酔眼独語 

時事問題を中心に、政治、経済、文化、スポーツ、環境問題など今日的なテーマについて語る。
 

米国のアキレス腱を突いたスノーデン

2013-06-25 08:46:01 | 国際政治
 CIAとNSAの盗聴記録などを暴露したスノーデン氏の身柄を確保しようと、米政府が慌てふためいている。スパイ罪などいくつかの容疑を上げて訴追、立ち回り先の各国政府に「引き渡さないと貴国のためにならない」と圧力をかけまくっている。

 ≪米政府は24日、極秘文書を暴露したとして訴追した米国家安全保障局(NSA)の元契約職員エドワード・スノーデン容疑者が滞在先の香港を離れることを認めた件で中国を非難するとともに、出国先のロシアと最終的な亡命先とみられるエクアドルにも何らかの「余波」がある可能性を警告した。スノーデン容疑者の拘束を目指し国際関係上の圧力を高めた措置だ。


 ホワイトハウスのカーニー報道官は、23日のスノーデン容疑者の香港からモスクワへの出国について「香港の移民局担当官の単なる事務手続き上の決定との説明には納得できない」と断言。さらに「これは正当な逮捕状が出ている逃亡者を意図的に拘束しないという中国政府の選択であり、この決定が米中関係にマイナスの影響があることは疑いのないところだ」と批判した。


 この発言は、これまでで最も強硬な米政府の発言で、スノーデン容疑者の問題により厳しい姿勢を取ることを示すとともに、米国とは距離を置く各国に対し米政府がどれだけ影響力を持っているかを示す外交上の試練となる≫=ウオールストリートジャーナル日本語電子版=。

 国家の論理からいえば、スノーデン訴追はありうるだろう。だが、米国が「人権と民主主義の擁護者」を標榜する以上、スノーデン氏の指摘に真正面から答えなくてはならない。何の証拠も示さずに「数10件のテロを未然に防いだ」などと言ったところで、国際社会の理解は得られまい。

 米国の基準に照らせば、スノーデン氏の行為は許されまい。だが、グローバルスタンダードかどうか。

 スノーデン氏は情報を暴露した理由について「秘密裏に作り上げた監視機構を使ってプライバシーや基本的人権を侵害していることに、良心が許さなかった」(6月11日付読売新聞)と語っている。他の意図があったかどうかは別にして、これは極めてまっとうな指摘だ。国家によるネット情報収集の一端を暴露したという点でも意義深い。米国だけでなく、多くの大国が似たようなことを行っている可能性は高い。

 メディアにとっても重大な関心事だと思うが、新聞各紙の伝えっぷりは「米中」「米ロ」「米vs反米南米政権」の〝攻防戦〟が中心である。表向きの対立劇ばかり追っていないで、スノーデン情報の真相とその意味するところを伝えるべきではないか。

 
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ブッシュ化するオバマ

2013-06-18 15:51:40 | 国際政治
 オバマ米大統領の顔がめっきり老けたように見える。経済の立て直しは先が見えず、外交でも特典が稼げない。このままでは凡庸な大統領として埋もれてしまう―そんな苛立ちが表情に現れているのではないか。

 「悪人顔」になるにつれ、やることもおかしくなってきた。その最たるものが「シリアへの介入決定」であり、元情報機関員の告発を「国益を害する」と断罪したことだ。

 ≪米ホワイトハウスのローズ大統領副補佐官は13日、シリアのアサド政権が反体制派に化学兵器を使用したと米情報機関が結論付けたと明言した。同政権による昨年からの化学兵器攻撃で100~150人が死亡したとの見方も示した。副補佐官は、オバマ大統領が反体制派への「軍事的支援」を決断したと述べた。

 米政府はこれまで、アサド政権が反体制派に神経ガスのサリンを使用した可能性が高いとの分析を示していたが、なお確認が必要との立場を取っていた≫=msn産経ニュース=。

 政権側が使用したことは「米情報機関が結論付けた」という。あの「イラクに大量破壊兵器が存在する」の虚報と同じ構図のような気がする。今月初旬、産経はこんな記事も載せている

 「ベルリン=宮下日出男】スイス・ジュネーブからの報道によると、国連人権理事会の国際調査委員会は4日、シリアの内戦で化学兵器が使用されたとの疑惑について「信じるに足る根拠がある」とする報告書を公表した。ただ、アサド政権側と反体制側のどちらが使ったかは特定できず、国連調査団による現地調査の必要性を強調した。

 シリアの人権侵害を調べる同委が報告書で化学兵器使用の可能性を指摘するのは初めて。報告書は国外の難民や国内からの証言に基づき、3月と4月に北部アレッポや首都ダマスカスなどで起きた戦闘4件で化学兵器が使われた疑いを指摘。その種類や使用者については「入手できた証拠では特定できない」とした。

 化学兵器をめぐっては、反体制派や欧米が政権側の使用を主張する一方、政権側は反体制派が使っていると反論。国連は調査団派遣を決めたが、調査範囲などの調整がつかず、政権側が受け入れを拒んでいる。

 同委の一部メンバーは以前にも反体制派の使用の可能性に言及しており、報告書も政権が保有する化学兵器について「反体制派が入手し使うこともあり得る」との見解を示している」。

 化学兵器が使われた痕跡はあるが使ったのは誰かは分からない―これが実態だろう。一時反体制派は軍の基地などを占拠していた。政府軍が持っていた兵器群を入手していてもおかしくない。というか、軍事施設を攻撃するのは武器や兵器を手に入れるためでもある。オバマもブッシュと同じようにCIAの報告を信じているようだが、結果はどうだろう。

