森林ジャーナリストの裏ブログ

表ブログに書けない、書く必要もないドーデモ話をつらつらと。

低コストな再造林施業

2006-07-19 10:48:48 | 政策・行政関係

しつこいようだが、再造林問題について、再び。いや、三たび。

 

全国の人工林が、新流通システムだか新生産システムだかで、伐採を促進されている。かつての大造林時代に植えた木が伐期を迎えているうえ、植えた人々の高齢化が進んだことも一因だろう。自分の代のうちに、自分が植えた木を収穫したい、という思いがあるからだ。
もちろん金のこともあるだろうが、子孫に山林のことで苦労をかけないため、処分する気持ちもあるようだ。当然、再造林はしない。林業は打ち止めだ。造林する金がないこともあるが、植えたら次の世代がまた苦労する、と思うからだ。

 

しかし、このままでは将来の林業が存続しない。持続的な森林経営でなければ、二酸化炭素削減にさえカウントされない。伐採跡地を放置して災害を引き起こす心配だってある。

そうした森林所有者に対応する政策を大急ぎで打ち出す必要があるのではないか。

最低限、自然林に誘導できる跡地対策、できれば天然更新で有用樹種の森を成立させられる施術、そして可能な限り、負担の少ない再造林方法。

これらを提示できないか。
今から実験だ研究だなんて言っている暇はない。幸い、各種の緑化技術は試されているし、天然更新等の研究も、そこそこある。また低コスト施業法も紹介すべきだ。過去の論文を精査するだけでも、一定の施業法は提示できるはずだ。

 

幸い、木材産業の時代の要請は、こうした現状に有利になってきている。丁寧な造林・育林をしなくても、木材なら利用できるからだ。あるいは自然林でも高価値化できるかもしれない。

 

伐採跡地の条件と、地主の意向に合わせた再造林施業法を選べるような一種のフローチャートのようなものを発表しないと、今まさに伐採して林業を打ち止めにしようとしている山を救うことはできない。将来に禍根を残す。


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12 コメント

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その通りですが (BWE)
2006-07-19 12:19:35
その通りですが、誰がそれをすることになるのでしょうか。

第1番には政府が責任を持っているわけですから、行う義務があるわけですが、今までの失敗を見続けていると、能力的に疑問を感じざるを得ません。

次に議会などの立法機関ですが、政府から提出された議案の審査ばかりで、自ら物を起こす力があるとは思えません。

大学や研究機関はあまりにも視野が狭く、よその研究を見抜く力が無く、内々で褒めあっているだけのような。

マスコミは一つの方法が脚光を浴びれば、それだけばかり。



例えば、国内の林業の施行が海外に比べ極めて小規模であること。原因の一つには土地の所有権が小さくわかれていることにあります。

それぞれの思惑があり、まとまった施行ができません。

また、山の土地の境界がどこで、現在誰が所有権の管理をしているかとの基本的なことさえ明確にはなっていません。

航空写真、GPSなど、今ある技術と、所有権確定の簡素化など、特別法を制定することなど極めて簡単なことではないでしょうか。(東京の一等地と、過疎の山奥とは当然違います)

それさえできない、しようとしない以上、結果は想像できます。
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能勢の棚田 (笹舟倶楽部)
2006-07-19 13:00:36
お昼のNHKで能勢の棚田をやってました。

棚田と森林ではチョイと違いますが、みなさんが喜んでやって来るようなカタチを盛り上げたいですね。

ウイークデイのお昼、NHKとはいえヤラセで都会からの団塊世代夫婦が見られました。

能勢と言う地域、農協が弱いらしく結果、各農家が工夫を凝らし都会のお客への商売に精を出しているとのことです。



http://www.a-perspectives.net/~beart/article/nomad/nose_market
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Unknown (rita)
2006-07-19 14:03:10
とても重要な問題だと思います。

