酔眼独語 

時事問題を中心に、政治、経済、文化、スポーツ、環境問題など今日的なテーマについて語る。
 

リニアの使い方

2010-10-22 06:03:27 | Weblog
 JR東海が計画している「リニア新幹線」のルートが固まったという。

 《JR東海が計画するリニア中央新幹線計画の実現可能性を話し合う国土交通省の審議会は20日、東京―名古屋間をほぼ直線で結ぶルートの経済効果が年間8700億円と最も高いとする試算を公表した。これでルート問題は決着する見通しだが、課題は多い。

 試算は国土交通省が外部のシンクタンクに委託したもので、20日の同省交通政策審議会の中央新幹線小委員会(委員長・家田仁東大大学院教授)で公表された。

 試算では直線ルートの費用対効果が、長野県などが求めている南アルプスを北に迂回(うかい)するルートを上回った。家田委員長は会見で「国民にとっていいのかを客観的にみる分析で、ルート選定に重要な参考になる」と試算結果を重視する姿勢を示した。

 試算は45年にリニアが直線ルートで全線開業し、東京―大阪間が67分で結ばれた場合、沿線地域の企業への経済効果を年間8700億円とみる。移動時間の短縮で特に大都市圏の製造業やサービス業に恩恵があり、東京圏で4千億円、大阪圏で2300億円、名古屋圏で1800億円の効果が見込まれる》=朝日com=。

 メディアは揃って「夢のある計画」「直線ルートは当然」などとはやし立てている。「夢」に弱いのは人類共通にしても、あんまりではないか。

 リニア新線が日本の発展方向とどうかかわるかという視点がない。いまでさえ首都圏と太平洋ベルト地帯への過度の集中が国の形を歪めているというのに、もっといびつにしようということなのか。

 実際建設に着手するのは、計画よりかなりずれ込むだろう。名古屋以西に延びていくかどうかも極めて不透明だ。仮に名古屋で行き止まりとすると、使い勝手は非常に悪い。首都圏と中京圏の人しか使えないからだ。

 そもそも、日本にこんな超高速鉄道が必要なのかも疑問だ。在来の新幹線でも400キロ前後までのスピードアップは可能だろう。「国土の均衡ある発展」を目指すなら、いま張り巡らせてある新幹線網に高速車両を乗せるほうがはるかに有効だ。

 日本経済活性化の起爆剤だの、未来を開く夢の鉄道だのといったムードだけで、無駄な巨額投資をするのは愚の骨頂に見える。

 リニアを走らせるなら羽田~成田や関空~梅田などといった使い方がベストではないか。

 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

中国の反日デモ

2010-10-18 05:45:20 | Weblog
 中国の成都、西安、鄭州の3都市で起きた反日デモが飛び火し、深刻化する様相だ。

 《中国四川省綿陽市で17日午後、沖縄県・尖閣諸島付近での中国漁船衝突事件に抗議する大規模な反日デモが起き、参加者の一部が暴徒化して日本料理店などを襲撃した。前日に3都市で起きた反日デモは「官製デモ」との指摘も出ているが、参加者の暴徒化や他都市への飛び火は当局も想定していなかったとみられ、事態の沈静化を急いでいる模様だ。(中略)
 
 成都市と陝西省西安市、河南省鄭州市で起きた16日の反日デモは、東京の中国大使館前で行われた中国への抗議デモに対抗したもので、中国指導部も日本の対中強硬論に不満を表明するために内陸部でのみ実施を容認したとの見方が強い。17日付の中国系香港紙「文匯報(ぶんわいほう)」は、成都でのデモは各大学の学生会が1カ月前から準備を進めてきたと報じた。学生会は共産党や政府の指導下にある団体で、ネット上の呼び掛けで規模は膨らんだものの、実態は官製デモだったと言えそうだ》=毎日jp=。

 反日デモというより、日本に弱腰な中国当局に向けたデモと見た方が良さそうだ。成都では地下鉄建設など表面上は活気づいているものの、若者の就職率などは低迷気味だという。10年前から始まっている「西部大開発」が息切れしてきたのかもしれない。四川大地震からの復興も絡んでいるだろう。

 地震の被害がもっと大きかった綿陽も同じような問題を抱えているに違いない。原子力機関が集中立地している「秘密都市」の性格を持つだけに、そこで暴動に近いデモが起きたとなると気になる。

 一人っ子政策の下で育ち、世界第2のパワーを信じている単細胞の若者たちが暴れていると軽視するのは禁物だろう。決して磐石ではない共産党政権は、こうした「右」からの揺さぶりが怖いのだ。当面、対日政策は厳しくなる。

 これに日本の一部が敏感に反応する。悪循環は止まりそうにない。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

チリ「奇跡」の救出を称える

2010-10-14 05:20:03 | Weblog
 これほど鮮やかな救出劇になるとは想像していなかった。「クリスマスか新年には再会できる」という当初見通しを大幅に上回る快挙である。地下の33人と地上が信頼感で結ばれた証だろう。すべての関係者に最大級の賛辞を送りたい。

 《チリ北部コピアポ近郊のサンホセ鉱山の落盤事故で、深さ600メートル以上の地下坑道からカプセルを使って作業員33人を引き上げる作業は、13日未明に最初の作業員が地上に到達した後も続けられ、同日午後1時40分(日本時間14日午前1時40分)までに計17人が生還した。

 現地入りしているピニェラ大統領は同日昼(同13日午後)に記者会見し、救出作業が順調に進めば、地下に残る作業員全員が13日中(同14日昼まで)にも救出されるとの見通しを明らかにした》=読売online=。