 そのCIA元職員のスノーデン氏による米情報機関による「ハッキング」「個人情報盗み見」はシリア問題よりさらに深刻だ。

 世界中の誰もが米情報機関の監視網に絡め取られる可能性があることが明らかになったからだ。オバマや議会関係者は「情報収集は合法的」と述べ事態が拡大しないように懸命だが、そうはいくまい。つい先日には英国政府がG20の際、偽のインターネットカフェなどを設営して各国代表団を監視していたことも明るみに出た。折りから開かれているG8の「影の本題」はこの件に違いない。

 国際問題ジャーナリストの田中宇氏によると、アップルのiフォンで撮影した画像データはアップルのサーバーに蓄積されNSAが見放題だという。先日訪米した習近平の妻がiフォンを使っており、一部関係者の話題になったらしい。「習の私生活も覗けるのでは…」。だが、夫人のiフォンは中国の専門家が手を加えた特別仕様とみられている。

 話がそれたが、大手通信会社やインターネット関連企業がCIAやNSAの言いなりとは…。この事件は「ウィキリークス」よりも根が深い。 
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「飛ぶボール」

2013-06-14 08:49:34 | 外交
 日本スポーツ界の不透明さをあらためて示した「事件」といえよう。プロ野球で使っている公認球が、今季から「飛ぶボール」に変わっていたというのだ。


 ≪日本野球機構(NPB)は11日、プロ野球で使用されている統一球が、規則に適合させるため、昨季より反発力の大きいボールになっていることを明らかにした。

 仙台市で行われた労組・日本プロ野球選手会との事務折衝で経緯を説明した。

 2011年から導入された統一球は、規則で定められている平均反発係数の下限に合わせるよう製造されたはずだったが、NPBが昨季前半に実施した検査では、下限を下回る反発係数を示したボールが多かった。そのため、NPBはボールを製造するミズノ社に下限に合わせるように微調整を要請した。この結果、今月のNPBの検査では、反発係数の適合域内で下限を上回るボールが多くなった。

 セ、パ両リーグの本塁打数は、昨年6月10日の時点では、325試合で296本(1試合平均約0・91本)だったが、今年は10日現在、341試合で512本(同1・50本)と急増している。統一球導入前の10年は、1試合平均約1・86本だった≫=6月12日・読売新聞=。

 問題はボールが飛ぶようになったことではない。昨年までの2シーズン、反発力が基準以下のボールが堂々と使用されていたことこそ大問題だ。事前の検査でなぜ不合格としなかったのか。

 ここからは勘ぐりである。製造元のミズノが大量に造ったボールのうち、多くが反発力の下限を下回る結果となり、これを不合格とすればボール不足に陥る懸念が生じたのではないか。あるいはミズノ側が「何とかしてくださいよ」と泣きついたか。NPBとミズノの間に不明朗なやり取りがあったのは間違いないだろう。

 プロ野球のボールは2010S-ズンまではミズノ、ゼットなど4社製を公認していたが、2011S-ズンからミズノに統一された。もともとミズノ製のボールは「よく飛ぶ」の評価があり、多くの球団が使っていた。ミズノに統一されたのは自然な流れともいえる。

 この問題はスポーツ界全体に波紋を広げる可能性がある。「ミズノ」が絡んでいるからだ。いうまでもなくミズノは日本最大のスポーツ用品メーカーであり、アマスポーツにも大きな影響力を持つ。会長の水野正人はJOC副会長にして、東京五輪招致委事務総長―専務理事を務める。そのミズノがNPBと組んで公認球を操作してきたのだ。影響は甚大と見た方がいい。

 スポーツとアイテムの問題は難しい。王が引退した後、彼が使っていた圧縮バットが禁止されたことなどはどう考えればいいのだろう。

 
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図書館蔵書をブックオフ? に転売

2013-06-01 06:05:05 | 外交
 にわかには信じられない出来事である。新潟市の学校図書館司書が、購入した書籍をほぼ右から左へ中古書店(ブックオフ?)に転売していたというのだ。テレビには空になった本棚が映し出されていた。なぜここまでエスカレートさせてしまったのか。

≪新潟市は30日、秋葉区の小須戸中学校で図書館司書をしていた40代女性が、同校の図書約3千冊(約550万円相当)を中古書店に転売して生活費に充てたとして、窃盗の疑いで秋葉署に告訴した。

 市教育委員会によると、この女性は2008年4月から臨時職員として小須戸中の図書館で蔵書管理などを担当。09年9月ごろからことし3月に退職するまで、生徒に貸し出す前の新品図書を転売していた。

 女性は「金銭的に厳しく、食費など生活費に使った。何冊売っていくらになったか分からない」と認め、弁償の意思を示しているという。

 4月に赴任した後任の司書が図書が足りないのに気付き、調べたところ、女性が勤務した5年間で購入した4821冊のうち3134冊が不明になっていた。12年度は508冊購入したが、6冊しか残っていなかった。

 市教委によると、学校側は「図書館の電算化のため、本棚に並べる司書の作業が滞っていると思っていた」と説明しているという≫=新潟日報(WEB)=。

 新刊書をブックオフなどに売るといったいいくらになるのだろう。3000冊(550万円)と額面は大きいが、この女が手にした金はたいしたことはあるまい。「金に困っていて、食費などに充てた」というがどんな暮らしをしていたのかも気になる。

 金銭的というより、精神的に追い詰められていたのではないか。そうでなければこんな破れかぶれの転売はできない。

 ただ、この学校の管理はずさんすぎる。ほかの教師は図書館をのぞかなかったのか。子どもたちは本棚がさみしくなっていくことに気付かなかったのか。「電算化に向けての作業が遅れていると思っていた」などというのは、自己弁護の言い逃れにすぎまい。

 数冊の転売から始まったのだろう。誰も気づかない。どんどんエスカレートする。無責任な学校も共犯者と言っていい。

 
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