酔眼独語 

時事問題を中心に、政治、経済、文化、スポーツ、環境問題など今日的なテーマについて語る。
 

裁判員はお断りします

2008-11-30 11:05:09 | Weblog
 来年五月から裁判員裁判が始まる。

 裁判員候補者への通知発送が本格化し、ようやく制度についての現実的な反応が出てきた。


 《裁判員候補者29万5027人への通知が28日に発送されたことを受け、最高裁は29日、候補者からの質問に答える専用コールセンターを東京都内に設置した。初日は約870件の問い合わせがあり、このうち「裁判員になりたくないので候補者名簿から消してくれないか」などの訴えは約40件だった。

 この日は約50人のオペレーターが対応。最初の電話は午前10時20分ごろに北九州市の女性からあり、制度の内容を尋ねた。都内や神奈川、埼玉県からの電話が多かったが、北海道からもあった。

 内容は▽どのような場合に辞退できるか▽病気やけががどの程度なら辞退できるのか--など辞退についての質問が半数を占めた。制度の趣旨や裁判員を選ぶ方法に関する質問も目立った》=毎日web=


 「名簿から消してくれ」という要望が初日だけで40件前後あったという。それ以外でも、辞退できる条件などを問い合わせる内容が多かったようだ。


 今春、最高裁が行ったアンケートでは4割近くの人が「義務であっても裁判員にはなりたくない」と答えている。後半年という時点でも、この数字は大きく動いていないのではないか。


 各地で裁判員制度に反対するデモや集会も行われている。新潟県弁護士会などは昨年度のうちに早々と制度実施の延期を決議している。国民への周知が不足し、問題点も多すぎる-というのがその理由だ。


 いまの状態で制度が始まれば、大混乱が起きるに違いない。秋葉原の事件は、公判前整理手続きの準備中で、現行制度で裁かれることになりそうだ。では、元次官宅連続襲撃事件はどうか。動機のあいまいさから、精神鑑定に進む事態も考えられる。起訴の時期がずれ込めば、裁判員裁判の対象になるのではないか。


 世間の耳目を集める事件が裁判員裁判に係ると何が起きても不思議ではない。べらべらしゃべる奴、廷内の写真を撮ろうとする奴、罪を覚悟でメディアに体験記を寄せるような人物も現れるだろう。混乱が目に見えるようだ。


 弁護人や検察官は裁判員を忌避できる。朝日新聞の連載で、某弁護士は「若い女性やキャリアを積んだ女性の量刑は重くなりがちで、こういう人は忌避したい」と語っている。検察官はこの逆だろう。


 弁護士が厳しい態度に出そうな裁判員を忌避し、検事は甘そうな人を外そうとする。互いに4人の忌避枠を使うことになる。まるでポーカーなどのカードゲームみたいだ。こんなことで公平な審理ができるのだろうか。


 当ブログは死刑制度に反対の立場だ。だから最高量刑が死刑以上の犯罪については裁判員に選ばれても外されるだろう。でも、それ以外でもお断りだ。


 もともと刑事裁判は、国家権力が法の枠組みをはみ出した人物を強制的に裁くシステムだ。「国家意思」が最高の正義である。裁判員制度はこの装置に国民を巻き込もうというものにほかならない。


 自分に人を裁く資格があるかどうかという問題もある。


 裁判員裁判をやりたいなら、刑の軽い事件や贈収賄や談合など官に絡む事件にこそ導入すべきだ。


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トロよりも光もので?!

2008-11-26 06:09:06 | Weblog
 松方弘樹が350㌔の大物を釣り上げたせいではないだろうが、来年からクロマグロの漁獲量が大幅に削減されることになった。

 
 【マラケシュ(モロッコ中部)=共同】乱獲で個体数が急減している大西洋のクロマグロに関する資源管理機関「大西洋まぐろ類保存国際委員会(ICCAT)」がモロッコのマラケシュで開いた年次総会は24日、東部大西洋と地中海のクロマグロの漁獲枠について、2009年は2万2000トン、10年は1万9950トンに削減することで合意し閉幕した。それぞれ現行の約2割削減になる。

 クロマグロは、最高級のマグロで、この海域の漁獲はほとんどが日本向け。枠の削減による値上がりなど、日本の市場への長期的な影響は避けられないとみられる=中日web=。



 クロマグロは本来、日本近海を含む太平洋に多く生息する魚種らしい。地中海や大西洋に分布するものはタイセイヨウクロマグロで、クロマグロの亜種とされる。絶滅の危機に瀕しているのは、この種のことだろう。


