バイオマスエネルギーの中で、最近の注目株が、バイオエタノール。つまり農林産物から作られるエタノールだ。
エタノールは液体だから、ガソリンエンジンなどの代替えにすぐ使えるところがウケているのだろう。石油の代替えになりやすい。木材をペレットやチップにして燃やして熱と発電を行う……といった従来考えられていたバイオマスエネルギー利用では、設備も大がかりだしインフラを変えなくてはならない。
しかし、肝心のバイオエタノールは原料に問題がある。現在はトウモロコシやキャッサバ、あるいはサトウキビなど食用作物のデンプンを醗酵させて糖、そしてエチルアルコールに変換していくのだ。つまり微生物の力を借りている。おかげでバイオエタノールが流行ると、世界市場の砂糖の価格が上がるという現象が起きている。
何より、食物をエネルギーに使うのはもったいない。原料の価格も気になるが、これらの作物の生産(耕作や収穫)にも、かなりのエネルギー(たいてい石油)を消費する点も問題視されている。
本命は、やはり木材からエタノールを作ることだと思う。しかし、これが大変なのだ。
理屈は簡単で、木材のセルロース・ヘミセルロースを分解して、糖に変えてから醗酵させればよい。しかし、木材を原料にすると、セルロースを取り出すのも、糖まで分解するのも、かなりの手間だ。そして、微生物による醗酵自体も、手間暇がかかる。増産がしにくくコストもかかるだろう。
そこで思い出してほしいのだが、農林バイオマス3号というプラント(今年6月27日)がある。木粉を放り込むと、ガス化してメタノールを生成してしまう凄腕の機械だ。エネルギーコストも手間も時間もかからない。化学合成なので、微生物も登場しない。これぞ、未来のバイオマスエネルギーだと感じさせた。
しかし問題は、生成するのがメタノールということだ。エネルギー源としては、エタノールに劣らないと思うのだが、世界の潮流がエタノールに傾斜している中、日本だけメタノールを採用しづらい。エネルギー体系は、世界と連動しているからである。仮に自動車などの製品をメタノール仕様にすると、海外で通用にくくなる。それに多少の毒性もある。(エタノールは、飲めるほど毒性は低い。ただし、酔っぱらう。)
そこで思うのだが、メタノールからエタノールを生成できないのか。あるいは、木粉から直接エタノールを生産できないか。難しいのだろうか。
化学式を見る限り、単純で似通った構造だから、簡単に合成できそうに思える。技術的な壁があるのだろうか。微生物に頼らずエタノールを生産してほしい。
誰か化学に強い方、この可能性を教えてください。メタノールからエタノールを簡単に合成できれば、農林バイオマス3号も生きてくる。木材をどんどんバイオエネルギーとして使えるようになる……。
少し前、H県にある元某国立研究所へ呼ばれてカービングショーをおこないました。その際、杉材60キロからエタノールを40キロ採取する画期的なバイオマス研究をおこなっていることを知りました。
理論的には飲めるそうです。
詳しくはまた飲んだ折りにでも・・・。
年末までにお会いできると嬉しいです。
KG
60㎏の原料から40㎏だと、かなり効率が高い方でしょうね。問題は、その製造法は、微生物の醗酵を使っているかどうかです。それに速度かな。日本のエタノールは仕込みから約1ヶ月かかるし、スコットランドのエタノールは樽で寝かせて何年もかかるからなあ。
また謀議しましょう。
メタノールをジメチルエーテルにする方が楽な気がします
メタンをDMEにする実験プラントは動いているはずですが
ジメチルエーテルの使い道が、幅広くあるのなら、それはそれで新たなバイオエネルギーかもしれません。
http://homepage2.nifty.com/rakuda/の
「なぜエタノールではなくメタノールなのか?」
をぜひ一度のぞいてみてください。
日本でメタノールをつくることは物理的に不可能です。材料の集荷ができません。
エタノールは発酵ですので小規模で作れますが(密造酒もある)、メタノールは化学合成で大規模プラントでつくります。小規模プラントでは非常に効率が悪いです。複雑な化学反応工程(吸熱&発熱)を24時間の安定稼動させるため、おそらく、毎時何十トン~ものバイオマスが必要です。つまり、そのプラントを稼動させるために、何万ha~もの山林から木材を持ち込むわけです。傾斜のきつい山林から引っ張りだせますでしょうか?
