酔眼独語 

時事問題を中心に、政治、経済、文化、スポーツ、環境問題など今日的なテーマについて語る。
 

なんで高橋洋一が…

2009-03-30 21:06:51 | Weblog
 耳を疑うニュースだ。元財務官僚、というより竹中平蔵のブレーンとして郵政民営化などを進めた東洋大教授の高橋洋一が、盗みの疑いで調べられていたいうのだ。


 《脱衣所ロッカーから他人の財布や時計を盗んだとして、警視庁練馬署は30日、元財務官僚で東洋大教授の高橋洋一容疑者(53)=東京都板橋区=を窃盗容疑で書類送検した。

 高橋容疑者は1980年に旧大蔵省入り。小泉政権時代に竹中平蔵総務相補佐官として、郵政民営化などに取り組んだ。昨年3月には財務省批判の著書を出版し、ベストセラーになった。

 送検容疑は、24日午後8時ごろ、練馬区の遊園地「としまえん」内にある温泉施設の「庭の湯」脱衣所で、60代の男性会社員が使用していたロッカーから現金約5万円入りの財布や、有名ブランド・ブルガリの高級腕時計(数十万円相当)を盗んだ疑い。「いい時計だったのでどんな人が持っているのか興味があり盗んだ。大変申し訳ないことをした」などと容疑を認めているという。逃走の恐れがないことなどから逮捕しなかったという》=毎日jp=

 財務省退職後は「埋蔵金」の活用を訴える一方で、官僚支配からの脱却も唱えていた。財務省をはじめとする霞ヶ関には目障りな存在だったと思われる。このニュースを聞いた第一印象は「警察に引っ掛けられたか」というものだった。売れっ子の高橋が、現金5万円と高級時計、計数十万円相当に手を出すとは信じられないからだ。

 メディアは高橋が容疑を認めていると伝える。だが、このコメントは警察から出たものだ。「いい時計だったのでどんな人が持っているか興味があって盗んだ」。意味不明の動機である。

 官僚に楯突くと痛い目に遭いますよ。麻生政権になって息を吹き返してきた官僚機構のささやきが聞こえる。誰しも弱点や悪癖はある。警察や検察、税務署にしつこく狙われて、尻尾を捕まれない聖人君子のほうが少ないのではないか。

 狙われた経済学者といえば、東京都迷惑条例違反で捕まった植草一秀が思い出される。植草の刑はすでに確定しているが、本人は冤罪だと訴えている。今回の事件では高橋が逮捕されなかったのが不満と見えて、自身のブログ《http://uekusak.cocolog-nifty.com/blog/》にあれこれ書いている。

 逮捕されなくても報道だけで葬り去ることも可能だ。植草クンは自分を悲劇の主人公にしたいようだが、少しは幅を広げたらどうか。取り扱いの不公平を言い募るより、高橋との共闘をお勧めする。昨日の敵は今日の友というではないか。
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贈与税「割り引き」だって

2009-03-29 06:44:19 | Weblog
 高速道路のETC割引がスタートした。路線によって違いはあるが、行楽地はそれなりの人出でにぎわっているようだ。

 《「1000円乗り放題」をうたった高速道路料金の大幅値下げサービスが始まった28日午前、県内の高速道路交通量は通常に比べ3割以上の増加となり、値引き効果が早くも表れた。好天にも恵まれたパーキングエリア(PA)には遠出する家族連れらの姿が見られた》=新潟日報ON-LINE=

 ガソリンをばらまいて遠出することがいいのかどうか、大いに疑問だが、政府、自民党は「契機刺激効果あり」と自画自賛している。

 定額交付金、ETC割り引きに次ぐ「目玉」として麻生首相は、贈与税の大幅減免を打ち出した。


 《麻生太郎首相は28日午後、追加経済対策の一環として、高齢者が持つ金融資産を消費拡大に振り向けるため、住宅などの購入資金を生前に援助する際の贈与税を期限付きで大幅に減免する考えを表明した。

 高知市内で記者団の質問に「高齢者が息子や孫に(お金を)渡して家や車を買ってくれたら贈与税を安くする、ゼロにすることは、年数を区切って検討する値打ちがある」と答えた》=共同=

