5522の眼

ゆうぜんの電子日記、2021年版です。

タイム・イン・ア・ボトル

2016-10-22 22:26:22 | 歴史
1973年発売のジム・クローチェのLPに「タイム・イン・ア・ボトル」というラブソングがある。「瓶の中に時間が閉じ込められるとしたら」と歌いだすのだが、そんな懐かしい歌を思い出させる記事を中日夕刊の社会面で見つけた。

「戦後の記憶をボトルキープ」という見出しで、戦後GHQに接収されていた横浜の「ニューグランドホテル」で、耐震工事をしていた工事人が宴会場の天井裏に携帯フラスク型のボトルが残されているのを見つけたというニュースだ。

透明のガラス瓶は高さが20センチほどで、黒いスクリューキャップが付いており、「マクナマラ」と英語で書いたラベルが貼られていた。瓶の中には「ユージーン・J・マクナマラ」という名が刷られた名刺が入っおり、アメリカ陸軍歩兵部隊・中佐という階級略号も印刷されている。

名刺の裏には1946~48 316/317と書かれ、滞在年と部屋番号らしい。2室連続ということはスイートとして使ったのだろう。記事には当時の米軍電話帳からマクナマラという夫妻がこの時期にニューグランドを宿舎にしていたことが判るという。

316号室の直下が瓶が見つかった宴会場の天井裏になるのだというが、客室の床に穴があるわけではなく、宴会場の天井高は5メートルもある。瓶がどうして宴会場の天井裏に置かれていたのかは誰にも分らない。

市販品のウイスキーボトルではなく軍のレーション用の瓶だろうから将校は必要に応じてホテルバーなどで自分の好みのアルコールを充填してもらって持ち歩いたのかもしれない。

いずれにしても、今となっては、ことの真相を知るのは汚れた空のボトルのみだという。これまたロマンチックな想像を誘いそうだ。

マクナマラ中佐が今も存命ならば「瓶の真実」が明らかになるのだ。70年前のオキュパイド・ジャパンの様子も聞いてみたいものだ。百歳に近いことになるが可能性は残る。

ニューグランドに限らず古いホテルには「タイム・イン・ア・ボトル」が必ず残っているのだが、ホテルマンたちはそうした記憶に興味をもつものは極めて少ない。だから歴史的な意味のあるトリビアはホテルの身売りや改装などのタイミングで霧消してしまうことが殆どなわけだ。

ニューグランドの「ウイスキー瓶」は貴重な例外。これを機会にいろいろな面から70年前の記憶を皆で思い出してもらいたいものである。



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