 8月22日、地下にねじ込まれたドリルが、一片のメモを引き上げたのがすべての始まりだ。「全員元気で生きている」。

 8月5日の落盤事故から17日、ここまで耐え抜いたことが奇跡といっていい。最低限の生存条件は整っていたとはいえ、地下700メートルもの狭い空間に閉じ込められた状況で、よくも希望を持ち続けたものだ。

 地下と地上の「交信」が可能になったことで、事態は大きく動き出した。ここでチリ政府あるいは救出当局が発したメッセージが的確だった。「時間はかかるかもしれないが、必ず助け出す」。すぐにも助け出してもらえる、というような甘い幻想を抱かせなかった手法は秀逸だ。危機管理はこうでなくては。

 作戦が進むにつれ、救出時期がどんどん早まっていった。「12月初めにも→早ければ11月末→11月半ば→10月末」…。こうした情報は、逐次地下の33人に伝えられていたはずだ。「事態は劇的に進行している」。男たちはこう受け止めたに違いない。

 もしこれが逆になっていら、と想像してみる。「じきに穴が開く」→「もう少しかかりそうだ」→「まだかかる」。男たちの希望はしぼみ、絶望が頭をもたげてくる。

 意図してこうしたのかどうかは、今のところ分からない。だが、今回の救出作戦で採られた地下とのコミュニケーションは最良だった。

 「あえて大風呂敷を広げた」などと言い放ち、やがて尻つぼみになるどこぞの首相とは大違いである。

 

 

 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

小沢「起訴議決」の悩ましさ

2010-10-06 04:47:36 | Weblog
 東京第5検察審査会が小沢一郎の政治資金収支報告書偽造事件について「起訴すべし」と議決した。決定がなされた日は、奇しくも民主党代表選投票当日であったという。

 《資金管理団体「陸山会」の土地購入をめぐる収支報告書虚偽記入事件で、東京第5検察審査会は4日、2004~05年分の政治資金規正法違反容疑で告発され、東京地検特捜部が不起訴とした民主党の小沢一郎元幹事長(68)について「関与を強くうかがわせる」として強制起訴すべきだとの議決を公表した。9月14日付》=北海道新聞=。

 メディアによれば「国民の常識」に沿った決定らしい。検審の決定理由書は「白か黒かは裁判で明らかにすべきだ」との趣旨を強調している。一見もっともらしいが、かなり危うい論理だ。

 いまの日本の刑事事件では、警察による逮捕でまず被疑者は決定的ダメージをこうむる。起訴され、初公判で冒陳が行われるころには、もうぼろぼろだ。

 日本では起訴された事件の99%が有罪になる。無罪の可能性があるケースについては検察が公訴を提起しないからだ。もし、検審が言うように、「疑わしきものは裁判で」となったら、どうなるのだろう。

 今回は大物政治家・小沢一郎の「金脈」がらみという事情はある。だが、嫌疑はあくまで「収支報告書の虚偽記載」である。あれこれ想像をたくましくして、「やはり怪しい」と推論するのは刑事手続きとしては間違っている。

 それもこれも、小沢がきちんと説明してこなかったせいだ。刑事責任とは別に、この点は明確にしておかねばならない。

 1年後とも予想される判決は、「小沢無罪」の可能性がかなり高い。そのときまで、小沢の政治生命が持つのかどうか。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

キム・ジョンウンの変貌

2010-10-01 05:35:54 | Weblog
 44年ぶりに開かれた北朝鮮の代表者会などで、「大将」「党中央軍事委副委員長」などに推挙されたキム・ジョンウンがようやく素顔を見せた。

 《北朝鮮の朝鮮中央通信は30日、金正日(キムジョンイル)総書記(68)の後継者に確定した三男の金ジョンウン氏(27)とみられる人物が写っている集合写真を配信した。

 朝鮮中央テレビも、この人物が9月28日の朝鮮労働党代表者会で拍手している映像を放映。韓国統一省は「ジョンウン氏と推定される」としている。北朝鮮メディアが写真や映像を公開するのは初めて。

 写真は平壌(ピョンヤン)の錦繍山記念宮殿広場で撮影。最前列中央の金総書記を挟んで右側に金永南(キムヨンナム)最高人民会議常任委員長(82)と崔永林(チェヨンリム)首相(79)、左側に李英鎬(リヨンホ)党中央軍事委副委員長(67)とジョンウン氏が座っている。金総書記の右後方に義弟の張成沢(チャンソンテク)国防委副委員長(64)がいる。席順などから、ジョンウン氏は党内序列5位に抜てきされた可能性が高い》=読売ONLINE=。

 顔が膨らんで、目がつりあがっているのが印象的である。ひざの上でぎゅっと拳を握っているのは緊張感の表れか。前途で待ち受けている困難に身構えているようにも見える。

 スイスに留学していた中学生時代は、どちらかといえば細身だったとされる。おやじに似て太ってきたというより、これはストレス太りと見るべきだ。権力の継承者として生活の自由はなく、「宮殿」での保護生活が続く。NBAプレーヤーを夢見た少年の悲しい末路だ。

 ジョンウン登場で思い出すのが、9年前成田に現れ、追い返された長男の正男だ。当時、既に後継レースは終わっていたのだろう。そうでなければ女房や子どもを連れて偽名で「ディズニーランドへ」なんて計画できるわけがない。正男は今でも中国などを時折ふらりと訪れているらしい。

 崩壊必至の王朝を継ぐジョンウンにはこの気楽さはもちろん、ない。貧困と飢え、自由の圧殺という現実に目覚めた人民に襲われる悪夢が頭をよぎるときもあるだろう。27歳の青年がそれに耐えられるかどうか。

 北の新しい指導部は「身内で周りを固めて、ジョンウンを補佐する体制」といわれるが、「小うるさい親戚で取り囲み、勝手は許さない」仕掛けと見た方がいいのではないか。

 このまま崩壊に突き進むのか、それとも…。

 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする