酔眼独語 

時事問題を中心に、政治、経済、文化、スポーツ、環境問題など今日的なテーマについて語る。
 

立松和平に絶筆を勧める

2008-06-28 04:57:14 | Weblog
あの立松和平がまたも盗作をやってしまったらしい。毎日新聞=電子版=は以下のように伝える。

 《作家の立松和平さん(60)の小説「二荒(ふたら)」(新潮社)の記述の一部が、栃木県日光市職員、福田和美さんの著書「日光鱒釣紳士物語」(山と渓谷社)と類似していることが分かった。新潮社は27日までに「二荒」を絶版にした。

 「二荒」は、日光市を舞台に、実在の人物をモデルにした恋愛小説。昨年9月に刊行され、今年2月、福田さんが自分の本に似ていると指摘。新潮社が調査したところ、第2章の冒頭、登場人物のせりふなどが福田作品の創作部分と似ていた。新潮社は「参考文献として挙げていたものの、参考の域を超えて使用していると判断せざるを得ない」と、4月末に絶版を決めた。

 立松さんは「福田さんの前書きなどからすべて歴史的事実と思いました。紛争を回避するため、絶版としました。該当部分を書き直したものを再出版する予定です」など文書でコメントを発表した。

 立松さんは93年に小説「光の雨」を文芸誌に連載中、小説が連合赤軍事件の坂口弘死刑囚の自伝的著作に酷似していたことから「盗用だ」と、支援者らの抗議を受けた。この時立松さんは無断引用を認め全面的に謝罪、連載を中止している》

 立松と言えば、前回の盗用騒ぎから奇跡的に復帰した後は、例の栃木なまりの朴訥なしゃべりを武器に、テレビの旅番組や環境問題のコメンテーターとして活躍していた。

 過去や外見で人を判断するのはあまり感心したことではないが、立松の場合、あの笑顔としゃべりはつくられたものであり、胡散臭いと感じていた。言うことも真っ当すぎてしらけることが多かった。今回の一件で、作家の魂がない人物だとよく分かった。もうモノを書くのはやめなさい。田舎に帰って土を耕せばいい。雑草と対話し、己の卑小さを考え続けていきなさい。

 近年、立松は環境問題での発言が多い。昨年開かれた昭和基地開設50周年記念すフォーラムでは

「地球環境について考えなければいけない時期に来ていることを、人間を完全に超越した南極の風景が教えてくれた」「『地球に優しく』という言葉があるが、人間が苦しめているのは地球ではなく自分たちだ」などと語っている=共同=。

 精力的に行動する一方、執筆意欲も旺盛で昨年には「道元禅師」で泉鏡花文学賞を受賞している。もっとも、この作品は「正法眼蔵」の超訳ともいえる代物で、道元との共著といっていい。

 今回指摘された著書は絶版になるという。当然のことだ。それにしても、原著の著者が指摘をしなかったらどうなっていたのだろう。この男は頬かむりをしていただろう。前回の盗用を全く反省していないと言わねばならない。他人の著作に触発されなければ、モノを書けなくなっているのではないか。作家としての感性が枯渇している(もともとなかった?)のだ。やはり、緑の中での転地療養が一番いい。

 立松の出版にかかわったすべての出版社は、全著作を洗い直して見るべきだ。

 立松クン、還暦も過ぎたことだ。真人間になろう。分かった風にモノを書いたり、笑顔で人を欺くのはもうやめよう。

 でも、懲りずにまた出てくるんだろうなあ。
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金正日の高笑いが聞こえる

2008-06-27 05:46:10 | Weblog
 北朝鮮が6カ国協議の議長国である中国に、核計画を申告した。これを受けてブッシュ大統領は20年ぶりとなる北朝鮮へのテロ支援国家指定解除手続きに入った。福田首相は「核計画の申告は、拉致問題解決への一歩になる」と述べた。