 東大教授の伊藤元重らが以前から述べている政策で、高齢者の預貯金を吐き出させるのが狙いだ。日本の個人金融資産総額は1400兆円前後とされるが、うち75%は60歳以上が保有しているという。これを「活用しない手はない」というのが伊藤らの主張だ。

 経済理論として分からなくはない。だが、大幅に減免された生前贈与の恩恵を受けられるのは、それなりに資産のある「勝ち組」の子弟だ。こうした政策が格差をさらに拡大させる結果となるのは明白だろう。

 伊藤は29日付け読売の「地球を読む」の中で「高齢者らは合理的に考えうるよりも100兆円から150兆円余分にため込んでいることになる。老後の資金をまかなうのに必要な資金をはるかに超えている」と述べている。将来に「過大な不安を抱えている」のがその理由だという。

 中国の貯蓄率は40%強で、世界一だ。中国国民が政府を信用していない証拠である。日本の高齢者が「過度」ともみえる資産を保有しているのも同じ理屈だ。場当たり的で無責任な政府の言うことなど信用できない、ということだ。

 贈与税の減免を言う前に、信用されない政治のありようをとくと反省してほしい。いまは金持ち優遇策より生活困窮者のセーフティーネット拡充に力を注ぐべきだ。「路頭に迷う心配がない」「病気になっても大丈夫」と感じるだけで、どれほど安心感が広がることか。

 
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今度は知事が〝投げ出し〟

2009-03-27 04:15:36 | Weblog
 前代未聞の辞意表明だ。静岡県の石川嘉延知事が「木を伐ってくれるなら辞めます」と言ったのである。


 《静岡空港の滑走路近くに航空法の制限を超える立ち木が残って開港が遅れた問題をめぐり、静岡県の石川嘉延知事は25日、臨時の記者会見を開き、任期の途中で辞職する意向を表明した。地権者が立ち木伐採の条件としていた辞職要求を受け入れることによって、滑走路を短縮した暫定運用から「完全開港を実現するのが目的。辞職後の知事選への立候補は「あり得ない」と否定した》=26日付・朝日=


 石川は東大出の自治省キャリアでタカ派の論客として知られる。「富国有徳」などと唱え、女系天皇容認論には強い嫌悪感を示していた人物だ。それが、こんな取引めいたことで知事の座を投げ捨てるという。いくら空港整備が重要だとはいえ、「辞めろ」という要求に屈した形での辞任は論外である。こんなことが前例になれば、公共事業の用地買収などできなくなる。一体何を考えているのか。

 石川の辞意は「引責」とは全く異なる。「完全空港」の人柱になったつもりかもしれないが、職責に対する自覚はどこへいったのか。どんな自治体であれ、施策の遂行には批判や反対は付きものだ。これをどう説得し、まとめていくかが首長の手腕であり責務だ。ところが、石川は違った。

 静岡県は当初、用地買収に当たって、地滑り防止工事のためなどと嘘の説明をしていたという。これが地権者の態度を硬化させたようだ。だからといって、立ち木を人質にした辞職要求に屈していいのか。

 安倍、福田と2代続いた政権投げ出しの影響がここにも及んでいる。トップリーダーに全身全霊を尽くして職務を全うする気概がなくてどうする。「困ったらやめていい」は小学生レベルの話である。

辞めるべき人は辞めないで、辞めてはいけない人が職を投げ出す。「己を知る」人物が払底していることを憂えるのみである。
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小沢氏辞任せず

2009-03-25 04:43:39 | Weblog
 「さすがイチロー」とみんなが快哉を叫んだ日、もう一人の一郎は孤独な戦いに挑むことを表明した。民主党代表の小沢一郎のことだ。公設第一秘書が24日、政治資金規正法違反の罪で起訴された。逮捕時、「進退は検察の処分が出てから」と述べていた小沢の動向が注目されたが、決断は「続投」だった。


 《西松建設の巨額献金事件で東京地検特捜部は24日、民主党の小沢一郎代表の公設第1秘書、大久保隆規容疑者(47)を政治資金規正法違反の罪で起訴した。これを受け小沢氏は記者会見で「国民の側に立った政治を実現するため今後も頑張る。政権交代が最後の仕事だ」と続投を表明した》=共同=


 会見での小沢の表情は、いつにも増して下瞼がはれており体調の悪さをうかがわせた。「同士や国民のみなさまから激励もあり」続投を決めてのだという。かなり勝手な理屈だ。起訴事実が政資法違反という形式的なものだったことで強気に出たようだが、逮捕時の発言とは微妙にずれている。

 小沢は「近いうちに必ず嫌疑は晴れる」「起訴はない」と語っていた。罪名の如何を問わずという趣旨であろう。嫌疑は晴れなかった。なのに、なぜ続投なのか。この筋道が分からない。

 小沢や民主党が「国策捜査」と批判するのは自由だし、大きく間違ってはいないだろう。東京地検の次席が会見で起訴理由を説明するという異例の挙にでたのはその傍証といえる。「悪質性」を印象付け、世論の誘導を図ろうというのだ。


 《「国民を欺く、看過し得ない悪質な事案だ」。小沢一郎民主党代表の公設秘書を起訴した東京地検の谷川恒太次席検事は24日夕、佐久間達哉特捜部長とそろって発表に臨み、異例の説明を行った。
 谷川次席は「政治資金規正法は議会制民主主義の根幹を成す法律。政治資金の実態を偽ることは、国民を欺いて政治判断をゆがめることにほかならない」と強調。「国会議員の政治団体が特定の業者から長年にわたり、多額の金銭提供を受けたことを国民の目から覆い隠したもので、法の趣旨に照らしても看過し得ない」とした》=時事com=


 この会見内容は冒頭陳述のあらすじとみるべきだ。つまり検察のシナリオである。この段階でこんなことを話すこと自体、きわめて政治的であり、意図を感じる。政治家本人には手を伸ばせないが、政治的には葬り去ることは可能だ。今回の起訴の狙いはそこら辺りにありそうだ。

 で、小沢の判断である。続投か辞任かは衆院選への影響度を見極めて、という判断基準は間違ってはいない。だとしたら「辞任」となるべきだ。「国策捜査とは断固として戦う。だが、私事で党に迷惑は掛けられない」こう表明すべきだったのだ。

 民主党はしばらく動揺を続けるだろう。猫の首に鈴を付けられない連中ばかりでは頼りない限りだ。こんなことでは次期政権を託す気持ちも失せるというものだ。
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また変な政府筋が…

2009-03-24 05:35:13 | Weblog
 「(西松の捜査は)自民党議員には及ばないだろう」と述べて物議を醸したのは漆間官房副長官だったが、今度は「政府筋」なる人物がMDの有用性について疑問を投げかけた。なかなか含蓄のある発言だ。


 《政府筋は23日、北朝鮮が弾道ミサイルを発射した場合の迎撃について「ピストルの弾をピストルで撃ち落とせるはずがない」と述べ、地対空誘導弾パトリオット(PAC3)などミサイル防衛(MD)による迎撃は不可能との認識を示した。

 政府がミサイル迎撃の準備を検討している中で、政府筋がMDの実効性を否定したことは波紋を広げる可能性もある。

 さらに政府筋は、これまでの海上自衛隊による海上配備型迎撃ミサイル(SM3)の発射試験にも触れ「成功したのは『今から撃ちますよ』と言ってくれるからだ」と疑問を呈した》=23日・共同=


 北朝鮮が「衛星」を打ち上げるのは間違いない。これだけ宣伝しておいて、実行しなければ面子丸つぶれだ。日本はこれを迎撃すべきか。答えはノーだ。当たっても外れても困るからだ。

 迎撃するケースについて浜田防衛相は「国内に落下する恐れがあるとき」と述べている。北がまともに日本を狙って撃ってくるとは、今の時点では考えられない。ということは衛星打ち上げ失敗の場合を想定しているのだろう。

 推進力を失って落下してくるだけのロケットを迎撃するのは至難の業だ。MD迎撃は敵ミサイルの速度などをはじき出して迎え撃つものだからだ。野球のバッターがナックルを打つようなものだろう。日本のはるか上空を飛行するロケットを撃ったとなると、国際法上の疑義が生じる。

 「政府筋」発言はそのあたりの危惧を正直に吐露したものといえよう。迎撃ムードを冷やそうという狙いがあるのかもしれない。これまでの政府、自民党の態度は「やれるものならやってみろ」といわんばかりのけんか腰である。こんな状況で北が撃ってきたら、迎撃せざるを得なくなる。それはあまりにリスクが大きい。「政府筋」氏はそう考えたに違いない。

 ところで、この筋氏は? これも漆間だろう。前回の「政府高官」から表現を変えて出所を隠したと想像できる。政府筋とは官僚を意味する。自民党議員なら「自民党筋ないし自民党有力者」などというはずだ。

 さてこの筋氏、今度は自民党サイドから突き上げを食らいそうだ。目立ちたがるかって墓穴を掘るの図である。


 
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高速値下げ狂想曲

2009-03-22 15:34:03 | Weblog
 政府、自民党が民主党の政策をパクッた「高速道路の値下げ」が本四連絡橋と東京湾アクアラインで始まった。折から3連休、各地とも人出(車出?)は順調だったようだ。

 《3連休初日の20日、高速道路料金の値下げが東京湾アクアラインと本州四国連絡高速道路で一足早く始まった。値下げ料金が適用される土日祝日は、上限 1000円で通行できるとあって、アクアラインの通行台数は先週末に比べ35%増え、海ほたるパーキングエリア(千葉県木更津市)は多くの家族連れや観光客で混雑した。本四連絡道を使った車も昨年の約2倍とゴールデンウイーク並みだった》=日経NET=

 定額給付金といい、高速値下げといい、金で頬をなでるような政策である。足元を見られた思いはあるが、懐が温かくなるのに文句は言えない。大方の反応はこんなところだろう。「海ほたる」のパーキングエリアで「いっぱい金を落としました」と買い物の袋を見せているおばさんがテレビに映っていた。麻生が泣いて喜びそうな映像である。

 「な、金をつかませてやれば喜ぶんだ。定額給付金が行き渡ればオレの支持率だって上がるかもしらんぜ」。太郎ちゃんはそう思っているだろう。

 それにしても、ETC限定の高速割引は不公平な政策だ。カー用品店ではETC端末在庫が底を突き、申し込んでも取り付けは1週間以上待ってくださいという状況だという。高速の割引が全国で始まるのはこの週末からだが、多くの人が待ちぼうけを食うのは確実な情勢だ。

 《高速道路の新料金割引を受けるために必要なETC(ノンストップ自動料金収受システム)機器が、各地で売り切れ状態になっている。この1週間で、予想を大幅に超える約32万台が売れ、入荷待ちの客が約400人という店も。新割引が本格実施される28日に間に合いそうにない客からは「不公平」との声が上がり、国土交通省も「混乱を招き申し訳ない」と話している》=読売ONLINE=

 4月以降もETC端末助成制度を継続するらしいが、確かなことは不明だ。メーカー各社の増産計画や速度を把握していないからだろう。

 ガソリンをばらまいて右往左往するのは馬鹿馬鹿しい。ETCなんぞに行動を捕捉されるのもしゃくにさわる。などと強がって、女房や子どもに白い目で見られている。まあ、これもひねモノの宿命だ。
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朝日の変調

2009-03-16 05:27:11 | Weblog
 朝日新聞は海上自衛隊ソマリア派遣を社説で取り上げることをネグってしまった。この問題については以前「せめて法律を整備してから派遣すべきだ」と書いていた。にもかかわらず、「緊急避難」(浜田防衛相)による派遣に沈黙してしまった。社論が統一できなかったということなのだろう。これでは、自民党を笑えない。


 ということで朝日は、麻生自民党批判から小沢潰しに舵をきったようだ。国策捜査の尻をたたいて、小沢を抹殺しようという構えである。角栄に連なる「小沢的な体質」について、朝日は以前から嫌悪感を示している。「いい民主党」を育てたいという気分が記事の行間ににじんでいる。

 しかし、真偽不明の「談合情報」めいたものを書き飛ばすのはいかがなものか。これらが立件されるかといえば、はなはだ心もとない。あっちでもこっちでも悪いことをしている。だから小沢は悪い--といったムードの醸成を図っているとしか思えない。


