世の中には暇な方々がおられるようで…。学者などというのもその範疇に入っているらしく、高齢者の定義見直しなどというお節介に乗り出した。
《日本老年学会などは5日、医療や介護などで「65歳以上」とされている高齢者の定義を「75歳以上」に見直すべきだとする提言を発表した。健康に関するデータの分析から、医療の進歩や生活環境、栄養状態の改善などで、65歳以上の体の状態や知的機能は10~20年前と比べ5~10歳ほど若返っていると考えられるという。
「高齢者」の厳密な定義はないが、国連は1956年の報告書で65歳以上を高齢人口と定義し、日本も準じている。国民年金や介護など社会保障関係の国内法令も、現役世代との区分を65歳としている。
同学会は、65~74歳を健康で活力がある人が多い「准高齢者」と定義し、仕事やボランティアなどの社会活動への参加を促すよう求めた。75~89歳は「高齢者」、90歳以上は「超高齢者」と位置づけた。
65歳以上の心身に関する各データを同学会が解析したところ、要介護認定率や脳卒中死亡率などは年々低下し、身体の動きや知的機能は上昇が見られた。2014年度の内閣府意識調査で、高齢者を男性が70歳以上、女性は75歳以上とする回答が最多だった点も勘案した。
一方で、提言を社会保障制度に直接結びつける議論は慎重にするよう訴えた。
提言をまとめた同学会の大内尉義(やすよし)・虎の門病院長は「65~74歳は元気な人も多く、今の高齢者の定義に合わなくなっている。自主的な社会参加を促せば、社会の支え手を増やせる」と説明した》=mainichi.jp=。
本気でこんなことを考えているとしたら、それはもう学問や科学ではない。年齢と体力の関係について文科省のレポートは次のように述べている。
《新体力テストの合計点からみた6歳から 11 歳の体力水準は,男女とも加齢に伴い急激で著しい向上傾向を示している。12 歳から 19 歳では,男子は 17 歳までは著しい向上傾向を示し,その後緩やかな低下傾向を示す。女子は 14 歳までは緩やかに向上し,19 歳まではその水準が維持される。20 歳以降は,男女ともに体力水準は加齢に伴い低下する傾向を示しているが,その
傾向は,ほぼ 40 歳代ごろまでは女子の方が男子よりも比較的緩やかである。40 歳代後半からは,男女ともに著しく体力水準が低下する傾向を示し,65 歳から79 歳でも,男女とも加齢に伴いほぼ直線的に低下する傾向を示している》
男女とも体力的なピークは20歳前後、40歳代後半からは「著しく体力水準が低下」し、65歳からはさらに急激に低下するというのだ。元気そう、若く見えるといっても、加齢による衰えは確実にあるのだ。
一方、当の高齢者たちからも「65歳を過ぎたからといって高齢者扱いされたくない」という声があがっている。年齢不詳の「美魔女」などという人種もおられる。これはこれ、それはそれ、である。若者は子供扱いされたくないし、年配者は年寄り扱いされたくないのが人情だ。こういうことは学会が四角四面に定義するような問題ではないだろう。
ただ、医療や福祉分野では高齢者の定義は必要だ。65歳を過ぎると一見健康そうでも、あちこちガタが来る。当然医者にかかるケースも増えてくる。厚労省のデータは次のように言う。
《年齢階級別にみると、0~14歳は2兆2326億円 (6.4%)、15~44歳は4兆8362億円(13.9%)、45~64歳は8兆7397億円 (25.1%)、65歳以上は18兆9999億円(54.6%)となっている。
人口一人当たり国民医療費をみると、65歳未満は15万8900円、65歳以上は67万3400円となっている。そのうち一般診療医療費では65歳未満が11万4200円、65歳以上が51万7400円となっている。歯科診療医療費では、65歳未満が1万7400円、65歳以上が2万9900円となっている。薬局調剤医療費では、65歳未満が2万4600円、65歳以上が10万4500円となっている》。
65歳が一つの曲がり角であるのは疑いようがない。
なぜこんな提言が出てくるのか。《提言を社会保障制度に直接結びつける議論は慎重にするよう訴えた》とはいうものの、狙いは明らかだ。医療費や社会保障費の抑制と労働力の確保である。年金支給は75歳から、死ぬまで働け-の掛け声が聞こえてくる。
生涯現役などという言葉が流行っているようだが、意味不明だ。人間は生きている限り「現役」である。どのような生き方をするかは個人が決めることだ。働いていないものは「現役」ではないような言い方はピンボケもいいところである。「飲んで 食って 歌え」-「べっぴんさん」の先々代が残した言葉を噛み締めたい。
