たそかれの散策

都会から田舎に移って4年経ち、周りの農地、寺、古代の雰囲気に興味を持つようになり、ランダムに書いてみようかと思う。

企業再生の経営学? <ホンハイはシャープをこんなに変えた>を読みながら

2018-10-31 | 企業運営のあり方

181031 企業再生の経営学? <ホンハイはシャープをこんなに変えた>を読みながら

 

わずか4日間このブログをお休みしたのですが、もう一度再開しようかと迷ってしまいました。他のことに終日追われて、ブログのことはすっかり忘れていました。PCの前に今日座っても、乗り気になりませんでした。まあたまっていた仕事が忙しくてそれどころでなかったのもありますが・・・誰か読んでくれている人がいるから続けようとしているのか、いや本来の目的を思い出し、自分なりのエンディングノートをつくろうと試みているのか、最近は曖昧なまま、惰性的に書いてきたように思います。

 

そろそろこのブログの目的を改め考えないといけないのですが、今日も忙しくていつの間にか終業時間となり、目についたウェブ記事を拾って本日のテーマにしようとしています。これはエンディングノートの趣旨とは関係なく、自分探しでもなんでもない(遠縁には関係があるかも?)ものです。このようなことを続けていると、いつかぱたりとやめてしまいそうです。千日ブログもこの4日間のお休みで途絶えたので、また一からやり直すほど元気もなければ、意味を感じません。ではどうするか、とりあえず書くことにしましたが、おそらく仕事の気分展開に利用しているのがいまの実態かもしれません。おつきあいいただける方は、今後もよろしく。これからは続ける意味を感じていませんので、適当にお休みをするかもしれません。

 

さて今日のお題にします。これも以前に何度か取り上げたテーマです。シャープが企業破綻のどん底から鴻海による吸収合併後、驚異的なV字回復を示していることに、多くが注目していると思います。なぜ日本経済を一時牽引する勢いがあった日本を代表する企業が破綻の淵に追い込まれたのか、その赤字原因は何か、鴻海傘下で何がどう変わったかは以前から話題となっていると思います。実態がわからない私があれこれ言っても隔靴掻痒の話しかできませんが、業界に詳しい人が書いたものを参考にすれば少しは分かるかと思い、今朝その記事がアップされていたので、とりあえずこれを土台に検討してみようかと思います。

 

Japan Business Pressの本日付記事<隔世の感あり、ホンハイはシャープをこんなに変えた>はジャーナリスト大西 康之氏の取材によるものです。

 

興味深いのは企業代表者の記者会見でも、記者側に与党と野党がいるようで、最近は批判的な野党は絶滅危惧種とか。なにやら安倍政権側の記者会見をみているようで面白いですね。まあ総会屋があまり表だって跋扈しなくなった代わり、企業実体を把握して報道すべき記者が、二手に分かれる構造は、総会屋が二手に分かれていたのと似通っている印象を持ちます。

 

しかも最近は厳しく批判すべき野党的記者が絶滅危惧種になりつつあるというのですから、企業情報としてニュースになるものも、眉唾物の可能性を疑ってもおかしくないわけですね。だいたい不正会計とか不正データとかが昨今、当たり前のように報道で取り上げられるのは、それを見落としてきたというか見過ごしてきた、企業側が発表する情報を鵜呑みにしてきた記者・ジャーナリスト側にも問題なしとしないかもしれません。

 

少し脇道にそれてしまいました。本論に戻しましょう。大西氏はシャープの日本人副社長野村氏が最近は自信満々になってきたというのです。その理由として<2018年度上期の最終損益は409億円の黒字で、前年同期比17.8%増。利益率は半期として過去最高を記録したのだ。これを受け20193月期の最終損益予想も800億円から900億円に引き上げた。>

 

戴正呉社長が最近は中国で指揮を執り、野村氏が日本での事業をほとんど任され、その成果が以上のように上がっているからというようです。

 

といっても野村氏いわくそれは<『戴社長のリーダーシップ』>であり、<「戴さんの凄さというのは、事業に関する知識と経験の量だと思う。知識と経験の裏付けがある指摘は常に明確であり、リーズナブル。従って社員が納得できるし行動のスピードも上がる」>というのです。まるで戴社長一人の判断でシャープが劇的に変わったといっているように思えるのです。

 

たしかにプロ野球はもちろん、さまざまなスポーツでも監督が替われば、チーム全員が変わることはよくみかけます。でもなにをどう変えたかも、この場合は割合目に見えます。ではシャープの場合見えてきているのでしょうか。

 

この点、大西氏は次の事例を取り上げています。

<かつてのシャープなら、安売りで赤字を膨らますか、売れなくても作って在庫の山を築くところだったが、戴社長はすぐさまパネル工場のブレーキを踏み在庫をコントロールした。結果的に上期のアドバンス・ディスプレイシステムの売上高は大きく減ったが、190億円の営業利益を確保した。>

 

採算の悪い事業とみれば、ブレーキをかけ、生産量を抑えて在庫コントロールし、コストダウンを図り、他方で安売りを避けて、売上高を下げても、営業利益に注目するというのです。でもこれ自体は当たり前ですね。どこの企業経営者でもやっていることですね。文脈から判断すると、ブレーキの迅速さが違うのでしょうか?

 

野村氏の発言を引用している部分で、<テレビ事業や半導体事業、白物家電事業の収益改善>について、以前のシャープの体質は<パネル工場の稼働率を維持するため、テレビが売れなくてもパネルをじゃんじゃん作って在庫の山を築いていた>とし、それを鴻海は<筋肉質に改善した>というのですが、なにが<筋肉質>なのかあまりぴんときません。

 

それに続いて指摘した<上期のセグメント別の売上高を見ると、パネルを手がけるアドバンス・ディスプレイシステムが前年同期比で12%減少している。ホンハイの傘下に入った直後、量を確保するため中国で安いテレビを大量に売ったのだが、それがシャープのブランド力を毀損し、スマホなど他製品にまで悪影響がで始めたのだ。>

 

この文章からは、鴻海傘下に入っても、当初は<中国で安いテレビを大量に売った>結果、<シャープのブランド力を毀損し、スマホなど他製品にまで悪影響がで始めた>というのですから、問題があったということですね。

 

ただ、ここで急ブレーキをかけたことが戴社長の高い能力を示しているということなんでしょう。

<戴社長はすぐさまパネル工場のブレーキを踏み在庫をコントロールした。結果的に上期のアドバンス・ディスプレイシステムの売上高は大きく減ったが、190億円の営業利益を確保した。>

 

素人的にはある事業の安売り戦略が他の有力事業の市場支配力に悪影響を与える可能性があれば、当然当該安売り戦略を撤回ないし減速・停止するのはセオリーではないかと思うのです。このようなことで評価されると言うことは、事業部制が独立志向を強くしすぎ、全体のコントロールがきかない状態に、以前のシャープが陥っていたことを示しているかもしれません。企業経営者としてやるべき当たり前のことがされないまま、放任されていたことなのでしょうか。

 

まあそれはリーダーシップというのでしょうけど、以前のシャープが経営コントロールを失っていたことが露呈されたように思えるのですが、なぜそこに至ったのか不思議です。いま東電の旧経営者が福島第一原発事故の責任を問われ、彼らは津波被害発生の報告を知らず、その責任を否定する一方で、当時の部下はその報告をしたのに無視したと述べ、対立しています。企業統治ができていなかったという一言で尽きるのか疑問です。

 

シャープの場合も、まだその原因が明らかにされたとは思えません。またV字回復の要因を戴社長の能力を賛美するだけではほんとうの解明にはならないと思うのです。アクセルとブレーキの話も大事ですが、もっと追求して欲しいと思うのは私だけではないように思うのです。

 

1時間が過ぎました。今日はこの辺でおしまい。


仏作って魂入れず <社外取締役 複数9割超 「リーマン」後、経営透明化>を読みながら

2018-10-26 | 企業運営のあり方

181026 仏作って魂入れず <社外取締役 複数9割超 「リーマン」後、経営透明化>を読みながら

 

今日はなにかと忙しく過ごし、いつの間にか業務時間を過ぎています。疲れもあってブログを簡潔に済ましたいと思います。

 

今朝の毎日記事<社外取締役複数9割超 「リーマン」後、経営透明化 東証1部>では、取締役会における経営統制の強化・透明化を図る動きを取り上げています。

 

