酔眼独語 

時事問題を中心に、政治、経済、文化、スポーツ、環境問題など今日的なテーマについて語る。
 

星野仙一の狭量

2012-12-10 10:38:15 | Weblog
 メジャーか日本ハム入りかが注目されていた花巻東高の160キロ右腕大谷翔平の決断は日ハム入団だった。難しい選択だったと思うが、正解だろう。

 ≪米大リーグ挑戦表明後にプロ野球ドラフト会議で日本ハムから1位指名された岩手・花巻東高の大谷翔平投手(18)は9日、岩手県奥州市内で記者会見し、日本ハム入団を表明した。大谷投手は「本日、日本ハムに入団させていただくことを伝えさせていただいた。たくさんの方にご迷惑をおかけして申し訳なかったと思う。入団が決まったのでファイターズの一員として頑張っていければいい」と話した。

 大谷投手は最速160キロの剛腕で、高校通算56本塁打と投打に優れた素質を持つ。米球界の評価も高く、10月21日に「入学当初からの夢だった」として大リーグ挑戦を表明。同25日のドラフトで1位指名された際も、入団の可能性は「ゼロ」として、意志を貫く姿勢を示していた≫=毎日jp=。

 日本球界からのメジャー入りを快く思っていない張本勲をはじめ、多くの球界関係者が賛辞を贈る中で、「異彩」を放っているのが星野仙一である。


 ≪楽天・星野仙一監督(65)が9日、仙台市内で取材に応じて、現行のドラフト制度を痛烈に批判した。メジャー挑戦を表明していた岩手・花巻東高の大谷が、1位指名を受けた日本ハムに入団することが決定。「日本球界に行くんなら、ウチも指名しとった。彼の将来は本人が決めることだけど、ちょっと大きな問題になる。これをやったんであれば、ドラフトの意味がない」と怒りをあらわにした。

 想定外の事態に、物申さないわけにはいかなかった。当初、楽天も大谷の1位指名を予定していたが、本人の意思を尊重して指名を回避した経緯がある。「記者会見したんだから、ドラフト指名されずに米国にいくという格好だった。地元(東北地方)の選手だし、ウチが取らんといかん選手だった。前から(入団への)話ができていたとか、そう思いたくないし、そうではないと思うけど…」と複雑な心境を吐露した。

 さらに闘将の怒りの矛先は、ドラフト制度そのものに向いた。「完全ウエーバーでないといかん。今までも逆指名だったり、中途半端。規則がついていってない」と主張した。現行のルールでは日本ハムが指名したこと自体に問題はなく、たとえ完全ウエーバーにしても今回のケースは起こりうる。それでも「理事会とかオーナー会議で問題になるでしょ。コミッショナーがビシッと言わんとアカン」と制度改革の必要性を訴えかけていた≫=産経com=。

 星野は自分を含む球団の見通しの甘さを恥じるべきだ。「この球団以外に指名されても行く気はない」などの言動は以前からあった。昨年、巨人を熱望した菅野を日ハムが決然として指名したことは記憶に新しい。本当に採りたい逸材なら、メジャー志望であれ、巨人志向であれ断固として指名し、交渉に総力を挙げるのが球団の熱意というものではないか。

 18歳の若者が日ハムの誠意と説得によって翻意したからといって当り散らすなど、星野の了見はあまりにも狭い。スポーツ紙を中心とするメディアに「闘将」などとおだて上げられているうちに、ものが見えなくなったのだろう。

 「ドラフトを完全ウエーバーに」という星野の主張は理解できる。ドラフトの主眼は各球団の勢力均衡にあるからだ。だが、せっかくの正論も前段に感情むき出しの異物があっては台無しである。
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世論調査のいかがわしさ

