たそかれの散策

都会から田舎に移って4年経ち、周りの農地、寺、古代の雰囲気に興味を持つようになり、ランダムに書いてみようかと思う。

レオパレス不正の問題とプラゴミ <レオパレス施工不良 「組織ぐるみ」疑い濃厚>などを読みながら+補筆

2019-03-19 | 企業活動 コンプライアンス 公正取引

190319 レオパレス不正の問題とプラゴミ <レオパレス施工不良 「組織ぐるみ」疑い濃厚>などを読みながら+補筆

 

空き家や空き共同住宅があちこちで目立つ中、真新しいこぎれいな賃貸パートもよく見かけるようになった気がします。空き家などに対処するのは時間がかかりますし、見通しが立たないのでしょうか。金融機関もだぶついた資金の受け皿探しが大変で、一応、賃貸収支事業が採算のとれる形で計画提案されれば、割合スムースに融資の紐をほどくのでしょうね。

 

今朝の毎日記事<クローズアップ2019 レオパレス施工不良 「組織ぐるみ」疑い濃厚 トップダウン体質、弊害>では、レオパレス不正問題を(会社側は「不備」と呼称していますが何でしょうね?)取り上げています。

 

記事では同社について<レオパレスは、建築を請け負ったアパートをオーナーから一括して借り上げ、同社が入居者を集めて家賃を受け取った後、管理費などを差し引いてオーナーに賃料を払うモデルで急成長してきた。>と急成長を指摘しています。

ただ、このモデル自体はずいぶん以前からありましたから、特別同社のものに優位性があるとは思えません。同業他社は利益確保、さらにいえば相場より高い家賃設定をしてその保証を別会社で行うとか、いろいろなサービスを付加していて、競争は激化していると思います。

 

今回の不正(毎日がそう指摘していますが、私もそういった理解の方が説得性があると思います)について、毎日の一面記事<レオパレス21施工不良、効率優先 「元社長関与」 調査委中間報告>で、<賃貸アパート大手レオパレス21は18日、弁護士3人でつくる外部調査委員会(伊藤鉄男委員長)による施工不良問題の中間報告を国土交通省に提出し、発表した。>と掲載しています。

 

中間報告については、レオパレス21のホームページで、<外部調査委員会による調査状況の報告>として公表されていますが、概要ですので、今ひとつわかりにくい印象です。むしろ<当社施工物件における施工不備問題の対応について>では、個々の「不備」について図入りで解説されていますから、わかりやすくて理解できます。

 

中間報告では、<「入居者を増やすため、学生や社会人の新生活開始に間に合うよう、工期短縮や施工業務の効率化が求められていた」>がこの「不備」の背景とされています。要はスピードアップということのようですが、たしかに工期短縮は費用も安くなり、誰もが求めるところで、競争上優位に立てます。

 

しかし、<外壁や部屋間の仕切り壁に、設計図や国交相の認定と異なる発泡ウレタンを使い、遮音性や耐火性の基準を満たしていなかった。>という、不正というべき事態が、単に工期短縮のために行われたとの弁解には腑に落ちないものがあります。

 

本来はグラスウールが使われるべきところ、発泡ウレタンが使用されてきたというのですね。

 

たとえば、レオパレス21の<界壁内部充填材の相違及び、外壁構成における大臣認定との不適合について>では、わかりやすく解説されています。<界壁内部充填材の相違>では、

<設計図書上では界壁内部の断熱材としてグラスウールが充填されるものと記載されているにもかかわらず、実際には、発泡ウレタンが充填されており、建築基準法の規定により共同住宅の界壁に求められている遮音性の基準値を満たしていない可能性があることを確認いたしました。>と。

 

石膏ボードの中に隠れていて見えないとでもいうのでしょうか。施工業者にとっては簡単に分かるのではないでしょうか。材料発注の管理部門でも容易に分かることでしょう。

 

発泡スチロール>はたしかに便利ですが、熱に弱いことは素人でも常識でしょう。建築材料として、<押出ポリスチレン (XPS) は、主に建材に使われる、堅くて難燃性の発泡スチロールである>とされているように、<省エネルギーなどの観点から近代化された住宅の断熱材としては屋根材の下や外壁の下などにも良く使われている。>わけで、最近の住宅では割合普通に使われているかと思います。しかし、難熱性といっても限度があり、基本は<耐熱性は低く、約90℃で溶解する。>わけですから、耐熱性が要求される外壁や間仕切り壁に、使えるわけではないことは法令違反うんぬん以前の当然のことではないでしょうか。