《日本老年学会などは5日、医療や介護などで「65歳以上」とされている高齢者の定義を「75歳以上」に見直すべきだとする提言を発表した。健康に関するデータの分析から、医療の進歩や生活環境、栄養状態の改善などで、65歳以上の体の状態や知的機能は10~20年前と比べ5~10歳ほど若返っていると考えられるという。
「高齢者」の厳密な定義はないが、国連は1956年の報告書で65歳以上を高齢人口と定義し、日本も準じている。国民年金や介護など社会保障関係の国内法令も、現役世代との区分を65歳としている。
同学会は、65~74歳を健康で活力がある人が多い「准高齢者」と定義し、仕事やボランティアなどの社会活動への参加を促すよう求めた。75~89歳は「高齢者」、90歳以上は「超高齢者」と位置づけた。
65歳以上の心身に関する各データを同学会が解析したところ、要介護認定率や脳卒中死亡率などは年々低下し、身体の動きや知的機能は上昇が見られた。2014年度の内閣府意識調査で、高齢者を男性が70歳以上、女性は75歳以上とする回答が最多だった点も勘案した。
一方で、提言を社会保障制度に直接結びつける議論は慎重にするよう訴えた。
提言をまとめた同学会の大内尉義(やすよし)・虎の門病院長は「65~74歳は元気な人も多く、今の高齢者の定義に合わなくなっている。自主的な社会参加を促せば、社会の支え手を増やせる」と説明した》=mainichi.jp=。
本気でこんなことを考えているとしたら、それはもう学問や科学ではない。年齢と体力の関係について文科省のレポートは次のように述べている。
《新体力テストの合計点からみた6歳から 11 歳の体力水準は,男女とも加齢に伴い急激で著しい向上傾向を示している。12 歳から 19 歳では,男子は 17 歳までは著しい向上傾向を示し,その後緩やかな低下傾向を示す。女子は 14 歳までは緩やかに向上し,19 歳まではその水準が維持される。20 歳以降は,男女ともに体力水準は加齢に伴い低下する傾向を示しているが,その
傾向は,ほぼ 40 歳代ごろまでは女子の方が男子よりも比較的緩やかである。40 歳代後半からは,男女ともに著しく体力水準が低下する傾向を示し,65 歳から79 歳でも,男女とも加齢に伴いほぼ直線的に低下する傾向を示している》
男女とも体力的なピークは20歳前後、40歳代後半からは「著しく体力水準が低下」し、65歳からはさらに急激に低下するというのだ。元気そう、若く見えるといっても、加齢による衰えは確実にあるのだ。
一方、当の高齢者たちからも「65歳を過ぎたからといって高齢者扱いされたくない」という声があがっている。年齢不詳の「美魔女」などという人種もおられる。これはこれ、それはそれ、である。若者は子供扱いされたくないし、年配者は年寄り扱いされたくないのが人情だ。こういうことは学会が四角四面に定義するような問題ではないだろう。
ただ、医療や福祉分野では高齢者の定義は必要だ。65歳を過ぎると一見健康そうでも、あちこちガタが来る。当然医者にかかるケースも増えてくる。厚労省のデータは次のように言う。
《年齢階級別にみると、0~14歳は2兆2326億円 (6.4%)、15~44歳は4兆8362億円(13.9%)、45~64歳は8兆7397億円 (25.1%)、65歳以上は18兆9999億円(54.6%)となっている。
人口一人当たり国民医療費をみると、65歳未満は15万8900円、65歳以上は67万3400円となっている。そのうち一般診療医療費では65歳未満が11万4200円、65歳以上が51万7400円となっている。歯科診療医療費では、65歳未満が1万7400円、65歳以上が2万9900円となっている。薬局調剤医療費では、65歳未満が2万4600円、65歳以上が10万4500円となっている》。
65歳が一つの曲がり角であるのは疑いようがない。
なぜこんな提言が出てくるのか。《提言を社会保障制度に直接結びつける議論は慎重にするよう訴えた》とはいうものの、狙いは明らかだ。医療費や社会保障費の抑制と労働力の確保である。年金支給は75歳から、死ぬまで働け-の掛け声が聞こえてくる。
生涯現役などという言葉が流行っているようだが、意味不明だ。人間は生きている限り「現役」である。どのような生き方をするかは個人が決めることだ。働いていないものは「現役」ではないような言い方はピンボケもいいところである。「飲んで 食って 歌え」-「べっぴんさん」の先々代が残した言葉を噛み締めたい。