要は、社外取締役の複数選任がその対策とされています。きっかけはリーマンショックです。

<上場企業の09年3月期の決算は、金融危機に伴う世界同時不況で総崩れの様相を呈した。これを契機に、安定した収益を持続する上で経営体制の一段の強化が求められ、「取締役会の実効性への関心が高まった」>

 

安定した収益の持続性が経営体制強化の方向性であり、取締役会の実効性が目指されたのです。

 

さらにこの問題対応を社外取締役に絞ったような形になったのは次のような動きでしょうか。

<経済団体などが企業統治の改善を相次いで提言し、政府は13年の成長戦略に社外取締役の導入促進を盛り込んだ。東証は15年、上場企業の行動指針「コーポレートガバナンス・コード(企業統治原則)」の適用を開始。社外取締役の複数選任の基準を定め、企業側も対応を急いだ。>

 

長い間会社法上の取締役会が機能不全というか、法律が要求する経営コントロール機能を果たしていないことが問題にされてきたのに、ようやく光が当たったかのような状況になったのでしょう。

 

従前、取締役と言えば、その会社で長年従事し、成績を残した、あるいはトップに認められたように、従業員から選ばれてきた人がほとんどでした。株式持ち合いとか融資先金融機関から派遣されたといった場合は例外であったと思います。

 

かりに社外取締役がいてもいなくても、ほとんどが社内出身取締役ですので、どちらかというと経営問題を討議する場にはなっていなかったのではないかと思います。それではどこで議論するかというと、経営会議とか、取締役会の上に主要人物だけの会議体があり、そこで実質的な討議が行われ、取締役会はその結論を会社法上の体裁を整えるような実態が結構多かったのではないかと思います。それは私が上場企業の会社を研究する活動をしていた80年代から90年代初頭のころでしたが、その後もそれほど大きな変化があったのかなと思っていました。

 

90年代の後半ころからくらいでしたか、コーポレートガバナンスとか複数社外取締役制とか、話題になっていたような記憶ですが、実質はどこまで変わったのでしょうか。これを採用し最先端を走り優良企業のトップともいわれていた東芝は、その後の顛末を見ると、いかにずさんな経営体であったか明らかになりました。トップすら、原発事業を含めよく理解しないまま、経営していたのですね。この破綻について、第三者委員会では、取締役会、むろん社外取締役の責任というか、役割もほとんど議論の対象にならなかったように思います。

 

記事もその点、わきまえていて、<取締役会の意思決定などでこうした機能が十分に確保されていないとの批判もくすぶり、制度設計は道半ばと言える。>そうですね、仏作って魂入れずとなりかねないというか、社外取締役を取り入れただけではほとんど変わらない危険が現在の上場企業にあると思うのです。

 

社外取締役制度そのものについて厳しい見方として<大和総研の鈴木裕主任研究員は「会社のために身を削って働く意識に欠ける人もいる」と、資質を備えた人材は限られているとの見方を示す。人選の過程や報酬算定基準で不透明な部分もあり、制度を改善する余地は大きいという。>

 

そのとおりと思いますし、他方で、社外取締役だけの問題ではないと思います。

また、東芝の不正会計の問題が指摘されていますね。これはいくら社外取締役を増やしても解決にはならないと思います。不正会計の温床が現在の企業活動の拡大そのものにあり、それをフォローできる会計対応になっていないように思うのです。

 

今日ちょっとこの記事を見て適当な意見を述べているので、問題対応になにが決め手になるなんてたいそうな議論はとてもできませんが、企業統治は長い時間をかけて試行錯誤を繰り返しながら、提案、計画、実施、検証、さらに見直しといったありきたりながら、セオリーをしっかりやることがまずは必要でしょうか。

 

30分程度でまとめ?てみました。今日はこれにておしまい。また明日。


税制のあり方 <自動車減税 攻防本格化 経産省、燃費性能新税の凍結主張>を読みながら

2018-10-25 | 税制

181025 税制のあり方 <自動車減税 攻防本格化 経産省、燃費性能新税の凍結主張>を読みながら

 

昨夜のプライムニュースだったかと思いますが(情報が多くてすぐ記憶があいまいになります)、トランプ政権の目玉政策として、大幅減税と環境規制の骨抜きで、アメリカ景気が活況を呈している要因との指摘がありました。

 

