細田暁の日々の思い

土木工学の研究者・大学教員のブログです。

「目的と手段」と「コミュニケーション」

2013-05-10 08:48:14 | 職場のこと

私がコミュニケーション好きなのは皆さんご存知と思いますが,私の日常を見渡してみると,ほとんどの時間がコミュニケーションに費やされていると言っても過言ではないです。特に夜の時間で仕事しているときのほとんどは,コミュニケーションでしょうか。

今日も,午後から六本木で仕事ですが,建設業界における「マネジメント」について企業の経営陣と議論し,夜もお酒を飲みながらの意見交換会です。すべてコミュニケーション。私の考えも伝えますが,私も多くを学び,議論することで新たなビジョンや連携も生まれてくるでしょう。

さて,一方で,私の属している研究室においては。

近年は,総勢で30名近い集団となっています。研究室に所属する期間は人によって違いますが,学部・修士と経験する最も多いパターンでは3年間所属します。

研究室に所属する目的は人それぞれです。指導を受ける教員の選択肢も複数あります。

ですが,私がほとんどコミュニケーションを取らないメンバーは結構います。

私と教授のコミュニケーションも,私と日常的に連携している外部の研究者とのコミュニケーションの量・質に比べると,ほぼ無いも同然です。

同じ組織に属していながら,不思議なものですね。

私はよく,「手段の目的化」に警笛を鳴らし,「目的」や「ニーズ」もしくは「ゴール」から思考することの大切さを説きます。このような考え方をできる人たちにしてみれば,「当たり前」だし,実はこちらの方がすごく簡単なのです。私は今後,何かプロジェクトにチャレンジするときに,「手段」から考えることを一切しないと思われます。それぐらい,「目的」から考える方が自然であり,近道で,簡単なのです。

ところが,我が研究室に所属している学生で,何度も聴いているはずのこのやり方を実際に実践できる人はあまりいません。

昨年の4年生の鞆の浦の研究を行った赤間君は,これをできる学生でした。

本人の資質もあると思いますが,私とのコミュニケーションの量・質が多く高かったことも一因と思います。フィロソフィーだけ聞いても実践しなければ身に付くわけがありません。彼の直面している課題に対して,「目的」から思考することはどういうことで,どのように「手段」を使い,身に付けて行けばよいのかを,彼は日々考え,実践し,悩んだときは私とコミュニケーションしました。

「コミュニケーション」こそが,私の研究室に属して得られる最大の財産だと思うのですが,あまりにも身近にいると,「怖かったり」,まさに本来の目的から目をそらしがちになり,コミュニケーションがおろそかになるのでしょうか。

人間とは一方が避けると,もう一方も避けるようになります。自分に関心を示してくれる人は他に無数にいるので,わざわざ相手をする必要もないからです。

私もどんどんと学生と年齢が離れて行きますので,自分自身も工夫したり改善して,外の人とばかりコミュニケーションすることにならないようにしないと... 


たまり場構想

2013-05-09 18:30:18 | 職場のこと

鞆の浦での様々な経験を踏まえて,人間の組織においてはコミュニケーションが致命的に重要であり,それを活性化するためには「たまり場」が重要であることに気付き,我々の研究室でもたまり場を作って機能させたいな,と思っています。

今年度の私のテーマの一つは「徹底的に実践」ですので,研究室のたまり場になりそうな有力候補の302室というミーティングルーム(兼資料室,兼解析ルーム)に私もなるべく自分の身を置くようにしています。私はどこでも仕事ができるので,302室で勉強して原稿執筆したりするようにし,その時間帯を研究室のメンバーに公開して,トライアルを始めてみました。

ほとんど人が来ませんね。今日はもう1時間半くらいいますが,一人も来ません。
(その後,博士課程の学生が2人,来ました。)

ニーズが無いのか,私が一人でいると入りにくいのか,皆さん忙しいのか知りませんけれど。

私が海外渡航している間は,打ち合わせしたくてもできないだろうから,春学期からのロケットスタートをした方がいいのでは,とおせっかいを焼き,なるべくコミュニケーションした方がよいと思うので,いろいろ提案してみていますが,それほどニーズが無いようです。

困ったら学生から勝手にやってくるでしょうから,あまりおせっかいを焼くのはやめようかと思います。

無用な心配しても仕方なさそうなので,私も思い切って海外で羽を伸ばしてきます。


「燃えさせて」くれます

2013-05-09 17:49:43 | 教育のこと

5月4日の地引網でのこと。

今年度,高専から学部3年に編入してきた男子学生たちも地引網に参加していたのですが,岐阜高専から来た学生が,「先生,写真一緒に撮ってください」。

「何でやねん」と言いつつも,一緒に辻堂海岸をバックに写真を撮りました。

出身校の研究室の指導教員の先生に,「横浜国大に,コンクリート界のホープがおるから,そこに行け」と言われたそうです。「面識はないけど」とのことでした。

ありがたいですね。とてもうれしいです。一所懸命にやっていれば,見てくださっている方はおられます。大学での教育とは真剣勝負ですから,志高く入ってきていただけると,こちらもファイティングスピリットに火が付きます。

