酔眼独語 

時事問題を中心に、政治、経済、文化、スポーツ、環境問題など今日的なテーマについて語る。
 

放鳥のトキが死んだ

2008-12-15 05:19:23 | Weblog
 脚に怪我をしていたトキが、タヌキに襲われて死んだ。木の枝にとまれないため、いつかはこういうことになると思っていたが、こうも早く餌食になるとは…。



 《新潟県佐渡市で9月に試験放鳥されたトキ10羽のうち、足にけがをしているとみられていた1歳のメス1羽が死んでいるのが14日、確認された。環境省は死体を収容し、死因などを調べる。

 同省によると、14日午前10時半ごろ、佐渡市中央部の林の中で、市民の男性がトキが死んでいるのを発見。駆けつけた同省佐渡自然保護官事務所の岩浅有記自然保護官が足輪から1歳のメスと確認した。半径10メートルの範囲で羽根や骨片が散乱していたという》=毎日web=


 NHKのニュースで金子獣医は「タヌキに襲われた」と断定していた。毛かウンコでもあったのだろう。



 10羽放鳥したうちの1羽は、翌日から消息不明になっていることは以前書いた。現地では「テンにやられた」とほぼ断定的に語られている。1羽は佐渡海峡を越えて本土に渡りさまよっている。


 中国でも放鳥したトキはよく死ぬらしい。自然繁殖した動物だって「天寿」をまっとうできるのはごく少数なのだから、これは当然だ。さて、現実に放鳥されたトキが死んだことで、地元の反応がどう出るか。


 トキ飼育の専門家会議が8日決めた「給餌は原則行わない」の方針に対して「非情」「かわいそう」という声が上がっていた。死体を見せつけられたことで、保護・支援論が高まるに違いない。でも、それはひいきの引き倒しだ。結局、檻の中へ戻すのと同じことになる。



 中国からトキを持ってきて、日本の空に放そうなどと考えたこと自体が間違いなのだ。今年1月の「朝日」に興味深い記事が載っていた。兵庫医科大遺伝学教室の山本義弘教授が、佐渡市のトキと中国、朝鮮トキの遺伝子を比較して述べている。



 《環境省の委託を受けた研究で山本教授は、国内外のトキの剥製を調査。ミトコンドリアの塩基配列から、日本のトキと、中国や韓国のトキとの遺伝的な違いを調べた。

 すると、日本のトキの塩基配列が、中国のトキとほぼ一致。これまでの研究も「遺伝的な距離は比較的近い」とされていたが、科学的に裏付ける結果を導き出した。

 山本教授は、日本と中国などのトキとの間に「交流があったことは遺伝子のタイプで明らか」と話し、トキが「渡り」をしていた可能性も指摘する》=朝日web=


 ここから読み取れるのは「日本のトキと中国、朝鮮のトキのDNAは違う」という事実である。「ほぼ一致」とは科学的には「すべてでは一致しなかった」と同義ではないか。山本氏も述べているように「遺伝的な距離は比較的近い」というぐらい間柄である。



 佐渡にいるトキは紛れもなく中国のトキである。この事実を確認した上で放鳥を続けるなら続け、受け入れればいい。放されたトキが事故に遭うのは仕方がない。それにもめげす、次々と放して、群れを増やす。環境省はそういう作戦なのだろう。死屍累々、非難轟々を乗り越えて中国トキを日本の空に放つ。何か変だ。 


 
コメント
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