2012-11-29 15:38:07 | Weblog
衆院選の公示まであと4日、「未来の党」が新しく参戦するなど、各党の舌戦はいよいよヒートアップしている。13もの政党が入り乱れ、選択の難しい選挙とあって各メディアは世論調査をフル活用してトレンドを読みたい意向だが、どうもこの世調そのものが胡散臭い。新聞各紙によって「投票したい政党」の数字が乱高下しているのだ。毎日(21日)と読売(27日)が「釈明記事」とも受け取れる世調解説記事を載せているのは、「このままでは調査の信頼度そのものが疑われる」と危機感を持ったためではないか。

 実際どれほど違うのか。比例の投票先で見てみると

 読売 自民25%   維新14%   民主10%
 朝日 自民23%   維新9%    民主13%
 共同 自民18.7%  維新10.3%  民主8.4%
 毎日 自民17%   維新13%   民主12%
 日経 自民23%   維新15%   民主12%


 自民党の数字では毎日と読売では8ポイントもの差がある。日ごろの報道を見ればうなずける数字ともいえるが、これでは調査の公平性が疑われる。

 毎日がいち早く「なぜ各紙で差があるのか」を報じたのは、予想外の接戦と出た結果に動揺した結果だろう。自民が最も強く出た読売は逆に、社の姿勢とぴったりの数字が出たのを取り繕うためだろう。

 各紙ともRDD方式で、2000前後のサンプルから60%程度の回答を得ている。ばらついた理由について両紙はともに「政党名を読み上げるかどうかで差が出た」などという大学教授の解説を載せている。本当だろうか。

 読売の回答率60%は制度が得られるとされる限界値である。40%もの人に袖にされる調査とはいったい何なのか。

 読売は社説だけでなく、報道・コラムも自民寄りが際立つ。それなら堂々と「読売新聞は自民党の政策を支持します」と宣言すべきだ。公正中立の仮面をかぶって、偏った情報を垂れ流すのはおかしい。この際、各紙も旗幟を鮮明にした方がいい。
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失態続く新潟県警

2012-11-22 20:08:54 | Weblog
 お巡りさんが事件を起こしても最近はべた記事扱いが普通だ。ストーカー事件の当事者に被害者情報を提供するなどのお粗末な対応も相次いでいる。

 それはそれで厳しく追及しなければならないが、最近、新潟県警ではもっと深刻な事態が相次いでいる。警察が逮捕した容疑者が次から次へと「嫌疑不十分」などで釈放されているのだ。無実の人をひっくって、「間違いでした」ではすむまい。大変な状況が起きているにもかかわらず、メディアの扱いは極めて地味である。信じられない。

 新潟県警では8月に三条署の刑事課長が容疑者の供述をでっち上げて事件の摘発件数を水増ししていたことが発覚、胎内署長が部下の警察手帳紛失を隠蔽していたことを苦にして自殺するなど、県警幹部の不祥事が相次いでいた。

 そこへ持ってきて、「連続冤罪未遂」である。

 最初の? 被害者は水泳バタフライの日本記録を何度も樹立している河本耕平である。資金的援助を受けていた女性のクレジットカードを勝手に使ったとして詐欺容疑で逮捕された。9月のことである。

 約2か月後の11月7日、河本は嫌疑不十分で釈放された。「女性の言い分だけを聞いて逮捕された」(新潟日報)と河本の弁護人は憤る。

 11月20日には殺人未遂で逮捕された女性が、同じく「嫌疑不十分」で不起訴処分となっている。新潟地検は「証拠を精査し、総合的に判断した結果」(新潟日報)の処分だと説明している。要は証拠がなかったのに逮捕したのだ。

 極めつけは風営法違反の容疑で逮捕された女性の釈放劇である。

 ≪新潟東署は21日、風営法違反(禁止場所営業)の疑いで、上越市の女性を誤認逮捕し、約4時間半後に釈放したと発表した。同署は女性に謝罪したという≫=22日付新潟日報=。

 女性のアリバイも調べず、この女性がマッサージ店で性的サービスをしていたとして逮捕したのである。

 「冤罪未遂」が3件も続くとは前代未聞だ。なのにメディアの反応は鈍い。河本のケースでは不起訴になって初めてやや大きく取り上げ、風営法違反事件は3段扱い。

 これだけ失態を続けている背景には何があるのか。組織的なところにメスを入れるのが彼らの商売だろう。

 政治と警察は信用できない―などということになったら、中国と同じレベルだ。
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壮大な茶番の幕開けだ