私の研究室に来たい,とのことでしたので,ぜひ来てください。

今日の夕方,講義3連発が終わった後,横浜市の方々が今年度の相談に来られましたが,昨年,林さんと行った,維持管理の資格取得を目指す横浜市の技術者のための夜間研修を今年もやりたいそうです。受講生からも好評だったそうです。今年は私も非常にタイトなのですが,職員の方々が私の講義を受けたい,とのこと。こういうのはうれしいですね。

もちろん非常にタイトではあるのですが,横浜市の今後の維持管理のことを考えると,信頼関係をじっくりと構築しておくことは非常に重要と思います。すべては人と人のつながりですから,今年もタイトなスケジュールの合間を縫って,夜間研修の講師を務めることになろうかと思います。

 


5月病なるもの

2013-05-07 21:00:32 | 人生論

今日はGW明けで講義が二つでした。二つの講義の後,学生実験の初回でしたが,私は完全なる脇役で,TAが主体となって椿先生と一緒にしっかりと学生実験を遂行してくれていて,とても良かったです。内部から進学した4名のM1と,外部から入学してきた4名のM1がとても良い雰囲気で,ほほえましくなります。

さて,学部の講義では,GW明けで調子を崩している学生が多いと思われたため,いくつかのアドバイスをしました。また,土木史の講義では,「都市の巨大化と環境問題」というトピックで,豊島の産業廃棄物不法投棄事件を軸に,世界最大のメガシティに住んでいる当事者であることの自覚を持ってもらうための情報をいくつも提供しました。

毎回,この回から学生たちのレポートが変質してきます。当事者意識を持ち始めるのか,シビルエンジニアリングの底力や奥深さに気付き始めるのか,知りませんが,とにかくこの回から変化が生じます。

来週からは,高速道路網,自然災害の克服,明治期の土木技術者の活躍,とたたみ掛けていきます。「土木史と技術者倫理」の3年目の講義も軌道に乗ってきました。来年度は4回目で,1年ちょっと間が空きますので,モデルチェンジも視野に入れて,この講義のブラッシュアップに努めたいと思います。

それにしても,仕事人間だなあ,と自らを省みて苦笑。GWはなかなか思い通りに仕事が進まず,最終日に何とか帳尻を合わせようとしましたが,予定の6~7割しかこなせませんでした。相変わらずですね。自分のやるべきと思っていることをきちんとできないと,自己嫌悪に陥り,ストレスから調子が崩れます。5月病なるものでしょうか。

でも,GW中は多くの家族イベントがあり,お客さんもたくさん来ましたし,家族との交流はたくさんできました。YNU土木教室の地引網にも始めて参加できて,大満足しました。

さあ,GWも明けて,初日は猛烈に仕事をした気分ですが,怒涛の5月が始まりました。今月は,山口にも,鞆の浦にも出張しそうで,仕上げは月末の東北の復興道路の品質調査です。いつもながら,調査部隊の隊長を私が務める予定ですので,全力を尽くしたいと思います。

まだまだ抱えている仕事に対しては後手後手ですが,今週を精一杯生きることで,少しペースを取り戻せそうですので,粘り強く前進したいと思います。

 


コーチング

2013-05-01 19:35:27 | 教育のこと

北島康介選手を育てた平井伯昌コーチの「突破論」を以前に読んでとても勉強になりましたが,「ティーチング」と「コーチング」という異なる指導があることもその本で知りました。世の中では常識のようですが。

コーチングの方が心,精神の指導であり,指導を受ける側の気持ちや性格も熟知していないとできません。ティーチングは,私の理解ではより技術的。

昨年度,鞆の浦の研究を行った赤間君に対しては,私はほとんどの指導がコーチングでした。彼が行き詰まったときや,悩んでいるときの,突破するための考え方を提示してあげる。技術的な面で多少はアドバイスしたこともあるかと思いますが,ほとんど記憶にありません。

大学の研究にはいろいろとありますが,私がコーチングするだけでかなりのレベルに到達する研究もあれば,一所懸命にティーチングしないといけないものももちろんあります。

ティーチングは厳しくなりがち。平井コーチの指導も,非常に厳しいようです。一方で,生徒が行き詰まったときは本当に寄り添って,性格も熟知した上で解きほぐしてあげるそうです。

教師として,私もまだまだ未熟ですが,ティーチングとコーチングがある,と知っているだけで,自らの指導力の向上には役立つと感じています。

近年は,私は自分自身をコーチングしています。どのような考え方をすべきか。業務が山ほどあって時間が足りないときに,どのようにその一日を過ごすべきか,常に一歩引いて冷静な自分がいて,実際に動く自身をコーチングしてくれます。