北米、南米あたりでは可能と思いますが・・・
結局、日本の森林(ほとんど傾斜のきつい山林)のエネルギー利用は、エタノールでもメタノールでもなく、
『里山老人ホーム』と『林間放牧』につきると思います(地球エネルギーシステム研究所佐野寛先生提案)。
゛らくだ林園のHP見せていただきましたが、ちょっと誤解されているようですね。
この項目をよく読んでください。私は、「農林バイオマス3号」というプラントが開発されたことを前提に書いているのです。このプラントは、極めて簡単にバイオマスからメタノールを生成できます。規模も小さくもできる。トラックに積み込めるタイプも可能だそうです。
そしてエネルギー利用のために木材を山から運び出すなんて、そんな馬鹿な! それこそエネルギーの無駄遣いです。
搬出費のかからないバイオマスはいくらでもあります。木材のカスケード利用を進めることが肝心です。世界のバイオマスエネルギーは、廃材利用が主流です。
農林バイオマス3号のエネルギー収支(生産量/消費量)をお調べになった方がよろしいですよ。前回も申し上げましたが、
『小規模プラントでは非常に効率が悪いです!』
>世界のバイオマスエネルギーは、廃材利用が主流です。
・・・かもしれませんが、日本の廃材は一体どれくらいでしょうか?
100年住宅を目指す時代に、廃材がバンバン出てくるとは思えませんが?あるいは、田んぼから、籾殻を集めてきますか?食品工場から残飯を集めてきますか?
そして、エネルギー収支を無視して、たとえ、かき集めたとしても、日本総エネルギー需要の数パーセントを満たすだけです。日本の山林エネルギーを掘り起こすためにも、ヒト(特に老人)が山村に暮らして、薪風呂やかまどで暮らすのが、最もエネルギー効率がすぐれます。
繰り返しますが、日本では、エタノールもメタノールも無理です。
消費量とは、投入バイオマスエネ(原料)のほかに、農林バイオマス3号機をつくるのに必要な総エネルギーをいれます。これがなかなか大きいです。鉄。電気、アルミ、重油、軽油・・・。
2kW程度の小型水力発電機がなかなか普及しないのは、大規模ダム(10万kW~とか)に比べて、エネルギー収支が極端に悪いのも一因かと・・・
すぐれたものが開発されたとか、発見されたとか、なかなか本質を見抜くのは難しいです。私も、よく引っかかります。
>農林バイオマス3号というプラント(今年6月27日)がある。木粉を放り込むと、ガス化してメタノールを生成してしまう凄腕の機械だ。
というのは買いかぶりでは? HPで調べたら、農林3号機は、木質ガス化発電の1種です(木質→熱ガス化→ガスエンジン発電+余熱利用)。原料の4割をガス化用の加熱に消費してしまうので、総合発電率としては(ガスエンジン発電効率30%としても)17%くらいで、あまり高くはない。
発電をやめて、ガスを取り出して精製(触媒毒を完全除去する必要あり)し、メタノール合成プラントに送ることはできます。(3号機とは独立のものです).
5段抽出によって、生成したメタノールを逐次冷却・抽出除去することにより、反応塔内の平衡をずらし、生成反応を進行させる部分が新規。熱交換部分が多くなり、建設費は膨らみそうです。
今夏取材した話でいうと、もともと1号があって、こちらで理論・技術的なものは生まれたのですが,あまり効率がよくなかったのです。それを大幅に改良したのが3号といをことになります。
もちろん実証機ですから、即実用になると言っているわけではありません。今後の研究改良に期待しています。
何か勘違いされているように感じるのですが、私は、すぐ農林バイオマス3号を稼働させよ、と主張しているわけではありませんよ。
バイオマスエネルギーではエタノールが注目されているが、メタノールも有望ではないか、あるいはメタノールをエタノールに転換できないか、という提案です。
もちろん、日本のエネルギーを全部バイオマスで賄うなんてこと、まったく考えていません。夢にもならない。世界最高水準のスウェーデンでも2割そこそこです。現在の日本では1%弱。今後増やしても二桁にはならないでしょう。
「山村で薪風呂やかまどを使って暮らす」のもファンタスティックな夢物語でしょう。私は嫌ですけどね。