とりわけ南部の州では、にくき環境規制ということで、それがなくなったか緩和されたことで、溜飲を下げているようです。個人の所得税減税はまだ実効化されていないか、一部ということでこれから本格化する見込みとか。それでも法人税が大幅に減税され、他方で大幅金融緩和の結果、お金がだぶつき、結局、株式や不動産などに投資されているとのことでした。

 

むろん相当額の設備投資もあるでしょうけど、だぶついたお金の行き先は株・債券に不動産というのはどこも同じですね。南部を中心にトランプ政権の公約実現に喝采をしている人たちの多くは、体も豊満な印象ですが、実際のところは仕事もお金もそれほど増えていないようです。民主党政権やオバマ大統領が嫌いで、それだけで内容を議論しないまま、聞く耳を持たない人が多いようですね。民主主義の基本である、お互いの主張の相違を理解しつつ議論して結論に至る、多数決原理の根本が怪しい状況ですね。

 

ながながとアメリカの話を持ち出しましたが(それも曖昧な記憶で)、わが国の場合そこまで対話がないとまで与野党の対立が厳しいとは思えませんが、内容のある議論がされていないという点では似通った印象をもちます。

 

トランプ政権と仲良しのせいか、環境規制についても少し後退気味に思えるのは誤解でしょうかね。あるいはアメリカでは大幅減税を採用したのに、日本では消費増税の議論でもちきりというか、これを軸に、新年度の税制も揺り動かされているようにも見えます。

 

政策の基本的方針が何で、これと個別の施策との折り合いというか、調整が明確でないように思えるのは私が知らないだけなのでしょうか。

 

今朝の毎日記事<自動車減税攻防本格化 経産省、燃費性能新税の凍結主張/総務省、地方自治体の税収減懸念>は、どうも性根が据わっていない政府の実態を浮き彫りにしているように映ってしまいます。

 

だいたいたった2%の増税(これは失礼ないい方かもしれませんが、私の本音です)で、あれこれと延期理由をこじつけて、さらに来年度は実施すると宣言までして、しぶしぶやろうとする姿勢には、税に対する国民の信頼を勝ち得なかった使い方の問題を露呈しているようにも思えるのです。

 

社会保障費の増加傾向は周知の事実です。他方で、アメリカと比べ金額的には低いですがGDP比率でいえば、その財政赤字額は異常なものになっています。この財政赤字に目を向けないことをいつまでもやっておられないでしょう。次の世代に負担を繰り延べすることはもう許されない段階でしょう。

 

社会保障費増大に対応するのに、2%の消費税増税では足りないことは明らかです。それを渋るのであれば、支出を大幅削減するしかありません。

 

また記事を離れて書いてしまいました。まず記事の取り上げた問題を引用しましょう。

 

<自家用乗用車にかかる税負担の軽減を巡り、年末の2019年度税制改正に向けた関係省庁の攻防が本格化している。>どういう問題かというと、

 

<19年10月に消費税率が10%に引き上げられるのに合わせ、経済産業省は燃費性能に応じて課税する新税の導入凍結などを主張。これに対し、総務省は「地方自治体の税収減につながる」などと反発している。減税は消費増税の影響を緩和する経済対策として検討されており、具体的な手法や期間などが焦点となる。【岡大介】>

 

<燃費性能に応じて課税する新税>は、地球環境問題対応はもちろん大気環境・健康保全、化石燃料消費の削減など、これからの環境政策として重要な施策の一つでしょう。それを消費税増税の緩和策として凍結するといった考え方には疑問です。総務省の主張する自治体の税収減になるという見方もどうかと思います。

 

この経産省の考えは、安倍首相の指示にしたがったもののようです。

<安倍晋三首相は消費増税を予定通り行うと表明した15日の臨時閣議で、自動車関連の減税を検討するよう指示した。高額商品である自動車は増税前の駆け込み需要や反動減が大きくなりやすい。減税は、増税後の購入を促して景気やメーカーの業績への影響を緩和するのが狙いだ。>安倍政権はトランプ政権ほどではないですが、環境保全に熱心でない政権の一つかもしれません。

 

すでに<与党税制調査会の幹部は「1~2年間の時限措置なら自治体の減収分を国の予算で補える」としており、時限的な減税には前向きだ。>という凍結案が支持される方向にあるようですね。

