酔眼独語 

時事問題を中心に、政治、経済、文化、スポーツ、環境問題など今日的なテーマについて語る。
 

放射能「拡散予測」

2012-10-31 04:54:46 | Weblog
 原子力規制委員会が24日に公表した原発事故時の放射性物質拡散予測の一部に誤りがあったとかで、メディアが大騒ぎしている。データ入力のミスは当然責められなければならないが、あくまでシミュレーションだ。「拡散地域に入った」「外れた」で一喜一憂すること自体がおかしい。

 
 ≪原子力規制委員会は29日、16原発での過酷事故時の放射性物質の拡散試算のうち、6原発で誤りがあったと発表した。試算のもとになる電力会社からの風速・風向データの入力を誤ったのが原因。北陸、九州両電力から試算結果への疑問が呈され、発覚した。福島第1原発事故の要因として、規制機関の専門知識や経験が電力会社に劣っていた点が指摘されたが、新体制でも懸念が残った格好だ。

 誤りがあったのは日本原子力発電東海第2(茨城県)、東京電力柏崎刈羽(新潟県)、北陸電力志賀(石川県)、日本原子力発電敦賀(福井県)、九州電力玄海(佐賀県)、同川内(鹿児島県)の6原発。試算は自治体の防災計画に役立ててもらう目的で実施した。

 修正の結果、柏崎刈羽原発で、緊急避難が必要とされる距離が最も長い40.2キロと計算された方位が東南東から東に移り、地点も新潟県魚沼市から同県長岡市に変わった。

 規制委は「地元に混乱を与え、申し訳ない」と陳謝した≫=毎日JP=。

 間違った原因は風向データを入力する際、1方位(22・5度)ずれた数字を打ち込んだためとされる。使われたデータは昨年一年間の統計を基にしたもので、「極端な気象」は除外してある。地形も考慮していない。つまり、あくまで架空のデータなのだ。規制庁自身が「架空の前提条件を基にした試算であり、精度や信頼性には限界がある(毎日新聞)」と述べて注意を喚起している。

 ここから読み取るべきは、予測図は当てにならないということである。距離と危険度が必ずしも比例しないことは福島第1の事故を見れば明らかだろう。

 下手な予測は「圏外だから大丈夫」などという幻想を振りまくだけである。こんなことに金を使うなら、立地県の全員にヨウ素剤でも配った方がまだましというものだ。「精度や信頼性に限界がある」予測図を「間違っていた」と大騒ぎするのもおかしな話である。

 
 
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何度目の「最後のご奉公」?

2012-10-26 09:10:24 | Weblog
東京都知事の石原慎太郎が辞職し、国政復帰を目指すと宣言した。御年80歳、チック症状はいよいよ激しくなり、足元はよたよた。口を突いて出る元気さより、衰えが目についた会見だった。

 ≪石原慎太郎東京都知事(80)は25日記者会見し、都知事を辞任して、近く行われるとみられる衆院選に出馬すると表明した。ナショナリストとして知られる同知事は、尖閣諸島の領有権問題を日本の最大の政治課題に押し上げようとしている。

石原氏は緊急記者会見で「きょうをもって都知事を辞職することを決めた」と述べ、同志とともに新党を結成する意向を明らかにした。石原新党が国政政党となれば、国政レベルの新党や会派結成は過去1年間で7つ目となる。その多くは民主、自民の両党からの集団離党で形成された。

 石原氏は、都知事としての任期を2年余り残して辞任を決断した理由について、1つには政府が尖閣諸島のインフラ整備に後ろ向きであることを挙げた。石原氏は今年4月に突然、都が尖閣諸島を民間所有者から買い取ると発表、その発言がきっかけとなり、政府が都と所有者との譲渡交渉に介入し同諸島を買い上げた。その結果、中国で反日デモが相次いで発生し、デモ隊の一部が暴徒化するなど対日感情が悪化している。

 石原氏は会見で、政府が尖閣諸島の魚釣島に船だまりと灯台を建設するよう「監督して」いきたいと述べた。政府は同諸島にいかなる建造物も建設しないとしている。同氏はまた、平和憲法の改正にも言及した。

 新党については、次期総選挙で30~40人を立候補させる考えを示した。保守系の「立ち上がれ日本」の勢力と結集する見通し。

 人気の高い橋下徹大阪市長が率いる、大きな影響力を持つ「日本維新の会」との連携の可能性もある。石原氏も会見で、日本維新の会との連携に前向きな姿勢を示したが、石原氏と橋下氏の間には原子力発電などの問題で大きな意見の隔たりがある≫=ウォールストリートジャーナル日本版=。

 昨年春、引退の意向を覆して都知事選に出ることを決めた時、石原は「最後のご奉公をと思い決断した」と述べている。今回の国政復帰も「最後のご奉公」だそうだ。最後、最後と繰り返すのは政治家の口ぐせなのか。選挙の街宣車ががなり立てているあのセリフ「最後のお願いに上がりました」。最後とは「また」と同じ意味しかないらしい。

 ところで、石原は何にご奉公しようというのか。都知事時代も都民に奉公するなどと言う感覚は皆無だった。国政の場でも同じことだろう。

 あの大震災の際、「日本人のアイデンティティーは我欲。この津波をうまく利用して我欲を1回洗い落とす必要がある。やっぱり天罰だと思う」「アメリカのアイデンティティーは自由。フランスは自由と博愛と平等。日本はそんなものはない。我欲だよ。物欲、金銭欲。我欲に縛られて政治もポピュリズムでやっている。それを(津波で)一気に押し流す必要がある」。我欲に凝り固まった国民への奉公などありえまい。

 石原がご奉公する先は、抽象的な「国」であろう。国家主義者と呼ぶにふさわしい。

 難しい判断を迫られているのが日本維新の会の橋下だ。石原、平沼などという戦前の名残みたいな爺さんたちに絡みつかれれば、立ち腐れする恐れさえある。「政策で一致すれば」の原点を守り抜けるかどうか。

 作家としてはデビュー作以上のものを残せず、国政の場でも運輸相がせいぜい。「一匹狼」が取り柄だった石原が、政界再編の核になれるとは思わない。息子が自民党総裁選で惨敗したことで、焦りもあるのだろうが、またまた老醜をさらした印象は否めない。
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「新聞週間」が泣いている

2012-10-15 15:58:47 | Weblog
 きょうから「新聞週間」が始まった。明日は青森市でメーン行事の新聞大会が開かれる。

 1947年に始まったこのイベントは、今年で65回目。新聞が健全な社会の発展にどれほど役立っているかをアピールするのが目的である。新聞界挙げての行事に合わせるかのように、超特大の虚報が放たれた。読売がスクープし、共同通信が追いかけた「ips細胞臨床応用に成功」がそれである。

 読売は11日付朝刊のトップで報じ、共同は同日の夕刊用に出稿、各地方紙が掲載した。ところがこれが真っ赤なウソだった。読売、共同とも異例の大きさで「移植は虚偽」と伝え、検証記事も併せて掲載した。

 「検証」なるものを読んではっきりしたのは、日本の大メディアが事実確認をいかにおろそかにしているかである。いろいろ誤報の言い訳をしているが、要は森口某の口車に乗ったということでしかない。論文が掲載されるというのなら、発行者にその事実を確認しさえすれば、真偽はすぐわかるはずだ。手術をしたという病院にも全く当たっていない。驚くべき責任さと言わねばならない。

 「科学物」は判断が難しい。「科学記者」などといったところで、しょせんは素人である。間違いを犯さないためには、その道の第一人者などに徹底確認するしかない。それができなかった。インチキ発表をした当の研究者同様、メディアも「先陣争い」に前のめりになっていたのだろう。

