酔眼独語 

時事問題を中心に、政治、経済、文化、スポーツ、環境問題など今日的なテーマについて語る。
 

駆け込み退職、どっちもどっち?

2013-01-23 15:41:50 | 外交
 読売が真っ先に報じた「埼玉県 教員110人駆け込み退職」にはびっくりした。3月の定年まで待てば150万円損するから、今のうちに―ということらしい。学期途中で生徒を放り出すことになり、非難囂々だが…。

 ≪埼玉県職員の退職手当が2月から引き下げられるのを前に、3月末の定年退職を待たず今月末で「自己都合」により退職する公立学校教員が、県採用分で89人に上ることが21日、わかった。


 県費で退職手当が支払われるさいたま市採用の教員も、21人が同様の予定という。県教育局の担当者は「例年、定年退職者が年度途中で辞めることはほとんどない。異例の事態だ」としている。該当教員がいる学校では後任の確保の対応に追われている。

 県によると、今年度の県の定年退職者は約1300人(県警を除く)。このうち1月末での退職希望者は教員が89人、一般職員が約30人の計約120人となっている。

 改正国家公務員退職手当法が昨年11月に成立し、総務省が自治体職員の退職手当引き下げを自治体に要請。埼玉県では県議会が昨年末に改正条例を可決し、2014年8月までに平均約400万円が段階的に引き下げられる。改正条例は2月1日から施行され、今年度の定年退職者は3月末まで勤務すると、平均約150万円の減額となるという。2月1日の施行について、県人事課は「速やかな実施が必要」と説明している≫=読売online=。

 考えてみると、条例の施行時期にも問題がある。通常この種のものは新年度からが常識だ。だが、それでは退職金削減額が少なくなる。2か月、1300人分で約19億円なり。これでは早く施行したくなる。せこい行政とせこい教師の駆け引きの結果が、100人からの早期退職というわけだ。

 毎日などによれば、この現象は埼玉県だけに限らない。佐賀、徳島、愛知など全国に広がっている模様で、愛知では県警幹部も手を挙げているという。

≪埼玉県内で100人超の教員が退職手当引き下げ前に「駆け込み退職」を希望している問題で、佐賀県と徳島県では教頭や学級担任を含む教員43人が既に駆け込み退職していたことが22日、毎日新聞の全国調査で分かった。学校事務職員や一般行政職員を加えると70人超が退職。高知県など4自治体でも退職希望者がおり教育委員会が対応に追われている。

 埼玉県とさいたま市を除く46都道府県と19政令市の教委に聞き取りをした。佐賀県は退職手当を引き下げる改正条例を1月1日に施行したが、昨年12月末で教員36人(小学校8人、中学校5人、高校16人、特別支援学校7人)と一般職員16人が退職。

 徳島県も1月1日付で条例改正。昨年12月末に教員7人(小学校2人、中学校3人、高校1人、特別支援学校1人)と学校事務職員5人、一般職員7人が退職した。

 また、高知県は3月に改正条例を施行する予定で、教員2人が2月末の退職を希望。愛知県と兵庫県、京都市でも3月改正で、退職希望者がいるとみられるが「未集計」などとして詳細を明らかにしていない。

 
 愛知県では3月1日で退職金を引き下げるため、定年退職を迎える県警職員と公立学校教員で2月末の退職希望が相次いでいることが分かった。県警や県教委は対応に追われている。

 埼玉県の公立学校で退職金の減額前に教員が相次いで退職を希望していることを受け、文部科学省は22日、全国の都道府県に調査を始めた。(1)条例を改正し退職金を減額するか(2)いつから減額か−−の2点について報告を求める≫=毎日jp=。

 一昔前なら考えられない事態だ。文科省の調査が徹底すれば、さらに衝撃的な状況になるかもしれない。とりわけ、埼玉県が突出していたことに注目したい。「埼玉の教師」を目指した人というより「埼玉しか受からなかった」からこの県に赴任したということではないか。地域への帰属意識も生徒への愛情もない。どこの自治体でも同じようなものだろうが、首都圏は格別と思われる。

 日本の教育は大都市圏から腐り始めている。
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液状化するマグレブ

