酔眼独語 

時事問題を中心に、政治、経済、文化、スポーツ、環境問題など今日的なテーマについて語る。
 

地方紙部長の大暴走

2015-11-26 15:12:30 | メディア
 これが新聞社幹部の「つぶやき」とは、あいた口がふさがらない。まさに前代未聞、衝撃的な事件である。

 《新潟日報社は、インターネットの投稿サイト「ツイッター」上で新潟市の弁護士高島章氏を中傷する書き込みをしたとして、上越支社の坂本秀樹報道部長(53)を25日付で同支社報道部長の職を解き、経営管理本部付とする人事を決めた。

 新潟日報社は、ツイッターでの書き込みの内容や経緯などについてさらに詳しく調査を進めている。過去の書き込みなどについても調べた上で、一両日中にも社としての対応を決定し、公表する。

 高島氏は新潟水俣病第3次訴訟の原告側弁護団長。25日までの調査では、ツイッターで坂本部長は11月20日に「はよ、弁護士の仕事やめろ」「こんな弁護士が新潟水俣病3次訴訟の主力ってほんとかよ」などと高島氏を中傷する内容を匿名で書き込んだ。

 23日に投稿主が坂本部長ではないかとの指摘がネット上であったのを受け、同日、高島氏が坂本部長に確認したところ、投稿を認めた。坂本部長は24日に高島氏の事務所に出向き、「仕事のストレスなどがあり、酒を飲んで無礼な表現を重ねてしまった。誠に申し訳ありませんでした」と謝罪した。高島氏はこれを受け入れた》=25日、新潟日報web=。


 新潟日報といえば45万部以上の部数を誇る有力地方紙、数年前に建てた20階建ての瀟洒なビル「メディアシップ」は新潟市のランドマークともなっている。その新聞社の部長、しかも報道の一線に立つ支社報道部長が、ここに記すことさえためらわれるほどの暴言を吐きまくっていたのだ。当該の部長は「酒に酔っていた」「仕事のストレスが」などと言い訳しているが、見苦しいとしか言いようがない。


 言うまでもなく新聞の使命は真実を伝えることにある。いい加減な情報を撒き散らすことがいかに危険か、坂本氏も十分承知していたはずだ。今回の書き込みは罵詈雑言などというものではなく、まさに言葉の暴力である。こういう感覚の人が新聞を作っていたのかと考えると、空恐ろしくもある。

 特異な人格が招いた異常な事件と言えるが、彼を幹部に据えた新潟日報の見識もまた問われる。徹底的に事実を洗い出し、読者の前に明らかにすることが求められる。
 
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朝ドラ「まれ」のあ~あ

2015-05-14 18:01:25 | メディア
 出来はともかく視聴率は上がる。NHKの朝ドラのことである。「マッサン」のあとを受けた「まれ」も前作に劣らずひどいドラマだが、視聴率調査では堂々首位に君臨している。なんでこうなるの?

 とにかく「まれ」は脚本がひどい。

 先週までの能登セクションは、ほぼ「あまちゃん」のパクリだった。①辺境の海辺②ダメおやじとしっかり女房③やたらうるさい取り巻き連中-朝ドラ特有の設定と言ってしまえばそれまでだが、ここまで似ているケースは少ない。で、主人公は行き詰まると海っ端にやってくる。「あまちゃん」では防波堤、「まれ」では見張り用の足場だ。「そのうち海に飛び込むぞ」と見ていたが、さすがに今回それはなし(w)。

 今週からの横浜セクション。何なんだリュックにほーきまでおっ立てた旅支度は。いくら笑いを取りたいからといって、ここまでやっては視聴者を馬鹿にしているとしか思えない。

 「マッサン」もいただけなかったが、これは主人公(竹鶴)に魅力がないせいだった。

 今回は「女子の立志伝」ともいうべき朝ドラの王道。これまでの例に漏れず役者も揃っている。でも、いかんせんお話がこれでは半年持たない。ハチャメチャ喜劇に仕立てるのか、正統派を目指すのか。すでにかなり筋は進んでいるだろうから、これからの方針転換は至難の業だ。

 「悪評でも関心がないよりまし」と誰かが言っていた。作者・篠崎もそう言ってほくそ笑んでいるのかな…。
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元気が出る新聞!?

