2017年に日本を訪れた外国人は、2869万人と過去最高、今年(2018年)3月の訪日外客数推計値は、前年同月比で18.2%増加し、約260万8千人となった。この値は、アジアからの花見客を中心に前年3月を40万人以上上回っており、3月として過去最高の記録。最も多い国は韓国で政治ではギクシャクしている両国だが、日本ブームは根強い。次いで中国、台湾で、中国の爆買いは収まったが依然として買い物志向は飛び抜けている。
気になるのは、大勢の客が集中する京都などでは、騒音やマナー違反など弊害も目立って「観光公害」と喧伝するむきもある。しかし、おもてなしを看板に観光立国を宣言した以上、この言葉は禁句だ。日本以上に観光客を誘致しているフランス、イタリア、スイスでは決して公害という言葉は使わない。確かに現地ではマナー違反が問題となっているがそれも努力で我慢以下になってきている。昨年訪れたオーストリアの小さな湖半のハルシュタットという街では住民が「大声禁止」「つばを吐かないで」といったポスターを貼っていた。
問題は住民の生活に大きく影響が出て来る場合だ。途中からは電車に乗れない,バスに乗れないということが京都などで起きている。イタリアの古い観光都市では入場料を徴収している。東京、京都、奈良などはホテル宿泊客から観光税を徴収しているが素通り客からは取れない。駐車場での観光税の徴収や入場制限も考えられる。日本人も含め出国税を取ることが決まったので、その使い道を交通機関を中心にインフラ整備に使ってキャパシティ対策も必要だ。
昨年、京都の嵐電では嵐山からの乗車数を押さえ、途中駅から乗車しやすい工夫をしていた。鎌倉江ノ電では住民優先乗車が試みられている。当面はこうした対策しかない。
長期的には観光客を分散化させることが重要施策だ。地方では沖縄、北海道が人気のスポットだが、欧州ではスイスのルツェルンは米国人に、スペインのミハスは英国人に、マヨルカ島はドイツ人にと地域によって好みが違い分散効果がある。
日本でも東京、大阪、京都,奈良などに集中を避けるべく、地方都市の努力が期待される。例えば岐阜県、八百津町にある「杉原千畝記念館」を訪れるイスラエル人が増えている。周囲の飛騨高山や白川村落なども合わせ地域観光の活性化に成功している。高山市ではイスラエル人の宿泊客数は2013年の2833人から、2016年は初めて1万人を超えて3倍以上に急増している。
日本の地方の祭りは観光資源としては第一級だ、工夫次第で外国から集客可能だ。例えば徳島は阿波踊りが賑わうが、第一次世界大戦中のドイツ軍捕虜がここの収容所で丁寧な扱いを受け,感激してアジアで初めてベートーベン第九を演奏した歴史があり、ドイツ人を引きつける。港にクルーズ船を招くなど宿泊設備の補完もできよう。