 きのうの流れをざっとおさらいすると、こうなる。米朝協議によってお膳立てが出来上がり、日本がそれについていく。一連の協議や交渉は、すべてこの日のために行われていたということがよく分かる。

 「拉致問題をお忘れなく」は日米が話し合うときの時候の挨拶代わりのようなものだった。

 「北」核計画の凍結と解体は北東アジアと世界の安全保障にとって極めて重要な意味を持つ。今回の申告が解体へのプロセスに組み込まれているなら、大きな一歩と言えよう。だが、そこはまだ未知数だ。大騒ぎの末に挫折したKEDOを思い出せばいい。北はこれからも、一つ手続きを行うたびに、何らかの要求を出してくることは間違いない。そうしてずるずると援助を拡大していく。またいつものパターンにはまりそうだ。

 もっとも、テロ支援国家指定はアメリカが勝手にやっていることだ。根拠や条件があいまいで、先制攻撃の口実にもなっている物騒な代物だ。日本が対北政策の根幹をアメリカに委ねている以上、「どこまでも付いて行きます下駄の雪」である。踏みつけられながらも、追随するしかない。

 問題は「拉致問題は忘れない」と話したブッシュも「テロ支援国家指定を解除しないよう求め続けていく」とした福田も、本心では「核優先」を決め込んでいたのに拉致被害者の家族や日本国民に嘘をつき続けたことだ。


 政治は時に冷酷である。だが情を失った政治は必ず見放される。冷徹な論理と人間としての情愛のバランスを取りながら進んでいくのが政治家である。ブッシュも福田も三流以下の政治家だから、多くの望む方が間違いだったということだ。

 福田政権が一気に弱体化する可能性が出てきた。ナショナリズムが絡む反発だけに民主党相手とは訳が違う。以前のブログで述べたように、ブッシュはとっくに福田を見限っている。頼みの中国は地震と五輪で日本になど構っている余裕はない。そして福田は国内でも国際的にも孤立する。

 洞爺湖サミットに集う顔触れは半死半生ともいえる方々である。完全にレームダック化したブッシュ、支持率最低のブラウン、品のなさが際立つサルコジ、南北対立に何の手も打てないベルルスコーニ、プーチンの手のひらで踊るメドベージェフ、そして我らが福田さんである。

 8カ国首脳が「ああでもない、こうでもない」と言い合うのを、隣で眺めて高笑いするのが金正日将軍だ。次のゲームの構想が頭の中を駆け巡っていることだろう。

 そうした状況が予見されるだけに拉致被害者家族会などが反発を強めているのも無理はない。飯塚繁雄代表は「拉致問題解決に向けて大きな後退。家族を助け出せなくなる恐れが十分ある。なぜ政府は、テロ支援国家指定の解除は絶対に困るという強い態度を示せなかったのか」と話している。

 この点を政府はどう言い抜けるのか。中山恭子の説明ぐらいでは収まるまい。頭を下げるのが下手な福田では火に油を注ぎかねない。安倍と山崎拓のさや当ても激化しそうだ。暑い夏になるかもしれない。
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新聞の品格

2008-06-24 05:21:52 | Weblog
 人品骨柄を誇るとは言い難い。したがって「品格本」など読んだこともない。大体、品格の大切さを主張される方の品格がよく分からない。品格の定義も不明確だ。

 などと書きながら、新聞に品がなくなったと嘆く。いささか矛盾するようだが、そんなことはない。新聞の品格は紙面に明瞭に現れる。記事・評論の内容、広告の中身、広告の占有率、などなど…。

 以前も書いたが、各紙とも自社の主催行事や関連記事を掲載するのにためらいがなくなった。あからさまに自分の宣伝をするのは品がない。というより、もっとほかのニュースに席を譲るべきである。紙面の私物化は読者の顰蹙を買うだけだ。