 《「西松建設」から民主党・小沢代表の資金管理団体「陸山会」への違法献金事件に絡んで、東北地方のゼネコン側の談合組織が受注調整する際、秋田県発注の工事でも、小沢代表側の意向に配慮していた疑いがあることが関係者の話で分かった。

 ゼネコン側は、小沢事務所関係者が秋田県内の選挙に協力した結果、同県の工事受注での影響力が強まったと認識していたという。

 東京地検特捜部もゼネコン関係者らの調べからこうした経緯を把握。西松建設が受注した工事資料などの提供を同県から任意で受けており、東北地方の大型公共工事の受注と小沢代表側への政治献金の関係を解明する捜査の一環として調べている模様だ》=朝日com=


 国策捜査があるかどうかは、秘中の秘だ。「国」とは何を指すかも不明確だ。だが、検察と時の政権がつながっているのも間違いない。朝日が出している「90年代の証言」シリーズの「野中広務 権力の興亡」に興味深い一節がある。日歯連献金事件に絡んでの述懐だ。

 《--こういう国会議員が絡む不祥事が表面化し、検察が捜査するとき、政府の幹部らは知っているのですか。

 野中 それはあるでしょう。そうでなかったら、できないでしょうね。そして、捜査の狙いは僕にあったと思いますよ》=「野中広務 権力の興亡」 293㌻=

 権力闘争と検察の捜査は表裏一体だと言いたいのだ。ここにメディアが絡んで、三国志状態になる。さて豪腕小沢の運命やいかに。

 

 
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ああ堂々の出陣か

2009-03-14 05:58:09 | Weblog
 ソマリア沖での海賊行為阻止行動を担う海上自衛隊の護衛艦2隻がまもなく呉基地を出港する。出動の根拠は自衛隊法の「海上警備行動」であり、隊員の活動は「警察官職務執行法」に縛られる。

 こじつけの拡大解釈を重ねた挙句の「無法派遣」である。この国の政財界は、そろって「派遣」が大好きらしい。

 広大な海域を2隻でカバーするのは至難の業だ。しかも、銃や砲の使用は禁じられたも同然である。護衛艦が海賊に襲撃され、逃げ回るなどという漫画のような事態もあり得る。他国の民間船が襲われているのを現認しても、新法ができるまでは傍観するしかない。これではでくの坊だ。

 効果的な海賊対策は各国が連携して行動することだ。5隻ぐらいのチームが必要だろう。パトロール、エスコートなど役割分担して事に当たるべきだ。日本は海上保安庁のヘリ搭載型巡視船を派遣して、パトロールと連絡役を担うのがいいだろう。海自艦に比べれば装甲と火器の能力は劣るが、海賊相手に不足はあるまい。乗組員の能力と海上警備行動の錬度では、海保が上回っているのではないか。

 韓国は駆逐艦を単騎で派遣した。これも出したというだけだ。中国は補給艦1隻を含む3隻を出動させている。「アジアチーム」が組めるではないか。中韓両国とは、海賊対策での連携は確認済みだ。こうなれば、余計に海保がいい。海自では集団的自衛権の問題が付きまとう。

 まあしかし、いまさらそんな判断はできないだろう。無法の海自艦が無法の海に放り出される。もって瞑すべし。

 自衛官の中には、第一次イラク派遣部隊の佐藤正久のように、とんでもない使命感を持った人物がいる。海自艦の艦長はどうなのか。「駆けつけ警護を強行して歴史的な武力行使第一陣を担いたい」などと考えているかもしれない。

 「とりあえず派遣」のもとでは何でもありだ。この国の政治状況をそっくり映していておかしい。

 そして、われらが朝日新聞は「海自艦きょう出港」を社説にも書けない。議論がまとまらなかったのか、書く気がないのか。出港を見届けてから書くつもりなのか。朝日の社説は事前に書くケースが多い。それを考えると、13日段階では「書けなかった」ということだろう。容認するにせよ、批判するにせよ、この事態に沈黙する朝日の見識を疑う。これも、八百屋で魚を求めるようなものか。

 かくて、日本はさらに漂流し続ける。
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金賢姫面会の???