将来のことを考えるとき、大切な要素の一つで結構見逃されているのはオイルピーク問題です。

例えば,日本国内の林業(農業もそうですが),外国と比べて規模の小さい、競争力がないと言われます。確かに,安い石油をじゃぶじゃぶ使えば,生産地と消費地の距離はなくなります。しかし、それがこれからもずっと続くかというと,そうでもなさそうです。輸送費が高騰していけば,木材を世界中から,今のように気軽に手軽に買い集め,輸入するということはできなくなるでしょう。ピーク以降の時代は,山林のように地場の資源にいまよりもずっと頼らなくてはならない時代です。

そこまで長期的に見通し,子孫のために木を植えていこうと思います

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これは政府の仕事! (田中淳夫)
2006-07-19 19:30:28
再造林指導は、なんと言っても政府、そして都道府県庁の仕事でしょう。これをせずして何が公か。



何も法律を作って強制的にさせるものではありません。伐採後ほったらかしになりかけている土地に、森林を再生する手法をアドバイス、コンサルティングするべきです。もちろん内容によって(人工更新する場合)は補助金措置も必要ですが、植栽後の世話をあまりしなくても成林させる手だてを全力で考えていただきたい。

たとえば種子の散布だけ行うとか、母樹を残した傘伐にするとか、無下刈り・無間伐施業を試すとか、考えられる方法はいくらでもあります。もちろん失敗するものも多いでしょうが、座して死を待つよりは……。気がついたら、「木のない国」にならないように。



日本の国土は森林が成立しやすい自然条件に満ちているのだから、そんなに難しいことではないはずです。
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天然更新 (山師)
2006-07-19 22:12:57
再造林は大変重要な問題だと思います。

天然更新が一番お金が掛からないと思います。しかし、今は自然界のバランスが崩れており難しいと思います。シカやウサギの被害はすごいものです。保護することも大事だと思いますが、バランスが崩れてしまった以上悪循環していくように思えますが。

政府の政策にもいえますが、バランスよくやってもらいたいです。
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獣害 (田中淳夫)
2006-07-20 01:34:54
そう、獣害が悩みの種ですね。

私は、どんどん殺せ、獲って食えと言っているんですが(笑)、世情はそれを許さないようで。



それでも、天然林は再生するんです。方法はあるはずです。ツリーシェルターなど、いくつかの方策は提案されいます。



世間は、ようやく「日本では木を伐ることが生態系を守ること」という発想に行き着きました。間伐、里山保全、みんな木を伐ることです。

そんな今だから言いたい。伐採跡地に再造林を。

同じく、野生獣は、獲らないと管理できない。

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獣害 (hideshi)
2006-07-20 19:11:45
初めての投稿になります。

田中さんの書籍は数冊購入していましたが、本ブログは最近になって知り、拝見させていただいてます。

私は林業行政職員なのですが、本ブログでの皆さんの意見を読む度に、自分はまず何をしなければならないのか、何が出来るのかと、自問自答の毎日です。

ただ、今の林業を取り巻く状況を、何とか変えなければいけないという思いは強いのですが、実行が伴っていないのが現実です(情けない限りです)。

現在は林業普及員をしていますが、この3月までは2年間、鳥獣担当をしていました。

田中さんが訪れた出雲部ではシカの被害が深刻ですが、石見部(県西部)ではクマが問題となっているのです。

現在の勤務地は地元であるため、複雑な立場で業務にあたることになりました。西中国山地のツキノワグマは環境省レッドデータブックに掲載されており保護が前提となります。しかし、一昨年(今年もそれに近い状況になりそうです)の様な、民家付近への大量出没があった場合には・・・。

野生獣の問題は本当に難しいです。行政としては保護と捕獲の両方を考えなくてはならないので。

さて、現在は、普及員をしていますので、獣対策(圃場+民家付近への出没を少しでも防ぐ)と伐採(除・間伐など)を関連づけ、住民に対する働きかけを開始したところです。

私1人での取り組みですし、大局的に捉えれば、林業を産業として成り立たせるための行動としては、ほど遠い取組だと思います。

しかし、中山間地の、人より獣が多いような当地では、まずは獣害対策と絡めることが、住民の森林施業に目を向けさせるキッカケになるのではないかと考えたのです。

最も重要だと思われる県産材の活用など林産関係の施策推進は外の人に任せることとして、私は、地元で、出来る限りのことを、無い知恵を絞って取り組んでいくつもりです。

もし、ご意見など頂けましたら幸いです。

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野生獣と森林管理 (田中淳夫)
2006-07-20 23:21:23
島根県の方ですね。どこかでお会いしたでしょうか。いっとき、島根県通いをしていたんですが、最近ご無沙汰です。また呼んでください(笑)。