 クロマグロが高く売れる(日本に)とあって、現地の業者が乱獲を始めた。回転寿司やスーパーにもトロが出回り、商社が買い付けに走った。地元の漁業者の中には目端の利く奴がいて、稚魚まで掻っ攫って生簀で太らせる「蓄養」が始まった。資源はさらに枯渇する。


 まあ、こういったサイクルでクロマグロは絶滅が危惧される事態になったと考えられている。


 外国まで出掛けていったり、外国からごっそり仕入れたりするから何だかんだと文句をつけられる。鯨にしても同じことだ。日本の経済水域内で獲っていれば、摩擦はだいぶ和らぐはずなのに…。


 かつて「わたしの青空」で「大間のマグロはでっかいぞ」なんて言っていた。大間でなくても、萩でも350㌔のクロマグロが釣れる。近海で獲れる量で我慢すべきだろう。そうなれば、簡単には口に入らなくなるが致し方ない。


 もともと、トロは円が張る食い物だ。滅多に食えないからこそありがたい。そういう存在に戻ってもらうのも悪くはあるまい。


 近畿大学が手掛けているクロマグロの完全養殖もある。お手ごろのトロはこれは普及するまで待てばいい。トロを欲しがって、グリーンピースなんぞの目の敵にされるのはあまり賢くない。
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「侍ジャパン」のお寒い現実

2008-11-24 17:26:17 | Weblog
 ようやくスタートした原辰徳の「侍ジャパン」が選手選考でごたごたしている。


 《来年3月にある第2回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)の2度目の日本代表スタッフ会議が21日、都内で行われた。大リーガーを含む48人の代表候補選手に出場意思を打診したが、けがなどを理由に辞退者が数人出た。一部の球団は全候補選手が辞退したと見られ、いきなり12球団の足並みが乱れるスタートとなった。


 原監督は「全世界、プロ野球のほとんどの選手、球団が協力姿勢を見せてくれた」と前置きしたうえで「1球団、誰ひとり協力者がいなかったのは、やや寂しい」と話した。


 中日は4選手が候補に挙げられたが、全員が辞退した模様。春先まで肩が仕上がらないとか、負傷を理由にした選手がいた。中日の白井オーナーは「北京五輪には人も出して協力した。うちはけが人が多い。落合監督もけが人は出さないと言っていた」。原代表監督就任時に「全面協力」を約束した加藤コミッショナーは「人選は監督、コーチに任せているので」と口を濁した》=21日 朝日WEB=。


 メディアはこういう揉め事が大好きだから、中日が球団ぐるみでボイコットという基調で報道をリードしている。WBCに肩入れしているのは読売である。商売敵の中日が鼻を曲げても不思議ではない。落合も「なんで原なんぞに協力しなきゃならんの」と思っているかもしれない。


 腹に一物あっても、大義名分の前には団結するのが日本の「伝統」らしい。だから、落合は次のように言う。


 《中日の落合博満監督は22日、来年3月に開かれる国・地域別対抗戦、ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)について、最初にリストアップされた日本代表候補48人の中に中日から4人が含まれ、追加で打診された1人を含めた5人が出場を辞退したことを明らかにした。「いずれの選手も自分の意思で辞退した。球団も監督も出場しろとも辞めろとも言わない。出たい選手は出ればいいし出たくないという選手は出なくていい。出たい選手でやればいいじゃないか」と話した。


 落合監督は「選手は日本プロ野球組織(NPB)の社員ではない。監督も選手も球団と契約している。あくまでも個人の意思。フリーエージェント(FA)だって個人の意思。彼らには彼らの生活権がある。けがをしたとき、NPBは責任をとってくれるのか」とプロ野球選手の立場を説き、「たまたまうちのチームから(最初に)4人が選ばれた。このうちの2人からはシーズン中に、もう代表選手になるのは勘弁してください、と聞いた。若い2人については、自分に不安を持っていた」と明かした》=23日 東京新聞。


 おそらく落合が言う通りなのだろう。原や山田はこれが理解できない。「故障もしてないのになぜ出ない。ジャパンに協力できないなんておかしい」。


 選手の性格はそれぞれだ。失敗を糧に成長していく選手もいれば、大舞台での失態で決定的ダメージを受けてしまう選手もいる。そこから這い上がるのは容易なことではない。
 

 出たくないのに、選考されたんで仕方なく出る選手が戦力になるはずがない。二つ返事で加わってくる選手で固めればいい。あれこれ話に尾ひれを付けるのは、面白くはあるが生産的ではない。要は原らが「大人でない」ということだ。


