環境問題スペシャリスト 小澤徳太郎のブログ

「経済」 「社会」(福祉) 「環境」、不安の根っこは同じだ!

「将来不安」の解消こそ、政治の最大のターゲットだ

酸性雨汚染 地球を巡る:日本とスウェーデンの対応の相違

2011-02-11 09:14:18 | Weblog
私のプロフィールや主張、著書、連絡先は、ここをクリック         持続可能な国づくりの会<緑と福祉の国・日本>のブログは、ここをクリック
お問い合わせはここをクリック   アーカイブ(公開論文集)      持続可能な国づくりの会のホームページ(HP)は、ここをクリック



          


私のプロフィールや主張、著書、連絡先は、ここをクリック         持続可能な国づくりの会<緑と福祉の国・日本>のブログは、ここをクリック
お問い合わせはここをクリック   アーカイブ(公開論文集)      持続可能な国づくりの会のホームページ(HP)は、ここをクリック



          



2月10日の朝日新聞夕刊に掲載された「えこ事記 地球環境 2」は「酸性雨汚染 地球を巡る」です。この問題でも日本とスウェーデンの間には問題に対する認識や対応に大きな相違があります。まずは、この記事をご覧下さい。


1972年6月、スウェーデンの首都ストックホルムで開催された第1回国連人間環境会議のスウェーデンにとっての重要な論点は「環境の酸性化」でした。長年にわたる大気中の硫黄酸化物濃度のモニタリングの結果から、環境の酸性化の原因がスウェーデン国内の産業活動に起因するというよりもむしろ国外に起因することを突き止め、1968年には、スウェーデン国内での環境の酸性化論争が開始されました。環境の酸性化論争は政府を動かし、その蓄積されたデータをもとにして環境の酸性化防止のために国際協力を求めたわけです。

 スウェーデンの調査によれば、スウェーデンの環境の酸性化の原因と考えられる硫黄酸化物の85~90%、窒素酸化物の70~85%は外国に由来するとされています。スウェーデン国内で発生する窒素酸化物のうち、およそ70%は交通手段(自動車などの交通車両57%、その他、航空機、船舶などの交通手段13%)に起因するということでした。環境の酸性化はスウェーデンが抱える国内最大の環境問題です。

 スウェーデンは1972年の第1回国連人間環境会議の10周年を記念して、1982年にストックホルムで「環境の酸性化に関するストックホルム会議」(1982 Stockholm Conference on the Acidification of the Environment)を開催しました。スウェーデン政府はこの会議のために、当時の知見をまとめた『Acidification: Today and Tomorrow 』と題する230ページを越える報告書を作成し、同会議に提出しました。

 会議後、スウェーデン環境保護庁はこの会議の報告書をまとめ、1983年1月に公表しました。この報告書の末尾の参加者リストには、北欧諸国、米国、英国、東西ドイツ、カナダ、フランス、イタリア、スイスを含む21か国から100人を越える研究者や行政官が名を連ねていますが、日本からの参加者の名は見当りません。

 ところが、翌年の1983年(昭和58年)に、環境庁の「酸性雨調査」に初めて予算がつきますと、日本のかなりの数のマスコミや研究者がスウェーデンの環境の酸性化の取材、調査研究に出かけました。また、世界の環境問題に関する年表の類いが、時々、日本の環境関係の雑誌や本に掲載されていますが、興味深いのはそれらの年表に、この1982年の「環境の酸性化に関するストックホルム会議」の開催を取り上げているものがゼロではありませんが、かなり少ないことです。

 今でこそ、環境の酸性化は日本でも「酸性雨」の名の下に9つの地球環境問題の一つとして取り上げられていますが、わずか1年違いで、日本の“酸性雨に対する関心”がこのように変化したのは大変興味深いものです。毎年500ページを越える日本の環境白書(平成2年度/1990年度版まで)の中で、“便宜上”とは言え、①二酸化硫黄、②二酸化窒素、③一酸化炭素、④炭化水素、⑤浮遊粒子状物質および⑥降下ばいじんなどの汚染物質別の大気汚染状況を環境白書の大気分野の中心的課題と掲げ、「その他の汚染物質対策」というタイトルの下に「酸性雨対策」として1ページ足らずの記述しかなかった日本とスウェーデンの間には環境の酸性化に対する大きな認識の相違があり、この問題に対する取り組みには大きな隔たりがあります。

 スウェーデン国内の最大の環境問題である「環境の酸性」は長期にわたる人間活動の環境への負荷がもたらした現象であり、これまで予測されなかったわけではありません。およそ160年ほど前の1852年には、英国のスミスが「Acid Rain」という表現で、現在の「環境の酸性化」の兆候を警告していましたし、1940年代から60年代にかけて石炭、石油、天然ガスなどの化石燃料の消費量が増大するにつれて、米国、スウェーデンの研究者の研究報告が散見されるようになってきました。

 現在では、160年ほど前に科学者が発した警告が現実化し、環境の酸性化問題は北欧地域だけでなく、その影響や被害を確認出来る状態までになってしまったと言えるでしょう。そして、今、世界は顕在化し、進行しつつある環境の酸性化の防止のために、多額の経費の投入と様々な努力を余儀なくされているのです。




最新の画像もっと見る

コメントを投稿