たそかれの散策

都会から田舎に移って4年経ち、周りの農地、寺、古代の雰囲気に興味を持つようになり、ランダムに書いてみようかと思う。

化学物質のリスク <シックハウス 家具で発症>などを読みながら

2019-03-15 | リスクと対応の多様性

190315 化学物質のリスク <シックハウス 家具で発症>などを読みながら

 

最近のニュースで「化学物質過敏症」ということばがあまり使われなくなった印象をもちます。今日のニュースではいくつか気になる記事があり、どれにしようか迷ってしまいましたが、結局、上記に落ち着きました。

 

今朝の毎日記事<くらしナビ・ライフスタイルシックハウス 家具で発症>は、文字通り「シックハウス症候群」として取り上げています。別にこの問題が話題になり出した90年代後半でも大手マスコミはこの用語を選んでいたので不思議はないのです。ただ、それでも被害者が訴える「化学物質過敏症」という用語を使う記事もあったと思いますし、雑誌ではむしろ多かったような印象があります。

 

それから20年余り経過して事態は変わってきたのではないかと思うのです。この記事でも裁判例はいずれも「化学物質過敏症」と認定して被害者側の損害賠償請求権を認めています。その裁判例を引用しつつも、記事はあえて(といいたいです)「シックハウス」という別の用語を選択しています。

 

両者は同じだと思われる方もいるかもしれません。この記事で取材に応じている弁護士の中下さんなら、とんでもないと強い口調で否定する姿をイメージしそうです(勝手な想像はダメでしょうけど)。シックハウスではこの問題の本質をとらえられないと思うのです。

 

記事で紹介されている<18年 カラーボックスから揮発したホルムアルデヒドで化学物質過敏症になったとして、販売したホームセンター・コメリに高松地裁が賠償命令>の裁判例を見ますと、やはり明確に「化学物質過敏症」と認定しています。原告は一級建築士です。建築士が自分の事務所あるいは部屋で発症したのか、建築士とあろうものがと思われる向きもあるかもしれません。事実は奇なりというより、真相こそ化学物質のリスクを如実に示しています。

 

判決では「建築現場での打合せや施工監理の際などに、建築資材等に使用されている化学物質に接していた可能性があり、慢性的に化学物質に曝露していた」と建築現場での長期継続的暴露に言及しています。それまで発症していなくても、少し濃度の高いカラーボックスに接触することが直接の引き金となって化学物質過敏症を発症することは専門的な知見としては確立していると思います。裁判所もほぼ同様の考えで認定したと思われます。

 

また中下さんらが代理人となった裁判例(東京地裁平成30年7月2日判決確定、判例集未登載?)でも、花王の従業員が有機溶剤などの検査業務を実施する中で、「本件工場内の研究本棟において、本件検査分析業務に従事する過程で、大量の化学物質の曝露を受けたことにより、有機溶剤中毒に罹患し、その後、化学物質過敏症を発症した」と認定されています。

 

シックハウスといった用語は一切使われていません。これは業界がその使用に強く反対し、マスコミ・政界に強力な圧力をかけてきたことが背景にあると思うのです。

 

こういった裁判例がずいぶん増えてきたなと思うのですが、シックハウスという用語とその厚労省指針の限界もあって、化学物質過敏症に罹患するおそれは減っていないと思いますし、これからも発症するリスクに晒されていると思います。

 

さて記事を紹介するのが遅くなりました。

<屋内の空気中の化学物質が原因で頭痛やだるさなどの体調不良が起きる「シックハウス症候群」。家屋の建材だけでなく、家具など家庭用品が発生源となることもある。新生活を始める前に、どのように家具を選べばいいのか。>と問題提起をしています。

 

さて昨年1218日付け毎日記事<シックハウス3物質断念 業界に配慮 厚労省指針>のとおり、有害性(有毒性?)の高い化学物質については、厚労省の室内濃度指針値があります。その指針値について<法的強制力はないが、業界が自主規制する際の根拠になる。1997年にホルムアルデヒドについて決めたのを皮切りに計13物質が対象になったが、2002年以降、見直されていなかった。しかし、指針値のない化学物質が原因とされるシックハウス問題が増え、12年に検討会が再開された。>というのです。

 

でも<キシレンなど3物質の規制を強化するが、同省の「シックハウス問題に関する検討会」で合意されていた2-エチル-1-ヘキサノールなど3物質の新規指定は見送られた。厚労省は「代替物を探すのに時間がかかると(建築関係の)業界から言われた。業界と協力して情報を集めていきたい」と説明し、規制反対の意見に配慮した格好だ。>というのです。

 

ここでは建築関係の業界だけが話題となっていますが、背後には化学物質業界がどんと控えていると思います。

 

この指針値自体が家屋の建材などが主な対象で、家具などはその緩い網からも落ちていると思われます。何よりも原因物質の特定が容易でないことが見過ごされています。

 

再び今日の記事ですが、40万円もするベッドを新調した後から夫婦に体調異変が生じています。商品表示では<「日本製」でホルムアルデヒドの放散が最も少ない等級を示す「F☆☆☆☆(エフ・フォースター)」の表示>でしたが、解体検査すると<国の室内濃度指針値(1立方メートル当たり100マイクログラム)を超える135マイクログラム相当のホルムアルデヒドが検出>したというのですから、ひどい話です。