 

現在、調査委員会やマスコミの注目は組織ぐるみかどうかという点のようです。それ自体はしっかりやってもらいたいと思うのですが、その構造的な背景にもメスを入れる機会がないか気になっています。

 

貸し手の金融サイド、さらにレオパレス21の関連事業者ですね。さらにいえば地主側に適切なアドバイスがあればとも思うことがよくあります。

 

で、ここまでが序論ですが、時間がなくなりました。簡単に述べます。

発泡ウレタンは、廃棄処理する場合厄介な代物です。まして建築廃材となった場合より大変ではないかと思います。いま急速に、不正に取り付けられた発泡ウレタンを外して本来のグラスウールなどに取り換える作業が行われていると思いますが、その取り外された発布ウレタンの処理はどうなっているのでしょう。

 

317日付け毎日記事<プラスチック危機国連環境総会閉幕 使い捨て規制骨抜き 米、厳格化に反対>も含め、プラスチック汚染の広がりは大変な状況です。安易にプラスチックを利用しすぎてきたツケというには重大な問題です。今回のような不正は、環境汚染の観点からも見過ごしにできません。

 

環境省も事前チェック、事後チェックに関与するくらいの意欲を見せてもらいたいものです。これは希望ですが。

 

今日はこれにておしまい。また明日。

補筆

 

ちょっと気になっていました。

<「元社長が関与」>という調査委の報告が大きく取り上げられつつ、それはいつで、その後役員は何も知らなかったのかなど、この分野で業績を拡大している企業トップが建基法違反状態を看過できるとは思えないと感じていました。

 

今朝の毎日・経済プレミア<レオパレス施工不良「元社長が関与」中間報告の衝撃>は、経済部記者の川口雅浩氏が言及したものです。それまでの記事も川口氏によるものですが、さらに突っ込んでいます。

 

グラスウールを使用すべきなのに発泡ウレタンを使用したことについて工期短縮や効率化を理由とする会社側が、<グラスウールに比べ発泡ウレタンの方がコスト的には割高と説明した>ことを追加しています。割高な材料変更が工期短縮のためというのは、それが建基法違反、少なくとも不備で取り替えが必要となる事態を考えれば、疑問です。

 

しかも元社長の指示というのですが、同人は巨額の資金流用で2006年に会社から全面的に退いているわけですから、本来、元社長が関与したさまざまなシステムや資材選択等は、その時点で見直され検証されるべきであったと思います。それから10数年にわたって法令違反のチェックがなされてこなかったというのもコンプライアンス体制が機能していないことの証左とみられてもやむを得ないように思います。

 

今後の外部調査委の調査・報告で全容が解明され、適切な対応策が出されること期待したいと思います。



町の本屋さんは? <アマゾン 「買い切り」方式、出版業界に波紋>などを読みながら

2019-03-18 | 企業活動 コンプライアンス 公正取引

190318 町の本屋さんは? <アマゾン 「買い切り」方式、出版業界に波紋>などを読みながら

 

私の趣味と聞かれて、読書といったことは一度もありません。ただ、毎日何かを読んでいるので、まあ嫌いでないことは確かです。といって関東圏で居住・仕事をしていたころ、そうですね30年以上まででしょうか、割合本屋さんを覗くことも多かったと思います。神田で言えば三省堂とか、日本橋では丸善とか、たいてい大きな書店です。結構長時間あちこち見たり、興味のある書籍を立ち読みしたりしていました。当時はよく本も買っていました。やはりタイトルと著者だけでは判断がつかず、手にとって中身をざっと見て、分かったような気がして選んでいたように思います。

 

そうでなくとも、いろんなテーマで並んでいる本棚は、好奇心を高めてくれます。とりわけ大きな書店だと、似たようなテーマでも本の数も多いので、それもいいです。他方で、図書館も好きでして、弁護士会図書館(当時は東京は図書館も3つあり、東弁がダントツに豊富でした)、法務図書館、最高裁図書館、さらには国会図書館など、あちこち言っていた記憶です。

 

当地にやってきたころからは、それまでもっていた書籍をずいぶん処分したこともあり、新たに買うと言うことは滅多にありません。他方で、地元や県立の図書館には借りるために訪れるようになりました。そんなわけで地元の本屋さんを覗くことも年に一度あるかないかといった具合です。

 

たまに本を買う場合も、アマゾンを利用して、だいたい一日か二日くらいで届けてもらっています。そういえば友人が日経の日経小説大賞を受賞したということで購入した書籍もアマゾンを利用しました。便利ですね。本屋さんも車で行けば数分で近いのですが、わざわざ出かける気にならなくなっています。こういう無精ものにはアマゾンはほんと便利です。

 

長い饒舌な私事を述べてしまいました。これからアマゾンが流通革命をさらに推し進めようとしているとき、それがどういう意味を持つのか、私のアマゾン利用状況を指摘して、できるだけバイアスがないようにして、考えてみようかと思います。少なくとも私はアマゾンが出版流通システム特有の制度にどのような影響を与えているかを考えることもなく、これまで利用してきました。ここでは、ここ数日のいくつかの記事を踏まえて、問題定期的に考えてみたいと思います。

 

今朝の毎日記事<アマゾン「買い切り」方式、出版業界に波紋 年内にも導入>は、アマゾンが<出版社から本や雑誌を直接購入し、売れ残っても返品しない「買い切り」方式を年内にも試験導入すると発表した。>と報じています。

 

そしてこの動きが<アマゾンは値下げ販売も検討するとしており、本の価格を維持してきた再販売価格維持制度(再販制度)の形骸化を懸念する声も上がっている。【山口敦雄】>

 

私が独禁法を少し勉強していた45年以上前、著作物の再販価格維持制度は、他の化粧品や医薬品など多くの商品が指定され、法の適用除外となっていました。それぞれそれなりの目的がありましたね。著作物は文化を守るといったことでしょうか。でも今回の記事を読んでいるとある種郵便制度に似たところがありますね。

 

さて記事では<再販制度は、出版社が本の価格決定権を持ち、本の価格を決めて取次会社や書店は、それを守るという契約(再販契約)だ。(1)出版社と取次会社(2)取次会社と書店--の2段階の再販契約を結んでいる。出版文化を守るため、全国どの書店でも同じ価格で本を買えるなど、独占禁止法の適用外として認められている。書店は一定期間が経過した場合、本を返品することができる。>としています。

 

アマゾンのこれまでのネット通販は、この出版社、取次会社、書店の流れを維持しつつ、あくまで一書店(あっという間に日本最大となりましたが)としてやってきました。ですので形の上では再販制度を守ってきたのでしょう。ところがこの買い切り方式では、取次店を外して出版社と直接取引となり、再販制度の前提を崩すことになります。それも超巨大書店ですので、出版社に対して価格交渉を優位に進め値引きも可能ということは目に見えています。

 

それで読者は安く、早く、全国一律の料金で手元に届くということになり、ありがたいと喜ぶばかりでしょうか。

 

出版社は危機感を感じて、アマゾンへの出荷停止をして対抗手段をとっているところもでているようです。

 

他方で、今日付のハーバービジネスオンライン記事<地方に「本が来ない!!」――物流危機で書店業界全体が「危機的状況」に>では、地方、とくに四国・九州の本屋さんは大変な事態になっていることを伝えています。

 

<書店に本が来ない。とにかく届かない。もう発売日から5日が経過したのに一向に来ない――最近そういった声がよく聞かれるようになった。 実は現在、地方において書籍や雑誌が発売されてから書店に届くまでの期間が大幅に伸びており、九州では休日を挟むと「5日前後の遅れ」「ネットで買うより到着が遅い」ということが当たり前となっている。>

 

そもそも<「書籍・雑誌の発売日」>が、出版社が集中する東京を中心に考えられていて、そこで発売する日から地方の書店に届く日を想定して別に決めているそうです。

 

当然輸送コストと日数がかかるわけですが、それは再販制度で全国同一価格が維持されています。<書籍・雑誌の物流は「速さ」よりも全国隅々に確実に安定した商品配送を行うことが優先されている。さらに「全国同一価格」での販売を維持するためには比較的安価な物流手段を採ることも必須だ。>そういったことも再販制度の目的としてあったわけです。

 

そのため四国だと1日遅れ、九州で2日遅れということだったようですが、昨年の西日本豪雨以降、災害による緒交通遮断、さらには運送業などの逼迫で、35日遅れになりつつあるというのです。

 

地方の書店の場合、再販制度で守られてきた一面がありますが、アマゾンなどのネット販売に比べ、配達の遅れが顕著になりつつあります。

 

