外苑茶房

神宮外苑エリアの空気を共有し、早稲田スポーツを勝手に応援するブログです。

ゆとり教育世代の若者たちへ

2009-05-08 19:12:34 | 社会全般
今年の新卒者の皆さんが社会人となって、一ヶ月が経ちました。
ゴールデンウィークの神宮球場にも、野球部の今年の卒業生の姿を何名も見かけました。
みんな社会人として順調な滑り出しのようで、何よりです。
八幡鮨や志乃ぶでアルバイトしていた学生さんたちも、今頃は新社会人として新天地で頑張っていることでしょう。


ところで、連休最終日となる5月6日の夜、「35歳を守れ」という特番をNHKが放送していました。
現在35歳の男女数名に焦点を当てた番組です。

ある男性は、妻と二人の子供を抱え、住宅ローンを借りてマンションを購入したら、賃金カットに遭った。
ある女性は、父が長年勤めた企業を信頼して就職したら、その企業の業績が悪化して失職した。
ある男性は、様々な資格を取得するも再就職できず、今は職業訓練校で実習中。「僕の経済力では結婚する資格がない」と嘆く。
ある女性は、夫の給与が半減したので、夜間のコンビニなどで働き、最近は昼間にも仕事をするようになった。

番組では、派遣労働など新しい雇用形態が浸透して終身雇用制度が立ち行かなくなった今、これまで企業が担ってきた職業スキルの向上などの機能を、セイフティネットの充実と併せて、これからは公的セクターが担当すべきだというような論調でした。

現状認識において、的を得ているなと思う部分と、ちょっと違和感があるなあと感じる部分とがありました。

例えば、終身雇用制度が機能していたはずの1985年の「円高不況」と呼ばれる時期にも、大規模なリストラが自動車、電機などの輸出依存型産業で行なわれていました。
その手順は、
①大手・中堅メーカーが、自社の正社員をグループ関連会社に大量に出向させる。
②大量の出向社員を引き受けたグループ企業は、やむをえず下請けの中小企業にグループ企業自らの正社員を転籍出向の形で引き受けてもらう。
③人材引き受けを断ることのできない中小企業は、帳尻を合わせるために自社の正社員、季節工を解雇する。
中小企業の経営者の方々は、取引銀行にも相談に来られて、「どんなキツイ仕事でも良いから、社員を出向させる先はないか。仕事がきつくて辞める者が出れば、むしろ好都合。」と頼んで歩くぐらい、追い詰められていました。
いわゆる派遣切りとは形態は異なりますが、最終的に下請企業を泣かせる”えげつない”方法で、当時の大手企業のリストラは行なわれていたわけです。

すなわち、業種にもよるでしょうが、終身雇用制度は大手企業には確かに存在していたものの、中小企業における雇用は昔から非常に脆いものだったということです。

また、若手社員の教育については、現在でも多くの企業で熱心に取り組まれています。
その社内教育を受けて一人前の社会人となる修行期間の20歳代に、簡単に転職してしまう人が増加している状況の方が、よほど問題だと私は思います。
社内教育を受ける権利を自ら放棄してしまった人々が、35歳前後になって業務スキル不足に苦しみ、高いコストを自ら負担しなければ技能向上や資格取得等の勉強もできない状況となってしまっているように見えます。

先の番組に登場した男性の、公的資格に対する意識もズレていました。
若い頃は、資格を保有していること自体を評価してもらえますが、35歳を過ぎたら、資格に基づいて「何が、どれくらいできるのか」という観点で評価されます。
したがって、若い人にとっての資格取得は未知の領域を切り拓くための勉強となりますが、35歳を過ぎたら、これまで積み上げてきた実務スキルをブラッシュ・アップして公的な裏づけを得るというような認識で、資格を選び勉強に取り組むべきかと。そうでない資格取得は、よほど難易度の高い国家資格でない限り、企業から見たら単なる個人的趣味の領域と言わざるをえません。

いずれにしても、上場企業がバタバタと倒産する時代です。
これから社会に出る方々には、30歳代前半までを修行期間と心得て、「つぶしがきく」職業人を目指してもらいたいです。

健康社会学の専門家である河合薫さんが、「キャリア・アンカー」という概念をお話しされています。
キャリア・アンカーとは「自覚された価値観・才能・動機の型」を指し、「その人の生涯にわたって職業上の重要な意思決定に際して影響を与える」ものなのだそうです

キャリア・アンカーは次の5つのパターンに分類できます。
(1)専門能力追求型
 組織の中で、自分の技術や能力を追求していきたい
(2)管理業務追求型
 組織の中で部下を持つなど、管理責任のある仕事をしていきたい
(3)安心重視型
 自分の雇用と生活の安定が保障される仕事に就きたい
(4)自己追求型
 自分の名前のついた製品を作り出したり、会社を起こして後世に残したい
(5)ライフスタイル重視型
 自分のスタイルを壊されないような仕事に就きたい

私自身の職業観にあてはめてみると、邦銀時代は(2)で迷いなし、外銀への転職後は(1)と(5)のコンビネーションという感じでしょうか。

そして、河合さんは、キャリア・アンカーは好きな仕事とは少々違うと説明されます。
実際に仕事をしていれば、95%の仕事は好き嫌いに関係なく、やらなくてはならない仕事。その95%を必死に、ただひたすらくり返し行うことで、やっと好きな5%の仕事に出会える。
つまり、好きな5%の仕事を見つけるために95%があると。

きちんと働いていらしゃった経験者だからこそ言える、実に的確な指摘だと私は思います。

今年の新卒者を受け入れるにあたり、企業サイドは本格的な「ゆとり教育世代」の若者だとして少々不安を感じているようです。
そうはいっても、今のビジネスマンの中には、私を含めて高校・大学で「超ゆとり」生活を送った人間がゴロゴロしていますから、本当はあんまり偉そうなことは言えないはずです。
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