 

ところで、経産相の世耕氏と、対立する総務相の石田氏、いずれも和歌山県ですね。二階氏と合わせると、めずらしく和歌山県が政権中枢で重要な地位を占めているように思うのですが、それがいいことかどうかは別にして。

 

ただ、世耕氏は安倍首相の側近として長くつとめ、高い評価を得ているのに対し、石田氏は初めての入閣でこれまでもそれほど表舞台で目立った活動はされていなかったようにおもえます(知らないだけかもしれませんが)。どうもこのような立ち位置からすると、しかも消費増税を無難なく進めたい安倍政権からすると、経産相の凍結案に分がありそうですね。

 

そんなはしたない議論は置いておいて、きちんとそれぞれの政策目的に応じた税制議論をしっかりと公開でやってほしいものです。だいたい2%の消費増税のために、減税策をあれこれ打ち出し、そこには重要な環境規制を骨抜きにするような対応でよいのか、はなはだ疑問に感じます。

 

こうなると、林野庁が打ち出している新森林環境譲与税なんかも怪しくなるのでしょうか。なぜ2%の増税で、あたふたし、かえって減税策がはびこるようなことになるのか、どうも本質論が、そして税制のあり方が国民の理解を得るような運びになっていないことに問題があるように感じるのです。

 

今日はこの辺でおしまい。また明日。


電力管理 <大規模停電、水力も影響 第三者委中間報告>を読みながら

2018-10-24 | 原子力・エネルギー・地球環境

181024 電力管理 <大規模停電、水力も影響 第三者委中間報告>を読みながら

 

最近は朝6時になろうとしていても、薄暗い感じです。急に晩秋になったかと勘違いするほどです。それでも小庭の花たちはいろいろな色彩で賑やかに咲き誇っています。

 

今年はすでに10月も残り少ない日を数えるばかりとなりました。まだなにが起こるかわかりませんが、今年の自然災害は各地で大きな被災を発生させました。このブログではあまり触れてなかったように記憶していますが、北海道地震に伴う大規模停電を今日は取り上げようかと思います。

 

毎日朝刊<クローズアップ2018大規模停電、水力も影響 第三者委中間報告>では、<北海道地震に伴う大規模停電(ブラックアウト)を検証する第三者委員会(委員長=横山明彦東京大学大学院教授)は23日、発生原因や再発防止策をまとめた中間報告案を了承した。>として、その内容について掲載しています。

 

第三者委の事故原因に関する説明は<ブラックアウトは主力の苫東厚真(とまとうあつま)火力発電所(全3基、出力計165万キロワット)の停止だけでなく、水力発電所の停止など複合的な要因で発生したと分析。>となっています。

 

他方で、<「北電のミスない」>と結論しています。

 

そして<再発防止策として、強制的に停電させる上限量の積み増しなどを提言したものの、中長期的な課題は残ったままだ。【袴田貴行、和田憲二】>

 

この第三者委の位置づけが変わっていますね。

<第三者委は経済産業省の認可団体「電力広域的運営推進機関」に設置された。>この認可団体が委員を選任し、その報告を受けることになっているのでしょうか。北電でなく認可団体が設置主体となっているところが興味深いです。

 

地震発生からブラックアウトに至る経過は次の通りです。

    午前37分 地震発生 同時に、苫東厚真の2、4号機が運転停止

    830秒ころ 本州からの電力融通拡大、強制停電(1回目)124万㎾

    同      送電線の損傷で水力発電が送電不能、運転停止 43万㎾

    21分過ぎ   苫東厚真の1号機の出力が低下

    22分過ぎ   強制停電(2回目)16万㎾

    25分ころ   苫東厚真の1号機が運転停止

    25分過ぎ  強制停電(3回目)6万㎾ ブラックアウト

 

といった経過を辿ったようです。ブラックアウトの要因について、<横山委員長は「水力発電の停止がなければ、ブラックアウトには至らなかった可能性が高い」と指摘した。>というのですが、なぜ水力発電だけ取り上げるのか、素人にはよくわかりません。北電の電源構成によれば(17年度ですので原発が含まれていません)、水力は4%にすぎないですし、京極水力は43でなく40㎾となっています。委員長の趣旨は、他の電源がアウトになっても、水力発電がきちんと働いていたら、大丈夫だったという趣旨でしょうか。石炭火力と石油火力を合わせると75%を占めていたのですが、地震当時どうなっていたのでしょう。