 

結局、家具を構成する部材にどのような化学物質が使われているか、販売店はもちろんメーカーでも明らかにすることは容易でなく、しかも厚労省の指針値がある対象だけが有害性の高いものと限定できないのですから、消費者としては安全性が保証されているとは言いがたい状況ともいえるでしょう。まして化学物質暴露に対する反応は個人差、その過去の経歴とも関係するので、防御策は容易に見つからないかもしれません。

 

<「においに耐えられないと思ったら、体が有害だと教えている。>とのこと、たしかに臭気は一つのメルクマールでしょう。私も割合敏感な一面があり、容器リサイクル施設を見学するような場合などでは、ちょっとした臭気を感じて体調不調をきたすことがあります。

 

でも無臭で有害性の高いものもありますから、それだけでは安全確保とは言えません。

 

化学物質(つまり地下資源ですね)を使った製品、商品をなるべく使わない、使うときは用心しながら使うことを心がけるのでしょうか。さて用心とは・・・揮発性の高いものであれば、風通しのよい状態に環境を保つことでしょうか。そうでないものは・・・五感を強力に働かして体調のちょっとした異変に気づくとともに、周囲の微細な変化にも気づくことでしょうか。

 

最後はよくわからない話になりましたが、当地に来る前まで私は化学物質過敏症で苦しむ人たちから相談を受けてきたことがあり、その苦しみは大変なものですから、罹患しないことが一番と思うのです。

 

今日もわかりにくい展開となりましたが、この辺でおしまいとします。また明日。


嗜好品と自律 <「喫煙不採用」徐々に浸透>と<ANA機長深酒、5便に遅れ>を読みながら

2018-11-01 | リスクと対応の多様性

181101 嗜好品と自律 <「喫煙不採用」徐々に浸透>と<ANA機長深酒、5便に遅れ>を読みながら

 

今朝も結構冷え込みました。それでも事務所に来るといろいろ電話があったり、議論したりすると、体が温まります。変な暖まり方ですが、多少は脳の活性化になっているかもしれないなんて思うこともあります。

 

さて今日もあれこれやっているうちに、終業時間となりました。さてと今日のお題はと今朝の毎日新聞を読んだ紙面を思い出し、2つの記事に何かしら感じるものがあり、これを本日のお題とすることにしました。

 

まず<全日空ANA機長深酒、5便に遅れ 「飲み続けてしまった」>は、飲酒にまつわるよくある話ですが、ただ、機長という特殊な職種であることが話題でしょうか。

 

<全日空は31日、グループ会社のANAウイングスに所属するボーイング737の40代男性機長が、前日の飲酒の影響で体調不良になり、25日に予定していた那覇空港と石垣島や宮古島を結ぶ沖縄県内の計5便に乗務できなかったと発表した。>

 

飲酒ルールが会社にあるようです。

<航空法に基づき国土交通相の認可を受けた同社の規定は、乗務開始の12時間前から飲酒を禁じている。>ところが、<機長は「認識はあったが、飲み続けてしまった」と話しているという。>

 

具体的には<機長は25日午前8時10分発の石垣発那覇行きの便に乗務予定だった>というのですから、会社規定に従えば、前日の午後8時10分には飲酒をやめなければいけなかったのですね。12時間ルールですからわかりやすいですね。ところが、機長は2時間もオーバーして<前日午後10時ごろまで沖縄県石垣市の飲食店で飲酒。>そして当日の<25日午前6時半ごろ「体調不良で乗務できない」と所属部署に連絡した。>というのです。

 

搭乗前にアルコール検査をしているのかはここでは言及されていませんが、10時間前まで飲んでいたというのですから、アルコール度数や量によっては検査していれば検知されたかもしれませんね。

 

他方で、検知されなければ、操縦するつもりであったのでしょうね。たまたま体調不良になったから搭乗しなかっただけですから。飲酒はたしかに一定の効用がありますが、プロとして、しかも大勢の乗客の命を預かるものとして、飲酒についての自覚を欠いているということは明白ですね。体調不良になるほど、飲んでいたということは、その度数・量も相当な物であった可能性があります。

 

私も酒が好きですので、人のことを言える立場ではないですが、50代後半ころから次第に自覚するようになり飲酒量を減らし、最近は体調不調もあって、断酒というか、飲んでいません。集まりの席でも、水かお茶にしていますが、慣れると別に周囲も違和感を感じていないようです。それに酒の影響を受けることがないので、自然体が最後まで続きます。意外とそれはいいですね。

 

まあこの機長をはじめ酒を飲み出すと節度を超える人は少なくありませんが、それは酒による影響も大きいので、そこに至る前に自分なりの飲酒量の枠を設定することではないかと思うのです。それ自体はさほど難しいことではないように思うのです。いやいやアルコール中毒ないしはそれに近い人にとっては不可能というかもしれませんが、私は一人でできなければ、周囲の支援があれば可能と思うのです。

 

たとえばこの機長、仮にこの飲酒状態で操縦していたとしたら、判断ミスを犯すおそれもあったかと思います。そのような結果は、交通事故ではよくあることですね。操縦席や車のハンドルにアルコール検知管のような新たなセンサーを設置して、物理的に飲酒○○をさせないのも一つです。でも自律的な人間像を求めれば、そういう行動様式を確立するよう指導することが大事でしょう。

