酔眼独語 

時事問題を中心に、政治、経済、文化、スポーツ、環境問題など今日的なテーマについて語る。
 

二つの広告

2013-10-23 15:34:37 | メディア
 22日、新聞各紙に「婦人公論 11/7号」の広告が掲載された。キムタクの写真をメーンにあしらった何てことのない代物である。だが、地元紙と読売では何かが違う。目を凝らしてみると「読売」からは特集のルポ記事を紹介するコピー2行がすっぽり抜け落ちているのである。

 地元紙の広告、キムタクの頭の脇にはこうある。「男性誌の『死ぬまでセックス』特集に女たちは呆れています(ルポ)」。

 広告のサイズは読売の方が大きい。もっとも幅は同じで、使っている文字は読売の方が大きいから、地元紙と同じ位置にこのコピーをはめるといささか窮屈になるかもしれない。だが、そんなことはレイアウト次第でどうにでもなる。不思議なのは、なぜ読売にはこのコピーがないのかだ。

 前日の読売には全5段で「週刊ポスト」、半5段で「週刊現代」の広告が載っている。ポスト誌には「死ぬほどsex『定年延長!』宣言 70歳のsexが凄くなっている」のコピーが見え、現代誌には「秋の夜長 こんなsexをしてみませんか」の文字が躍る。婦人公論のルポの標的は「生涯sexのすすめ」を競い合う両誌が中心と見て間違いあるまい。週刊誌の発売が一日遅れの地方紙ではポスト、現代と婦人公論の広告が同じ日に載っている。出版社としてはこっちの方が問題だと思うけど…。

 はじめから婦人公論側が二つの広告を用意していたとは考えにくい。「男性誌」側からの要請で読売が変えさせたとみるのが妥当だろう。

 よく見ると読売の広告はキムタクの写真を少し左に寄せて2行分の空白が不自然にならないようになっている。広告に「墨塗り」は各紙でたまに見る。しかし、こうして何もなかったように装う例は少ないのではないか。

 報道や論説で「独自色」を強める読売新聞、広告でも存在感発揮ですかな。

 
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死んだ人はいい人だ!!

2013-10-01 11:26:04 | メディア
 作家の山崎豊子が亡くなった。享年88歳。

 新聞各紙は1面、社会面、文化面にわたって大展開、「国民的作家」の死を悼んだ。以下は毎日だが、各紙とも似たようなものである。

 ≪社会性のあるテーマに切り込んだスケールの大きな作風でベストセラーを生み続けた作家、山崎豊子(やまさき・とよこ、本名・杉本豊子=すぎもと・とよこ)さんが29日、心不全のため死去した。88歳。葬儀は近親者のみで営む。

 大阪・船場の商家に生まれた。1944年、京都女子専門学校(現京都女子大)国文科を卒業して毎日新聞に入社。大阪本社調査部を経て45年、同学芸部に移り、副部長(デスク)だった故・井上靖さんから新聞記者の手ほどきを受け、作家としての資質を見いだされた。

 新聞社勤務の傍ら、生家をモデルに10年を費やしたデビュー作「暖簾(のれん)」を57年に刊行。翌年、大阪女のたくましさを描いた「花のれん」で第39回直木賞を受賞したのを機に、毎日新聞を退社し、作家に専念した。

 パリを舞台にした「女の勲章」(61年)の取材中に元同僚と結婚。旧家の遺産相続を扱った「女系家族」(63年)、大学付属病院を舞台に医学界の暗部にメスを入れた「白い巨塔」(65〜69年)をはじめ、閨閥(けいばつ)政治と資本の癒着を追及した「華麗なる一族」(73年)など、実地調査と取材に基づいて社会問題に切り込む長編小説を相次いで発表した。

 その後も、シベリア抑留を扱った「不毛地帯」(76〜78年)、日系2世の兄弟の悲劇を描いた「二つの祖国」(83年)、中国残留孤児の数奇な運命をたどった「大地の子」(91年)の戦争3部作で社会派作家としての評価と人気を不動のものにした。

 93年、「大地の子」などの印税を基に「山崎豊子文化財団」を設立し、日本に帰国した中国残留孤児の子供の学資を援助した。

 日航ジャンボ機墜落事故を素材にして200万部を超えるベストセラーになった「沈まぬ太陽」(99年)の後、「山崎豊子全集」(全23巻)を2005年に完結させた。

 09年には、沖縄返還交渉時の密約報道事件を基にした「運命の人」を刊行し、同年の毎日出版文化賞特別賞を受賞した。作品の多くが映画、ドラマ化され社会的な反響を呼んだ≫=毎日jp=。

 ジャーナリスティックな題材に切り込み、人間ドラマを描いてきた山崎の力量は評価したい。一方で幾たびか「盗用」「盗作」事件を起こしたことも忘れてはなるまい。一度は引責して文芸家協会を退いたほどだから、本人にもその自覚はあったに違いない。

 第三者が体験し、活字化したものを脚色するのが山崎の得意技だ。一言その人に断ればどうということはないのに、多くのケースでネグレクトしていた。作家としての人格の問題だろう。とはいえ、人格高潔でくだらない作品を書く作家とどうしようもない人間だが書くものは面白い作家、読者が歓迎するのは後者であるのは間違いない。

 新聞各紙もひところ無断引用や盗用騒ぎが相次いだ。だからこそ山崎の死に当たってこれらの点にどう触れるかに注目していたのだが…。

 死者に鞭打たないのが日本のメディアの美風ですかね。
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