 とりわけ深刻なのは共同だ。読売をうのみにした誤報というしかない。業界では「後追いの共同」と呼ばれているらしいが、こんなことでは得意の後追いもままならない。

 読売が検証の続報で日経や毎日も過去に森口某の業績を伝えている―などと書いているのは見苦しい。

 「新聞が 見ぬく 見つける 見きわめる」。今年の新聞週間標語の佳作に選ばれた作品である。明日の大会で特別決議でもして、誤報や虚報の一掃を誓ってほしいものだ。

 
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119番訴訟を考える

2012-10-09 20:22:58 | Weblog
 山中教授ノーベル賞受賞の続報以外、めぼしいものがなかった今日のニュースの中で「119番不出動の審理始まる」のニュースが気に掛かった。内容はは以下の通りだ。


 ≪去年10月、山形市の大学生が119番通報をして体調不良を訴えたのに、消防が救急車を出動させなかったために死亡したとして、遺族が山形市に損害賠償を求めている裁判が始まり、被告の市側は「対応を誤った事実はない」として訴えを退けるよう求め、争う姿勢を示しました。

 去年10月、山形大学2年生だった大久保祐映さん(当時19)は、山形市内の自宅から119番通報をして、「体調が悪い」などと訴え救急車の出動を要請しました。山形市消防本部では、自力で病院に行けると判断して救急車を出動させず、大久保さんは、9日後に自宅で死亡しているのが見つかりました。

 警察の司法解剖の結果、病死の疑いがあるということですが病名は特定されていません。大久保さんが死亡したことを巡って遺族は、「救急車を出動させなかったことが死亡につながった」として山形市に対して1000万円の損害賠償を求める訴えを起こし、9日、山形地方裁判所で裁判が始まりました。

 裁判で市側は「緊急通報受理票という書式に従って、意識があるかなど6つの項目で判断した結果、意識や呼吸もしっかりしていて、通報中、みずから歩くことが可能だとも説明していた」と主張しました。そのうえで「職員が対応を誤った事実はない」として訴えを退けるよう求め、争う姿勢を示しました。

 これに対して大久保さんの母親は、「最後の力を振り絞ってかけた119番通報で救急車に来てもらえず、苦しくつらい思いで亡くなったかと思うと本当に胸が痛みます。救急体制を一刻も早く改善してほしいという思いから山形市を訴えました」と主張しました≫=NHKNEWSWEB=。

 救急隊としてはかなり微妙な判断を迫られるケースだ。NHKニュースが伝えた録音のやり取りを聞いた限りでは、通報者の状態はかなり悪いと推察できる。だが、「タクシーで行けますか」との問いに「行けます」と答えているなど、出動を見送った理由もそれなりにある。

 電話で通報者なり患者の容体を正確に把握するのには高度な技術が必要だろう。消防の指令所にそういう人材がそろっていることが望ましいのは言うまでもない。

 一方で何か釈然としないものが残る。死亡した大学生と家族、友人の関係がどうなっていたのかということだ。

 大学生の実家がどこにあったのかは分からないが、具合が悪くなってまず考えるのは近くの医者だ。親にも当然知らせるだろう。この子が119番通報の前にとった行動を知りたい。ひょっとすると、いきなり動けなくなったのかもしれない。

 病名は特定されていないという。これからの裁判の中で、そうしたもろもろの事実を明らかにしてもらいたい。

 それにしても、「病気」で119番なら、その前に「お母さん、ちょっと変なんだけど」とかの連絡があってしかるべきではないか。このあたりが、いかにも現在の家族関係を象徴しているように思えてならない。医者に連れて行ってくれる友人はいなかったのか。119番通報の後は虫の息で誰とも連絡ができなかったのか。疑問は募るばかりである。

 消防の態勢だけでなく、いろんなことが問われる裁判だ。
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「改造」後にけなすより

2012-10-03 05:26:22 | Weblog
 野田再々改造内閣への批判が渦巻いている。当然である。野田政権が発足して13カ月、早くも3回目の改造である。6月の改造からは3カ月しかたっていない。「首相1年、大臣三月の使い捨て」で仕事などできるわけがない。