 一連の報道ぶりを見ていると、中日と落合を悪者に仕立てたいという意図を感じる。どの筋が仕掛けていることか知らないが、みみっちい話だ。こんなことでは北京五輪の二の舞になるのではないか。


 たかが野球。もっとおおらかにやってほしい。
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テロというより自暴自棄の殺人では

2008-11-23 15:39:00 | Weblog
 元厚生次官ら連続殺傷事件の「容疑者」が自首してきた。血の付いたナイフ、宅配便用の段ボール、血痕が付着したスニーカーを揃えてだ。一連の事件となんらかの関係があるのは間違いないだろう。


 《警視庁麹町署は23日午前2時半すぎ、22日夜、東京都千代田区霞が関2の警視庁本部庁舎玄関に、「元事務次官を殺した」と出頭してきた自称小泉毅容疑者(46)を銃刀法違反容疑で逮捕した。元厚生事務次官宅連続襲撃事件と関連があるとみて追及する》=毎日web=。


 小泉某は「ペットの犬を保健所に殺された」と供述しているらしい。これが殺人の動機とは不可解千万だ。


 19日の当ブログで「何でもテロで片付けるな」と指摘しておいた。次官経験者が連続して襲われたことで、端からテロと決め付ける風潮を危険と感じたからだ。小泉某が真犯人だったとすると、テロの線はかなり薄れる。背後関係などなお慎重な捜査は必要だが…。


 麹町署から警視庁に移送される容疑者の表情は硬かったが、動揺しているふうはない。一点を見据えた目は頑なな心の現われだろう。深い絶望と自棄が見て取れた。殺す相手は誰でもよかったのでないか。社会的な反響を巻き起こせればなおいい。心情において秋葉原の事件と大差がないように感じる。


 父親がテレビに出てきて、ここ10年以上音信不通だったと語っている。実家を出て上京してから何をしていたのか。アルバイトを転々としながら、屈辱と絶望を深めていったと想像できる。


 こういう感情を持つ人物は世の中にごまんといる。引き金さえあれば爆発し、ナイフを握る。これを予見したり抑止するのは不可能だろう。


 政治的テロではない可能性が高いし、そういう意味づけはしない方がいい。だが、「生きている意味がない」と感じ、社会への憎悪をたぎらせている層が徐々に増えつつあることにはきちんと目を向けなければならない。


 「人を殺すのは絶対悪だ」などと何べん説いても意味がない。理不尽な死や人間の使い捨てがあまりに多いからだ。


 事件の解明はこれからだが、ここから何を学ぶかが問われている。
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朝日新聞が大幅赤字

2008-11-22 17:15:47 | Weblog
 各社の九月中間決算は金融不安に伴う景気後退の直撃を受け、軒並み減収減益である。赤字を計上した企業も少なくない。

 財務内容の良さでは定評があるあの朝日新聞も赤字に転落したという。(かつて赤瀬川源平が「赤い、赤い、朝日」と書いているから、赤字は似合うのかもしれない)


 《朝日新聞社が21日発表した2008年9月中間連結決算は、広告収入の落ち込みや販売部数の減少など新聞事業の不振で、売上高が前年同期比4・4%減の2698億円、営業利益が5億円の赤字(前年同期は74億円の黒字)となった。

 税引き後利益は、保有するテレビ朝日株の売却損などで44億円の損失を計上した結果、103億円の赤字(前年同期は47億円の黒字)となった。

 売上高は中間決算としては4期連続の減収で、営業赤字、税引き後赤字は中間決算の作成を始めた2000年9月以降、初めて》=21日読売web=。


 ABC調査を見ると大手紙で多少なりとも部数が増えているのは日経だけ。これもコンスタントに増えているというわけではない。

 毎日は万単位で減り続けており、産経もひどい。読売、朝日も長期低落傾向は変わらない。各紙とも実際の販売部数はこれより10~20%は少ないとみられ、内実は火の車らしい。

 広告の落ち込みはもっと深刻だ。前年同期より20~30%落ちているとの見方さえある。だから、トヨタの奥田に「スポンサーから降りようか」などとブラフをかまされるわけだ。


