土木史と技術者倫理の講義も終盤に差し掛かりました。あと3回で終わりです。
相変わらず、300名近い学生たちのレポートを毎週見ています。 第12回目だった1月5日は「都市の発展と城壁による防御」でした。いつも通り、様々な情報を学生たちに伝えましたが、この回の目玉は、ユリウス・カエサルが「セルヴィウスの城壁」を破壊したことについての、塩野七生さんのローマ人の物語(5巻)での表現です。
一部のみ紹介。
「だが、これらの有力者の中でも抜きんでて、「政治的人間」(ホモ・ポリティクス)であったカエサルだけに、建設しただけではなかった。破壊もしたのだ。それも、跡地に建てるための破壊ではなく、破壊のみを目的にした破壊を。」
「一方、古代のローマ帝国の首都は、なんと300年もの歳月、防壁なしで過ごしたことになる。「パクス・ロマーナ」の完成者はアウグストゥスだが、アウグストゥスとその後の皇帝たちに、首都が城壁の必要もないほどに平和であるのがローマの目指す道であると示したのは、カエサルであった。壁は、安全の確保には役立っても、交流の妨げになりやすい。カエサルにとっては、壁を壊すという行為は、ローマの都心部の拡張のためであると同時に、壁なしでも維持できる平和への意志の表明でもあったのだ。」
一連の土木史の講義の中で、それぞれの回の役割があり、私も念入りに講義設計していますが、この回は、カエサルが「壁」を破壊する、という極めて重要なメッセージを発します。
理系、文系、という無駄な壁。学生たちが自分自身を何重にも守ろうとする殻、壁。
そういう壁を取っ払ってみない?と私も投げかけます。
一つ前の年末の第11回目に、私は聴講生たちに、「自分はこの講義を遊びだと思っている」と伝えました。誰よりも真剣に講義に取組んでいますが、同時に遊びでもあります。
その真意を伝えたのですが、学生の中には衝撃を受けた人も少なくなかったようです。「先生のような考え方ができれば、自由な時間は無限に作り出せそうな気がしてきた」という感想もレポートにありました。
私は相当な時間を、土木史の講義の準備に割いています。300枚のレポートに目を通すだけでもかなり時間がかかるし、生徒たちに紹介したいレポートの中の意見やキーワードなどはパワーポイント4枚程度にまとめて毎回の講義の冒頭で紹介、解説しています。教科書にももちろん毎回事前に目を通しているし、動画、PPT、本の紹介・朗読、写真等を活用して、学生たちに伝えなくてはならない、と思う最良の情報を伝えています。
今の自分にはこれ以上の情報は提供できない、というレベルまで準備します。土木史という学問的なレベルが高いか低いかは知りません。学生たちが感じてくれること、変化のきっかけにしてくれること、が目的ですので、その観点で、これ以上のレベルは提供できない、ところまで準備しています。
そして、事前の準備が整えば、講義の時間は、「遊び」です。楽しくて仕方ない。アドリブで浮かんでくる情報も伝えます。
そして、その根底には、もちろん「自由」があります。どれだけ大学が改革されようと、無駄に見える事務仕事が増えようとも、私の講義の時間までは誰も侵入できません。私の自由な世界です。
第12回には、「自由」も伝えました。谷口智彦さんの「明日を拓く現代史」の中でも強調されていた、「自由」。その参考文献として、「逝きし世の面影」で描かれている江戸時代の子どもたちの笑顔、すなわち「自由」にも触れました。
「自由」だからこそ、日本の技術もこれだけ発展してきた。日本人は、日本人の本来の強力な特長であった「自由」を忘れてしまっている。
来週、第13回目「農業開発による人口増大」に向けても、万全の準備を行います。
昨夜は、2015年3月に卒業した研究室OBと、二人で夕食でした。私は朝の4時半からほぼ休みなしで働き詰めで、とくに10:30~14:30は昼休みもゼロで講義+会議+講義、という非人間的なスケジュールでしたので、17時過ぎにスパッと仕事をやめ、18時からたっぷりとコミュニケーションしました。
今回は、そのOBから声をかけてくれました。二人の連名での論文を執筆している最中である、というのもあるのですが、学生時代から私のことを慕ってくれていた人です。
とても楽しい時間でした。私に隠していたわけではないのでしょうが、聞いてびっくりした情報もあり、特にその話題について真剣に語り合いました。もちろん、おいしい食事とおいしいお酒とともにです。私のこれまでの経験や、基本的な考え方や、考え方を構築してきたやり方、などもたくさん話しました。
12月には、現役の研究室の修士の学生が進路について相談したい、ということで私に声をかけてくれ、これも二人で食事をしながら、いろいろと相談に乗ったり、話をしたりしました。デザートまで食べに行ってしまいましたが、これまた楽しい時間でした。
大学の外での私の行動を知っている人は、私がコミュニケーション大好き人間であることはご存知と思いますが、ときどきこのブログでも愚痴が出るように、最近は学生との距離を感じることがありました。いろんな原因はあるのでしょうが、最近の学生の気質が変わってきているのもあるだろうし、私にも原因はあるのかもしれません。
昨夜、OBとの食事に向かうバスの中で、私の隣に、10月に赴任したばかりの助教の先生が座ったので、横浜駅に着くまでずっとおしゃべりしていました。
これからOBと食事すること、そのOBが私の研究室に加わったときのちょっと特殊な経緯なども紹介しました。また、上述の12月の現役学生との二人での食事についても話しました。すると、その助教は「細田先生だからでしょうね」と発言しました。よく考えると、なかなか学生が教授や准教授と二人で食事したり、長時間コミュニケーションする、というのは当たり前ではないかもしれません。自分が学生の時に、先生と二人で飲みに行く、というのはちょっと考えにくいです。博士課程だと少し別かと思いますが。
というわけで、ときどき愚痴を言ったりしてきましたが、実は普通よりはコミュニケーションに恵まれているのかな、と思い直しました。
私も普通の人間ではないと思いますので、遠くから傍観したり(このブログを見たり)、警戒して近寄ってこない学生が大半です。まあ、そういう学生にはこっちが近寄ろうとしても無駄でしょうから、放っておくことにします。まれに接近してくる、希少な熱血漢とのコミュニケーションで十分です。
大学の外でも同じかもしれません。無数の人たちと関わっているので、仲間がたくさんいるように思っていますが、実は、遠くから傍観したり、警戒して近寄ってこない人たちが大半で、私がよくコミュニケーションしている方々は、基本的に希少な熱血漢の方々なのだろうと思います。
それらの方々とのコミュニケーションを今後も大切にしようと思います。
一般の方が見てとても分かりやすいように、テレビ番組に仕上がっています。
私達の教室でも、構造設計論の講義で非常勤講師をしていただいていた首都高の田嶋さんがたっぷりと解説されています。取材、インタビューはあの三橋貴明さんです。
私もこの現場には何度も見学に行っていますが、今度の1月18日にも大半は留学生になるかと思いますが、学生たちを引率して見学に行ってきます。
インフラの重要性、インフラ技術の重要性を国民の一人でも多くの方々に認識していただきたいです。