2012-11-17 09:50:13 | Weblog
 衆議院が解散された。12月16日の投票日目指して各党の血みどろの戦いが始まる。というと、一大政治決戦の趣だが実相はどうか。無責任、無節操、自分本位、時代錯誤の面々による壮大な茶番劇の幕開けと言った方がふさわしい。先生方もメディアも勝手に高揚している。困ったものだ。

 朝、犬の散歩の途中、NHKラジオを聞いていたら、元解説委員の川崎総一郎が「近代まれに見る大激戦」などとはやし立てていた。しかし、お話の内容は空疎そのもの。いうべき言葉を失っているのだ。民主党は国民の支持を失っている。第3極の伸張が焦点。野田首相をという声は安倍さんの半分―。何のことはない、先日の世論調査の数字をなぞってるだけでしかない。

 今の政治を「人気取り政治」と批判するメディアが、結局は世論調査に依拠してしかものが言えない。笑止千万とはこのことだ。

 川総さん、「国民が夢を持てる政治を」などともおっしゃっていた。これもおかしい。サッカー日本代表のゲームに「夢をありがとう」などと叫んでいる人々と同じ感覚である。夢は自分で見るもの、持つもの、つかむものだ。

 あおれもダメ、これもダメと切っておいて、自分の意見は隠したまま。「公正中立」を守っていると言いたいのだろうが、政治不信を煽っていることに変わりはない。自民党支持を鮮明にしている読売などはまだましな方だろう(しかし、読売も公明党・創価学会には口をつぐんだままである)。

 「石原、橋下連合」を「第3極」などと呼ぶのもおかしい。今の日本の政界は対立する2大勢力などない。仮にあったとしても政策的対立ではなく、人間関係の抗争でしかない。民主党と自民党の違いがどこにあるというのか。消費税上げ、一体改革、0増5減などをバタバタと決めた事実を見ても、彼らの考え方に大きな差はないことは明らかである。

 石原や橋下を極というなら、極右・極端の極だろう。安倍晋三など論外だ。体力も気力もなく首相の座を放り出した男が「教育改革」を言い立てるとは…。目指すところは教育への政治介入である(そういえば、首相在任時も教育基本法「改正」だけはやり抜いたっけ)。くわばらくわばら。

 
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さて、解散はどうなる

2012-11-14 14:43:47 | Weblog
 野田佳彦首相が「近いうちの解散」へ腹を固めたと思ったら、民主党内から反対論が噴き出してきた。「政治空白を作ってはいけない」というのがその理由だ。

 ≪民主党の大畠章宏、海江田万里両元経済産業相、平岡秀夫元法相らは十四日午前、輿石東幹事長と国会内で会い、野田佳彦首相が選択肢としている年内の衆院解散に反対する申し入れ書を手渡した。

 十三日の党常任幹事会で「党の総意として早期解散に反対する」と一致したことを受けた対応。解散よりも二〇一三年度予算編成、衆院の「一票の格差」是正による違憲状態の解消を優先するよう求めた。輿石氏は「首相に伝える」と述べた。

 国民新党の自見庄三郎代表も十四日午前、首相と官邸で会談し「一二年度補正予算を編成すべきだ」と年内解散に反対する考えを伝えた≫=東京新聞web=。

 あれこれ言っているが、要は「今解散すれば民主党は壊滅状態になってしまう」ということに尽きる。こんなグズグズの党にもはや存在理由は見当たらない。別れる者は別れ、すっきり出直すに限る。自主憲法制定論者から旧社民党までが一つにくっついている方がおかしいのだ。