2015-02-04 16:09:12 | メディア
 週刊現代とポストが競うように「死ぬまでsex」を煽り立て、純情なじいさんらを惑わせていると思ったら、どっこい、新聞も負けていないようだ。「若い人が読まない」「部数が減る一方」と嘆き節の業界だが、年寄り向け広告のオンパレードでは若い人が読むわけがない。

 部数世界一を誇る読売でさえ目立つのは健康食品やサプリメントなどの通販広告だ。「いやー、すっと出た」なんて大広告は朝の食欲を萎えさせてくれる。

 通販と自社広告以外はないに等しい地方紙はもっと過激だ。ポストや現代の「死ぬまでsex」キャンペーンに呼応したかのような直截さにはおもわず笑ってしまう。「折れない自信! 精力的な毎日を」「ぐんぐん元気 中高年よ奮い立て」「ピンとくるパワー! ピンとくる実感力」-高麗人参おそるべしである。

 使った人?の体験談?がまたすごい。「妻も喜ぶ夫婦円満 今なら20代の若者にだって負ける気がしない」(65歳)「年下の彼女のためにも、120歳まで現役をつらぬきます」(77歳)

 人参、スッポン、牡蠣…、男を元気づけるあれやこれや。あっちだけ元気でもねえ。衆院選投票率が50%を割ろうかというご時世、この国民にこの新聞ありかなあ。
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「新聞大会」の皮肉

2014-10-16 16:07:07 | メディア
 今年で67回目になるという「新聞大会」が新潟市で開かれた。今回のテーマは「新聞の信頼回復」だという。業界のトップが雁首を並べた会合で「信頼回復」を打ち出さざるを得ないところに新聞界の深刻さが伺える。だが、「正確で公正な報道に全力を尽くすことを誓う」などというありきたりな決議しかできないようでは先が見えている。

 新聞大会のテーマとメーンの座談会のメンバーが決まったのはいつなのだろう。大会の規模や顔ぶれから見て8月の「朝日事件」以前に設定されていたと見たい。「事件」以後なら朝日の木村社長をパネリストには選んではいないはずだ。

 さて、その座談会である。コーディネーターは読売の白石社長、パネリストは木村氏の他に毎日の朝比奈、神戸の高士、新潟の小田各社長である。語っていることははっきり言って通り一遍、建前論の羅列と行ってよかろう。中でも笑ったのは朝比奈氏の「新聞界の相互批判は、業界全体の信頼を失うことにつながることになるのでは…」という発言だ。読売、産経による「朝日叩き」を念頭に置いての言なのだろうが、ピンボケもいいところだ。政府広報紙と化した感のある読売、ますます嫌中嫌韓の度を強める産経が、朝日バッシングを強めれば強めるほど、「朝日を守れ」という声も高まる。その中で、どちらを選ぶか(あるいはどちらも選ばないか)はあくまで読者の選択だ。新聞社間の批判合戦が新聞への信頼を失墜させているなどという言舌は読者を愚弄するものと言わざるを得ない。

 大会では産経ソウル支局長の起訴に関して決議も行っている。決議そのものに異議はないが、週刊誌のゴシップ記事並の与太コラムを「言論の自由」の錦の御旗にしているのが悲しくも切ない。エロ漫画を擁護するよりまだ情けない。

 この大会で決議されたのはあわせて3つ。メーンの「大会決議」と「産経決議」、加えて「新聞への軽減税率適用を求める特別決議」である。信頼を欠く新聞では軽減税率の適用などありえない-だから信頼回復を掲げる。言論の自由擁護を旗印に政府の対韓姿勢を側面支援する。

 今回の大会が新聞が政府に恭順の意を示す一里塚とならないことを切に望む。
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「故宮展」開幕