2009-03-12 05:16:29 | Weblog
 北朝鮮に拉致された田口八重子さんの家族が、田口さんから日本語などを教わった金賢姫と釜山で面会した。金とはあの大韓航空爆破事件の死刑囚(特赦で釈放)である。田口さんの子ども(拉致された当時1歳)が母の記憶につながる人に会いたがっていたことが面会を実現させた最大のモメンタムだという。

 面会そのものはいいムードで終始し、面会前後の会見などでは感動のシーンもあった。

 《【釜山11日共同】「こんなに大きくなったのね。抱いてもいいですか」「初めまして、耕一郎です」。手をつなぎ日本語で言葉を掛け合う。拉致被害者田口八重子さんの家族と金賢姫元北朝鮮工作員(47)の面会が11日、韓国・釜山の国際会議場で実現。金元工作員は田口さんの長男飯塚耕一郎さん(32)と抱き合って涙ぐみ、ハンカチで顔を覆った》


 金は拉致に関する北朝鮮の説明のいくつかを否定、田口さんや横田めぐみさんは「生きていると思う」と語った。これもかなり古い記憶に基づく発言なので、現在の状況とは違っているかもしれない。ただ、今の金が嘘をつく必要もなさそうなので、北にいた時点での話としてはそのまま受け止めてもいいのはないか。


 疑問なのは、なぜ今金が出てきたのかということだ。しかも、大韓機事件の被害者の前ではなく、日本の拉致被害者の前に、である。イ・ミョンバク大統領の意向を反映していると日本のメディアは伝えるが、その意向の裏側にあるのもが見えてこない。

 米韓合同軍事演習が行われている最中の面会だ。ミサイル発射も近いとされる。金を引っ張り出せば、北がさらにカリカリするのは間違いない。とすれば、これは挑発の一種なのか。

 面会の印象を聞かれた際のはしゃぎぶりからすると、政権浮揚に腐心する麻生が同病相哀れむイに頼み込んだのかもしれない。

 《麻生太郎首相は11日夜、北朝鮮による日本人拉致問題について首相官邸で記者団に「時間はない。年を取ってきた方もいるから問題の解決にすべてをかけてやる」と述べた。金賢姫(キム・ヒョンヒ)元死刑囚と拉致被害者家族との面会については「長年の思いを一つ達成されたということだと思う」と強調した》=日経NET=

 金は無職無収入と伝えられるが、身なりはきちんとしており、容貌の衰えもない。韓国政府が手厚く保護していると見ていいだろう。「抱いてもいいですか」などという言葉をさらっと吐ける演技力は、さすが元エリート工作員だ。この種の人物に多くを期待することはできない。

 日本の拉致被害者らは今回の面会を「一歩前進」と評価している。まったく進展がない中では、どんなアクションでも手掛かりには違いない。

 
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北は馬鹿なら日本はアホだ

2009-03-11 05:02:20 | Weblog
 北朝鮮の長距離ミサイル発射をめぐって、日朝の前哨戦が活発化してきた。売り言葉に買い言葉みたいなやり取りには笑ってしまうが、そもそもこの騒動はどこが仕掛けたものなのか。
 


 《【ワシントン8日聯合ニュース】米海軍は北朝鮮のミサイル攻撃に備えるため、弾道ミサイル防衛(BMD)能力を備えたイージス艦18隻のうち16隻を太平洋地域に集中的に配置していると、米軍事専門誌ディフェンス・ニュース(電子版)が8日に伝えた。
 それによると、海軍はミサイル攻撃に備え、3隻の巡洋艦と15隻の駆逐艦を、敵の弾道ミサイルを追跡・迎撃できるBMD能力を持たせるよう性能改善し運用中だ。このうち16隻が太平洋地域に、2隻が大西洋地域に配置されているという。こうした配置は、この計画が当初、北朝鮮の弾道ミサイル攻撃に備え推進されたためだとしている》=1月9日・読売online=


 今年に入って最初に現れた北ミサイル関連の記事である。まず米国が「迎撃の準備は整いましたよ」とサインを送ったと見ることができる。実際に北側の動きが始まるのは、それから数週間後だ。



