酔眼独語 

時事問題を中心に、政治、経済、文化、スポーツ、環境問題など今日的なテーマについて語る。
 

「日朝協議」という茶番

2014-10-29 09:02:24 | 政治
 拉致被害者再調査の進展度合い確認を目的とした「日朝協議」が平壌で始まった。北朝鮮当局を代表して登場したのは「特別調査委員会」のトップとされる徐大河。北の秘密警察・国家安全保衛部の副部長だという。この人物に直接会って日本側の要求をぶつける-というのが今回の訪朝の最大の眼目だから、まずずまずの滑り出しに見える。だが、ニュース映像や報道を見る限りでは、胡散臭さが拭えない。あまりにも芝居がかっているからだ。

 「徐大河と申します。特別調査委員会の委員長を務めています」-これが相手の最初の挨拶だ。日本側が聞いているのは名前と肩書きだけ。目の前の人物が本当にその人物なのかどうか確かめようもない。「今日あった人物が徐氏本人と信じるしかない」(外務省関係者)=共同=。信じてはいけない相手に対して「信じるしかない」では、最初から負けたも同然ではないか。

 調査委員会は独立の建物を与えられているようだ。真新しい看板も掛けられている。明らかに日本のメディア、特にテレビを意識した演出である。「ちゃんとやってますよ」。五月の再調査合意から五カ月、北朝鮮は再調査ではなく特別調査委員会の建物整備や調査委メンバーの選定に追われていたのではないか。ようやく入れ物と顔ぶれが決まって「はい、どうぞ」となったというわけだ。「(塗りたての)ペンキの匂いがした」(読売)との報道がこれを裏付ける。

 普通の国でも秘密警察の幹部がテレビに顔をさらし、名前を名乗るなど、まずあり得ない。まして北朝鮮である。公然とテレビの前に出てきた時点で、この連中は保衛部の職は解かれているに違いない。用無しになった人物を日本に差し出したまでのことである。28日に韓国情報筋が伝えたところでは「北で軍幹部ら50人が処刑された」という。張成沢の処刑以降、まだ北の体制は落ち着いていないのだ。金正恩の健康状態も思わしくないらしい。

 今回の日朝協議で北が仕掛けてきたのは、にわか造りのセットに俳優を並べたインチキドラマの感が強い。用意している回答も誰かが書いたシナリオだ。ひょっとすると日本に期待を持たせるセリフが飛び出すかもしれないが、しょせんその場しのぎと見るべきだろう。

 「安倍政権はぐらつきだした。餌をまけば食いついてくる」-これが北の読みだ。

 
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「新聞大会」の皮肉

2014-10-16 16:07:07 | メディア
 今年で67回目になるという「新聞大会」が新潟市で開かれた。今回のテーマは「新聞の信頼回復」だという。業界のトップが雁首を並べた会合で「信頼回復」を打ち出さざるを得ないところに新聞界の深刻さが伺える。だが、「正確で公正な報道に全力を尽くすことを誓う」などというありきたりな決議しかできないようでは先が見えている。

 新聞大会のテーマとメーンの座談会のメンバーが決まったのはいつなのだろう。大会の規模や顔ぶれから見て8月の「朝日事件」以前に設定されていたと見たい。「事件」以後なら朝日の木村社長をパネリストには選んではいないはずだ。

 さて、その座談会である。コーディネーターは読売の白石社長、パネリストは木村氏の他に毎日の朝比奈、神戸の高士、新潟の小田各社長である。語っていることははっきり言って通り一遍、建前論の羅列と行ってよかろう。中でも笑ったのは朝比奈氏の「新聞界の相互批判は、業界全体の信頼を失うことにつながることになるのでは…」という発言だ。読売、産経による「朝日叩き」を念頭に置いての言なのだろうが、ピンボケもいいところだ。政府広報紙と化した感のある読売、ますます嫌中嫌韓の度を強める産経が、朝日バッシングを強めれば強めるほど、「朝日を守れ」という声も高まる。その中で、どちらを選ぶか(あるいはどちらも選ばないか)はあくまで読者の選択だ。新聞社間の批判合戦が新聞への信頼を失墜させているなどという言舌は読者を愚弄するものと言わざるを得ない。

 大会では産経ソウル支局長の起訴に関して決議も行っている。決議そのものに異議はないが、週刊誌のゴシップ記事並の与太コラムを「言論の自由」の錦の御旗にしているのが悲しくも切ない。エロ漫画を擁護するよりまだ情けない。

 この大会で決議されたのはあわせて3つ。メーンの「大会決議」と「産経決議」、加えて「新聞への軽減税率適用を求める特別決議」である。信頼を欠く新聞では軽減税率の適用などありえない-だから信頼回復を掲げる。言論の自由擁護を旗印に政府の対韓姿勢を側面支援する。

 今回の大会が新聞が政府に恭順の意を示す一里塚とならないことを切に望む。
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