たそかれの散策

都会から田舎に移って4年経ち、周りの農地、寺、古代の雰囲気に興味を持つようになり、ランダムに書いてみようかと思う。

医師の倫理 <さい帯血違法投与 背景は 日本医師会常任理事・今村定臣氏>などを読みながら

2017-10-16 | 医療・医薬・医師のあり方

171016 医師の倫理 <さい帯血違法投与 背景は 日本医師会常任理事・今村定臣氏>などを読みながら

 

最近、企業の不正や弁護士の倫理とかについて取り上げ、今日は医師の倫理を話題にしています。私自身がそれほど倫理観がしっかりしているとは思えないので、天につばする行為と言われるかもしれません。他人のことは言えても自分はどうなんだと言われると、冷や汗をかくかもしれません。でもそれくらいの気持ちをもっていないと、マンネリ化で真摯な仕事ができなくなるおそれがあるというのも感じています。

 

ま、こういう話題を取り上げるのも、私自身、他山の石として、いろいろ自分の問題を鑑みるチャンスかもしれないと思っている節があります。どんどん新しい事象が発生し、なにがほんとうに問題かよくわからない、自分で考える五感を磨いていないと、何も感じなくなるおそれもありますね。ふとそんなことを考えながら、他方で、そういう自分が独自の存在としてあるのか、報道などの表面的な見方にすぎないのではなか、などいろいろ思うところもあります。いずれは整理してみたいところです。

 

さて本題に入りたいと思います。上記記事では、<医療機関が他人のさい帯血を国に無届けで患者に違法投与していた問題が明るみに出た。再生医療安全性確保法=1=違反容疑で医師ら6人が逮捕され、民間のさい帯血バンクからの流出も判明。>した事件を契機に、その背景と対策をインタビューしています。

 

今村氏は、再生医療への期待の反面、今回の事件の背景として、<医師の倫理がないがしろにされている面>を指摘しています。

 

今村氏は<今回の事件では、相当高額な費用を医師が利用者から徴収している例もある>として、その倫理性を問題にしています。その前に取り上げている<科学的な妥当性、有効性が担保・・・されていないものを医師が医療行為として行って良いのかという根本的な問題>を指摘していますが、これも倫理性の問題でもありますね。

 

事件で問題となったのは横流しされたさい帯血ですが、本来の取り扱いについても問題提起されています。火葬場での焼却が多いようで、処分されない残り数%がさい帯血バンクに預けられ、<日本赤十字社などが運営する公的バンク>と<民間事業者のバンク>があるそうです。前者は<有効性が確認されている医療分野で、必要としている患者に広く使ってもらいます。>他方で、後者は<預けた妊婦の子どもらが病気になった時に使うことを想定しています。>とされ、その預けること、利用すること自体は医療上の問題とはされていません。

 

ただ、後者の場合に、インフォームドコンセントが適切に行われていたかについては調査の必要を訴えていますので、やはり倫理上の問題が残るでしょう。

 

この点、今村氏は、<今回の調査では民間バンクに4万3700人分のさい帯血が保管されていることが分かりました。また、契約終了後も廃棄せずに保管し続けているさい帯血が約2100人分あることも判明しました。しかし、さい帯血がどのように管理され、家族らが病気の治療で必要になった場合にどんなケースで使えるのか、さい帯血を預けた妊婦さん自身が理解しているでしょうか。契約の際に利用者へのインフォームドコンセント(十分な説明に基づく同意取り付け)がきちんとなされていたのかどうかを調べる必要もあったと思います。>と指摘しています。

 

他方で、<民間バンクが廃業に追い込まれるリスクなどは明かさず、利用すると良い結果があるように説明し、ともすれば利用へと誘導するような、ある種の「商売っ気」で契約者を集めている業者があったとすれば、責任を問われると思います。>と業者の問題になっていますが、医師が介在しないまま、業者だけの話で事が進むとは考えにくいように思うのですが、どうでしょう。民間バンク事業者についての一定のルール指導、さらに規制といった方向性も今後検討される必要があるのでしょう。

 

この点今村氏は公的バンクの有用性と普及を訴えています。<今後、さい帯血の有用範囲が広がり、数が不足する事態が起こるかもしれません。それに備えるなら、公的バンクでの保管数を増やすべきです。産科として対応するとしたら、公的バンクを充実する必要性を妊婦さんに伝えていくことが妥当なやり方だと思います。>

 

さて、<医師の職業倫理指針[第3版]>が昨年10月改定されています。この内容は相当具体的で、医師だけでなく、患者をはじめ関係者にとっても有用だと思います。

 

ただ強いて言えば、本来は最初の<医の倫理綱領>の6点だけだと品格があり、美しいのですが、そうもいかないのが価値観が多様化し複雑化し医療技術を含め科学技術・ITなどの進展がとどまるところをしらないわけですので、こういった詳細な指針が必要なのでしょう。それでも今回の再生医療については具体的な規定がないわけですから、むずかしいですね。

 

この指針では、<1.医師の基本的責務><2.医師と患者>という一般的規定を置いた後、個別的テーマとしては<3.終末期医療><4.生殖医療><5.遺伝子をめぐる課題>をとりあげ、最後に再び基本的な事項として<6.医師相互の関係><7.医師とその他の医療関係者><8.医師と社会><9.人を対象とする研究>(これは個別的テーマでしょうか)とわかりやすく項目をたてています。

 

で、今回問題となったさい帯血事件との関係で、今村氏が指摘した倫理上の問題についても、2.の<(14)科学的根拠のない医療>では、現代医学の前線における微妙な舵取りについて次のように定めています。

 

<医師は患者の状況や背景等も考慮し適切な医療を選択することになるが、原則として科学的根拠をもった医療を提供すべきであり、科学的根拠に乏しい医療を行うことには慎重でなければならない。たとえ行う場合でも根拠が不十分であることを患者に十分に説明し、同意を得たうえで実施すべきである。いやしくも、それが営利を目的とするものであってはならない。>とされています。

 

また<(17)医療行為に対する報酬や謝礼>では、昔は何か当然のように行われていたことについて次のように厳しく定めています。

 

まず<医師は医療行為に対し、定められた以外の報酬を要求してはならない。>と当然のきていがあります。そのうえで、次のように厳粛な姿勢を示しています。

 

<患者から謝礼を受け取ることは、その見返りとして意識的か否かを問わず何らかの医療上の便宜が図られるのではないかという期待を抱かせ、さらにこれが慣習化すれば結果

として医療全体に対する国民の信頼を損なうことになるので、医療人として慎むべき

である。>

 

インフォームドコンセントについても、<(3)患者の同意>の箇所で、次のように記載されています。

 

<医師が診療を行う場合には、患者の自由な意思に基づく同意が不可欠であり、その際、医師は患者の同意を得るために診療内容に応じた説明をする必要がある。医師は患者から同意を得るに先立ち、患者に対して検査・治療・処置の目的、内容、性質、また、実施した場合およびしない場合の危険・利害得失、代替処置の有無などを十分に説明し、患者がそれを理解したうえでする同意、すなわちインフォームド・コンセントを得ることが大切である。>

 

この内容自体は特別目新しいものではないですが、上記<(14)科学的根拠のない医療>での患者の状況や背景事情を考慮した上での具体的な説明義務の規定との関係ではやはり意味があると思うのです。

 

さて一時間がすでに経過しました。今日はこの辺でおしまい。