2014-06-24 09:38:37 | メディア
 朝日、読売、毎日などが主催に名を連ねる「台北故宮博物院展」が開幕した。各紙とも前日の開会式を大きく報道していたが、注目は例のポスター問題の扱い方。読売と毎日は無視、朝日は別項で事実関係の一端と国立博物館長の談話を載せただけ、臭い物に蓋の対応だった。

《「台北故宮博物院 神品至宝」展(朝日新聞社など主催)が24日開幕するのに先立ち、東京・上野の東京国立博物館で23日午後、開会式があった。

 主催者を代表し、東京国立博物館の銭谷真美館長が「厳選された門外不出の名品を紹介できるのは深い喜び。中華文明のすばらしさを堪能してもらいたい」とあいさつ。来日した台北故宮博物院の馮明珠院長は「いかに日本のみなさんに感動してもらうか選ぶのは大変だったが、ひとつひとつが神品至宝だ。文化交流の促進にもつながる」と語った。テープカットのあと内覧会があった。

                          ◇

 東京国立博物館の銭谷真美館長は23日、「台北故宮博物院 神品至宝」展の開会式のあいさつで、「ポスターなどにおける名称の表記について台湾の皆様に不快な思いをさせた」と謝罪した。宣伝用の大型ボードやポスターの中に、正式名称の「國立故宮博物院」の「國立」を略した表記があることに、故宮側が抗議していた。銭谷館長は「真摯(しんし)に受け止め是正した。おわび申し上げる」と述べた》=朝日degital。

 この問題は共同と時事が台北発で伝えたもので、「故宮展」のポスターなどから展示会の正式名称である「国立」の文字が削除されていることに台湾側が、「修正しなければ中止もありうる」と抗議していたものだ。

 当然のこと? ながら主催に名を連ねた各紙は、この事実は伝えていない。日経と地方紙の片隅に載ったぐらいだから、知らない人も多いのではないか。台湾が「国立」にこだわったのは、なんとなく分かるが、ゴリ押しに近い。日本で開かれた海外の国立博物館や美術館展で、わざわざ「国立」と銘打った例はほとんどないという。

 情けないのは主催メディアの側である。論理で突っ張るどころか、あっさり「国立」の紙を貼ることで合意してしまったらしい。故宮展中止は困るし、中国に睨まれるのも…。産経も朝日もお手てつないでというのが、いかにもおかしい。朝日は館長談話でおわびを済ませたいようだが、詫びるのはポスター制作の当事者であるメディアであろう。
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二つの広告

2013-10-23 15:34:37 | メディア
 22日、新聞各紙に「婦人公論 11/7号」の広告が掲載された。キムタクの写真をメーンにあしらった何てことのない代物である。だが、地元紙と読売では何かが違う。目を凝らしてみると「読売」からは特集のルポ記事を紹介するコピー2行がすっぽり抜け落ちているのである。

 地元紙の広告、キムタクの頭の脇にはこうある。「男性誌の『死ぬまでセックス』特集に女たちは呆れています(ルポ)」。

 広告のサイズは読売の方が大きい。もっとも幅は同じで、使っている文字は読売の方が大きいから、地元紙と同じ位置にこのコピーをはめるといささか窮屈になるかもしれない。だが、そんなことはレイアウト次第でどうにでもなる。不思議なのは、なぜ読売にはこのコピーがないのかだ。

 前日の読売には全5段で「週刊ポスト」、半5段で「週刊現代」の広告が載っている。ポスト誌には「死ぬほどsex『定年延長!』宣言 70歳のsexが凄くなっている」のコピーが見え、現代誌には「秋の夜長 こんなsexをしてみませんか」の文字が躍る。婦人公論のルポの標的は「生涯sexのすすめ」を競い合う両誌が中心と見て間違いあるまい。週刊誌の発売が一日遅れの地方紙ではポスト、現代と婦人公論の広告が同じ日に載っている。出版社としてはこっちの方が問題だと思うけど…。

 はじめから婦人公論側が二つの広告を用意していたとは考えにくい。「男性誌」側からの要請で読売が変えさせたとみるのが妥当だろう。

 よく見ると読売の広告はキムタクの写真を少し左に寄せて2行分の空白が不自然にならないようになっている。広告に「墨塗り」は各紙でたまに見る。しかし、こうして何もなかったように装う例は少ないのではないか。

 報道や論説で「独自色」を強める読売新聞、広告でも存在感発揮ですかな。

 
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死んだ人はいい人だ!!