それだけではありません。

313日付け毎日記事<特集ワイドヘイト本「慣例」が後押し 注文していないのに中小書店に 多く売れば報奨金も/自浄作用働く仕組みを>では、配達の遅れがない大阪で、街の本屋さんに異変が突如、発生したというのです。

 

<民族差別をあおる「ヘイト本」や「日本礼賛本」などを集めた物々しい書棚の存在が、店内の雰囲気を変えてしまったようだ。なぜこんなことに? 【鈴木美穂】>

 

理由は、再販制度の下、取次会社から一方的に送られてきたようです。

<見計らいというのは、こちらが注文もしていないのに配本されることです」>

 

売れる本なら書店に並べようと、書店主の意向も聞かずに行われるようです。

<「この見計らいを通して、ヘイト本やニーズが見込めない何年も前の本が来ることもあるのです。一方、中小の書店には欲しいベストセラー本がなかなか届きません。書店規模などにより、書店のランクが自動的に決まる『ランク配本』という仕組みのためです。>

 

まちの本屋さんが、主体的に自分流の書籍を選ぶことが、当然求められるでしょう。

<基本的に、ヘイト本や日本礼賛本は書店に置かない。客注があれば対応する。書棚に「ヘイトスピーチ」を問うコーナーを作ったり、隣国への理解を深める本をそろえたりして、書店としての意思を示す。置きたくない本は、出版社を明示して取次店にあらかじめ伝える>

 

アマゾンの買い切り方式は、その優位に立った地位を乱用するおそれをしっかり注視する必要があるでしょう。その意味では、<巨大IT企業強要に禁止規定 政府「デジタル下請け法」検討>といったアプローチとはまた異なる視点が必要ではないでしょうか。

 

著作物と再販制度によって成立してきた従来の慣行の問題点を洗い出すとともに、アマゾンのこれまでの手法やこれからの取り組みは、公取委の個別聞き取りから公聴会といったさまざまな手法でオープンで公正におこなってもらいたいと思うのです

 

これから会議があり、中途半端ですが、これにておしまい。また明日。


化学物質過敏症 <元社員が検査業務で化学物質過敏症に>のNHKニュースに懐かしい顔を発見

2018-07-03 | 企業活動 コンプライアンス 公正取引

180702 化学物質過敏症 <元社員が検査業務で化学物質過敏症に>のNHKニュースに懐かしい顔を発見

 

今朝少し寒さを感じて、4時少し過ぎに目覚めました。ふとW杯サッカーの試合はどうなったかなと思いましたが、外を見ると朝焼けが見事で、久しぶりに美しい紅色に染まる山肌を見て感激でした。とはいえ、起きて写真を撮るほどの元気はなく、横になったまましばらく佇み、再び寝てしまいました。

 

6時前に起き出し、関口知宏のNHK中国36,000km最長片道ルートの鉄道旅を最終回を見ました。関口さんは母親の西田佐知子さんの面影よりは父親の関口宏の外観に近い印象ですが、両者の華麗さとは少し違う彼独特のセンスが魅力的です。最終回が終わったら、こんどはヨーロッパ・オランダの鉄道の旅が始まり、これも面白いです。

 

そんなわけで、サッカーの試合の行方は多少気にしつつも、NHK地上デジタルニュースを見たときには、結果だけ分かり、ベスト8を逃したとのことで、残念と思ったら、ウェブニュースで、最初2点をとってリードした途端に同点に追いつかれ、延長間際に逆転されたと言うことで、惜しい試合の流れでした。試合を見ていた人たちは興奮し、がっかりしたでしょうね。でも素晴らしい試合だったわけです、格上チーム相手によく頑張ったと褒めたいですね。

 

さて、昨夜のローカルニュースを見ていて、花王の和歌山工場で化学物質過敏症被害を受けた労働者が訴えた判決を報じるものでしたので、和歌山地裁か、だれが担当したのかと興味本位に見ていたら、東京地裁なんですね。それで担当弁護士はと見ると、神山美智子さんと中下裕子さんでした。後若手の弁護士がいましたが、私の知らない方でした。

 

神山さんは東京弁護士会で、50年以上「食の安全」を中心に公害環境・消費者問題に取り組んできた先達ですね。穏やかでユーモアがあり、他方で信念を貫く強靱な意志をもち、この分野で先進的な取り組みをしてきたリーダーの一人と言っても良いでしょう。学ぶことの多い人でした。