 以前指摘したように、朝日はこのときに備えて着々と手を打っている。不動産業を柱とする業態への転換だ。新聞は朝日の「見栄」として何時までも維持するだろう。だが、それは名前だけのことになる。


 今の朝日の紙面にもそれは現れている。生ニュースより読み物、生臭いものより話題、という路線だ。鮮度が低く、刺激のない新聞など、もはや新聞とはいえまい。

 テレ朝株の売却損を除いても50億からの赤字、通期でも黒字転換は難しいのではないか。紙面はいっそう軟弱化しそうだ。
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「麻生いじめ」は寂しい

2008-11-20 21:26:05 | Weblog
 もう三昔も前のことだ。あの田中角栄が金脈問題でメディアの袋叩きに遭った際、こう言ったことがあるある。


 「これだけあることないことを書かれると、口や顔だって曲がりますっ。飲みたくない酒も浴びなければならん」。


 いま、口と顔が歪んでいるのは麻生太郎と雅子妃である。心労のほどがしのばれる。雅子妃はおくとして、麻生。20日、日医の会長との会談に向かう彼の表情には精気がまるでなかった。この男から脂っけを抜くと貧乏神にしか見えない。かわいそうなぐらいである。


 その原因は本人にある。当意即妙が売りだから、思いついたことを適当にしゃべる。それで墓穴を掘る。教育係はいないのだろうか。

 ここ一両日の発言はそんなに頓珍漢ではない。TPOを弁えていないという批判なら当てはまるが…。

 中でも波紋が広がったのは全国知事会で述べた「(医師には)社会的常識に欠けている人がかなり多い」という発言だ。正論だと思う。川柳にも「先生と言われるほどのバカじゃない」? というのがあったように記憶する。先生とは何か。教師、医師、議員の総称にほかならない。


 世間はみなそう思っている。麻生はそれを代弁しただけだ。日医側もそう言われれば心がうずく。だから異例の強硬な抗議になったのだろう。


 麻生に首相の資質があるかどうかは別として、彼の行動の一つ一つや一言半句をとらえてメディアが批判するのは寂しすぎる。「株がこんなに下がっているとき郵政株を売るなんて、そんなアホことはできない」「道路財源一億円は使い道を限定しない交付税として地方に回す」。どちらも自民党内に激しい反発を招いているが、間違っているとは思わない。


 毎日新聞の20日付け「記者の目」は先輩である牧太郎のコラムに噛み付き「バーと首相 トップに問われる克己心」なる見出しを掲げてご高説を書いている。今ごろバー通い批判かよ、と突っ込みたくなるボケぶりはともかくとして、首相たるもの襟を正せという指摘は有難すぎて涙が出るほどだ。

 でも、嘘だろう。本音で語っている気配が感じられない。牧のコラムのタイトルは「大きな声ではいえないが…」である。これは本音だ。「大きな声ではいえないけど○×」という打ち明け話に、真っ向から大音声で反論するセンスが悲しい。


 一連の麻生発言は「大きな声ではいえないが…」という類の中身だ。これを大きな声で言ってしまった麻生の政治センスの乏しさも悲しくなるが…。


 政治家もメディアも言葉を失っている。公と私の使い分けもできていない。この程度の政治家にこの程度のメディアということか。これでは中国を笑えない。
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「テロ」の安売りを憂える

2008-11-19 22:05:52 | Weblog
 旧厚生省の事務次官経験者を狙ったと見られる襲撃事件が連続して起きた。


 《さいたま市南区で十八日午前、元厚生事務次官と妻が自宅で殺害されているのが見つかり、同日夜には東京都中野区で、別の元厚生事務次官の妻が自宅で刺され重傷を負った。警察庁は元厚生省幹部を狙った連続テロの可能性があるとみて、全国の警察に関係者の警備強化を指示、厚生労働省も歴代幹部に身辺を注意するよう連絡した=18日 共同=》。


 きょうは朝から晩までこのニュースで持ちきりだ。言語道断の事件であり、民主主義に対する凶悪な挑戦であるという点では、メディアや政界筋が敏感に反応するのは理解できる。だが、この種の事件を「政治的テロ」と規定していいかとなると話が違ってくる。


 こんな訳の分からない犯罪を「テロ」と呼ぶべきではない。そんなふうに祭り上げるから勘違いをするはねっ返りが現れる。


 年金行政とは全く関係ない元次官の妻二人が刺された。この事実がテロではないことの証明だ。「9・11同時多発テロ」以降、理不尽な出来事を「テロ」の一言で片付ける風潮が目立つ。思考停止ではないか。