 

同様になかなかやめられないのが喫煙ですね。ご本人は嗜好だと固守するでしょうけど、周り、とりわけ弱者が間接喫煙の被害を受けても泣き寝入りしているのを忘れてはいけないでしょう。むろん喫煙者ご自身の健康被害もいつ発症するかわからない時限爆弾をかかえているようなものでしょう。しかもその医療費にかかる負担は莫大なもので、それは経済的には国民の負担となり、経済にも悪影響を与えていることを忘れてはならないでしょう。タバコ税の税収入に比べれば、その費用負担の方がいかに大きいかを考えるべきでしょう。

 

さて毎日記事に移ります。<くらしナビ・ライフスタイル「喫煙不採用」徐々に浸透>では、ようやくわが国でも企業側が労働者雇用に当たって喫煙を不採用基準にする流れが少しずつ出てきたようです。そのような企業を紹介しています。

 

私自身は、法律事務所に勤め始めた頃、まだ嫌煙権などが話題になっていませんでしたが、たまたま恩師も、先輩弁護士も喫煙していませんでしたので、事務所内はクリーンでしたので、居心地がよかったです。でも恩師は一部屋を一人で使っていて、その中で来客が喫煙することは放任していました。というか事務所内を禁煙としていたのではなく、たまたま喫煙者がいなかっただけでしたから、80年代初頭ですので、来客デスクには灰皿がどうどうと居座っていました。で、たいていの来客は緊張するせいか、普通以上にぷかぷか吸うものですから、恩師の部屋はタバコの煙でもうもうとしていることがよくありました。

 

これはちょっときついのですが、当時の仕事環境はそれが当たり前でしたから、それで仕事がしにくいといったことはなかったように思います。でもそれから40年近く経ち、現在はタバコの煙は有害性が認識され、仕事環境で喫煙を許容するような企業は従業員・職員ともに認めないでしょうね。

 

とはいえ、たいていの職場にはヘビースモーカーも少し吸う人もいるでしょう。雇用の採用基準で喫煙者ダメなんていう企業は以前はゼロでしたでしょうし、なかなかそういう条件を提示するのに躊躇してきたのだと思います。

 

そんな中結構な企業が新しい取り組みを始めています。

それが鎌倉で社員食堂を営む会社でした。

<神奈川県鎌倉市の鎌倉駅からほど近い一軒家にカレーの香りが立ち込める。正午を過ぎると次々と客が訪れる。地元のIT企業「カヤック」(従業員332人)が運営し、市内に拠点を置く約30社が会員になっている共同の「まちの社員食堂」だ。テラスも含めて全面禁煙になっている。カヤックは採用のホームページで「禁煙企業で、原則として喫煙者は採用しない」と宣言している。社員食堂に仲間と来ていた同社の田中利奈さん(37)は学生時代に吸っていたが、就職活動時は禁煙していたので「気にならなかった」と振り返る。>

 

鎌倉駅前はよく知っていますが、20年前はこんなカレー屋さんはなかったように思いますね。鎌倉は結構新しい取り組みを始める人たちがいます。それを許容する雰囲気がありますね。この会社が喫煙者不採用を決めたのも成行みたいですね。<2006年に禁煙企業にしたのも社員合宿で「たばこ嫌だよね」という話になり「何となく決まった」。>でも実際は本質を突いていたのかもしれませんが。

 

<千葉県で健診や検査、健康の普及啓発事業を行う公益財団法人「ちば県民保健予防財団」(職員345人)は昨年から全職種の採用で受験資格を「非喫煙者」にした。>事業の目的からすれば、このような採用基準を設けるのは至極当然でしょう。

 

<名古屋総合法律事務所(浅野了一代表弁護士)は07年からアルバイトを含めた全職員45人の採用は「非喫煙者」に限っている。>法律事務所は、喫煙組と非喫煙組に別れているかもしれません。両者が一緒に事務所で仕事をするのは最近では容易ではないでしょう。ですので、この浅野氏のような法律事務所は結構多いと思います。

 

やはり星野リゾートがこの分野の先駆けでしょうかね。

<喫煙者不採用の草分けが02年から実施している星野リゾート(従業員2509人)だ。当時、ヘビースモーカーのベテラン社員が60歳で亡くなった。「社員は家族」と唱える星野佳路代表が「なぜプライベートに踏み込んでたばこをやめさせなかったのか」と悔やみ、死亡した社員の頭文字を取った「Uプロジェクト」を始め、社員の禁煙と喫煙者不採用を始めた。>リーダーの考え次第で、社員やメンバーも、そして企業自体もよくなるように思えます。

 

ただ、喫煙者不採用というのは、手法として問題がなしともいえないように思います。ちょっと素行が悪いと退学にするとか、素行の悪い子は入学させないとか、いい学校イメージを排斥の論理で維持するのが学校として望ましいかは、教育のあり方として疑問を感じます。同様に企業という経済競争の激しい分野でも、学校と一緒には行きませんが、やはり企業文化を育み形成していくのであれば、排除の論理はどうかと思うのです。

 