 「政治空白」も理由にならない。「近いうちの解散」をめぐって与野党が駆け引きを続けている今の状態は「空白」ではないのか。

 解散総選挙でよりましな政権ができる保証はないが(むしろ今より悪化する可能性大)、政治を動かすことに意味がある。総選挙の後、そう遠くない時期?!に安倍の無能ぶりが再び明らかとなり、橋下や石原のでたらめさもはっきりするだろう。まあそこからがスタートですね。
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放射能「拡散予測」

2012-10-31 04:54:46 | Weblog
 原子力規制委員会が24日に公表した原発事故時の放射性物質拡散予測の一部に誤りがあったとかで、メディアが大騒ぎしている。データ入力のミスは当然責められなければならないが、あくまでシミュレーションだ。「拡散地域に入った」「外れた」で一喜一憂すること自体がおかしい。

 
 ≪原子力規制委員会は29日、16原発での過酷事故時の放射性物質の拡散試算のうち、6原発で誤りがあったと発表した。試算のもとになる電力会社からの風速・風向データの入力を誤ったのが原因。北陸、九州両電力から試算結果への疑問が呈され、発覚した。福島第1原発事故の要因として、規制機関の専門知識や経験が電力会社に劣っていた点が指摘されたが、新体制でも懸念が残った格好だ。

 誤りがあったのは日本原子力発電東海第2(茨城県)、東京電力柏崎刈羽(新潟県)、北陸電力志賀(石川県)、日本原子力発電敦賀(福井県)、九州電力玄海(佐賀県)、同川内(鹿児島県)の6原発。試算は自治体の防災計画に役立ててもらう目的で実施した。

 修正の結果、柏崎刈羽原発で、緊急避難が必要とされる距離が最も長い40.2キロと計算された方位が東南東から東に移り、地点も新潟県魚沼市から同県長岡市に変わった。

 規制委は「地元に混乱を与え、申し訳ない」と陳謝した≫=毎日JP=。

 間違った原因は風向データを入力する際、1方位(22・5度)ずれた数字を打ち込んだためとされる。使われたデータは昨年一年間の統計を基にしたもので、「極端な気象」は除外してある。地形も考慮していない。つまり、あくまで架空のデータなのだ。規制庁自身が「架空の前提条件を基にした試算であり、精度や信頼性には限界がある(毎日新聞)」と述べて注意を喚起している。

 ここから読み取るべきは、予測図は当てにならないということである。距離と危険度が必ずしも比例しないことは福島第1の事故を見れば明らかだろう。

 下手な予測は「圏外だから大丈夫」などという幻想を振りまくだけである。こんなことに金を使うなら、立地県の全員にヨウ素剤でも配った方がまだましというものだ。「精度や信頼性に限界がある」予測図を「間違っていた」と大騒ぎするのもおかしな話である。

 
 
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何度目の「最後のご奉公」?

2012-10-26 09:10:24 | Weblog
東京都知事の石原慎太郎が辞職し、国政復帰を目指すと宣言した。御年80歳、チック症状はいよいよ激しくなり、足元はよたよた。口を突いて出る元気さより、衰えが目についた会見だった。

 ≪石原慎太郎東京都知事(80)は25日記者会見し、都知事を辞任して、近く行われるとみられる衆院選に出馬すると表明した。ナショナリストとして知られる同知事は、尖閣諸島の領有権問題を日本の最大の政治課題に押し上げようとしている。

石原氏は緊急記者会見で「きょうをもって都知事を辞職することを決めた」と述べ、同志とともに新党を結成する意向を明らかにした。石原新党が国政政党となれば、国政レベルの新党や会派結成は過去1年間で7つ目となる。その多くは民主、自民の両党からの集団離党で形成された。

 石原氏は、都知事としての任期を2年余り残して辞任を決断した理由について、1つには政府が尖閣諸島のインフラ整備に後ろ向きであることを挙げた。石原氏は今年4月に突然、都が尖閣諸島を民間所有者から買い取ると発表、その発言がきっかけとなり、政府が都と所有者との譲渡交渉に介入し同諸島を買い上げた。その結果、中国で反日デモが相次いで発生し、デモ隊の一部が暴徒化するなど対日感情が悪化している。

 石原氏は会見で、政府が尖閣諸島の魚釣島に船だまりと灯台を建設するよう「監督して」いきたいと述べた。政府は同諸島にいかなる建造物も建設しないとしている。同氏はまた、平和憲法の改正にも言及した。

 新党については、次期総選挙で30~40人を立候補させる考えを示した。保守系の「立ち上がれ日本」の勢力と結集する見通し。

 人気の高い橋下徹大阪市長が率いる、大きな影響力を持つ「日本維新の会」との連携の可能性もある。石原氏も会見で、日本維新の会との連携に前向きな姿勢を示したが、石原氏と橋下氏の間には原子力発電などの問題で大きな意見の隔たりがある≫=ウォールストリートジャーナル日本版=。

 昨年春、引退の意向を覆して都知事選に出ることを決めた時、石原は「最後のご奉公をと思い決断した」と述べている。今回の国政復帰も「最後のご奉公」だそうだ。最後、最後と繰り返すのは政治家の口ぐせなのか。選挙の街宣車ががなり立てているあのセリフ「最後のお願いに上がりました」。最後とは「また」と同じ意味しかないらしい。

 ところで、石原は何にご奉公しようというのか。都知事時代も都民に奉公するなどと言う感覚は皆無だった。国政の場でも同じことだろう。

 あの大震災の際、「日本人のアイデンティティーは我欲。この津波をうまく利用して我欲を1回洗い落とす必要がある。やっぱり天罰だと思う」「アメリカのアイデンティティーは自由。フランスは自由と博愛と平等。日本はそんなものはない。我欲だよ。物欲、金銭欲。我欲に縛られて政治もポピュリズムでやっている。それを(津波で)一気に押し流す必要がある」。我欲に凝り固まった国民への奉公などありえまい。

 石原がご奉公する先は、抽象的な「国」であろう。国家主義者と呼ぶにふさわしい。

 難しい判断を迫られているのが日本維新の会の橋下だ。石原、平沼などという戦前の名残みたいな爺さんたちに絡みつかれれば、立ち腐れする恐れさえある。「政策で一致すれば」の原点を守り抜けるかどうか。

 作家としてはデビュー作以上のものを残せず、国政の場でも運輸相がせいぜい。「一匹狼」が取り柄だった石原が、政界再編の核になれるとは思わない。息子が自民党総裁選で惨敗したことで、焦りもあるのだろうが、またまた老醜をさらした印象は否めない。
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「新聞週間」が泣いている

2012-10-15 15:58:47 | Weblog
 きょうから「新聞週間」が始まった。明日は青森市でメーン行事の新聞大会が開かれる。

 1947年に始まったこのイベントは、今年で65回目。新聞が健全な社会の発展にどれほど役立っているかをアピールするのが目的である。新聞界挙げての行事に合わせるかのように、超特大の虚報が放たれた。読売がスクープし、共同通信が追いかけた「ips細胞臨床応用に成功」がそれである。

 読売は11日付朝刊のトップで報じ、共同は同日の夕刊用に出稿、各地方紙が掲載した。ところがこれが真っ赤なウソだった。読売、共同とも異例の大きさで「移植は虚偽」と伝え、検証記事も併せて掲載した。

 「検証」なるものを読んではっきりしたのは、日本の大メディアが事実確認をいかにおろそかにしているかである。いろいろ誤報の言い訳をしているが、要は森口某の口車に乗ったということでしかない。論文が掲載されるというのなら、発行者にその事実を確認しさえすれば、真偽はすぐわかるはずだ。手術をしたという病院にも全く当たっていない。驚くべき責任さと言わねばならない。

 「科学物」は判断が難しい。「科学記者」などといったところで、しょせんは素人である。間違いを犯さないためには、その道の第一人者などに徹底確認するしかない。それができなかった。インチキ発表をした当の研究者同様、メディアも「先陣争い」に前のめりになっていたのだろう。