 テロリズムは暴力の脅威をかさに政治的主張を押し通すことを目的とする。政治的主張のないテロなどあり得ない。犯行声明と目的を明確にすることもテロの欠かせない構成要件である。


 今回の事件が年金などで厚生労働行政に恨みや怒りを募らせている者の仕業である可能性は高い。だが、それをテロと決めつけるのは乱暴だ。怒りのぶつけ場所が分からない思慮のなさが引き起こした? おろかな行為に国中が怯えてどうする。


 官邸の反応が鈍いなどという批判が起きているようだが、騒がせることを目的としたと考えられる犯罪に対して過剰に反応するのは考えものだ。いまは早く犯人を捕まえて、愚にも付かない犯行だということを天下にさらすことだ。



 厚生省叩きの元をつくったマスコミと野党に責任がある。などというトンデモ意見も出始めた。



 《自民党の津島雄二元厚相は19日、元厚生次官ら連続殺傷事件に関し、厚生労働行政を批判してきた野党やマスコミの論調に原因の一端があるとの認識を示した。

 津島氏は都内で記者団に「厚労省の仕事の成果をほとんど評価できないような論評ばかり行われている。その結果、不満を爆発させ、制度構築に携わってきた人に対する理不尽な行為につながったとすれば、本当に残念だ」と表明。

 その上で「そういう風潮をつくる上でマスコミも考えてもらいたい」「責任があるのは『あれが悪い、これが悪い』という国会の議論」などと、野党やマスコミに問題があると指摘した。

 厚労省や社会保険庁については最近でも、年金記録不備、厚生年金記録改ざんなどの問題が野党の追及で表面化し、マスコミの批判を浴びた。津島氏はこれらの経緯には触れず「事務方で一生懸命にやっている人に、ゆがんだ批判を向けるのは良くない」と述べた=東京新聞web=》。


 津島はもう少しリベラルな男だと思っていたが、違った。悪いのを「悪い」と指摘しないマスコミや野党は存在意義がない。それも分からないようでは天国で太宰が泣こう。この発言が危険なのは、先のトヨタの奥田発言と符合しているからだ。「行き過ぎた批判が社会を混乱させる」というなどという主張が公然と語られることに慄然とする。



 反対意見の存在を許さないことに通じる暴論である。こうしたところから言論弾圧は始まるのだ。各メディアは奥田発言への反応は鈍かった。今回はどうか。注目したい。


 テロが民主主義の敵であることは疑いないが、テロの土壌がマスコミにあるなどという意見が堂々とまかり通る世界もかなり危うい。


 
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トヨタの焦りと傲慢

2008-11-15 17:51:14 | Weblog
 世界一の自動車メーカーにのし上がったばかりのトヨタが、金融不安に端を発する世界大不況の波にあえいでいる。車を売るのはもちろん、「トヨタ銀行」と称されるように豊富な余剰資金を投資に回して稼ぐおいしい商売も怪しくなっている。


 だからという訳でもないだろうが、元社長の奥田碩がキレまくっている。歳を取って耄碌したのかもしれないが、とてもまともな経済人の発言ではない。下記の厚労省懇談会での暴言のことだ。テレビの厚労省たたきに業を煮やして「スポンサーを降りてやろうか」などと恫喝したのである。  


 《政府の「厚生労働行政の在り方に関する懇談会」の奥田碩座長(トヨタ自動車相談役)は12日に首相官邸で開かれた会合で、厚労省に関するテレビなどの報道について、「朝から晩まで年金や保険のことで厚労省たたきをやっている。あれだけたたかれるのは異常な話。正直言ってマスコミに報復してやろうか。スポンサーでも降りてやろうかと」と発言した。

 奥田座長は「ああいう番組に出てくるスポンサーは大きな会社ではない。地方の中小とかパチンコとか」とも述べた。

 これに対して、委員の1人である浅野史郎前宮城県知事は「スポンサーを降りるぞとか言うのは言い過ぎ」ととりなした=12日 時事》


 日経広告研究所の調査によると、トヨタはわが国で唯一年間広告費1000億円以上を使っているスポンサーの王様である。その威光をカサに着ての発言としか思えない。「そこのけそこのけ、トヨタ様が通る」である。


 この種の圧力が民主主義と相容れないということが分かっていない。奥田といえば、丹羽宇一郎などと並んで政府の審議会や有識者会議の常連だ。前の福田政権では内閣特別顧問も務めていた。引っ張りだこだったのは、結局は財力ということか。