 

中下さんは私とあまり変わらない世代で、化学物質問題に積極的に取り組み、日弁連のこのテーマのシンポでも実行委員長をされたと思いますし、関連する団体の代表として引っ張る積極的で前向きな方ですね。

 

その二人が手がけた大企業花王を相手に訴訟して、勝訴的な判決を獲得したのはさすがといってよいでしょう。

 

NHKのウェブ記事元社員が検査業務で化学物質過敏症に「花王」に賠償命令では<大手日用品メーカー「花王」の工場に勤務していた元社員が、有害な化学物質を取り扱い、体にまひやけいれんなどの健康被害が出たと訴えた裁判で、東京地方裁判所は「元社員は大量の化学物質にさらされて化学物質過敏症を発症したと認められる」として、花王におよそ2000万円の賠償を命じました。>と化学物質過敏症被害を認定しています。

 

この種の事件で、損害賠償額も大きい方ではないでしょうか。

 

請求内容は記事によると

<昭和60年から平成24年にかけて花王の和歌山工場に勤務していた元社員は、クロロホルムやメタノールなど、有害な化学物質を使って検査を行う業務に当たり、体にまひやけいれんなどが出て、化学物質過敏症にかかったとして会社に4700万円余りの賠償を求めました。>

 

昭和60年当時はまだ化学物質の有害性に一般的にはまだ十分着目されていなかった時代なので、多少は理解できますが、平成24年まで、同様の状態で検査を継続していたなんて、花王が環境配慮をうたってきたことに反する対応です。

 

判決では、<東京地方裁判所の梅本圭一郎裁判長は「元社員は大量の化学物質にさらされて化学物質過敏症を発症したと認められる。会社は排気装置の設置や保護マスクの支給など、作業に当たる人の健康被害を防ぐ措置を怠ったため、元社員が化学物質過敏症にかかった」と指摘し、花王に対し、およそ2000万円の賠償を命じました。>

 

私が化学物質過敏症問題を手がけた20年前は、裁判所はもちろん、社会的にもこの用語を認める段階になかったと状況でした。化学工業メーカーなどの強い政治力もあって、わが国では、厚労省も容易に認めない状況でした。「化学物質」という言葉を使わせない「シックハウス症候群」といった造語で、ホルムアルデヒドなど一定の化学物質の閾値を超える場合に認める裁判例が2000年代から次第に増えていった記憶です。

 

私が化学物質過敏症問題から離れてすでに10年を経過しましたが、この東京地裁の判決を見て、少し裁判例をフォローすると、判決で化学物質過敏症を認める事例は徐々に出てきたようです。ただ、非常に限定的ですし、損害認定額も極めて少額です。

 

その意味では今回の東京地裁の判決は、事実認定を詳細にチェックしないと分かりませんが、検討しがいのあるこの種事件の金字塔かもしれません。

 

今日はこれから和歌山にでかけ、帰りは遅くなるので、ブログを早めに書き上げました。

また明日。


アマゾンは公正か <アマゾン 公取委立ち入り 王者に逆らえず・・>などを読みながら

2018-03-16 | 企業活動 コンプライアンス 公正取引

180318 アマゾンは公正か <アマゾン 公取委立ち入り 王者に逆らえず・・>などを読みながら

 

ここのところずいぶんと暖かくなってきました。運動不足を解消と足腰の劣化進行を少し抑えるため、室内ジョギングを始めたところですが、結構暑くなってきました。最初は5分から、次は10分、15分、そしてようやく20分となり、少しずつ足が動くようになってきました。ところが、かなり暑くなってきたので、今後は室内では難しいかなと思いつつ、汗をかいてシャワーを浴びるのもいいものですから、それなりに対応するのもいいかもと思っています。

 

ところで、今朝の毎日記事<アマゾン公取委立ち入り 王者に逆らえず メーカー「切られたくない」>は、やはりという感じをうけました。アマゾン利用者の一人である私ですが、十分サービスの利益を享受しつつ、少しサービスが良すぎるんではと思うこともありました。

 

たしかに注文すれば、翌日とか遅くとも数日中に届けてもらえるというのはとても便利で、田舎にいるとなかなか品物がない、といって都会まで出かける元気もないとき、アマゾンの存在がなければ結構、田舎生活も淋しいものになったかもしれません。といった感覚は物質主義に染まりすぎていると、反省しますが。自然農やほんとに田舎生活を享受している人は、おそらくアマゾンの品物やサービスなどは必要としていないのではないかと思っています。

