環境問題スペシャリスト 小澤徳太郎のブログ

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“もしドラ”が思い出させてくれた、ドラッカーの「ネクスト・ソサエティ」 その3

2010-12-17 15:02:09 | 社会/合意形成/アクター
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12月12日と15日に、「もしドラ」に摸して、8年前に読んだドラッカーの『ネクスト・ソサエティ』の中から私が疑問に思う個所と、共感/賛同できる個所を抜き出して皆さんに提供しました。今日は、ドラッカーの『ネクスト・ソサエティ』への私のコメントの3回目(最終回)です。目次をご覧ください。


第Ⅲ部 ビジネス・チャンスに「第4章 資本主義を超えて」があります。この「第4章 資本主義を超えて」(p203~223)はインタビュー記事です。冒頭に、次のように書かれています。

このインタビューは、カリフォルニア州クレアモントの著者の部屋で「ニュー・ パースペクティブ・クォータリー」誌の編集者ネイザン・ガンデルスによって行 われた。著者がテーマを指定し、インタビューアーの原稿に手を入れた。「ニュー・パースペクティブ・クォータリー」誌、1998年春号初出)

「第4章 資本主義を超えて」の小見出しは次のようです。

資本主義のまちがい
市場経済理論の欠陥
資本家の退場
政府とNPO
NPOのベスト・プラクティス
公僕がNPOを破壊する
アジアの社会不安
19世紀型国家の日本    
中国の3つの道
21世紀最大の不安定化要因

この章から「19世紀型国家の日本」「21世紀最大の不安定化要因」がどのように書かれているかを抜き出してみます。


★「日本」は19世紀のヨーロッパ?



★21世紀最大の不安定化要因は少子高齢化

2日前の12月15日の産経新聞が出生率に関する最新の状況を報じています。次の図はその記事に添えられた図です。



ドラッカーの『ネクスト・ソサエティ』には「日本の読者へ」と題するメッセージがあり、著者による「あとがき」がない代わりに、訳者による「訳者あとがき」があります。この本を再読し、「日本の読者へ」と「訳者あとがき」に私が共感/賛同できるポイントが見事に盛り込まれていましたので、両者のコピーを添付しておきます。


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この「訳者あとがき」に次のようなメッセージがあります。

しかしいまや、経済が社会を規定するとの思想どころか、経済が経済を規定するとの理論からさえ脱却しなければならない。間もなくやってくるネクスト・ソサエティ(異質の次の社会)においては、経済が社会を変えるのではなく、社会が経済を変えるからである。

このメッセージこそ、ドラッカーが276ページの『ネクスト・ソサエティ』に込めたもっとも重要なメッセージだと思います。この点では私は100%ドラッカーに賛同します。しかし、私がそう考えるのは、環境問題への基本認識が不十分なドラッカーとは大きく違って、経済活動の拡大の目的外の結果の蓄積が今私たちが直面している「環境問題」であり、21世紀の市場経済システムを揺るがす最大の問題である、と考える「私の環境論」に基づくものです。

ですから、ドラッカーが主張する「ネクスト・ソサエティ」はスウェーデンの国家ビジョンである「20世紀の福祉国家から21世紀の緑の福祉国家への転換」とは一致しますがドイツの政策の根底にある「エコロジー的近代化論」日本の政策の大前提である「持続的な経済成長」(小泉、安倍、福田、麻生の自民党政権、それに続く鳩山、菅の民主党政権)とは一致しません。 

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13年前に、日本経済新聞社から「7つの資本主義」という本が刊行されています。

私はこの本を読んでおりませんが、本の内容は「資本主義は一つではない。国の数だけ経済システムは存在する。歴史・文化によってその姿は様々だ。米・英・仏・日・独・オランダ・スウェーデンの七ヶ国を取り上げ、膨大なデータを駆使してその経済システムの特色を解明。 」と非常に魅力的です。ネット上にはこの本に対するかなりの情報があります。参考のために、その中から内容の濃いものを2点紹介しておきましょう。

ネット上の関連記事
●松岡正剛の千夜千冊 281夜 『7つの資本主義』 2001年4月30日

【スウェーデンの資本主義】かつては社会主義と資本主義の間にいたと思われていたスウェーデンだが、実際には「社会品質に関心がある資本主義をつくりたがっている国」だった。「社会が市場をつくるもので、市場が社会をつくるものではない」というこの国の経営者たちの哲学は、アメリカや日本に聞かせたい。

●情報システム学会 メールマガジン 2010.8.25 No.05-05 [12] 情報システムの本質に迫る 第39 回 制約条件としての情報システム

この分類結果から、各国の文化について、次のような特徴を挙げることができる。まず米国は、7 つの項目すべてで、前者側の特質をもっている。対照的に、日本は7 つの項目すべてで後者側の特質をもっている。スウェーデンは、6つの項目で米国と同じ特質をもち、外部基準に関してのみ、日本と同じ特質をもっている。

ここに掲げた「情報システム学会のメールマガジン」ではスウェーデンの資本主義についてかなり詳細に分析されています。それにしても、なぜ、情報システム学会が13年前に刊行された「七つの資本主義(現代企業の比較経営論)」を今年の8月のメールマガジンで取り上げ、とりわけスウェーデンに誌面を割いているのでしょうか?


『もしドラ』旋風に触発されて、改めて8年前のドラッカーの「ネクスト・ソサエティ」を読んでみると、先進工業国としてスウェーデンと日本はグローバルな市場経済社会の中で、正反対と言ってもよいほど「国民の意識」と「社会の制度」に相違があることがわかります。このことが理解できれば、日本が得意とする(?)そして、こだわりが強い「技術論」では「21世紀の社会の変化」に迅速に対応できないこと がおわかりいただけるでしょう。

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