 とりわけ深刻なのは共同だ。読売をうのみにした誤報というしかない。業界では「後追いの共同」と呼ばれているらしいが、こんなことでは得意の後追いもままならない。

 読売が検証の続報で日経や毎日も過去に森口某の業績を伝えている―などと書いているのは見苦しい。

 「新聞が 見ぬく 見つける 見きわめる」。今年の新聞週間標語の佳作に選ばれた作品である。明日の大会で特別決議でもして、誤報や虚報の一掃を誓ってほしいものだ。

 
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119番訴訟を考える

2012-10-09 20:22:58 | Weblog
 山中教授ノーベル賞受賞の続報以外、めぼしいものがなかった今日のニュースの中で「119番不出動の審理始まる」のニュースが気に掛かった。内容はは以下の通りだ。


 ≪去年10月、山形市の大学生が119番通報をして体調不良を訴えたのに、消防が救急車を出動させなかったために死亡したとして、遺族が山形市に損害賠償を求めている裁判が始まり、被告の市側は「対応を誤った事実はない」として訴えを退けるよう求め、争う姿勢を示しました。

 去年10月、山形大学2年生だった大久保祐映さん(当時19)は、山形市内の自宅から119番通報をして、「体調が悪い」などと訴え救急車の出動を要請しました。山形市消防本部では、自力で病院に行けると判断して救急車を出動させず、大久保さんは、9日後に自宅で死亡しているのが見つかりました。

 警察の司法解剖の結果、病死の疑いがあるということですが病名は特定されていません。大久保さんが死亡したことを巡って遺族は、「救急車を出動させなかったことが死亡につながった」として山形市に対して1000万円の損害賠償を求める訴えを起こし、9日、山形地方裁判所で裁判が始まりました。

 裁判で市側は「緊急通報受理票という書式に従って、意識があるかなど6つの項目で判断した結果、意識や呼吸もしっかりしていて、通報中、みずから歩くことが可能だとも説明していた」と主張しました。そのうえで「職員が対応を誤った事実はない」として訴えを退けるよう求め、争う姿勢を示しました。

 これに対して大久保さんの母親は、「最後の力を振り絞ってかけた119番通報で救急車に来てもらえず、苦しくつらい思いで亡くなったかと思うと本当に胸が痛みます。救急体制を一刻も早く改善してほしいという思いから山形市を訴えました」と主張しました≫=NHKNEWSWEB=。

 救急隊としてはかなり微妙な判断を迫られるケースだ。NHKニュースが伝えた録音のやり取りを聞いた限りでは、通報者の状態はかなり悪いと推察できる。だが、「タクシーで行けますか」との問いに「行けます」と答えているなど、出動を見送った理由もそれなりにある。

 電話で通報者なり患者の容体を正確に把握するのには高度な技術が必要だろう。消防の指令所にそういう人材がそろっていることが望ましいのは言うまでもない。

 一方で何か釈然としないものが残る。死亡した大学生と家族、友人の関係がどうなっていたのかということだ。

 大学生の実家がどこにあったのかは分からないが、具合が悪くなってまず考えるのは近くの医者だ。親にも当然知らせるだろう。この子が119番通報の前にとった行動を知りたい。ひょっとすると、いきなり動けなくなったのかもしれない。

 病名は特定されていないという。これからの裁判の中で、そうしたもろもろの事実を明らかにしてもらいたい。

 それにしても、「病気」で119番なら、その前に「お母さん、ちょっと変なんだけど」とかの連絡があってしかるべきではないか。このあたりが、いかにも現在の家族関係を象徴しているように思えてならない。医者に連れて行ってくれる友人はいなかったのか。119番通報の後は虫の息で誰とも連絡ができなかったのか。疑問は募るばかりである。

 消防の態勢だけでなく、いろんなことが問われる裁判だ。
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「改造」後にけなすより

2012-10-03 05:26:22 | Weblog
 野田再々改造内閣への批判が渦巻いている。当然である。野田政権が発足して13カ月、早くも3回目の改造である。6月の改造からは3カ月しかたっていない。「首相1年、大臣三月の使い捨て」で仕事などできるわけがない。