 

いずれ本格的な田舎生活、というか自然の中で生きるとすれば、アマゾンなどなくてもなんの問題もないのですが、当分、そのサービスを受け続けそうな自分としては、アマゾンがまっとうな商売をしてもらいたい、公正な取引を行ってもらいたいと思うのです。

 

それは宅配便の件では、アマゾンの過剰なサービス強化で、労働者に対する加重労働・長時間労働を強いていた事実が明らかにされ、その後ある程度改善したと思います。私たち利用者も、できるだけ一度の配達で受け取れるように配慮するなり、新たなボックス制度を利用するなど、消費者側も配慮する必要があると思うのです。

 

さて、宅急便事件では、アマゾンの優越的地位を遺憾なく発揮している様子が窺えましたが、今回の公取委の立入調査は、より直接的な不公正な取引を強いている姿勢が少しずつ露呈してきたように見えます。

 

記事では、<ンターネット通販大手「アマゾンジャパン合同会社」(東京)が15日、独占禁止法違反(優越的地位の乱用)の疑いで公正取引委員会の立ち入り検査を受けた。自社サイトで取り扱う商品の納入業者に対し、値引き販売した額の一部を填(ほてん)させたとされ、ネット通販の「王者」としてのアマゾンの絶大な力に抗することができない日本メーカーの姿が浮かび上がる。>

 

今回問題となっている取引形態としては、上記の値引き額の一部補填と、協力金負担とがその乱用の疑いがかかっているようです。

 

後者について<アマゾンは昨秋から、納入業者に負担を求める動きを強めた。ある食品メーカーは、アマゾンからサイトで販売した金額の5%程度を協力金として負担するよう求められた。一度は拒否したものの、「商品の販売で不利な扱いを受ける」という懸念があり、交渉の結果、1%の支払いに応じたという。>

 

アマゾンが優越的地位にあるということは否定しがたいと思います。

<アマゾンは圧倒的な品ぞろえと低い価格、スピード配送を武器に急速に売り上げを伸ばし、2017年の国内の売上高は約119億ドル(約1兆3000億円)に上る。国内メーカーにとっては無視できない存在だ。日用品メーカーのうちの1社は「アマゾンはネット業界の絶対的王者。>

 

参考までに公取委の<優越的地位の濫用に関する独占禁止法上の考え方>により、協賛金と値引き分の補填に関連する事項を取りあげておきたいと思います。

 

協力金といった経済的利益の提供について、<独占禁止法第2条第9項第5号ロ>があり、その定めは次の内容です。

<ロ 継続して取引する相手方に対して,自己のために金銭,役務その他の経済上の利益 を提供させること。>

 

この解釈として、<この規定における「経済上の利益」の提供とは,協賛金,協力金等の名目のいかんを問 わず行われる金銭の提供,作業への労務の提供等をいう。>と規定しています。

 

想定例が挙がっていますので、一部を引用します。

<①取引の相手方の商品又は役務の販売促進に直接寄与しない催事,売場の改装,広 告等のための協賛金等を要請し,これを負担させること。

<②決算対策のための協賛金を要請し,取引の相手方にこれを負担させること。

<③自己の店舗の新規オープン又は改装オープンに際し,当該店舗の利益を確保す るため,事前に負担額,算出根拠,目的等について明確にすることなく,一定期間 にわたり,取引の相手方からの当該店舗に対する納入金額の一定割合に相当する 額を協賛金として負担させること。

<④一定期間に一定の販売量を達成した場合にリベートの提供を受けることをあら かじめ定めていた場合において,当該販売量を達成しないのに当該リベートを要 請し,負担させること。>

 

前者の場合、上記が該当する場合もあるでしょうが、<独占禁止法第2条第9項第5号ハ>も当てはまるかなと思われます。

 

その規定の内容は<ハ 取引の相手方からの取引に係る商品の受領を拒み,取引の相手方から取引に係る 商品を受領した後当該商品を当該取引の相手方に引き取らせ,取引の相手方に対し て取引の対価の支払を遅らせ,若しくはその額を減じ,その他取引の相手方に不利 益となるように取引の条件を設定し,若しくは変更し,又は取引を実施すること>です。

 

想定例の一部を引用します。

<④ セールで値引販売したことを理由に,又は当該値引販売に伴う利益の減少に対 処するために,値引販売した額に相当する額を取引の相手方に値引きさせること。

  毎月,一定の利益率を確保するため,当該利益率の確保に必要な金額を計算し て,それに相当する額を取引の相手方に値引きさせること。

 

上記の④は本件の取引に近いかなと思われます。

 

アマゾンは、日本のこれまでの流通・運送業務など各方面に革命的な取組を行っていますが、それがある種の創造的革新となり、既存の不当な特権を破壊し、新たな公正な取引秩序を生み出し、消費者に利益を提供するだけでなく、競争者に公正な取引を促進し競争を生むものであればいいのですが、その優越的地位の乱用にならないよう、注意が必要でしょうね。

 

たとえば先月のニュース<取次外し 印刷工場から本を直接調達>も場合によって問題を含む内容があるかもしれません。具体的な事実関係を確認しないと即断できませんが。

 

とはいえ、アマゾンのサービスは、いろいろな面で革新的で、期待したいところでもあるので、その半面、問題があれば正してほしいものです。


優越的地位って <フリーランス 独禁法で保護>を読みながら

2018-02-02 | 企業活動 コンプライアンス 公正取引

180202 優越的地位って <フリーランス 独禁法で保護>を読みながら

 

「京大の入試ミス」について大きく取りあげられた横に小さな記事が載っていて、最初気づかなかったのですが、入試ミスを取りあげるのは結構肩の荷が重いなと思ってふと目をそらすと、この記事が目につきました。

 

毎日社会面で<フリーランス独禁法で保護 不利な条件、企業側取り締まりも 公取委検討会>という渡辺暢記者によるものです。

 

ただ、「フリーランス」を取り締まりの対象にするとしつつ、契約問題が話題となった主な例は芸能界やスポーツ界の有名人の話ですね。なんとなくちぐはぐな印象を感じましたので、どのような取り組みを考えているのか、公取委のホームページを探った結果、当の検討会について一定の資料は検索できましたが、その方向性を示すような報告案などもなく、この記事は委員長ないしは関係者からのブリーフィングでしょうね。

 

ともかく記事の内容から入りましょう。

<企業と雇用契約を結ばずフリーランスとして働く人たちの労働環境改善を議論する公正取引委員会の有識者検討会(座長=泉水文雄神戸大大学院教授)は1日、企業側によるフリーランスへの不利な条件の押しつけなどが独占禁止法違反にあたる恐れがあり、公取委の取り締まり対象になりうるとの考え方をまとめた。フリーランスは独禁法と労働基準法の間のグレーゾーンとされてきたが、独禁法の保護対象となる方向となった。>

 

たしかにフリーランスは、使用者と支配関係にないという前提ですから、労働基準法の保護を受けられませんね。そうなるとパワハラならぬ、取引先という力の強い相手から「優越的地位」の乱用を受けやすい、受けるおそれのある立場と言えるでしょう。

 

で、「優越的地位の乱用」については、独禁法が禁止していますが、具体的な基準は公取委が<優越的地位の濫用に関する独占禁止法上の考え方>というガイドラインで示しています。

 

まず独禁法第2条第9項第5号の規定は、つぎのとおりです。

 

自己の取引上の地位が相手方に優越していることを利用して,正常な商慣習に照らして 不当に,次のいずれかに該当する行為をすること。

  継続して取引する相手方(新たに継続して取引しようとする相手方を含む。ロに おいて同じ。)に対して,当該取引に係る商品又は役務以外の商品又は役務を購入させること。

継続して取引する相手方に対して,自己のために金銭,役務その他の経済上の利益を提供させること。

取引の相手方からの取引に係る商品の受領を拒み,取引の相手方から取引に係る商品を受領した後当該商品を当該取引の相手方に引き取らせ,取引の相手方に対して取引の対価の支払を遅らせ,若しくはその額を減じ,その他取引の相手方に不利益となるように取引の条件を設定し,若しくは変更し,又は取引を実施すること。

 

この規定を読んだだけでは、判断のしようがないともいえるでしょうから、その次に公取委の考え方を例を挙げながら示しています。ま、ざっくばらんにいえば弱い物いじめなんですが、それが資本の本質ですから、そこを微妙に「正常な商慣習」を基準にして不当な賭しているわけです。当然、この優越的地位とはなんぞやとか、正常な商慣習とはなにかとか、問題になるわけで、ガイドラインで示していても、争いの種になりますね。ただ、資本の本質的な性質を、渋沢流商いの本道みたいなものに近いものとの差もあるでしょうし、どんどんエスカレートしていく中では、公取委と業者との間のつばぜり合いは大変な物でしょう。