 広告の貼り付け方にも節度がなくなった。1面のコラムを広告で挟むなど、以前では考えられないことだ。この位置は高く売れる、そう考えて紙面を切る売りする。記事中広告もサイズが大きくなり、邪魔になって仕方がない。

 やたら広告が目立つ新聞を見ていると、F1レーサーのレーシングスーツを連想してしまう。走る広告塔。まあ、新聞社を支える2本柱の一本は広告なのだから、むしろ自然に帰ったと言うべきか。

 広告の中身も品がない。某日の朝日を例にとる。

 5面は通販の一面広告である。腰痛コルセット、呼吸器、ひざ補正サポーター。ちゃんと効くんでしょうね。

 10面は「中性脂肪に○○」。これも通販。12面も同じく通販の一面広告だ。25面には「ぞうすいダイエット」、28面はカラーで「美肌づくり」特定健康食品。いずれも一面全部が通販の広告だ。

 効能や副作用などの確認はできているのだろうか。

 かと思えば、23面には5段広告で「愛する自信と二人の幸せが一緒に戻ってきました」のキャッチフレーズで元気の出る薬の宣伝。「私より家内の方が驚いています」などいう利用者の声まで付いている。何の薬なのかなあ。

 以上は表面に現れた立派な品格の一例だ。深刻なのは、実は広告ではない。社論である。主要紙が大事なときに沈黙しているのが目立つ。意見のない新聞に品格があるとは思えない。

 例1 連続少女誘拐事件の宮崎勤に死刑が執行されたとき、大手各紙はニュースで報じただけだ。そんなに軽い話なのか。朝日は夕刊素粒子にこう書いた。

 《「永世死刑執行人 鳩山法相。「自信と責任」に胸を貼り、2カ月間隔でゴーサインを出して、新記録達成。またの名、死に神》

 これでおしまいである。こんな短文で斬ってみせました、とい言いたいのだろうが品がない。筆力も足りない。何より、死刑執行から学ぼうとする姿勢がない。

 例2 グリーンピースの2人が鯨肉窃盗容疑で逮捕された。読売が「正義に名を借りた違法行為」の趣旨で論じた以外は、沈黙を決め込んでいる。以前にも書いたが当ブログは読売とは見解を異にする。だが、読売がこの問題を素通りせずに書いたセンスは素直に評価したい。

 強制捜査の目的がサミット警備の情報収集にあることはもはや間違いない。警視庁公安部が仕切っているのが何よりの証拠だ。鯨肉の宅配自体にも問題がある。朝日は特ダネでスタートしたはずなのに、すっかり腰が引けている。

 新聞の品格は一度報じたことを丁寧にフォローする点にある。マッチポンプは最悪である。
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グリーン・ピース逮捕

2008-06-21 05:01:57 | Weblog
 環境保護団体「グリーンピース・ジャパン」が、調査捕鯨船の乗組員が自宅に送った鯨肉を無断で持ち出した事件で、青森県警と警視庁の合同捜査本部は 20日、窃盗と建造物侵入容疑で、団体の海洋生態系問題担当部長佐藤潤一容疑者(31)=東京都八王子市みなみ野=ら2人を逮捕した。東京都新宿区の団体事務所など6カ所を捜索した。

 団体側は持ち出しについて「鯨肉横領疑惑の証拠入手のため」と正当性を強調していたが、県警は「否認とも受け取れ、証拠隠滅の恐れや、集団で実行した悪質な面もある」と判断。反捕鯨活動で有名な国際的団体をめぐる刑事事件に発展した。

 ほかに逮捕されたのは、自称団体メンバー鈴木徹容疑者(41)=横浜市金沢区野島町。2人は20日朝、都内で身柄を確保され、午後に青森署に移送される。

 グリーンピース側は不当逮捕と反発。佐藤担当部長は5月、持ち出した鯨肉を持って自ら会見、違法性を否定していた。《日経電子版=共同》



 調査捕鯨船が捕った鯨肉の一部を乗組員が無断で持ち出したとして、環境NGOグリーンピース・ジャパンが業務上横領容疑で告発していた問題で、東京地検は20日、共同船舶(本社・東京)所有の調査捕鯨船「日新丸」の乗組員12人について、同容疑の嫌疑なしとして不起訴処分にした。