今朝,通勤で歩いているときに,一方の私が,別の私をコーチングしているのを明確に意識できました。コーチの私,ありがとう。

明日はGW後半の連休前の最終日です。講義も3つありますが,私にとっては大事な一日ですので,今夜から明日にかけて大事に時間を重ねたいと思います。 


目的

2013-05-01 11:44:02 | 研究のこと

4月27日に走島で昼食をしながら,昨年度の弟子の赤間君に言われました。「先生もこの1年で大きく変わった」

もちろん変わっているとは思いますが,何が変わったのか聞いたところ,「貫禄が出た。親しみやすくなった,いつもにやにやしているから。」と言われました。

自分の取り組んでいることの目的がしっかりしていてぶれないので,それが自分の自信につながり,貫禄につながっているのだと推察します。私のいう「目的」は多層的であり,また中期的,長期的なものも含んでおり,皆さんの見える表面だけでは伝わらないものもたくさんあります。

なぜ,我々が鞆の浦の研究を行うのか。工学的でない,とか,そんなことをやって何になるのか,などいろいろご批判もあろうかと思いますが,全く気にいたしません。一発で反撃するとすれば,「では,あなたのやっていることは役に立っていますか?」。とにかくポジティブな批判は参考にいたしますが,どうでもよい批判は一切相手にいたしません。

私たちの鞆の浦での活動は,まだまだこれからが本番ですが,その目的は何か,と言われるとすぐには答えられません。ただ,私の直観が,鞆の浦のことをしっかりとやりなさい,と命じます。そこには日本の根幹も関わっているし,本来のCivil Engineeringが解決しなければならない問題もたくさんある。また,そんなことよりも,たくさんの魅力と可能性が詰まっていて,それをみんなに知ってもらうこと,仲間に加わってもらって日本中に何かが広がっていくこと,が楽しみなのです。

今年は4年生の渡辺君が主役になって鞆の浦の研究を進めてもらいますが,とにかくいろんなことが実践されていくでしょう。

一つは,鞆の浦での我々の活動や,学んだこと,皆さんに知ってもらいたいことを,HPにして発信します。このHPを創る過程で,我々の目的も明らかになっていくでしょう。昨年の赤間君の研究の成果も,もちろんこのHPで配信します。

おぼろげながらでよいので,目的の方向性が定まっていること。後は,その方向性に進みながら,目的をなるべく大きく,できれば空間的にも時間軸的にも大きなものに育て上げていければよい。いつもの私のやり方です。

さて,渡辺君らとも,我々の鞆の浦での活動の目的は何なのか,それを常に考えて議論しながら,具体的な実践を重ねていきたいと思います。

この記事を書きながら, 「コーチング」について書きたくなったのですが,別の記事で書くことにします。


寝ること

2013-05-01 09:21:46 | 人生論

先日の三連休の中日,28日はどうにも体が疲れていて,とにかくたくんさん眠りました。私の諸活動の根源は心身の奥底から湧いてくるエネルギーですので,健康的な食事と良質の睡眠が根幹です。

連休最終日の29日の夜は,村上春樹の「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」を一気に最後まで読んでしまい,読み終わったら夜中の1:30でした。しばらく眠れず,明らかに睡眠も浅く,起床したら非常に疲れていました。

昨日の30日は日中も切れ味が無く,生活リズムの悪い学生の日中はこういう感じなのだろうなあ,と懐かしく?思いながら過ごしていました。

研究室の学生たちの研究テーマの決定のプロセスに入っており,学生の希望は昨日の昼に提出してもらいましたが,調整が必要です。話し合いもしてもらいますが,基本的には皆がハッピーになるような方向性を提示して,その上で話し合いをする,という方針です。話し合いが先,ではうまく行きません。コミュニケーションが必要なので,簡単な懇親会を設定して,皆がハッピーになると思われる方向性を私が提示し,それを研究室全員にメールでも配信し,話し合いが始まっていると思います。

当然のごとく,昨夜は非常にぐっすりと眠ることができました。これで日常に戻りました。もちろんエネルギーに満ち溢れています。

朝,身支度をしながら,いろいろと思いました。

今日から5月。

私の愛用の歯ブラシ,Sonicareの交換用歯ブラシを交換しました。全く効果が異なり,気持ちよく歯磨きできました。

次女も4才の誕生日を終え,張り切っています。

人間とは,日常を惰性で生きていく生き物ですから,区切りが必要。私も自分自身の体を大切にしよう,と思う大きなきっかけになるのが新年の正月です。

ありがたいことに,我が国には4月,というもう一つの大きな区切りがあります。

次女に刺激されてか,5月1日も私の中では一つの区切りになりました。

日々の業務の締切も,恨めしく思うことももちろんありますが,ありがたい区切りになります。

そして,毎日毎日しっかりと寝て,すがすがしい朝を迎えることができることが,実は何よりの区切りになっていることに,改めて感謝です。

人間の創ったリズム,システムってすごいですなあ。