。

 

しかし、イージス艦はこの最後の基準が彼らの遵守すべきルールだったのでしょうか。それも残された問題かもしれません。

 

あるいはイージス艦が、なんらかの理由で、軍事的行為が優先されると誤解して、コンテナ船の前に出ようとして、コンテナ船が自船の走行を妨げないように減速あるいは右側に回避する走行をすると誤解したか、あり得ないとは思いつつ、一つの想定として考えておいてもいいのかと思ったりもします。

 

さて、コンテナ船について、情報を入手しようとしてネット情報を探したら、

NYK Container Line コンテナ船「ACX CRYSTAL」と米イージス艦「FITZGERALD」の衝突事故について>や当該船のデータ<ACX CRYSTAL Master Data>が見つかりましたが、詳細はベールで隠されていました。

 

そろそろいい時間となりました。この程度で今日は終わりとします。

 


北朝鮮の資金源 <北朝鮮 巧妙な錬金術 不正取引、サイバー攻撃…>を読んで

2017-06-08 | 安全保障

170608 北朝鮮の資金源 <北朝鮮 巧妙な錬金術 不正取引、サイバー攻撃…>を読んで

 

今朝も早い目覚めで、昨日の続き「この国のすがたと歴史」を読みながら、外が明るくなってくるように、日本の縄文期やアイヌや東北など各地の文化・生活への見方の中に、少しずつ薄もやが晴れるのを感じてきます。

 

外は雨。美しい雨脚です。遠くの稲穂が細身の列をなした中に落ちてわずかにはねる様子もとてもきれいです。小さな谷の向こうは靄で隠れていて、この一帯が幾分か桃源郷のように感じるは身勝手な見方でしょうか。農家にとっては恵みの雨。灌漑用水の水入れ作業も休みでしょう。とはいえ農家は昔からの身についた性分でしょうか、雨が降れば家の中での作業が待っています。兼業農家が増えているので、そういったことも少なくなったでしょうが、専業だと終日作業をしているのが普通でしょうね。雨模様に隠れた人の誠実な営みを感じてしまいます。

 

さて本日の話題はと、別の件を2件ほど調べていたのですが、なんとなく以前から気になっていた見出しのテーマについて、今朝の毎日朝刊が<北朝鮮巧妙な錬金術 不正取引、サイバー攻撃…世界が標的>と紙面1pをさいて取り上げていたのと、別の面では、その関連記事でしょうか<北朝鮮租税回避地で取引 中国人女性の企業次々 口座、制裁の隠れみの>と同様に大きく掲載していたので、少し勉強の意味で取り上げようかと思います。

 

今朝のNHKニュース、FMクラシックをゆったりとして聞いていたら、またもや北朝鮮が発射したとの臨時ニュース。たしかきわめて低い高度で距離も200kmとかで日本海に着弾したとか。昨夜でしたか、安倍首相の北朝鮮に対する制裁強化の演説に治して、金正恩第3代最高指導者が、いままでアメリカ攻撃を強調していたのが一転、日本を攻撃対象とするといった報道が流れていましたね。

 

これでますます安倍政権は、国防予算を増大し、対抗手段を前倒しに強化する方針になるのでしょうね。国民も不安な声が高まってくるかもしれませんので、そうなると対抗手段に先鋭化する可能性はあるのでしょう。

 

私の場合は、命が先行きそんなに長いとは思いませんし、元々北朝鮮のブラフ的な発言はあまり気にしませんが、幼子を抱えていたり、若い世代の人たちは北朝鮮の挑発的な言動に忍耐を維持できるか気になります。

 

私の狭量な判断では、これらの挑発行動は、軍需関連産業やブラックマーケットでの戦略的な意図・計算で行っているのではないかと愚考しています。とはいえ緊張が高まり、ちょっとした暴発が拡大するおそれはまったくないとはいえませんので、その点の厳格な配慮は必要でしょうね。

 

さて、北朝鮮の状況については、金正日総書記の時代は、経済的貧困の状態がよく報道されていたように思います。たしかに食料・日用品もなかったですし、経済的な苦境があったかもしれませんが、情報としては限定的で一面的であったかもしれません。

 

そのため、北朝鮮が中国に経済的に依存していて、中国が指導すれば核開発など問題が解消するかのような雰囲気というか、ドグマというか、日本国民の中にできあがっていたかもしれません。

 

さて、上記毎日記事は、<北朝鮮の錬金術 暴かれる実態:サイバー攻撃で他国中央銀から巨額資金奪取 フロント企業駆使し不正な国際金融取引>を要約したもののように思えます。

 

いずれにしても北朝鮮が核開発・実験やミサイル発射などに必要な資金源は、裏の資金ルートを世界的に構築していて、これによって潤沢な資金を金正恩氏が独占的に支配して自由に活用しているのではないかと思われるのです。

 

国連制裁決議がなんども行われていても、参加国の不遵守や履行懈怠もあるでしょうし、独自のサイバー攻撃やマネーロンダリングなど多様な資金収集システムができあがっているのでしょう。

 