 東京地検の説明によると、鯨肉の所有者である共同船舶は、乗組員が土産などの名目で鯨肉を持ち帰ることを承諾しており、同容疑にはあたらないと判断したという。また、これらの鯨肉は、土産用や、商品加工できずに海上に投棄する分、乗船中の食料分だったという。《朝日電子版》

 どうしてこうもタイミングがいいんだろうと笑ってしまう。GPメンバーを起訴する前に、彼らに告発されている乗組員の処分を決めておきたい、とまあこういうことなのか。

 GPの行為は窃盗に当たる。これは間違いなかろう。GP自らそう認めている。これなら任意捜査で立件できるのではないか。警視庁と青森県警が合同捜査本部まで設置して取り組むような大事件とは思えない。

 県警での「本部事件」は、年にそういくつもあるものではない。わざわざ本部の看板を掲げたからには、別な狙いがあると見たほうがいい。

 このことを示唆しているのが読売新聞の社説(電子版)である。いわく、

 捕鯨以外でも、サミットなどの国際会議のたびに、環境保護団体が過激な妨害行動に出る例が相次いでいる。グリーンピースは2000年の沖縄サミットでも、活動家が首脳会議場近くの浜辺に上陸しようとする騒ぎを起こした。

 7月7日からの北海道洞爺湖サミットでは、多くの活動家が来日し、激しい抗議活動を繰り広げる事態が懸念されている。サミット会場の周辺を、怒号と混乱の場にしてはならない。


 サミット警備のための資料収集が今回の逮捕の本当の目的なのだろう。刑事部ではなく公安部主導の事件といえそうだ。


 乗組員不起訴の決定には疑問が残る。朝日の記事では詳しい内容が分からないが、共同船舶の言い分をそのまま東京地検が述べているように見える。そもそも、鯨肉の所有者は共同船舶なのか。同社は日本鯨類研究所の販売を代行しているに過ぎない。本当の所有者は鯨研とも思われる。


 


 

 
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ブッシュは福田を見限った

2008-06-20 21:52:32 | Weblog
 ゴンドリーザ・ライス米国務長官がヘリテージ財団での講演で「北朝鮮が核開発計画の申告を行えば、テロ支援国家指定解除の手続きを進める」と言明した。

 日本政府の「拉致問題での前進がないうちはテロ国家指定を解除すべきではない」という申し入れは無視された格好だ。だが、よくよく考えるとライス発言は、日米が示し合わせて打った芝居の種明かしだ。

 12日まで北京で行われた日朝協議での合意を発表する斎木昭隆外務省アジア太平洋局長の表情がすべてを物語っている。対北強硬派として知られる斎木が、浮かない顔で「拉致問題解決への前進があった」と述べた。内容は何のことはない、北が「拉致は解決済み」と言わなかっただけのことである。これがなぜ前進なのか。

 18日のライス講演には「米国は日朝協議の進展を支援した」との文言が見える。拉致問題を放り投げたままテロ国家指定に踏み切るのは、さすがのアメリカも気が引けたのだろう。北朝鮮に因果を含め、日朝交渉に臨ませたと考えたい。同じことを日本政府にも言っているはずだ。意に副わない発表をしなければならなかったから、斎木は固まってしまったのだ。

 ヒル次官補が日本に飛んできて、斎木らと話し合った。日本政府の公式見解は「米国の姿勢は従来と変わらない」である。福田康夫首相は「米国政府とは緊密に連絡を取り合っている」とも付け加えた。北の核計画申告からアメリカのテロ支援国家指定解除に至る手続きのすべては、日本政府も了解済みと見て間違いない。