2013-10-01 11:26:04 | メディア
 作家の山崎豊子が亡くなった。享年88歳。

 新聞各紙は1面、社会面、文化面にわたって大展開、「国民的作家」の死を悼んだ。以下は毎日だが、各紙とも似たようなものである。

 ≪社会性のあるテーマに切り込んだスケールの大きな作風でベストセラーを生み続けた作家、山崎豊子(やまさき・とよこ、本名・杉本豊子=すぎもと・とよこ)さんが29日、心不全のため死去した。88歳。葬儀は近親者のみで営む。

 大阪・船場の商家に生まれた。1944年、京都女子専門学校(現京都女子大)国文科を卒業して毎日新聞に入社。大阪本社調査部を経て45年、同学芸部に移り、副部長(デスク)だった故・井上靖さんから新聞記者の手ほどきを受け、作家としての資質を見いだされた。

 新聞社勤務の傍ら、生家をモデルに10年を費やしたデビュー作「暖簾(のれん)」を57年に刊行。翌年、大阪女のたくましさを描いた「花のれん」で第39回直木賞を受賞したのを機に、毎日新聞を退社し、作家に専念した。

 パリを舞台にした「女の勲章」(61年)の取材中に元同僚と結婚。旧家の遺産相続を扱った「女系家族」(63年)、大学付属病院を舞台に医学界の暗部にメスを入れた「白い巨塔」(65〜69年)をはじめ、閨閥(けいばつ)政治と資本の癒着を追及した「華麗なる一族」(73年)など、実地調査と取材に基づいて社会問題に切り込む長編小説を相次いで発表した。

 その後も、シベリア抑留を扱った「不毛地帯」(76〜78年)、日系2世の兄弟の悲劇を描いた「二つの祖国」(83年)、中国残留孤児の数奇な運命をたどった「大地の子」(91年)の戦争3部作で社会派作家としての評価と人気を不動のものにした。

 93年、「大地の子」などの印税を基に「山崎豊子文化財団」を設立し、日本に帰国した中国残留孤児の子供の学資を援助した。

 日航ジャンボ機墜落事故を素材にして200万部を超えるベストセラーになった「沈まぬ太陽」(99年)の後、「山崎豊子全集」(全23巻)を2005年に完結させた。

 09年には、沖縄返還交渉時の密約報道事件を基にした「運命の人」を刊行し、同年の毎日出版文化賞特別賞を受賞した。作品の多くが映画、ドラマ化され社会的な反響を呼んだ≫=毎日jp=。

 ジャーナリスティックな題材に切り込み、人間ドラマを描いてきた山崎の力量は評価したい。一方で幾たびか「盗用」「盗作」事件を起こしたことも忘れてはなるまい。一度は引責して文芸家協会を退いたほどだから、本人にもその自覚はあったに違いない。

 第三者が体験し、活字化したものを脚色するのが山崎の得意技だ。一言その人に断ればどうということはないのに、多くのケースでネグレクトしていた。作家としての人格の問題だろう。とはいえ、人格高潔でくだらない作品を書く作家とどうしようもない人間だが書くものは面白い作家、読者が歓迎するのは後者であるのは間違いない。

 新聞各紙もひところ無断引用や盗用騒ぎが相次いだ。だからこそ山崎の死に当たってこれらの点にどう触れるかに注目していたのだが…。

 死者に鞭打たないのが日本のメディアの美風ですかね。
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