さて、野生獣の問題は、やっかいですね。シカやカモシカ、イノシシ、ウサギなどは確実に増えていますが、クマは増える要因が見当たらないのに害と目撃例だけが増えている。いずれにしろ、中山間地から人を減らす原因に獣害は大きいはずです。



本当は、野生獣と人間社会が関わり合うことが、問題の解決の糸口になるのではないかと思います。イノシシを食肉やペットフードにする美郷町の試みもその一つかと思いますが…。



試みられているような、獣の出没と森林の徐間伐が関係あるというしっかりしたデータが出たら、組織的な活動へ広げられるのではないでしょうか。キャンペーンもはりやすい。誰か研究者はいませんか。
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人づくり (hideshi)
2006-07-21 20:09:45
田中 様

コメントいただきありがとうございました。

以前、環境税の使い途に関する件で、「林業に関わる人づくり」に血税を使ってはどうかとのご意見がありました。

残念ながら、島根県の「水と緑の森づくり税」においては、間伐、広葉樹植栽といった森林施業、及び自治会・NPO団体等が取り組む森林教室・森林作業、木製品・ペレットストーブの購入に対する助成を行っているに過ぎません。http://www.pref.shimane.jp/section/yama/mizumori/index.html

森林及びその施業に対する認識を住民の皆様方に理解いただくことは必要ですが、更に、林業に関わる方々のレベルアップ、並びに従事者数の増加を目的とした取組も当然必要だと思います。

川上の人間は木造住宅のことが分からない、また、川下の人間は森林施業について知らない状況では、それこそ日本の林業・木材産業の未来は無いと思います。

一連の流れを把握して、大局的な考えを持ち、かつ技能的にも優れた技術者(及び集団)の育成が必要ではないかと。



以下は、私が尊敬しているクマ研究者の方の意見です。

「県・国といった行政は、たいそうな計画書及び対応方針を作成して、これでもって担当者にクマ対応しろと言う。しかし、紙切れを読むだけで現場対応など出来るわけがない。出没の状況も違えば、住民感情も各地区で違う。そんな紙切れよりも必要なものは、鳥獣対策の専門家を要請する育成機関である。経費が掛かり、それが無理ならば、せめて、担い手を養成するシステムづくりを行わなければならない。今のままでは、国・県の方針と住民の間で板挟みになり担当者は潰れてしまう!」

現状はどうかと言いますと、財政状況の悪化に伴い鳥獣対策に関わる人間が減らされている状況です。

クマ対策と林業・木材業の担い手対策とは違うとおっしゃるかもしれませんが、私からすれば・・・。



偉そうなことを記載してしまいましたが、私も効果的な施策が打ち出せない(動き出せない)林業行政職員の1人です(自戒を込めて)。
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森づくりは人づくりから (田中淳夫)
2006-07-22 00:26:13
島根県の森林税の使い道も少額分散型ですか。

どこも「大局的見地」がない。もともと金が必要だから新税を作ったのではなく、取れそうだから作ったため、使い道に対する定見がないのでしょう。オピニオンも含めてリーダーシップを取る人が必要です。



だから、人づくりなのです。専門家がいないと「ファッションとしての森づくり」になってしまう。

クマ問題も、同じだと思います。奥山放獣も、中国山地に人が住んでいない奥山がどれだけあるか考えると、適地は少なそう…。各地の事情に合わせた対策が必要だと思います。

ちなみに私は、学生時代は野生鳥獣を専門にしていました。



本当は、人づくりはそんなに金をかけなくてもできると思うんですけどね。
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