環境問題スペシャリスト 小澤徳太郎のブログ

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“もしドラ”が思い出させてくれた、ドラッカーの「ネクスト・ソサエティ」 その2

2010-12-15 17:56:46 | 社会/合意形成/アクター
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今日のブログは、12月12日の“もしドラ”が思い出させてくれた、ドラッカーの「ネクスト・ソサエティ」の続き(その2)として、12月12日のブログの内容を発展させたものです。ドラッカーの著書「ネクスト・ソサエティ」の表紙をもう一度ご覧ください。


サブタイトルが「歴史がみたことのない未来がはじまる」となっています。このサブタイトルを私の環境論で翻訳すると「人類史上初めて直面する2つの大問題(具体的には「環境問題」と「少子高齢化問題」)を抱えた未来がはじまる」となります。



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ドラッカーは『ネクスト・ソサエティ』で「2030年の社会」を想定し、対処するための論述を重ねています。「2030年」というのは私がこのブログの左上に掲げ「このまま行けば、2030年は大混乱!?」と想定した年ですし、昨年来日した「成長の限界」の著者の1人デニス・メドウズさんが新たに想定している年でもあります。2002年に出版されたこの本を読んだ当時、私が注目した点を挙げると次①~⑤のようになります。合わせて、スウェーデンがとってきた対応を併記しておきます。 

1987年4月に、国連の「環境と開発に関する世界委員会(WCED)」が「持続可能な開発(Sustainable Development)」の概念を国際的に広める先駆けとなった報告書「われら共有の未来」(通称ブルントラント報告)を公表してから、今年(2010年)で23年が経ちました。スウェーデンは、この国際的な概念を国の政策にまで高めた数少ない国の一つで、その実現に具体的な一歩を踏み出した「世界初の国」といえるでしょう。

①ドラッカーが「2030年の社会」を想定するときに、資源・エネルギー・環境問題の視点が極めて乏しい。(懸念)

1996年9月17日、当時のペーション首相は施政方針演説で、「スウェーデンはエコロジカルに持続可能性を持った国をつくる推進力となり、そのモデルとなろう。エネルギー、水、各種原材料といった天然資源の、より効率的な利用なくしては、今後の社会の繁栄はあり得ないものである」と述べました。これは、20世紀の「福祉国家」を25年かけて環境に十分配慮した「緑の福祉国家」に転換する決意を述べたものです。

首相がこのビジョンを実現するための転換政策の柱としたのは、「エネルギー体系の転換」「環境関連法の整備や新たな環境税の導入を含めた新政策の実行と具体的目標の設定」「環境にやさしい公共事業」「国際協力」の4項目でした。

スウェーデンはこのビジョンを実現するために「環境の質に関する16の目標」を定めました。目標年次は2020~2025年です。この目標年次はドラッカーが述べた「2030年の社会」と重なります。



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②アメリカでは安全保障が脅かされているときを除いて、最も重要なものは経済であるとされる。日本をはじめ、アメリカ以外の先進国では社会こそもっとも重要である。(共感)

1996年9月17日に当時のペーション首相が行った施政方針演説のなかで、「持続可能な開発」に対するスウェーデンの解釈が明らかになっています。英文では、つぎのように表現されています。

Sustainable development in the broad sense is defined as community development that 〝meets the needs of the present without compromising the ability of future generations to meet their own needs〟.

ここでは「広義の持続可能な開発とは、将来世代が彼らの必要を満たす能力を損なうことなく、現世代の必要を満たす社会の開発」と定義されています。重要なことは「社会の開発」であって、日本が理解したような「経済の開発、経済の発展や経済の成長」ではありません。資源・エネルギーへの配慮を欠いた経済成長は「社会」や「環境」を破壊する可能性が高いからです。
 
偶然にも、スウェーデンの行動は、ドラッカーの「日本をはじめ、アメリカ以外の先進国では社会こそもっとも重要である」という主張と一致していますが、日本は不一致です。スウェーデンの考えが公表されたのは1996年ですから、ドラッカーの主張をスウェーデンが参考にしたとは考えられません。


首相は施政方針演説後の記者会見で「緑の福祉国家の実現を社民党の次期一大プロジェクトにしたい」と語り、「スウェーデンが今後25年のうちに緑の福祉国家のモデル国になることも可能である」との見通しを示しました。ここに、明快なビジョンが見えてきます。 

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③先進国の政府のうち、今日まともに機能しているものはひとつもない。アメリカ、イギリス、ドイツ、フランス、日本のいずれにおいても、国民は政府を尊敬していない。信頼もしていない。あらゆる国で政治家のリーダーシップを求める声が聞かれる。だが、それはまちがった声だ。あらゆるところで問題が起こっているのは、人間に問題があるからではない。システムに問題があるからである。 (共感)

つい最近のことですが、北岡孝義さんという方の『スウェーデンはなぜ強いのか 国家と企業の戦略を探る』(PHP新書681 2010年8月3日 第1版第1刷)という魅力的なタイトルの本に出会い、読んでみました。北岡さんは、この最新著の「終章 スウェーデンから何を学ぶか」を次のように結んでいます。

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④いまでは新しい考えが求められている.この60年間を支配してきた経済理論と経済政策についても同じことが言える。今後25年間、イノベーションと企業家精神がもっとも必要とされているのが政府である。(共感)

次の毎日新聞の「余録」をご覧ください。ドラッカーが主張しているようなことがスウェーデンではすでに行われていることがわかります。



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⑤日本の失業率はアメリカやヨーロッパの失業率の算出基準と異なる。(共感)

ドラッカーは日本の失業率について、次のように書いています。



私は常々、国際比較をするときに「対象となる事象」の定義が国によって異なるのではないかと考えてきました。次に示す2001年9月5日の毎日新聞の記事は、ドラッカーの記述を裏付けているように思います。


また、ネット上には、この件について、次のような記事を含めて大量の関連記事がありますが、これらの記事が説明する「失業率の定義」を読んでも、門外漢の私にはその相違がよくわかりません。

●日本の失業率は10%以上!? 各国の失業率定義

●各国の失業者の定義と失業率

重要なことは、それぞれの国の経年変化を重視し、どうしても国際比較をしたいのであれば、「単年度の失業率の国際比較」をするのではなく、「失業率の経年変化の国際比較」をするべきだと思います。理由は簡単です。それぞれの国内では失業率の定義が変化しないからです。




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