 そのトヨタは利益が70%減ったからといって、非正規社員の首切りを容赦なく行っている。米国では民主党のバックボーンであるAFL-CIOを恐れて従業員の解雇に慎重なくせに、日本ではやりたい放題ということか。


 自動車の将来はかなり厳しい。トヨタや奥田の非道ぶりはそうした焦りが噴き出したものと考えたい。


 《トヨタ自動車九州(福岡県宮若市)が、年内に計画していた生産能力の増強を延期することが11日わかった。世界的に自動車需要が低迷しており、今後も生産の回復が期待できないためだ。増強先送りに伴い、人員削減が加速する見通しだ。

 計画では、将来のモデルチェンジ車の投入などに備え、高級車「レクサスIS」「レクサスES」などを生産する宮田工場(宮若市)の第2ラインに生産速度を高める設備などを設置。生産能力を年20万台から23万台に引き上げ、第1ライン(年産23万台)と合わせ年46万台とする予定だった。

 同社は今夏、派遣社員800人を削減したほか、正社員をグループ会社に出向させるなど人員削減を進めている。増強に備えた人員は確保していたが、延期により余剰感が高まることは必至で、現在、1400人いる派遣社員も大幅削減が避けられない情勢だ=11日 読売web》


 《トヨタ自動車は6日、09年3月期連結決算(米国会計基準)の業績予想について、売上高を前期比12.5%減の23兆円(従来予想25兆円)、営業利益を同73.6%減の6000億円(同1兆6000億円)、最終(当期)利益を同68%減の5500億円(同1兆2500億円)にそれぞれ下方修正した。00年3月期以来9年ぶりの減収減益に陥る見通し。世界最大規模の自動車メーカーの「7割減益」は、米国発の金融危機が産業界にも大きな打撃を与えていることを強く印象づけることになりそうだ。

 連結業績予想の減額修正は、06年に通期見通しの公表を開始してから初めてで、連結営業利益の1兆円割れは01年3月期以来8年ぶり。トヨタの09年3月期の連結業績予想は、売上高で三菱商事に、営業利益ではNTTに抜かれ、国内企業トップの座から転落する可能性が出てきた=7日 毎日web》  
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田母神招致のお粗末

2008-11-13 22:35:37 | Weblog
 諸葛亮の祀られている廟を訪ね、ウイグルの新興工業地帯を訪れている間に、世の中は大きく動いていたようだ。アメリカでは「小浜」が次期大統領に選ばれ、日本では解散総選挙が当面なくなった。小生の力及ばぬこととはいえ、地球は勝手に回るのだ。


 そんな中でびっくりさせられたのが何とか給付金と航空幕僚長のトンでも発言問題だ。給付金は史上まれに見る愚策で、いずれ取り上げる機会があると思う。だからここでは触れない。

 そこで田母神問題。

 これからもあれこれ騒がれるだろうが神経選に終わるだろう。自民党も民主党も本気では、こんな問題に触りたくないからだ。


 参院外交防衛委員会での参考人質疑を眺めればはっきりする。幕引きのためのセレモニーだということが、びしばし伝わってくる。つい先日まで現役の将軍だった田母神氏がそれを見逃すはずはない。気持ちよく居直っていたのがそれを如実に物語っている。


 「田母神氏の宣伝の場にしてはならない」。委員会の理事会で与野党はこう合意したという。何たる自信のなさか。田母神論文は史料のつぎはぎ、発言も思いこみが強すぎて論理の一貫性を欠いている。


 参考人質疑は田母神氏の論理の矛盾を突き、整合性のなさを暴露する絶好の機会だったのではないか。議員とは「義」について言葉を発する人ではなかったか。「私の論文は村山談話とは食い違っていない」などと言い募る田母神氏と真っ向から向き合うべきであった。


 NHKは委員会中継をネグってしまった。これも与野党の意向を汲んでのことらしい。「独自の編集・編成方針に基づいて国会中継に取り組んでいる」とNHK広報室は釈明している。13日の委員会には中継が入った。こんな眠たいやりとりが、12日の参考人招致より伝える価値が高いと判断するNHKのニュース感覚は狂っているとしか言いようがない。



 他メデイアの扱いも国会同様、腰が引けているように見えた。参考人質疑の手ぬるさなど論点はたくさんあったはずなのに…。

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