カイパーベルトは予想外に広大か? 超広視野観測で「ニュー・ホライズンズ」に協力
---すばる望遠鏡
太陽系外縁部を進むニュー・ホライズンズ探査機にすばる望遠鏡の広く深い撮像観測が貢献しています。すばる望遠鏡の超広視野カメラで撮られたカイパーベルト天体の探査画像に独自の解析手法を適用した結果、カイパーベルトの領域を広げる可能性のある天体が発見されました。
太陽系の中で、私たちが既に知る惑星たちよりも遠く先には何があるのでしょうか?海王星の先には小惑星などの天体(小天体)がリング状に分布している領域「カイパーベルト」があります。カイパーベルトからオールト雲までを「太陽系外縁部」と呼んでいますが、私たちの知識はまだ太陽に近い領域に限られています。
「太陽系以外に目を向けると、一般的な惑星系円盤の広がりは恒星から 100 天文単位(地球-太陽間の距離の 100 倍)くらいです。それに比べると広がりが 50 天文単位程度とされるカイパーベルトはとてもコンパクトです。こうした比較から、太陽系が生まれる元になった星雲(原始太陽系星雲)が現在のカイパーベルトよりさらに外側まで続いた可能性もあると私たちは考えています」と本研究を主導した吉田二美博士(産業医科大学;千葉工業大学惑星探査研究センター)は語ります。
現在の観測データを見ると、カイパーベルトの外端は 50 天文単位あたりで突然途切れているように見えます。もしもこの外端が原始太陽系星雲の外端に相当するなら、太陽系の惑星系円盤はとてもコンパクトな状態で生まれたことになります。一方、カイパーベルトの外端がその外側の天体(惑星)の影響を受け、その後の進化の過程で切り取られてしまった可能性も考えられます。これが本当なら、カイパーベルトのさらに遠方を観測すれば円盤を切り取った天体や、もしかしたら第2のカイパーベルトが見つかる可能性もあります。このように太陽系外縁部にある天体を見つけ、その分布を調べることは、太陽系の進化を知ることに繋がるのです。
米国航空宇宙局(NASA)の探査機「ニュー・ホライズンズ(New Horizons)」はそんな太陽系外縁部を調査するための計画です。2015年に冥王星系をフライバイ(近接通過)しながら観測、2019年にはカイパーベルト天体の一つであるアロコス(Arrokoth)をフライバイし、太陽系外縁天体の表層を初めて人類に垣間見せてくれました。アロコスへのフライバイ後にニュー・ホライズンズの延長ミッションが始まりました。そして探査機が今後調査するカイパーベルト天体の候補を探すために、すばる望遠鏡が協力することになりました(ハワイ観測所 2020年7月トピックス)。
すばる望遠鏡の超広視野主焦点カメラ(HSC)を用いたカイパーベルト天体探しはニュー・ホライズンズ探査機が飛行する方向の二視野(満月のおよそ 18 個分の広さに相当する領域)に絞って行われています。これまでに行われた約 30 半夜の観測で、ニュー・ホライズンズのサイエンスチーム(ミッションチーム)は、240 個以上の太陽系外縁天体を見つけています。(以下 略)
<ひとこと>: 大判イメージを含む詳細は下記リンクから。
<出典>: すばる望遠鏡
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