この点企業内での禁煙プログラムなどで誘導する方向を歩んでいる会社も評価されてよいと思うのです。

<禁煙補助剤を販売して敷地内全面禁煙を実施するジョンソン・エンド・ジョンソンは、非喫煙をあえて採用条件にしていない。「採用の可能性を狭めたくない」からだ。またダイバーシティー(多様性)やインクルージョン(包摂)を掲げる同社は、あらゆる社会的背景を持つ人に門戸を広げる方針で、喫煙で不採用にするのは哲学にも反する。「受け入れて、禁煙のポリシーに気づいてもらう」と採用担当の沖田千代タレント・アクイジション・ジャパン・ヘッドは語る。社員には禁煙費用・通院への補助やカウンセリングを実施する。今夏に中途採用した40代の女性は入社を機に禁煙した。>

 

それほどうまくいっているかは、PRの意味もあるので、そのままで受け取るわけにはいきませんが、その姿勢は素直に評価されてよいと考えます。

 

最後に岡本さんの話がありましたので、彼の喫煙問題に対する真摯な取り組みを踏まえたコメント、こんな最高裁判決があったのですね、参考にさせていただきます。

<喫煙問題に詳しい岡本光樹弁護士によると「喫煙者不採用」は、企業に広く採用の自由を認めた最高裁判決に照らし「合法」だという。適性・能力に関係ない差別ならば採用の自由は制限されるが、受動喫煙の害も考えると、喫煙者不採用は合理的な理由があり、差別ではないと解説する。【斎藤義彦】>


ヘリの安全確保 <群馬・防災ヘリ、不可解な航跡 視界悪く接触か>などを読んで

2018-08-12 | リスクと対応の多様性

180812 ヘリの安全確保 <群馬・防災ヘリ、不可解な航跡 視界悪く接触か>などを読んで

 

今日は日航機墜落33年目だったのですね。事故当時、ずっとTVに釘付け状態でしたか。九ちゃんという幼い頃から好きだった歌手が搭乗していたことの悲しみもありました。あの悲惨な事故状況の中で少女が自衛隊の救助ヘリで救出されるシーンは忘れがたいものでした。飛行機事故のむごさと、救助ヘリと救援活動の素晴らしさを感じたものでした。

 

その後所用があって上野村に何度か出かけ、御巣鷹山の慰霊碑の前で仲間と一緒に追悼したのはもう四半世紀以上前でしょうか。

 

その御巣鷹山からわずか50kmくらい北方で、10日に群馬県の防災ヘリコプターが墜落し、搭乗者9名全員が死亡したのですね。

 

毎日記事<群馬県防災ヘリ墜落地元の精鋭失い涙 同僚「言葉ない」>では、このうち5人の消防隊員は「救助のスペシャリスト」として活躍して期待されていたとのことです。誰が亡くなってもその命は尊さに変わりありませんが、救助の担い手が亡くなるというのは悲しさを増しますね。

 

毎日一面記事<通信途絶直前に突然の旋回 航路外れ>では、<ヘリは、11日開通の群馬・新潟・長野3県の稜線(りょうせん)を結ぶ登山ルート「ぐんま県境稜線トレイル」を視察するため、10日午前9時半ごろ、西吾妻福祉病院(群馬県長野原町)のヘリポートを離陸。>

救助スペシャリストが搭乗して、新しい登山ルートを視察するということですから、単純に登山ルートを上から眺めるのではなく、道に迷いやすいところ、迷った場合に滑落のおそれなどの危険の存在や、救助ルートの把握など多様な視点で調べていたのだと思います。

 

ところがなぜか急旋回し、その後墜落した可能性があります。

<搭載されていた全地球測位システム(GPS)の位置情報によると、群馬・長野県境の稜線トレイルに沿って、北東へほぼ予定通りに飛んでいたが、午前9時59分ごろ南へ急旋回し、午前10時1分を最後に情報が途絶え、渋峠(しぶとうげ)から北に約2キロの山中に墜落した。>

 

しかし、<墜落したヘリはフライトレコーダー(飛行記録装置)は搭載しておらず、原因究明には時間がかかるとみられる。>というのです。こういう状況はこれまでもヘリや小型機の墜落ではよく言われることのように思うのです。

 

この問題を大きく取り上げている<クローズアップ2018群馬・防災ヘリ、不可解な航跡 視界悪く接触か>でも、航跡についてGPSの航跡記録からは午前956分には渋峠を北東に向かって飛行していたのが、959分には急旋回して南西に向かい、さらに旋回して北西に向かい、101分過ぎに通信が途絶えた後北西方向に向かって墜落したというのです。

 

ただ、なぜ急旋回したかについては、不可解な航跡という指摘があるものの、その理由については視界が悪かったためかとか、雲を避けようとしたためかとか、憶測の域を出ていません。

 

現場は山岳地帯ですが、地元眺望隊員らが目視で確認するため、危険な低空飛行をしていて、樹木などに接触した可能性が指摘されています。

 

その危険性について<国土の約6割を山岳地帯が占める国内では、空中停止(ホバリング)やヘリポートだけで離着陸できるヘリコプターが救助や輸送などで広く活用されている。一方、救助のために低空飛行したり、過酷な環境で運用したりする場合が多く、墜落事故も相次ぐ。>と過去の事故例を取り上げながら、指摘しています。

 

<山岳地帯での主なヘリ事故

2007年4月 富山市の北アルプスで民間ヘリが墜落し2人が死亡。雪などによるホワイトアウトで空間識失調に

  09年9月 岐阜県高山市の奥穂高岳付近で、県防災ヘリが救助中に墜落し3人死亡。高度低下で主回転翼が岩壁に接触

  10年7月 埼玉県秩父市の山中で、県防災ヘリが救助中に墜落し5人死亡。低空飛行し、後部回転翼が木を巻き込んだ

  17年3月 長野県松本市の鉢伏山で、県消防防災ヘリが訓練中に墜落し9人死亡。低空飛行中に木に接触した可能性>

 

私はたぶん一度だけヘリに搭乗したことがあります。住宅地のおそらく数100m上空でしょうか、仕事上の理由で飛び、ビデオ撮影をしました。その音量の大きさに最初驚きました。それまでなんどもセスナ機など小型機には搭乗したことがありますが、別格のうるささでした。それに結構揺れる感じで危うさも少し感じました。これは素人感覚ですが、プロのパイロットでは問題外の話です。ただ、熟練したパイロットであっても、急峻な山岳地帯での低空飛行は極めて危険ではないかと思います。危険な飛行は避けるようにといいたいところですが、そんなことをいったら、救難事故に対応できませんね。

 

おそらく救難ヘリの場合はとくに、救難要請があるようなときは天候不順、場所も厳しい山岳地帯などが普通でしょうから、そういうさまざまな悪条件を想定しながら操縦しているのではないかと推測します。

 

他方で、山岳地帯の気象条件は一瞬で変わることがありますね。風の向き、強さもその一つでしょう。谷間や峠越えなどではとくにそうではないでしょうか。こういう条件の場所で飛んだことがないので私には想像するしかありません。

 

なぜ私が素人感覚で駄文を続けているかというと、こういう状況はおかしいのではと思うからです。

 

大型機ではフライトレコーダーやボイスレコーダーが入っているブラックボックスを搭載する義務がありますが、ヘリや小型機には搭載義務がなく、上記のような墜落事故が続いていても、事故原因の調査が資料不足で、長時間かかったり、あるいは解明されないままということもあるようです。

 

ウィキペディアの<ブラックボックス(航空)>によると、

<日本では、19662月の全日空羽田沖墜落事故を教訓に、航空法「第六十一条第一項」および航空法施行規則「第百四十九条」(航空機の運航の状況を記録するための装置)に搭載が義務づけられている航空機および記録内容が定められている。>

 

しかしヘリは対象外ですので、義務がないのと装置が高価すぎることもあって搭載していないのが普通のようですが、少しずつ改善しているようです。

 

<消防防災ヘリコプターに採用される機種の多くは最大離陸重量の制限を超えないため[3]FDRの搭載義務は無く、工事期間中に出動できないことや1000万円以上高価がネックとなり[4]導入している自治体は30%以下とされる[5]

日本での航空機事故ではヘリコプターについで小型の固定翼機が多い(約28%)ものの、価格の他にも計器との接続が複雑で重量もあり義務化のハードルが高いとされてきた。近年では軽量で小型機にも搭載しやすい簡易型FDRが登場していることから、国交省ではボランティアを募って検証実験を行う予定[4]。>

 

ヘリや小型機はジョット機に比べて飛行高度も低く、搭乗者もごく少数ですり、簡易な装置を普及させて安価なもので代替する開発を促進する必要があるのではと思うのです。

 

とここまで長い前置きになりました。ヘリはドクターヘリにしても救助ヘリにしても、さまざまな役割をもち必須のものの一つでしょう。しかし、ヘリの役割を考えたとき、安全性が十分確保できない、あるいは事故が起こっても原因追及が十分なされない状況にあるとき、別の代替策をより普及させることを考えるべきではないでしょうか。

 

ドローンです。すでに飛躍的にさまざまな領域で使われていると思います。先日もNHKで北アルプスの剱岳などを許可を得て飛行させ、人が近づけない上空から見事に撮影していました。救助消防隊員も、できるだけドローン撮影を使って、対応することで危険を回避することが大事ではないでしょうか。むろん救難事故が起これば、ドローンに頼れませんので、ヘリによる救援が必要でしょうし、その場合事前現場付近の状況を知っていることが大事なことはわかります。

 

しかし、事前調査などはできるだけドローンによる代替策をとって、今回のような悲惨な事故で、ご本人やご遺族が悲しむことがないよう、考えてもらいたいと思うのです。少なくともドローンという人が搭乗しなくてよい装置があるのですから、この活用をより進めていいのではと思うのです。実は私も使ってみたいと思いますが、おそらく死ぬまでに使う機会はないでしょうけど。

 

1時間が経過しました。いつものように饒舌となりました。今日はこれにておしまい。また明日。

 

 

 

 


リスクへの対応 <リスク回避偏重の社会 若者の自由が育たない>を読みながら

2018-05-13 | リスクと対応の多様性

180513 リスクへの対応 <リスク回避偏重の社会 若者の自由が育たない>を読みながら

 

赤信号みんなで渡れば怖くない、という流行語は昔はやりましたね。私はこのことばを聞くたびに、信号機というもの、みんなと同じ行動というものについて、天邪鬼的発想が浮かんでいました。

 

青信号で横断歩道を渡ることでも、あるいは車で通過することでも、危険は潜んでいると。仕事柄、信号機のある交差点で青色で通過中に側面から衝突され、数回転して停止し、もう少しで死亡する程の大事故にあった方の事件を担当したことがあります。また、青信号を渡っている少年を疲れで運転中眠ってしまって引いてしまった加害者の刑事事件を担当したことがあります。幸い死亡に至りませんでしたが、重傷を負わせたのです。

 

2つの例は私が担当したあってはならない事故のほんの一部です。これらは信号機の青信号だけを信頼しても、リスクを完全には回避できない一つの例です。いや、交通事故だけではありませんね、社会にはおそらくそれをリスクと思ったことがないようなリスクに満ちあふれていると思います。そんなさまざまなリスクを心配していたら、中国古代の杞の人のように天が落ちるのではないと不安になり夜も寝られず、食事ものどに入らないことになりましょうね。

 

とはいえ、社会の中でリスクを少なくする、様々な配慮が必要なことはたしかです。しかし、あまりに配慮しすぎた結果、本来存在しているリスクをまったく感じなくなり、リスク発生の可能性やリスクの回避といった、個々人が本来やるべき能力が退化していく「リスク」もあるように思うのです。

 

私は子供が小さい頃からできるだけリスクを実体験させ、その危険の意味を体感させようと心がけてきた?変わった性格の人間かもしれません。信号機が青色であっても、左右を確認して渡るようとか、踏切があればそこに連れて行き、遮断機が下りたときの電車が通過するのを肌で感じさせたりしました。木登りなどはよくさせましたね。リスクを体感し、それを事前にキャッチし対応するには、人間の本能を蘇らせるのにいいと思っています。

 

そういえば最近のテレビで、リスク回避を指導している方が登場して、高層階のベランダから落下する子供の事故に関して、ベランダの高さや、ベランダ内の鉢などの置物の危険性を指摘した後、ベランダに出ることのできる窓の錠に加えて、子供が外せない装置を取り付けることをアドバイスしていました。

 

たしかにベランダからの落下のリスクは回避できるでしょう。しかし、本当にベランダ自体がもつ普遍的な危険性を子供が理解できないまま育つことの「リスク?」も感じてしまいました。自宅のベランダはその特別の装置で、落下危険を回避できるでしょう。しかし、外階段を含め、社会にはさまざまな危険があります。いやこういったハードの危険は安全配慮の装置をどんどん作れば、ある程度までリスクを少なくできるでしょう。しかし、それでは個々人がまるで完全に防御された社会でないと生活できなくなるおそれがないでしょうか。

 

と長々と饒舌な話になってしまいました。

 

さて<時代の風リスク回避偏重の社会 若者の自由が育たない=長谷川眞理子・総合研究大学院大学長>の記事は、賛同することが少なくない内容でしたので、紹介したいと思います。

 

長谷川氏は野生のチンパンジーの研究をやってこられたそうで、私の依頼人にもそういう方いらっしゃいました。ま、研究熱心で、事件処理においても私と長い議論をしたことがあるのを思い出しました。

 

さて長谷川氏の究極の研究場所が<タンザニアの首都ダルエスサラームから西に1000キロ入ったタンガニーカ湖畔。もちろん電気なし、ガスなし、水道なし。湖畔の小さな町からの交通手段は船外機をつけたボートしかない。周囲150キロ以内に病院もない。ここで通算2年半の調査を行った。>

 

そういえば、私も30年前、ボルネオ島の先住民の集落を訪れ、その伝統的なロングハウスで一緒に寝起きしました。ただ、基本、電気もガスもなく、天水でしたので、水のありがたさをとても堪能しました。お風呂はもちろんなく、近くのバラム川という土砂混じりの大河で水浴びするだけでした。寝るのは板敷きで、むろんマットもありませんから、当初はその堅さになかなか慣れるのに大変でしたが、疲れてへとへとになれば、自然に眠ってしまいますね。長谷川氏のような長期の調査ではないですが、それでも3年間通い?ました。

 

で長谷川氏は困りごとを取り上げています。<このような経歴なので、およそどんなことにも驚かない。しかし、困ったことに、後継者があまりいないようなのだ。>

 

その困りごとがさらに展開して、その根源を探っています。<今の若い人たちは、親に言われるとその通りに聞いてしまうようだが、彼ら自身、リスクを冒すことを非常に嫌う。我が国のリスク回避の傾向は、さまざまな統計で明らかだ。今どき、殴り合いのけんかをする若者などほとんどいない。人を殺す若者の10万人当たりの数は、戦後減少している。不慮の事故死も同様。自治体も学校も、子どもにけがをさせないように万全の注意を払っている。大学の野外実習も、昔と同じことはとても「危険」でできない。そして、電気、ガス、水道は当然あり、ネットも完備されている先進国への海外留学の希望者すらも減っている。>

 

