酔眼独語 

時事問題を中心に、政治、経済、文化、スポーツ、環境問題など今日的なテーマについて語る。
 

「農協改革」って何だ

2015-02-09 09:46:31 | 政治
 既得権益の岩盤を打ち破る、ドリルの刃になる-安倍晋三が吠えてみせたのは1年前のダボス会議だった。しかして、そのドリルの刃が向かった先は…、農協改革ということなのか。いま、なぜ、何のための農協改革かがさっぱり見えてこない。某公共放送は「個別の農協がもっと自由に活動できるように」などと伝えているが、そんなことは農協内部の問題だ。政府が手を突っ込んでかき回すからには、もっと大きな思惑があるに違いない。

 日本の規制改革はその多くがアメリカの要望を受け入れる形で進められてきた。日米構造協議、年次改革要望書などの形をとって一つ一つステップを踏みながら。大店法改正、労働者派遣法などもその一環だ。もっともこれらは橋頭堡とも言うべきもので、本丸は金融である。郵政改革には既に手を付け、上場まであと一息。保険分野はいまや外資の方が勢いがある。最後に残った大物が農協ということではないだろうか。

 言うまでもなく農協は日本有数の巨大銀行である。貯金残高(2014年)約90兆円は郵貯180兆円、三菱東京125兆円に次ぐ規模であり、三井住友やみずほを上回る。もう一つ、保険・共済部門のJA共済も巨額な資金量を誇る。長期契約300兆円、運用資産は48兆円に上る。この巨大ながま口を切り刻んで外資を含む「民間資本」に振り向けようというのが「農協改革」の核心ではないか。

 報道によれば、政府・自民党と全中は改革の大筋で合意したらしい。

 《全国約700の地域農協の競争と創意工夫を促す農協改革を巡り、政府・自民党と全国農業協同組合中央会(JA全中)の折衝が8日夜、大筋決着したことがわかった。地域農協を束ねるJA全中の監査・指導権をなくし、2019年3月末までに一般社団法人に転換する。1954年に始まった中央会制度をほぼ60年ぶりに見直し、地域農協の自立につなげる。
 自民党の農林系議員とJA全中の万歳章会長、農林水産省幹部が8日夜、都内のホテルで会談した。万歳会長は政府の改革案を大筋受け入れる考えを表明。9日午後に全中幹部が集まり、正式決定する段取りも示した。

 政府はいまの国会に農業協同組合法改正案を提出し、JA全中の監査・指導権をなくす。2019年3月末までに一般社団法人に移行させる。全中の統制をなくし、地域農協の組合長が経営感覚を磨き、競い合って生産性を高めるように促したい考え。

 JA全中は農協改革に反対の構えだった。だが、一般社団法人に転換した後も、農協法の付則に全中の役割を明記する譲歩案を政府側が示し、受け入れた。農協の間の連絡や調整業務を担う点が盛り込まれる。地域農協への事実上の統制につながらないか、注目点になりそうだ。

 全中が一般社団法人になると地域農協への監査権限がなくなり、全中の監査部門は新たに監査法人として再出発する。地域農協は既存の監査法人か全中を母体とする監査法人を選べるようになる。政府は全中が改革を拒んだ場合、農家でない「准組合員」が農協に大量加入している問題に切り込む姿勢を示していたが、全中も歩み寄ったことで、規制の導入は見送る》=2月9日日経電子版=。

 政府・自民党が監査にこだわったのには理由がありそうだ。地域の農協はまだ体質的に古いところも多く、叩けばホコリもでそうだ。外部監査を入れて、ここから突き崩す。監査はまさにドリルの刃なのだ。

 一歩譲ればまた一歩、アリの一穴あるいは「天邪鬼と織姫の教訓」というべきか。「ちょっとだけ」「手が入るまで」「足が」「頭が」と要求はエスカレート、やがて織姫は天邪鬼の餌食になるのでありました。

 全中が「准組合員問題をほじくられずに済んでホッとした」などと考えているならとんでもない間違いだ。外堀が埋まれば次は内堀、大手門からやがて本丸に至る。それもこれも、農協自身が改革をサボり、組織を肥大化させてきたことの報いだ。「協同組合精神」の原点に立ち返り、一から出直しを図るべきだ。
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元気が出る新聞!?

2015-02-04 16:09:12 | メディア
 週刊現代とポストが競うように「死ぬまでsex」を煽り立て、純情なじいさんらを惑わせていると思ったら、どっこい、新聞も負けていないようだ。「若い人が読まない」「部数が減る一方」と嘆き節の業界だが、年寄り向け広告のオンパレードでは若い人が読むわけがない。

 部数世界一を誇る読売でさえ目立つのは健康食品やサプリメントなどの通販広告だ。「いやー、すっと出た」なんて大広告は朝の食欲を萎えさせてくれる。

 通販と自社広告以外はないに等しい地方紙はもっと過激だ。ポストや現代の「死ぬまでsex」キャンペーンに呼応したかのような直截さにはおもわず笑ってしまう。「折れない自信! 精力的な毎日を」「ぐんぐん元気 中高年よ奮い立て」「ピンとくるパワー! ピンとくる実感力」-高麗人参おそるべしである。

 使った人?の体験談?がまたすごい。「妻も喜ぶ夫婦円満 今なら20代の若者にだって負ける気がしない」(65歳)「年下の彼女のためにも、120歳まで現役をつらぬきます」(77歳)

 人参、スッポン、牡蠣…、男を元気づけるあれやこれや。あっちだけ元気でもねえ。衆院選投票率が50%を割ろうかというご時世、この国民にこの新聞ありかなあ。
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