2013-01-20 15:29:16 | 外交
 アルジェリアの人質事件、アルジェリア軍による武装勢力掃討作戦は、20人以上の犠牲者を出すという代償をって一応終了した。軍の公式発表では人質の死者を23人としているが、まだ多数の消息不明者がいるとみられ、事件の全容が明らかとなるのはこれからだ。

 ≪アルジェリア軍は19日、イスラム武装勢力が人質を拘束していた天然ガス関連施設を急襲、4日間にわたった今回の事件が終了した。アルジェリア政府はこの事件で人質23人、武装勢力32人が死亡したと発表した。

  武装勢力に拘束されていた人質の出身国は最大で12カ国。19日深夜までアルジェリアからの情報はほとんど出てこず、日米英など世界各国の首脳は事態を見守った。今回の人質事件をきっかけに、北アフリカに拠点を置くテロ集団による脅威拡大の懸念が高まっている。


 アルジェリア政府高官によると、19日の急襲作戦中に外国人の人質7人と武装勢力11人が死亡した。同高官によると、アルジェリア軍は武装勢力が残る人質の殺害を始めたと確信したため、急襲作戦を実行したという。


 アルジェリア内務省は19日に発表した死者数は暫定的としている。アルジェリア当局は死亡した人質23人の国籍は明らかにしなかった。また、現場から機関銃やライフル銃、散弾銃、ロケット弾、ミサイル、手榴弾、爆発物のベルトを含む武器が回収されたことを明らかにした≫=ウォールストリートジャーナル日本語電子版=。

 日本人を含む多数の犠牲者が出たのは痛恨の極みだ。ただ、20年以上もテロとの戦いを繰り広げているアルジェリアには、強行突破しか選択肢がなかったのも明らかだ。プラント施設への侵入を許した段階で多国籍企業、政府側の「負け」。北アフリカ・マグレブの石油・ガス関連施設警備の脆弱性が浮き彫りになった。

 砂漠の中の巨大プラントにやすやすとテログループが侵入したことは、この地域一帯がさらに不安定化するのではないかという危惧を抱かせる。アフガン、イラク戦争の戦後処理やリビア解体を中途で投げ出したツケともいえる。

 アルカイダはアメーバのような組織といわれており、実態は必ずしも明らかではない。ただ、ソマリアやマリなどの破たん国家には必ずアルカイダもどきの組織がはびこる。シリアもかなり危ない。

 中東、アフリカの「民主化」は、アルカイダの台頭を招く側面もあり、手放しで礼賛するのは禁物だろう。不安定国家の石油関連施設が次々と襲われるような事態になれば、原油価格の高騰も避けられない。

 石油プラント防衛戦略を急ぐ必要があるが、その主体はどこになるのか。アメリカは余力がなく、フランスはもっと力不足だ。アフリカでの権益を拡大しつつある中国が出てくると話はよりややこしくなる。しばらくはマグレブ、中東から目が離せない。
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「ならぬものはならぬ」

2013-01-15 10:02:45 | 外交
 綾瀬はるか主演のNHK大河ドラマ「八重の桜」で頻繁に出てくる「ならぬものはならぬ」のセリフが気に入っている。会津藩の子弟教育の指針「什の掟」という。

 「年長者の言ふことに背いてはなりませぬ」「卑怯な振舞をしてはなりませぬ」「弱い者をいぢめてはなりませぬ」など7つの行為をきつく戒め、最後に「ならぬことはならぬものです」とまとめている。

 これは個人の道徳や倫理のありようを説いたものだが、ここで言いたいのは、世の中にはできないもの、やってはいけないものがある―ということだ。先端の生命医学などにもこれが当てはまるのではないか。「卵子バンク」の設立などもその一つと考える。


 ≪不妊治療専門医や卵巣機能が低下する患者の関係者らでつくる民間団体「卵子提供登録支援団体」(略称・OD-NET、事務局・神戸市、岸本佐智子代表)は14日、早発閉経など卵子がない患者向けに第三者から健康な卵子の提供を募る「卵子バンク」を目指した事業を始めると発表した。

 匿名で無償のボランティアを登録し、医学的な条件が合った患者に提供する。登録の受け付けは15日に開始。海外で日本人女性らから卵子提供してもらう団体はあるが、国内での提供を目指す団体は初という。提供者の安全性の確保や生まれる子供の権利などについて議論を呼びそうだ。