 

それはともかく、これまでフリーランスは対象外としてきた独禁法の運用を改めるわけですから、それだけフリーランスも増えたわけでしょうし、また働き方改革の条件整備をするためにも、必須の方針転換だと思います。

 

今回の動きは昨年夏から始まったようです。

<公取委は2017年8月、有識者検討会を設置。フリーランスが急増する中、どのような問題が起きているかなどを実態調査し、移籍・独立を巡るトラブルが多いとされる芸能人やプロスポーツ選手の問題についても聞き取りを行ってきた。>

 

たしかにSMAP騒動は賑やかだったですね。「のん」さんというは女優のことは知りませんでしたが、この種の例は多いのでしょうね。ラグビーやプロ野球なども当然、経営者側が一方的に定めて規約なり協約なりを選手に押しつけているわけですから、問題になって当然でしょう。他方で、アメリカでは当然のエージェント制による保護のあり方も考慮して良いかと思うのですが、日本にはなじまないのでしょうかね。ただ、最近はプロ野球選手だけでなくスポーツ選手も弁護士を代理人に立てるケースが増えてきたように思います。ま、これはアメリカのエージェントと同じではないですが、いろいろ手法を検討していい時期でしょうね。

 

でフリーランスについてはというと次のような記事となっています。

<検討会はフリーランスの置かれた現状について、企業側と待遇面の交渉をしにくい▽取引先の選択肢が少ない▽トラブルが起きた時に不利な情報を広められてしまう▽法律知識などに差がある--などと列挙。さらに、企業側による移籍制限や引き抜き防止、過度な秘密保持義務の強要といった乱用がみられ、>として、<検討会の報告書はこれらが独禁法が禁じる「優越的地位の乱用」に抵触し、取り締まり対象になりうるとの見解を示した。>というのです。

 

具体的な不当な拘束的取り扱いなどがヒアリングで明らかにされたようです。

<これまでの実態調査ではフリーランスとして働く人から「他社の仕事を受けないように強要された」「スポーツチーム間で移籍すると一定期間出場ができなくなる」といった声が寄せられた。

 また、複数の芸能事務所の契約書のひな型には、芸能事務所側がフリーランスの芸能人との契約を一方的に更新できる内容になっており、引き抜きや移籍を事実上制限していた例も確認されたという。>

この内容だけからみると、どうもスポーツ選手や芸能人と言った限られた人たちのようにも見えますが、報告書が出てこないと、この記事だけで云々するのも問題でしょうね。

 

で<公取委報告書案 骨子 >が掲載されていますので、そのまま引用します。

・企業側がフリーランスに不利な条件を押しつけるなどした場合、独禁法の定める「優越的地位の乱用」などに触れる恐れがある。

・個別の行為が違反に該当するかは、待遇面の交渉のしにくさや、取引先の選択肢の少なさといった要素から判断できる。

・フリーランスや芸能、スポーツなどの分野は、問題となる行為が独禁法違反に当たる可能性を認識し、自浄に努める必要がある。

 

有名人といった人を対象とするだけだと、彼ら・彼女らは弁護士なりそれなりの防御手段をもちえますが、一般のフリーランスの人たちをきちんとカバーする報告書、そしてガイドライン作りをしてもらいたいものです。

 

なお、<法令・ガイドライン等(独占禁止法)>にはこの関連の法令・基準が掲載されていますので、参考のため引用しておきます。

 

また、当該検討会に関する情報は検索の結果www.jftc.go.jp/scs/web/sf1.wn にありました。

 

で、フリーランス一般に関する資料としては<フリーランス活用の背景と課題>という高橋俊介慶大教授のスライド用ファイルが、芸能界については<独占禁止法をめぐる芸能界の諸問題>という星野陽平氏のものがありましたので、関心ある方はご覧ください。

 

一言忘れていました。

#MeToo」を忘れてはいけません。独禁法は対象外というかもしれませんが、ある種本質的な圧力行為でしょう。対象に組み込む工夫をしてもらいたいですね。


もう一時間経過してしまいました。業務時間も過ぎてしまいましたので、本日はおしまい。また明日。