壮大なリスク回避社会が作られているのでしょうかね。

<子どもの数が少なくなり、子どもの死亡率が下がり、1人か2人の子どもを大事に育てるようになった。そこで、リスクなんかとても冒せない。日本が安全で、ある意味で居心地のよい社会になるにつれ、人々はリスク回避を極端に重要視するようになった。そして、子どもは絶対に安全に育ってほしいと願うし、そうであって当然と思うようになる。そうして、誰もはっきりと計画していたわけではないが、大いなるリスク回避の社会ができてしまったのだろう。>

 

次の言葉は同感です。

<肉体的には、ある程度の冒険をしなければ、どこまでが自分にも他人にも安全なのかは体得できないと思うのだ。それをせずに、肉体的安寧に慣れてしまった中で、知的な意味での冒険だけは可能なのだろうか?>

 

たとえば私が最近よくとりあげる田中陽希のグレートトラバースでは、陽希さんの並外れた体力もさりながら、リスクを回避し、あるいはリスクをときには冒す、その絶妙ともいえる判断力も魅力的です。彼は先人が作ってきたルートを基本にしつつ、それを事前に研究した上、その日の気象や実際の環境を鋭い観察で認識、識別して、ときに変更して別ルートや独自のルートを選択することもあります。

 

これは起業家、イノベーターも、似たような判断力、行動力が求められるのではないでしょうか。私の依頼者であったある方は製薬メーカーの研究所の所長を過去にされていて、薬の開発では99%以上失敗で、その繰り返しの中で、発見があると言われていましたが、リスクを冒すのが人間にとってとても大切なこととも言われていました。私には貴重なアドバイスでした。

 

長谷川氏の最後のつぶやきは、これまた私も賛同します。

<リスク回避の傾向は、若者の自由な発想やイノベーション、人生の目標を多様に設定する自由をも阻害してはいないか? 安全確保は大事だが、いろいろな意味で前人未到の領域に踏み出そうという若者を育てるには、それを許し、背中を押す社会でなければならない。私たちは、果たしてそういう社会を作ってきたのだろうか。>

 

今日はこのへんでおしまい。また明日。


困窮者支援施設の安全 <札幌・支援住宅火災 資金難、防火対策進まず>などを読みながら

2018-02-03 | リスクと対応の多様性

180203 困窮者支援施設の安全 <札幌・支援住宅火災 資金難、防火対策進まず>などを読みながら

 

毎日は、事故直後のウェブ情報<火災自立支援施設から出火 9人死亡、2人不明 札幌>の後、21日夕刊記事で<火災支援施設、死者11人 生活困窮16人入居 多数が後期高齢者 札幌>死者11名の惨事を報じ、その後も続報を報道しています。いまなお出火原因が判明していないようですが、これまでの記事から断片的な情報がわかってきましたので、少し考えてみたいと思います。

 

後者の記事で事件の概要が報じられています。

<1月31日午後11時40分ごろ、札幌市東区北17東1にある生活困窮者らの自立支援関連施設「そしあるハイム」から出火し、木造モルタル一部3階建て約400平方メートルが全焼した。北海道警などによると、入居していた16人のうち男性8人、女性3人の計11人が死亡し、男女3人が負傷した。残る2人は逃げて無事だった。入居者は40~80代で、70代後半以上の後期高齢者が多く、足の不自由な人もいたという。>

 

さらに死者・負傷者の様子やスタッフの不在など詳細が続いて報じられています。

<1階の中央付近が激しく燃えており、死亡した11人のうち7人は1階、4人は2階で発見された。

 道警などによると、負傷した3人は男性2人と女性1人で、のどなどにやけどを負って病院に搬送され、いずれも命に別条はない。無事だった入居者らからの聞き取りでは、スタッフは日中に常駐しているが、夜間は不在で、この日も午後5時ごろに帰っていたという。このため出火当時、避難を誘導したり介助したりするスタッフはいなかった。>

 

施設責任者や施設の法的位置付けについては

<「そしあるハイム」は、路上生活者ら身寄りのない生活困窮者や障害者らの生活・就労を支援する施設として、2005年に設立された合同会社「なんもさサポート」(札幌市北区)が運営していた。ただ、福祉関連の法律に基づく施設ではなく、建物の用途は「下宿」として届け出られていた共同住宅だった。>とのこと。

 

入居者の状況については

<入居者16人のうち13人は生活保護受給者で家賃は月額3万6000円。一時入居施設だが、70代後半以上の後期高齢者が中心で介助の必要な人や長年住んでいる人も多かった。

 また、体の一部が不自由な人もおり、スタッフが生活支援も行っていた。>と報じられています。

 

ここに施設の性格が如実に表れているように思います。入居者16人中13人が生活保護受給者で、しかも70代後半以上が中心のうえ、介助の必要な人も多かったというのですから、単なる下宿とはいえませんね。

 

なお、私が経験した事例では、大阪市にあるこの種の住宅に居住している前科のある高齢者が当地や高野山までやってきて窃盗や詐欺、痴漢などさまざまな犯罪を犯す例が少なくなく、犯罪の温床とまでは言いませんが、どうも犯罪者の更生がうまくいっていない様子を感じることがあります。

 

しかし、それに比べると、この施設は次の報道を見ると、近所の人との温かな関係が成立していたようで、いわば自立支援施設として、それなりの活動をしていたのではと感じました。

 