 ところが、メディアは今回の改造を「予定の行動」とみなし、事前に「この改造に理はない」と指摘することはなかった。もともと意味のない改造である。どんな顔ぶれになろうが、できることは知れている。

 で、再々改造内閣に対する各紙の世論調査の結果が出た。概ね似たようなものだが、微妙に異なる部分もある。内閣支持率が最も高く出たのが読売というのも面白い。


 ≪野田第3次改造内閣の発足を受けて朝日新聞社は1~2日、全国緊急世論調査(電話)を実施した。野田佳彦首相と自民党の安倍晋三総裁のどちらが首相にふさわしいかを聞いたところ、安倍氏が39%で、野田氏の34%を上回った。衆院比例区の投票先でも、自民が30%に伸び、民主の17%を引き離した。 どちらが首相にふさわしいか、という質問について、有権者の56%を占める無党派層の答えをみると、安倍氏は29%で、野田氏の32%がやや多かった。ただし、自民支持層の82%が安倍氏を、民主支持層の86%が野田氏を選んでおり、自民の支持率が21%と、民主の14%を上回った分、安倍氏が優位に立った形だ。
 改造した野田内閣の支持率は23%(前回25%)でほぼ横ばい。不支持率は56%(同53%)だった。内閣の今後に「期待する」は30%で、「期待しない」62%が倍以上だった。一方、安倍氏の率いる自民党についても「期待する」は39%で、「期待しない」54%の方が多かった。

 
 読売新聞社は、野田第3次改造内閣が発足した1日から2日にかけて緊急全国世論調査(電話方式)を実施した。
 野田内閣の支持率は今年7月以来の30%台に回復し、自民党も「総裁選効果」で政党支持率が2009年の野党転落後で最高を記録した。一方、正式発足したばかりの新党「日本維新の会」は、勢いに陰りが見え始めている。
 内閣支持率は34%で、前回調査(9月15~17日)の27%から7ポイント上昇し、一定の改造効果が表れた。不支持率は56%(前回63%)。
 ただ、新閣僚や民主党役員について個別に聞くと、田中文部科学相の起用を「評価しない」が51%で、「評価する」は35%にとどまった。輿石幹事長の再任を「評価しない」は58%だった。細野政調会長の起用は「評価する」39%と「評価しない」40%が拮抗(きっこう)した。政権浮揚につながるとの期待もあった田中氏の起用に、批判が根強いことが浮き彫りになった。
 内閣支持率は34%で、前回調査(9月15~17日)の27%から7ポイント上昇し、一定の改造効果が表れた。不支持率は56%(前回63%)。


 共同通信社が1、2両日に実施した全国緊急電話世論調査によると、自民党の政党支持率は30・4%で前回の9月調査より11・1ポイント上昇、民主党は12・3%で0・6ポイント下がった。一方、野田第3次改造内閣の支持率は29・2%で、前回調査の26・3%よりやや上がったものの改造効果は一部にとどまったことをうかがわせた。不支持率は55・3%だった。
 野田佳彦首相が改造で田中真紀子文部科学相を起用したことを「評価する」との回答も34・6%にとどまった。
 9月に結党した新党「日本維新の会」の政党支持率は10・7%となり、12・3%の民主党に次ぎ3位だった。次期衆院選比例代表投票先では13・9%で、12・3%の民主党を上回る2位に入った。ただ「日本維新の会」に期待する人の割合は50・6%で、「大阪維新の会」への期待を聞いた前回より9・6ポイント落ち込んだ≫。

 メディアの関心は人気者の動向と「解散・総選挙はいつか」だけである。田中真紀子を起用したことの評価などを尋ねて、何の意味があるのか。以前にも書いたことがあるが、頻繁な世論調査はメディアの自信喪失の表れだろう。「世論に寄り添って報道しているぶんには、見放されることはない」というわけだ。

 メディアに期待されるのは洞察力や先見性である。政局を占うご託宣を「洞察力」にすり替えるような欺瞞はもうたくさんだ。

 

 
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