酔眼独語 

時事問題を中心に、政治、経済、文化、スポーツ、環境問題など今日的なテーマについて語る。
 

誰が何を狙ったのか

2019-06-14 09:49:39 | 国際事件
 日本の首相として41年ぶりにイランを訪れ、緊張状態にある米国とイランの橋渡しを果たし「世界の安倍」をアピールしようと目論んでいた安倍晋三がまさかの仰天弾に見舞われた。イランの最高指導者ハメネイ師との会談が行われた同じ13日、日本に向かってホルムズ海峡近くを航行していたケミカルタンカーが何者かの砲撃を受け被弾したのだ。 

 ≪中東のホルムズ海峡近くのオマーン湾で13日、日本の船舶を含む2隻の石油タンカーが何者かの攻撃を受けて炎上した。ホルムズ海峡は中東産の原油を世界に向けて出荷する海上輸送の大動脈だ。攻撃の情報を受けて原油相場は即座に4%ほど上昇した。中東の地政学的リスクの高まりは、世界経済の先行きへの不安を高める。

 タンカーのうちの1隻は、国華産業(東京・千代田)が運航するパナマ船籍のコクカ・クーレジャス。日本時間の午前11時45分ごろ攻撃を受けた。国華産業は三菱ガス化学が50%を出資する海運会社で、船はメタノールを運んでいた。

同社は13日夕、都内で記者会見を開き「砲撃を受けた」と説明した。日本人の乗船者はおらず、フィリピン人の21人の船員は避難したという。

国土交通省は攻撃者がだれかを特定できておらず、日本を標的にしたかも不明としている。攻撃を受けたもう1隻はマーシャル諸島船籍のフロント・アルテアだった。

攻撃があったホルムズ海峡近くの地域では5月にも、アラブ首長国連邦(UAE)やサウジアラビアのタンカーが「破壊行為」で損傷を受ける事件が起きたばかり。ボルトン米大統領補佐官は攻撃したのは「ほぼ確実にイランだ」と指摘。イランは関与を否定するなど緊張が高まっていた≫=13日nikkeicom=。

 イランは繰り返し「アメリカとの戦争は望んでいない」と述べている。安倍との首脳会談、ハメネイ師との会談でも同じ趣旨のことを述べている。イランはザリーフ外相を日本に派遣して、安倍の訪問を歓迎する旨伝えていた。アメリカとの緊張を少しでも和らげることができれば―がイラン側の狙いだろう。そうであれば、このタイミングで日本関連のタンカーを攻撃するのはイランにとって何の益もないように見える。唯一あるとすればホルムズ海峡の緊張激化による原油価格高騰ぐらい。これとて輸出先が細っているイランにとってそんなに大きなプラスに働くとは思えない。

 ポンペオや前回の砲撃の時のボルトンは即座に「イランだ」と反応している。そう断定する根拠は何なのか。超強硬派のボルトンは対北朝鮮、対イランでは主戦論を唱える。トランプがイランに融和姿勢をとるなどもってのほかと思っているに違いない。となると…。ボルトンやポンぺオ発言には意外なところから疑問視する声が上がっている。元空幕長の田母神俊雄はツイッターで次のように言う。

 ≪13日ホルムズ海峡近くでタンカーが攻撃を受けた。これは攻撃により得をする国家や団体がやったものと思う。しかし我が国には情報機関がないに等しいので真実は不明である。各国は真実を知っても国益のために発言する。米国は多分つかんでいると思うがポンペイオ長官が真実を言っているかは不明である≫

 攻撃により得をする者は誰か。石油の値段が上がって大喜びをしている者。本格的な戦争が勃発するのを心待ちにする者。世界のあちこちにこういう輩がうごめいている。危ない危ない。
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「ダッカ殉難者」帰国に思う

2016-07-05 08:42:16 | 国際事件
 「ダッカ人質事件」で犠牲となった邦人7人の遺体が5日早朝、政府専用機で帰国した。岸田外相、北岡JICA理事長らが出迎えた。

 専用機近くには白布で覆われた七つの柩が並んだ。花束が手向けられ、黙祷が捧げられた。7人の無念さを思うと胸が塞がる思いである。と同時に、この映像を執拗に流し続けるNHK(ほかは見ていないので分からない)には違和感を覚えた。

 午前7時数分前、ローカルニュースを遮って羽田からの中継が飛び込む。岸田外相が献花するシーンが映し出された。ローカルニュースの前にも十分すぎるほどの時間を割いて専用機帰国を伝えていた。岸田らの献花は地元ニュースをぶった切って流すほどの意味があるとは思えない。そんなことを考えながら眺めているうち、妙な既視感にとらわれた。ベトナムやアフガン、イラクなどで戦死した米兵遺体の帰国シーンである。

 星条旗にくるまった柩。政府や軍関係者が出迎え、儀仗兵が柩を運ぶ。お国のために戦った人々への鎮魂の礼である。

 〝安保法案〟の施行により自衛隊員が海外で戦死する蓋然性が高くなっている。今回の出迎えは、それに備えた予行演習のように見えた。

 途上国支援はJICAの表看板である。脆弱な社会インフラを立て直し、暮らしやすい地域を作り上げる。現地で活動する一線の方々の思いは純粋だろう。だが、巨視的に見れば援助国の海外進出の橋頭堡であることは間違いない。だから中国と競い、欧米と権益争いを繰り返すのである。