札幌・自立支援住宅火災防犯格子、避難阻む 業過致死傷も視野>の記事

<火災現場には2日、周辺住民や福祉関係者らが花束を手に訪れ、犠牲者の冥福を祈った。

 「とても熱かったろう。さぞ無念だろう」。正午過ぎ、2年ほど前に同住宅を運営する合同会社「なんもさサポート」の別の共同住宅に住んでいた女性(47)が、花束を手向け「『助けにいけなくてごめんね』という気持ちでいっぱいです」と涙をぬぐった。女性は入居者と親交があったといい、安否不明の白府(しらふ)幸光さん(61)について「配膳などを積極的に手伝っていた。雨が降っていると『傘持って行きな』と言ってくれた」と声を詰まらせた。>

 

で、この事件については、出火の原因がまだ解明されていない中、多数の死者がでた要因について、いくつか取りあげられていますので、その点を検討してみたいと思うのです。

 

私は構造上の問題もありますが、やはり上記の入居者の状況で、夕方5時以降スタッフがいないということ自体が問題ではないかと思うのです。入居者全員が元気であっても、16人もいるわけですから、何があるかわかりませんね。下宿の管理についてとくに決まりはないかもしれませんが、到底適切な管理を行っていたとはいえないと思うのです

 

構造上の問題も指摘されています。

上記記事は、見取り図を用いて次のように指摘しています。

 <廊下を挟んで居室が両側に並ぶ「中廊下式」と呼ばれる構造だった。

避難用の非常口は、1階の物置や2階の廊下端にもあったが、1階物置には灯油入りポリタンクが積まれていたうえ、外部へ通じる出入り口のシャッターが下ろされていた。2階の非常口には避難用の階段がないなど事実上、1階の中廊下から玄関を通る経路だけが外への避難経路となっていたという 

  関係者によると、出火場所は最も燃え方が激しい1階の中央廊下付近で、その周辺には入居者が部屋に置いていたストーブの灯油を補給できるよう4~5個のポリタンクが並べられていた。>

 

中廊下式だけであれば、さほど問題はなかったと思うのです。問題は避難用の非常口が1階にはシャッターが下ろされていて、2階には避難用階段がない、しかも唯一の1一階玄関の出口への経路を阻む中央廊下付近にポリタンクを並べていたというのですから、逃げる場所がないですね。各部屋の窓には格子があり、そこからも出られない(高齢者だと元々無理だったかもしれませんが)、八方ふさがりですね。

 

こういう構造であるにもかかわらず、ポリタンクを入居者の便利を考えたのか、中央廊下付近や一階出口付近の物置に置いておくという感覚について、安全性への配慮をまったく欠落していることに驚きを禁じ得ません。

 

なぜここまで火災発生を含め、さまざまな自然災害があった場合の避難方法を考慮できなかったのか不思議です。施設経営者は、困窮者支援の心でやってきたようですが、後期高齢者を中心としている居住者で、介護支援を必要としている人もいるわけですから、あまりに安全性への配慮を欠いていたと言わざるを得ないのではないでしょうか。

 

たしかに高齢者は普通の住宅を借りる場合でも大変です。そういう人のために住居を提供する考えは評価されて良いと思います。しかし、高齢者に貸すのを躊躇する大家は、たいてい火の後始末とかを心配するわけですね。なぜ、ここまで注意を払わないまま管理を係属したのかわかりません。

 

火災警報装置、とりわけスプリンクラーの設置義務をめぐって、当該施設が法的にどのような施設と言えるか毎日記事<クローズアップ2018札幌・支援住宅火災 困窮者救済、法に穴 ホームか宿泊所、市も「?」><クローズアップ2018札幌・支援住宅火災 資金難、防火対策進まず 「下宿」定義あいまい>で詳しく議論されていますが、たしかにスプリンクラーが設置されていれば、ここまで被害が拡大しなかったと考えることはできるでしょう。

 

私自身はスプリンクラーの作動した様子は、映画でしか知りませんので、どの程度すばやく対応するのかしりませんが、ポリタンクを4~5個も並べてそのそばで発火したら、はたして間に合うのかと多少心配します。

 

私自身は、介護施設などとして認定できるようであれば、スプリンクラー設置をさせることに異議はありませんが、まずは施設管理を適切に行うことではないかと思うのです。

 

だいたい、多額の設置費用をかけることで、家賃など利用料を低額に抑えることができるか疑問ですし、そうなれば、こういった施設を利用してきた人は行き所を失うかもしれません。

 

<厚労省は今国会で生活保護法などを改正し、無料低額宿泊所に対する規制を強化する方針。そしあるハイムのような無届け施設に対して届け出を促した上で、24時間スタッフが常駐するなど良質な施設を優遇する考えだ。>といった方向の方がより実効性があがるように思うのです。

 

また<国土交通省は昨年10月、高齢者や低所得者らを受け入れる民間の賃貸住宅の登録制度をスタートさせ、防火対策や家賃軽減のための補助を設けた。3年半で17万5000戸の登録を目指す。【熊谷豪】>もより望ましい方向性かなと思うのです。

 

いつの間にか外は暗くなってきました。新聞記事の内容を整理するつもりが、ただ並べただけ、それも摘まみ食いですので、よくわからないかもしれませんが、その点は記事をみていただき、ご勘弁を。

 

本日はこれにておしまい。また明日。