おおよそはこれまでもニュースで取り上げられてきたかと思いますが、今回は割合よくまとまっていると思いますので、勉強のつもりで一つ一つ、見ていきたいと思います。

 

金融機関へのサイバー攻撃

上記を含め多様な資金集めに使われるマネーロンダリング(資金洗浄)

軍事用通信機器メーカーによる武器輸出・軍事施設建設への関与など

ヨーロッパへの北朝鮮労働者の派遣労働

タックスヘイブンに実態を隠したフロント企業を通じて金融決済

 

金融機関へのサイバー攻撃は、<手口は「フィッシングメール」。偽メールを中銀の行員に送りつけ、それとは知らずにメールを開いた行員から、ユーザーネームや暗証番号を盗み出して銀行内のシステムに侵入。行員を装いバングラ中銀がドル資金を預けてある米ニューヨーク連銀の口座からフィリピンの銀行への送金を指示して奪い取る手口だ。北朝鮮は同様に東南アジアやインド、中南米諸国の金融機関にも攻撃を仕掛け、毎回、数百万ドル(数億円)規模の資金を盗み出した。>

 

<フィリピンの銀行に振り込まれた8100万ドル(約90億円)は、いったん偽名口座に振り込まれた後、仲介人を通してカジノの経営者など賭博施設関係者に渡った。賭博会社を経営する中国籍実業家が約1500万ドルを返還したものの、残りの6600万ドル(約73億円)の行方は不明だ。>

 

この件は、<4時間にわたり計35件の送金指示が届いたが、その多くは送金を経由する米銀行が「マネーロンダリング(資金洗浄)の疑いがある」と送金を拒んだため不首尾に終わる。すべて成功なら被害総額は約10億ドル(約1100億円)に達していた。>というのですから、しっかりした管理がなされていれば防ぐことができるものの、下手をすると1100億円も、いわば奪い取るわけですから、北朝鮮にとっては濡れ手に粟ですね。

 

軍事用通信機器メーカーによる途上国への進出は、<北朝鮮軍人が大統領警護隊にマーシャルアーツ(東洋の武術)を教えているとの情報>は当のアンゴラ政府が調査に協力していないため、はっきりしないものの怪しいですね。要は、国連パネルの調査報告では、<ザンビークへの戦車など武器輸出▽コンゴ民主共和国への拳銃や軍事訓練の提供▽ナミビアでの軍事施設建設への関与>が問題にされています。なお、この報告自体はなかなかウェブ上で見つからず、毎日新聞は入手しているとしても、これはウェブ上では公開されていないのでしょうかね。

 

また、派遣労働については、<ポーランド北部の港町グダニスク。2006年、かつて「レーニン造船所」として知られた造船所に北朝鮮の造船技師が働くと聞き、訪ねた。北朝鮮の28人はポーランドの派遣業者が借り上げた一軒家に居住する。中には卓球台などの娯楽施設もあるという。毎日、リーダー役がマイクロバスを運転して通勤、食事は自炊だ。

 欧米で北朝鮮労働者は「奴隷労働者」と呼ばれる。派遣業者によると月給は円換算で16万円。うち5万円が労働者に渡され、残りは北朝鮮企業に振り込まれる。>とのこと。この手法は以前から女性楽団などを含め中露や東南アジアに相当の人が派遣されて、重要な資金源となっていることは確かでしょう。

 

ただ、<元米国務省のルッジェーロ氏は「派遣労働による本国送金は少なくとも年5億ドル(約550億円)」。これが北朝鮮の核・ミサイル開発に使われていると指摘する。>のですが、そんなに稼げるのかなと多少疑問に感じますが、資料がないのでなんともいえません。

 

私自身は、サイバー攻撃や軍事輸出が信じられないほどの規模ではないかと思っています。北朝鮮の発射実験は、ま、いえば無料の軍事技術の公開演出で、それが全世界に、ある種宣伝してくれるわけですから、各地で軍事力強化を図ろうとしている、政権・組織にとっては、またとない展示会場となるわけでしょうね。ブラックマーケットで商売しているメンバーも、公開で展示されるわけですから、商売しやすくなりますね。ブラックマーケットはなくならないのが人間世界の運命なのでしょうか。

 

国連決議が履行を担保している制裁措置も、大銀行など大企業には有効であっても、いくらでもタックスヘイブンが企業取引として許容されている世界経済の基では、中小のペーパーカンパニーなど、重畳的にいくらでも作れるでしょうし、いたちごっこは改善する見込みは今のところ見えてきません。

 

そんな悲観的な話ばかりしていても楽しくないですが、他方で、軍事力による解決を基本とする以上は、ブラックマーケットは人類が生存する限り増殖するように思うのです。むろん軍事的な解決を回避し平和的解決を目指す試みは、成功してきたとはいえません。とはいえ、国際連盟、国際連合と続いた長い歴史を通じて、少しずつ人類は破滅を回避する手法を学んでいると期待したいところです。

 

もうそろそろ業務時間の終了です。この辺でブログを終え、今日は早めに帰ることにします。