 今回募集する提供者は、子供がいる原則35歳未満の女性で、配偶者の同意が必要。排卵誘発剤などによる副作用が起きた場合の医療費は患者側が負担する。

 仙台市などの5つの民間不妊治療施設が卵子の採取や体外受精を担当。早発閉経や染色体異常のターナー症候群で卵子がないと診断された患者計20人を既に登録しており、当面、患者の新規募集はしない。

 同団体によると、早発閉経の女性は約100人に1人、ターナー症候群の女性は約2千人に1人で、これらのうち妊娠を希望する人は国内で数千人に上ると想定される。提供者の個人情報は患者に知らされることはない≫=産経=。

 子どもを欲しいと思うのは人間として当然だろう。だが、自分や配偶者に決定的な欠陥があるのに「科学技術?」の力を借りて無理やり子供をつくるというのには賛成できない。生命の誕生や消滅は自然の摂理であり、人工的な操作は無用と考えるからだ。

 里子や養子ではつながりが薄いと考えるからこういう選択が生まれるのだろうか。

 他人の卵子で誕生し、苛烈な死を遂げた人から臓器の提供を受けて命を長らえる。この人物はいったい何者なのかとの疑問がわく。

 科学の進歩で「何でもできる」という考えが蔓延していないだろうか。「できる」ことであっても「ならぬもの」がある。原発などもその一例だ。「ならぬものはならぬ」をこれからの生き方のキーワードにしたい。
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東京五輪は実現するか

2013-01-08 09:15:58 | 外交
 2020年夏季五輪の東京招致を目指す活動が具体的に動き出した。東京、マドリード、イスタンブール3都市の招致委員会がそれぞれ立候補ファイルを提出、9月のIOC総会まで激しい招致合戦となる。

 ≪2020年夏季五輪の招致レースはいよいよ本格化する。7日、スイス・ローザンヌの国際オリンピック委員会(IOC)に詳細な開催計画(立候補ファイル)を提出した東京五輪招致委員会は、8日には東京で、10日にはロンドンで記者会見を開き、国内外にアピールする。

 この日のメンバーは、招致委の水野正人専務理事や、招致アンバサダー(大使)となったサッカー女子日本代表の澤穂希、パラリンピック競泳選手の鈴木孝幸ら。澤は「決定まで、あと8カ月。スポーツの素晴らしさを伝えていきたい」と話し、鈴木も「生で見ることによって、より魅力や感動を伝えられる。IOCには好印象を与えられると思う」と語った≫=朝日デジタル=。

 前回の招致合戦では惨敗した東京だが、今回は目がありそうだ。東京がいいというのではなく、相手が弱いからだ。まずマドリード。欧州の財政危機は一息ついた感はあるが、まだまだ先は不透明極まる。スペインはギリシャに次ぐ財政脆弱国といわれ、政治的にも不安定だ。9月段階でこうした不安を一掃することなどできるはずもなく、マドリードの苦戦は免れまい。

 イスタンブールには中東情勢が絡む。「イスラム圏で初の五輪開催」はインパクトがあるが、シリア情勢とイランの動向が気にかかる。シリアやイランが大混乱に陥れば、トルコ国内のクルド勢力もうごめきだす可能性が高い。あと半年余りでシリアやイランの情勢が劇的に改善されるとは思えず、イスタンブールも敬遠されるのではないだろうか。

 消去法でいくと東京しかない。

 しかし、日本で2回目となる夏季五輪がまた東京というのは面白くない。2016年を東京と争った福岡や過去に落選経験のある大阪、名古屋がその後手を挙げられない状況こそ大きな問題だ。

 東京は五輪など開かなくても十分に都市機能は充実している。世界に冠たる巨大都市がいまさら五輪でもあるまい。ニューヨークなど立候補したこともないのではないか。大人の都市とはそういうものだ。「(東日本大震災からの)日本の復興ぶりを見てもらう」などといっているが、笑止である。本気でそう言うのなら、競技の一部を福島やいわきで行うべきだろう。東電福島原発隣接地のJビレッジを使う手もある。

 サンデー毎日の予想では「東京はまた落選」らしいが、おそらくそうはなるまい。東京栄えて日本ますますさびれる。この国のゆがみを拡大する東京招致を、世界最高部数を誇る新聞社が推進する。力強い限りだ。
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