 福田は安倍晋三ほど拉致にこだわってはいない。ただ、アメリカのテロ指定解除がこのまますんなりと進み、拉致が取り残されるようなら政権に与える打撃は大きい。福田はそこがよく理解できていないし、アメリカはそれでも構わないと考えているはずだ。つまり、福田政権を支えるより、ブッシュ自身のレジェンド計画が優先だ、と言うことである。

 そもそも、テロ支援国指定などというものはアメリカの国内手続きに過ぎない。指定の根拠もいい加減である。敵対国を攻撃する材料と言ってもいい。こんなものにすがって拉致問題の解決を図ろうなどと考える方が甘ちゃんである。

 今回の流れを整理するとこうなる。
①米国は一日も早く北に核申告をさせ、テロ支援国家指定を解除したかった②それには拉致が引っかかる③日朝協議で拉致での前進が得られた④よってテロ指定解除を進める障害はなくなった-。

 2、3日前、中国の習近平副主席が北朝鮮を訪問して金正日と会談している。6カ国協議が話題に上ったのは当然だろう。米、中、朝で根回しが進んでいる。日本も米国から情報を受けていないわけがない。

 福田はサミット後の遅くない時点で政権を投げ出す可能性がある。言動の端々に投げやりさが目立つからだ。今回のライス発言は、首吊りの脚を引っ張るようなものだ。「フクダサン、シナバモロトモトイウジャナイデスカ」、ブッシュのささやきが聞こえるようだ。
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宮崎勤、死刑執行

2008-06-19 04:14:55 | Weblog
 幼女連続誘拐殺人事件で死刑が確定していた宮崎勤の刑が執行された。事件から20年ぶり、判決が確定してからは2年5カ月である。

 刑事訴訟法の専門家や実務家らは刑訴法の「確定から6カ月以内に死刑を執行する」という条文を根拠に、このタイミングでの死刑執行を是とする。

  一方、心理学者や文化人などの中には「秋葉原の事件にショックを受けた鳩山が、抑止効果を狙って下した政治的な命令だ」「何も解明されていないのに執行するのは早すぎる」などの声が上がっている。一般市民は「あれだけ世間を不安に陥れたのだから当然だ」という反応が大勢のようだ。

 宮崎事件は、その後に起きてくる若者の不可解かつ凶悪な事件の特質の多くを内包していると思われる。オタク、ゲーム好き、引きこもりがち、劇場型、異常な自己顕示欲、家庭内暴力…などなどである。

 猟奇的な事件の異様さに目を奪われ、宮崎の行動の核心にまで迫れなかったのではないか。もちろん、本人が公判廷などで白日夢のような訳の分からないことを繰り返した責任は大である。とても事件とまともに向き合っていたとはいえない。精神的欠陥を演出するためだったのか、それとも本当に「ネズミ男」の幻覚でもみたのか。

 いずれにせよ宮崎は贖罪意識はもとより、人を殺したという感覚もないまま絞首刑になってしまったのではないか。罪人が罪の意識を持たないまま罰せられる。これでは罰にならない。因果応報の観点から見ても、何も感じないまま死なれたのでは被害者感情を納得させることにはならないだろう。

 池田小児童殺傷事件の宅間にしても同じことだ。彼は死刑願望を持っていた。こういう人物を確定から間をおかずに死刑にしてしまうことが、刑事政策として妥当なのかどうか。「誰でもいいから人を殺してみたかった」「複数の人間を殺せば死刑になれると思った」。荒川沖駅殺傷事件の被疑者ら多くの若者がそう言って無差別殺人に走った。

 鳩山法相がいくら力もうが、死刑はこうした若者らの犯罪抑止力にはならない。殺人や犯罪がゲームになってしまった社会はかくも無力である。

 日本だけの特殊な現象ではない。アメリカの銃乱射も根は一緒だ。腐乱し始めた成熟社会に、新鮮な風を吹き込むのは容易ではない。個の爆発を押しとどめるには怒りをまとめる大きな力が必要だ。その知恵と人材があるのかどうか。
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「1000円煙草」論の胡散臭さ

2008-06-17 05:47:03 | Weblog
 超党派の国会議員でつくる「たばこ議連」が煙草税の大幅引き上げを主張、波紋を広げている。数兆円をひねり出して社会保障費に当てようという狙いらしい。

 議論が倒錯している、煙草は有害であり、税を引き上げても世論は納得する。税金が入ってくるうえ国民の健康増進にもつながる。と言えば聞こえはいい。だが、実体は消費税アップを先送りするためのごまかしだ。

 こんな見え透いた議論に朝日新聞や毎日新聞がエールを送っている。信じがたいことである。

 朝日は日本の煙草が野放しに近い状態になっていると憂い、諸外国に比べて値段が安すぎると憤慨する。『「千円たばこ」はこうした現状を大きく変えるきっかけになる。この水準まで価格が上がれば、8~9割が禁煙を考える…』と述べる。
 
 これはたばこ増税に便乗したたばこ退治の論である。税収を増やそうという議連の趣旨とは異なる。目的のためなら手段は問わないということなのだろうか。

 毎日は「社説」では意見がまとまらなかったためか署名入りの「視点」だ。

 「嗜好(しこう)品であるたばこの大幅な値上げには、愛煙家らから反論や批判もあることは承知の上で、あえて、たばこの値上げを支持したい」

 「1000円になれば、喫煙者は間違いなく減るとみられている。特に、若い人が買わなくなる意味が大きい。医療費や職場の環境対策などに使われる巨額な費用も節減できる。他人のたばこの煙を吸わされる受動喫煙問題の解消にもつながる」

 たばこの害を説き、値上げを訴える人に説明してほしいのは、なぜ煙草を禁止にしないのかということだ。食品添加物などでは発ガン物質は厳しく規制される。たばこがそれほどの害毒を撒き散らすなら、全面禁止を叫ぶのが筋であろう。

 嗜好品などと持ち上げるのは税金を召し上げる魂胆にほかならない。

 そもそも、煙草は民間会社が製造していた。戦費調達に苦しんでいた明治政府が強引に官営化し売り上げと税金の二重取りを編み出したのだ。

 やがて煙草は専売制が敷かれ、国営化する。時代の流れでいまはまたJTという「民間会社」に移ったが、煙草税をいじるときは政策の失敗か特別にカネが入用なときである。煙草は国策に踊らされてきたのだ。

 喫煙者をどう減らすかと、煙草税の引き揚げは全くかみ合わない。毒物を売って税金を得るなど「死の商人」のやることだ。税は税、禁煙運動は禁煙運動と整理して論議してほしい。
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岩手・宮城内陸地震

2008-06-15 11:18:04 | Weblog
 14日午前、東北地方で発生した強い地震は、これまでの大地震とはかなり趣が違うようだ。

 震源の深さが8キロ程度と極めて浅い。にもかかわらず、地震波の伝播範囲はかなり広域にわたっている。

 犠牲者は6人と伝えられるが土木作業中の人や土砂崩れに巻き込まれた人が大半で、倒壊した建物の下敷きになって亡くなった人はいない模様だ。行方不明の人も崩れた土砂に埋まっているものとみられる。

 建物被害は全壊5棟、半壊約50棟を含む150棟前後と報告されている。地盤被害が多そうなので、被害家屋はまだまだ増えると思われるが、直下型でM7・2としては家屋被害は極めて少ない。

 山間部でそもそも人家が少なかったのだろう。今回の地震の特徴は山崩れの多さと規模の大きさにあるといえそうだ。現地はまだ入梅前である。空梅雨気味の年はえてして末期に集中豪雨に見舞われる。山がぐさぐさになっている状態では、そんなに強い雨でなくても土石流や土砂崩れが起きる。要警戒だ。

 未確認の活断層が動いたらしい。東北の脊梁山脈に沿っては「ひずみ集中帯」が延びているともいう。「ひずみ集中帯」は4年前の中越地震、昨年の中越沖地震を機にメディアに登場してきた言葉だ。学会では知られていたそうだが、地域には知らされていない。

 いたずらに不安を煽るのは感心しないが、適切な注意喚起を行うのが学問的良心というものではないか。地震が起きてから「実は…」などと言われても困ってしまう。ダムや道路などの建設時にもアドバイスがあってしかるべきだ。

 メディアのいくつかが、緊急地震速報のあり方について触れていた。ミスリードが目立つ。震源近くではシステムは機能しない。これは前提である。ところが「速報から数秒足らずでは何もできない」などというコメントを取り上げている。

 P波とS波の速度差は秒速2・5ないし6㌔とされる。震源との距離が20㌔以内では即達状態と考えた方がいい。こうした特性をよく理解し、今後の利用に資する報道が必要なのではないか。

 世界の地震活動が活発化しているように感じる。断層型の地震の多発はプレート境界型地震に全く影響を与えないものなのだろうか。

 超高層化し大深度地下の利用が進む東京の地震対策が気に掛かる。オリンピック誘致などと悠長なことを言っている場合ではなさそうだ。
 
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八百長交渉のにおいがする

2008-06-14 04:18:47 | Weblog
 斎木外務省アジア大洋州局長と北朝鮮のソン・イルホ日朝交渉担当大使の二日間にわたる協議が終わった。斎木氏は12日、「内容は帰国して総理らに報告してからでないと…」ともったいぶった言い方をして、拉致問題に関して進展があったことをにおわせた。

 きのう明らかになったのは何か。北が拉致問題は解決済みという常套句をやめ、「再調査する」と言っただけのことである。よど号事件の犯人らの引渡しにも言及したらしいが、これは付け足しだ。

 北朝鮮が「再調査」を口にするのは2002年9月の小泉訪朝以来3度目である。満足な調査が行われた試しはない。今回もおそらく口先だけだろう。

 しかし、政府は「一定の前進があった」として、北朝鮮に対する経済制裁を一部解除するという。拉致被害者の家族会が「おかしい」と声を上げるのは無理もない。なぜこんなことになったのか。

 今回の交渉では何が何でも「進展」の二文字が必要だった。おそらくアメリカがそう要請したのだろう。米朝はこのところ急速に歩み寄っている。アメリカは北朝鮮をテロ支援国家から外す腹を固めていると思われる。もちろんブッシュ大統領のレジェンド作戦の一環だ。

 先日、北が唐突とも思われる「反テロ声明」を発表したのも、こうしたアメリカのサインに応じたものだろう。今回の日朝協議はこの流れの中で理解すべきだ。

 アメリカがテロ支援国家指定を解くときに障害になっているのが拉致問題である。一方的解除では日本の世論を納得させられない。それでなくても危機的状況にある福田政権をさらに窮地に立たせることにもなる。

 そこで編み出されたのが今回の回答である。

 斎木氏は人事課長当時、田中真紀子外相とのバトルで、脚光を浴びた人物である。前職は駐米公使。本来北米畑の人間だが、妻が北米二課長などを務めていた関係で現在のポストにはまったのではないか。北に対する姿勢では「強硬派」の代表格とされ、家族会などの受けもいい。

 
 その斎木氏が回答にもならぬ回答を持ち帰って、政府の公式見解につながった。家族会が失望するわけである。斎木氏は北の回答を必ずしも評価しているわけではなさそうだ。12日の会談後の表情は極めて硬かった。「前進」を引き出した顔ではない。

 13日、帰国後の発表となったのもポイントの一つだ。斎木氏は自ら公表することを避けたのではないか。公表と評価を官邸に委ねたのだ。こうしておけば、世論の批判は自分には向かわない。と考えたとすれば、なかなかの策士だ。