 《韓米の情報当局は、北朝鮮が平安北道鉄山郡東倉里のミサイル基地で長距離弾道ミサイル「テポドン2号」(射程距離4300~6000キロメートル)を発射しようとする動きを把握し、綿密に監視を続けている。
 政府消息筋は3日、政府当局が先ごろ衛星を通じ平安北道のある軍需工場で円筒型の物体とみられる部品を載せた列車が東倉里に向かっているのをとらえたとし、この物体が長いことからミサイルと推定されると明らかにした。また、この物体がミサイルだとすればテポドン2号の可能性が高く、発射台にミサイルを装着する期間などを考慮すると1~2か月以内に発射準備を終える可能性があると述べた》=2月9日・韓国聯合ニュース=

 北が自らの口でミサイルに言及するのはさらに後だ。あれだけ騒いでくれているんだから、何かコメントしないと悪いかな、ってんでこう言う。


 《【ソウル=水沼啓子】北朝鮮の朝鮮中央通信は16日、北朝鮮が長距離弾道ミサイルの発射準備をしているという米韓などの指摘に対して「でたらめ」と否定し、「われわれに対する冒涜(ぼうとく)であり挑発」と反論した。その一方で「宇宙開発はわれわれの自主的権利であり、現実的発展の要求。わが国で何が打ち上がるかは見ていれば分かるだろう」と指摘、「人工衛星」打ち上げの可能性を示唆した。

 北朝鮮は1998年8月に弾道ミサイル「テポドン1号」を発射した際も、国際社会からの非難をかわすため、人工衛星「光明星1号」の打ち上げだと主張しており、今回も同様の主張をするものとみられる。

 北朝鮮メディアが、今回の長距離弾道ミサイル発射準備説について言及するのは初めて》=2月16日・産経=


 それから一ヵ月後、自体はだいぶ煮詰まってきたようだ。国際社会の「期待」がここまで高まれば、北も撃ちたくなるだろう。日米は迎撃態勢を整えて待ち構えてくれているとも言う。ということで、次の警告となる。


 《【北京・西岡省二】北朝鮮の朝鮮人民軍総参謀部は9日、報道官声明を発表し、同国が長距離弾道ミサイル(北朝鮮は「人工衛星」と主張)を発射して日米韓が迎撃すれば即時に反撃し、3カ国の本拠地に対する「正義の報復打撃戦を開始する」と警告した。朝鮮中央通信が伝えた。日米などの迎撃論への北朝鮮の反応は初めて》=3月9日・毎日jp=



 麻生首相は「日本に直接被害が及ぶ可能性があるということならば、自衛隊法上の対応はできる」と述べ、MDシステムでの迎撃を示唆し、浜田防衛相は「「ロケットであっても制御を失って、わが国に落下する可能性があるとすれば、それに対処するのは当然だ」と強調する。


 「制御を失って日本に落下する」のを見極めてから迎撃できるのか。日米が迎撃を想定しているのは、日本海上空だろう。そこではまだロケットは上昇中であり、この段階で衛星かミサイルかを識別するのは技術的に無理がある。だから、浜田は「衛星でも撃ち落す」と言っているのだ。


 麻生といい浜田といい、言わなくてもいいことをしゃべって得意になっている。こんな連中が「軍最高幹部」とは情けない。

 日本に落ちてくるようなら、北のミサイルであれアメリカの衛星であれ撃ち落さなければならない。当たり前の話だ。ただ、ブースト段階での迎撃となると話は厄介だ。自衛隊の能力では察知は難しいし、国際法上の問題も残る。こういう役割は米軍に任せればいい。


 要は万一に備えるということだ。飛来したら仕留めるだけである。しかし、これを公言したとなると、状況は変わる。①迎撃に失敗するリスク②迎撃できたとしても破片で被害が生じる可能性がある③ブースト段階で迎撃して国際問題になる--。日本が負うリスクはきわめて大きいと考えたほうがいい。麻生や浜田の発言は元気がいいだけで、戦略性がない。


 金正日のおもちゃごっこにまともに付き合うのは、愚の骨頂である。

 
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