 バングラのハシナ政権は野党を力で封じ込め、道路封鎖などのデモを蹴散らした。これに反発する若者らの過激な行為が跡を立たず、昨年は100人以上のテロ犠牲者を生んでいる。こうした流れの中に今回の事件も位置づけられよう。

 事件の犠牲者を悼み、卑劣な犯行を憎むのは当然の心情だが、過度に死者を美化することは慎みたいものだ。

 

 
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「吉田調書」公開の謎

2014-08-27 09:28:04 | 国際事件
 朝日が他紙に先駆けて入手・公開、産経が2ヶ月遅れで入手し「朝日の報道はおかしい」と噛み付いている「吉田調書」にあらためて注目が集まっている。この問題への関心の高まりを背景に? 政府も従来の非公開方針から一転、公開することを決めた。公開自体は大賛成だが、一連の経緯には胡散臭さもつきまとう。

《菅義偉(すがよしひで)官房長官は二十五日午前の記者会見で、東京電力福島第一原発事故をめぐって政府の事故調査・検証委員会が、事故発生時に所長だった故吉田昌郎(まさお)氏=二〇一三年七月死去=に聞いた聴取記録(吉田調書)を九月に公表すると発表した。政府は、吉田氏が非公開を求める上申書を提出したことを理由に開示してこなかったが、方針を改めた。
 吉田調書は一一年七~十一月に十三回、計二十八時間にわたって行われた聴取の記録。所長として指揮した事故後の対応や、事故前の本店部長時代に責任者として関わった津波対策をめぐる証言が記されているという。
 吉田氏は生前、聴取の際の証言内容について、記憶が薄れたり、混同したりしている部分がある可能性があるにもかかわらず、調書が公開されれば全てが事実として受け止められかねないとして、第三者への公表を望まないとしていた。
 だが、一部報道機関が調書の内容を断片的に報道しており菅氏は会見で「『独り歩き』との吉田氏本人の懸念がすでに顕在化しており、非公開とすることはかえって、本人の意思に反する」と説明。「ヒアリング記録を公表しても差し支えない状況になりつつある」と述べた。公表時期は「九月のできるだけ早い時期」とした》=中日Web=。


 「(調書の証言が)独り歩きの懸念が顕在化……公表しても差し支えない状況になりつつある」-菅は会見でそう述べた。一見まともなようだが、ちょっと変でもある。調書の公開はさらに証言を独り歩きさせることにならないか、という疑問だ。吉田氏が発した一言一句をめぐって、あれやこれやの解釈が繰り広げられる可能性が高い。

 憲法でもなんでも、最後は「解釈」がものを言うわけで、公開後は大論争が起きるだろう。調書きちんと読むには全文・そのままの公開が不可欠だ。「人権上」の配慮などから前後を伏せたりすると、発言の真意が取れなくなる恐れがある。政府の都合のいいような内容だけ公開することにならないよう求めたい。

 もう一点はさらにうがった見方だ。「この際、朝日を徹底的にたたこう」-一部保守勢力のあいだにはそんな意図があるのではないか。「慰安婦問題」で朝日はガタガタしている。吉田調書でさらに追い討ちをかけられれば、朝日を膝まづかせることができる。メディアを安倍応援団一色に塗りつぶそうというのが裏の狙いである。
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なぜまたマレーシア機が…

2014-07-18 10:15:47 | 国際事件
 ウクライナとロシアの国境近くでマレーシア航空機が何者かに撃墜された。ウクライナ当局、米国、ロシアとも事故ではなく「撃墜」と述べていることから、撃ち落とされたのは間違いなさそうだ。

 《 マレーシア航空の旅客機が17日、ウクライナ東部上空で墜落し、乗客280人と乗員15人の295人全員が死亡した。

米当局は「空中で爆発した」として、地対空ミサイルによるものとの見方を示した。

ウクライナ当局は、親ロシア派武装勢力がロシアの軍事諜報当局者の支援を受け、ソ連時代に開発されたSA11地対空ミサイルにより撃墜されたと非難。

一方で親ロシア分離独立派の「ドネツク人民共和国」の指導者は関与を否定、ウクライナ空軍のジェット戦闘機が撃墜したと指摘した。

ただ親ロシア派は、地対空ミサイルを入手したことを認めており、14日にはウクライナ空軍の輸送機を撃墜した》=17日 ロイター。

 ロシア製のSA11は高度22000メートルまでの飛行物体なら撃墜可能で、1万メートルぐらいを飛行中とされるマレーシア機は当然射程範囲内だ。「ルガンスク共和国」情報部が主張するウクライナ空軍機による撃墜説はにわかには信じ難い。

 マレーシア機といえば3月初めに消息を絶った事件が思い起こされる。機体は同じ777、なぜ立て続けに同じ航空会社で〝悲劇〟が起こるのか。安全にはより気を使っているはずのマレーシア機が、なぜきな臭いウクライナ上空を飛行するのか。戦闘機や輸送機、地対空ミサイルまでが飛び交っていることは百も承知のはずではないか。

 親ロシア派の仕業だとすると、なぜ民間機をという疑問がわく。持っていたミサイルが旧型で識別装置がなかったとしても、高度や飛行ルートから「民間機かも」との疑いを持って当然だ。

 親ロシア派やロシアにとって、「西側の民間機撃墜」は大きな失点になる。ましてアメリカが新たな制裁を発動したばかり、制裁の妥当性を補強するような出来事だ。

 事件の処理がウクライナ政府に委ねられることになれば、ウクライナ側に不都合な真実は封印されるに違いない。国際的な調査チームを早急に立ち上げることができるかどうか。このチームをめぐる動きがみものである。
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