 

苫東厚真の火力発電は3基合計で165㎾ですが、他の再エネ(19)とかには触れていません。なんとなく釈然としないものが残ります。

 

人為的ミスはないとの結論につき委員長はこれを比定し、<電力供給で苫東厚真に過度に依存していたとの指摘もあったが、中間報告は北電の電力供給体制や設備の運用で不適切な点はなく、ブラックアウト前後の対応で人為的ミスなどもなかったとした。>

 

報告書の中では私の疑問程度はしっかり抑えてすべての電源への考察の上、そのような結論に至ったのかと思うのです。<ブラックアウト前後の対応で人為的ミス>がなかったという点も、まず想定されていたかどうか、操作マニュアルがあったかどうかをふまえ、当時の操作内容をつぶさに検討してこのような結論に至ったのだと思うのですが、より丁寧な口頭説明を求めたいと思うのです。紙面の関係で省略しているのであれば仕方ありませんが。

 

やはり気になるのは、負荷遮断の方法ですね。

<委員会では、負荷遮断を巡り、きめ細かい対応を求める意見が出た。岩船由美子東大生産技術研究所特任教授は「非常時に完全に停電するのではなく、(対象外とする施設などを決めて)一部の通電を残すなど、停電によるダメージを抑制する取り組みも重要だ」と対応を求めた。>

 

今回、苫東厚真の出力合計165万㎾のうち、最初124万㎾、次に16万㎾、最後に6万㎾と合計146万㎾を強制停電させる「負荷遮断」をしていますが、それが委員会で討議されたようです。私にはこれだけの議論ではなんとも判断がつきません。

 

私がこの問題を取り上げたのは<地域間融通、高コスト>という指摘が気になったからです。

 

ここでは再発防止策として、地域間融通の拡大(すでに来年3月から現在の60万㎾に新たに30万㎾が増える予定)が取りざたされています。

 

しかしそれでは問題の根本的解決にはほど遠い量というわけです。<焦点は、緊急時に供給エリアを越えて送電する連系線の増強だ。特に北海道と本州は現在の60万キロワット(北本連系線)から増強し、来年3月に容量が計90万キロワットに増えるが、ピーク時で500万キロワットを超える道内電力需要の2割弱の規模しかない。>

 

<本州-九州間の連系線は九州の電力需要の4割弱に達しており、北海道-本州間の弱さが目立つ。>道知事が世耕弘成経産相に増強を要請し、応じているようですが、現実は厳しいようです。

 

それは費用の問題のようです。

<連系線の増強には関連設備も含めて「一般的に10年以上の時間と数百億円では収まらない費用がかかる」(電力広域的運営推進機関)といい、最終的には電気代に跳ね返る。>

 

これに驚きました。数百億円で尻込みしているのですね。いったい原発再稼働にどのくらいかけているのでしょう。桁違いでしょう。

 

連係線の増強拡大、さらに大都市圏への送電網が拡充できれば、北海道のように再エネの潜在力が大きいところではもっと増大するのではないでしょうか。

ところが現実は潜在能力を発揮できるインフラを欠いています。

<北海道には太陽光や風力など再生可能エネルギーの適地が多く、今後も導入拡大が見込まれる。そこに停止中の泊原発が再稼働すれば、大量の再エネ電力が余って管内で消費しきれなくなる。需給バランスが崩れ、太陽光発電の事業者に供給停止を求めたりしている九州電力と同様の事態になりかねない。再エネの大量導入には、電力需要の大きい大都市につながる送電網の拡充が必要だが、「今の送電網は再エネの余剰電力を送る発想で整備されていない」(大手電力幹部)のが現実だ。>

 

最後の研究者の指摘を紹介しておきます。

<電力業界に詳しい東京理科大の橘川武郎教授は「東日本大震災の教訓は、大型発電所への依存を見直して電源を分散させることだったが、電力会社の多くが古い発想から抜けきれていない」と指摘する。長年にわたる地域独占の経営で、原発を含む自社の大型発電所に経営資源を集中し、再エネを軽視してきたツケが回っている。>

 

今日はこれでおしまい。また明日。