 日本の北朝鮮政策は、結局アメリカ次第ということをはしなくも露呈したのが今回の協議とその後の動きだといえよう。

 「次からの調査は日本も関与する形で」などと官邸筋は語っている。6年前、政府調査団の団長として北に入ったのはほかでもない斎木氏だ。北での調査がどんなものか熟知しているはずだ。

 今回の斎木氏の使命はただ一つ「進展があったと印象付ける」ことだった。そう考えるとすべての説明が上手くつく。北の基本スタンスは何ら変わっておらず、拉致問題解決への「前進」は全くない。今回の協議を客観的に評価すればそうなる。

 
 
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福田さん、お辞めなさい

2008-06-12 04:47:35 | Weblog
 11日の参院本会議で民主党などが提出した福田首相問責決議案が可決された。首相に対する問責決議が可決されたのは史上初めての「怪挙」である。

 ところが、与野党とも予定調和的に動いており緊迫感がまるでない。永田町界隈ではベタ凪と評する向きもあるようだ。でも、事はそう簡単には運ぶまい。本会議場で決議が可決されたときの引きつった表情、マイクを突きつけられて「非常に重く受け止めています」と述べた口ぶりから察すると、福田さんはかなりショックを受けているのではないか。「やってらんねーや」。官邸で当り散らしているかもしれない。

 考えても見よう。福田氏は最悪のタイミングで首相を引き受けてしまった。自民党への支持は下降の一途、景気もピークアウトに達しており後は下がるだけ。テロ新法をはじめ年金やら医療費改革やら懸案は目白押しになっていた。しかも、参院は野党に握られている。よほどの豪胆さとビジョンがなければ乗り切れるものではない。

 官房長官時代の福田氏は記者を小馬鹿にするようなとぼけた味を出していた。おそらく実像に近いだろう。プライドが高く、感情を隠せないタイプに違いない。

 内閣支持率は20%しかない。かなり気に病んでいるはずだ。長官のとき散々尻拭いをさせられた森喜朗が「福田さんは支持率を気にすることはない。私はもっと低かったが、どうってことないと思っていた」などと慰めているが、逆効果だ。

 これ以上惨めな姿をさらしたくない。福田氏は心の奥でそう思っているはずだ。第一、自民党内が「福田はもう駄目だ。でも解散はさせない」で固まってしまっている。福田氏を本気で支えようなどという人物はどれほどいるのか(このところ首相へのヨイショが目立つ朝日新聞は別格だが)。

 麻生太郎をはじめ中川秀直、町村信孝、与謝野馨、谷垣禎一らポスト福田の面々が走り出している。

 自民党を離れた平沼氏が、問責可決後民主党議員と懇談し「福田さんはサミットを花道に退くかもしれない」と語っている。この政局観に賛成したい。「かわいそうなくらい苦労しています」。四月の党首討論のせりふを思い出す。小沢一郎との大連立構想が潰えたとき、「これはだめだ」と腹をくくった可能性もある。

 民主党の腰の決まらなさもひどい。去年の秋から「問責、問責」とうるさかったが、会期末、それもぎりぎりになってやっと出す有様だ。長期の審議拒否は世論に受け入れられない。そんなことばかり考えているから、自民党とまともに戦えないのだ。野党に失うものなどない。そう覚悟を決めて攻め立てなければ、得るものも得られない。政策に整合性を持たせて、長期展望を示すべきだ。

 与野党のその場しのぎの甘言が国民を堕落させている。子どもたちにこらえ性がなくなっているのは、政治の影響もある-それぐらいの自覚をもってほしい。

 福田さんが歴史に名を残すには、洞爺湖サミットでアメリカに譲らず厳しい温暖化対策をまとめ上げ、それを成果に「ではこれまで」と官邸を去ることだ。

 上州の啖呵に期待している。
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