 ところが、メディアは今回の改造を「予定の行動」とみなし、事前に「この改造に理はない」と指摘することはなかった。もともと意味のない改造である。どんな顔ぶれになろうが、できることは知れている。

 で、再々改造内閣に対する各紙の世論調査の結果が出た。概ね似たようなものだが、微妙に異なる部分もある。内閣支持率が最も高く出たのが読売というのも面白い。


 ≪野田第3次改造内閣の発足を受けて朝日新聞社は1~2日、全国緊急世論調査(電話)を実施した。野田佳彦首相と自民党の安倍晋三総裁のどちらが首相にふさわしいかを聞いたところ、安倍氏が39%で、野田氏の34%を上回った。衆院比例区の投票先でも、自民が30%に伸び、民主の17%を引き離した。 どちらが首相にふさわしいか、という質問について、有権者の56%を占める無党派層の答えをみると、安倍氏は29%で、野田氏の32%がやや多かった。ただし、自民支持層の82%が安倍氏を、民主支持層の86%が野田氏を選んでおり、自民の支持率が21%と、民主の14%を上回った分、安倍氏が優位に立った形だ。
 改造した野田内閣の支持率は23%(前回25%)でほぼ横ばい。不支持率は56%(同53%)だった。内閣の今後に「期待する」は30%で、「期待しない」62%が倍以上だった。一方、安倍氏の率いる自民党についても「期待する」は39%で、「期待しない」54%の方が多かった。

 
 読売新聞社は、野田第3次改造内閣が発足した1日から2日にかけて緊急全国世論調査(電話方式)を実施した。
 野田内閣の支持率は今年7月以来の30%台に回復し、自民党も「総裁選効果」で政党支持率が2009年の野党転落後で最高を記録した。一方、正式発足したばかりの新党「日本維新の会」は、勢いに陰りが見え始めている。
 内閣支持率は34%で、前回調査(9月15~17日)の27%から7ポイント上昇し、一定の改造効果が表れた。不支持率は56%(前回63%)。
 ただ、新閣僚や民主党役員について個別に聞くと、田中文部科学相の起用を「評価しない」が51%で、「評価する」は35%にとどまった。輿石幹事長の再任を「評価しない」は58%だった。細野政調会長の起用は「評価する」39%と「評価しない」40%が拮抗(きっこう)した。政権浮揚につながるとの期待もあった田中氏の起用に、批判が根強いことが浮き彫りになった。
 内閣支持率は34%で、前回調査(9月15~17日)の27%から7ポイント上昇し、一定の改造効果が表れた。不支持率は56%(前回63%)。


 共同通信社が1、2両日に実施した全国緊急電話世論調査によると、自民党の政党支持率は30・4%で前回の9月調査より11・1ポイント上昇、民主党は12・3%で0・6ポイント下がった。一方、野田第3次改造内閣の支持率は29・2%で、前回調査の26・3%よりやや上がったものの改造効果は一部にとどまったことをうかがわせた。不支持率は55・3%だった。
 野田佳彦首相が改造で田中真紀子文部科学相を起用したことを「評価する」との回答も34・6%にとどまった。
 9月に結党した新党「日本維新の会」の政党支持率は10・7%となり、12・3%の民主党に次ぎ3位だった。次期衆院選比例代表投票先では13・9%で、12・3%の民主党を上回る2位に入った。ただ「日本維新の会」に期待する人の割合は50・6%で、「大阪維新の会」への期待を聞いた前回より9・6ポイント落ち込んだ≫。

 メディアの関心は人気者の動向と「解散・総選挙はいつか」だけである。田中真紀子を起用したことの評価などを尋ねて、何の意味があるのか。以前にも書いたことがあるが、頻繁な世論調査はメディアの自信喪失の表れだろう。「世論に寄り添って報道しているぶんには、見放されることはない」というわけだ。

 メディアに期待されるのは洞察力や先見性である。政局を占うご託宣を「洞察力」にすり替えるような欺瞞はもうたくさんだ。

 

 
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